ソフトバンクがオンラインゲーム事業に本格参入! ゲームポータルサイト「BB Games」の立ち上げを発表 | - 2003/07/03 21:55 |
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2003年7月3日,ソフトバンクが,ブロードバンド事業における新たな施策についての発表会を行った。 これまでもさまざまなネット関連の事業計画を発表してきたソフトバンクだが,今回は,forGamerの読者も気になるだろう"オンラインゲーム"についての発表会である。ソフトバンクグループの代表である孫 正義氏自らが,オンラインゲーム事業に取り組むうえでの意気込みや期待,そして具体的な計画内容を説明していった。 発表会の会場となったのは,東京は帝国ホテル内の「孔雀の間」。リリースが今日の午前頃と,かなり急な発表会だったにも関わらず,多くの報道関係者,流通関係者,そして金融関係者(このあたり,この発表会への注目の高さをうかがわせる)が集まっていたのが印象的だった。 ●ソフトバンクグールプ代表 孫 正義氏が語るオンラインゲームの将来性 発表会は,まず日本のブロードバンド市場の現状確認と,その将来性についての解説から始まった。 孫氏によれば,日本のブロードバンド普及率は約22%の1000万世帯であり,今後もこの数字がさらに伸びていくであろうとの話だった。ついで,自身が昨日まで韓国に出張していた経緯を話し,同国の最新ネットワーク事情も解説。 その中で孫氏は,「私は韓国のノムヒョン大統領と,ネットワークやコンピュータをより広めていくにはどうすればいいのか? という話をしました。私は,ネットワークやコンピュータを広めるにはゲームが非常に有効なのではないか,ゲームを遊ぶことで多くの人がコンピュータやネットワーク環境に慣れていくのではないかと提案し,それに賛同してもらった」と自らの考えとその手応えを語り,続けて「韓国は世界で唯一,国がゲームを支援している国家。ゲームによってIT化がより進んでいく」と話をつないだ。 ブロードバンド市場の説明の中で,孫氏は「ネットワーク市場は第二の成長期に入り始めました」と語り,次に「これまではブロードバンド事業というと,回線や設備といったインフラが中心でした。しかし,これからはコンテンツです。速度/安定度共に整備されたインターネット環境を,何に使っていくのか。それをユーザーに伝えていかなければいけません」とコメント。 加えて「私達は,もっともっとブロードバンドユーザーを増やしていきたいと考えています。そういう意味でオンラインゲームは,ブロードバンド普及におけるキラーコンテンツになりえると考えている」と,ソフトバンクがオンラインゲーム事業に取り組む意義も説明した。 また孫氏は,「従来のネット事業者の売り文句だった"速い,安い,簡単"に加えて,さらにそこに"面白い"を盛り込んでいく」と,自身のブロードバンド事業全般における展望も披露し,ソフトバンクのオンラインゲーム事業の中心たる「BB Games」へと話を移した。 ●オンラインゲーム開発のリスクを分散する「BB Games」の構想 今回の話の要である「BB Games」(株式会社ビー・ビー・サーブが運営)の説明は,孫 正義氏の実弟である孫 泰蔵氏によって行われた。 BB Gamesとは,日本で提供されるほぼすべてのオンラインゲームを扱う総合ポータルサイト。このサイトでは,各種Newsの掲載やクライアントのダウンロードサービスが行われるほか,βテスト/正式サービスを問わず,プレイヤーの募集やプロモーションが行われる。今年だけでも,約200〜300のオンラインゲームを稼働させる予定だという。 "ポータルサイト"というと誤解を招いてしまうのだが,BB Gamesの事業計画は,対ゲーマーというよりも,むしろ対メーカー的な意味合いが強い。 つまり,BB Gamesの基本的な機能をまとめると, ・BB Games IDの発行 ・BB Games IDですべてのゲームの課金,決済を一元的に管理 ・βテストサーバーやクライアントのダウンロードサーバーを無償で提供 ・ゲームのプロモーション活動を代行し,ユーザーを各ゲームへ誘導 ・実績が認められ,有料化したゲームの課金/決済を代行 といった感じになる。 これだけでは意味が分かりにくいと思うので,要するにどういうことなのかを説明をすると,従来はオンラインゲームを遊ぶためには,各社ごとに別々のゲームIDを取らなければならなかったが,それらをBB Games IDに統合することで,複数のゲームのアカウント管理が簡単に行えるようになるということだ。つまりプレイヤー的には,BB Games IDを一つであらゆるβテスト/正式サービスのゲームを遊べる(シングルサインインシステム)ようになる。 またゲームメーカーとしては,従来各社ごとに構築しなければならなかった課金システムや,またテストサーバーの用意などを行う必要がなくなり,より少ないリスクでオンラインゲームの開発ができるようになるという,プレイヤー,メーカーの双方にとって利のある仕組みである。 ビジネスモデル的には,iモードなどに近い感覚といえるだろうか。このような"仕組み"を用意することで,メーカーサイドの開発レベルからオンラインゲームをサポートしていこうという計画だ。 ゲームのβテストは,テスト専用のサイトである「G-CIA」などと連携し,テスターの意見やゲーマーの動向などを逐一確認。それらのデータを開発元やパブリッシャに提供していくことで,より日本市場にマッチしたゲーム制作,プロモーション活動が可能になっていくという。 現段階では,韓国80社,日本30社の計110のゲームメーカー(約200タイトル)との提携が基本合意に達し,来年度末までに300タイトルを同サイトにて展開していく予定とのこと。日本でのオンラインゲーム普及に,本腰を入れる形だ。 また,同グループのYahoo!BBとの連携も発表。Yahoo!BBのユーザーには,ベータテストの優先権や,無料試遊期間の延長など,ほかのISPを使っているユーザーに比べていくつかのメリットを用意するとの話だった。 βテストを優先的に遊べるとなると,ゲームをよく遊ぶユーザーにとっては,これは案外大きな意味を持つのかもしれない。 ●ゲームを遊んでお金が貰える!? プロテスターの育成プログラムを公開 BB Gamesの話で面白かったのが,「テスターの意識を向上させていきたい」といった内容の部分だろう。 BB Gamesと密な連携を取っていくことになる,βテスト専用サイトのG-CIAは,ゲームメーカーから委託されてクローズなα/βテストを行う機関である。つまり,ここで得られる結果や意見を参考に,ゲームメーカー/パブリッシャは,再開発の方針やタイトルの取得,プロモーション活動の方針などを決定していく。 面白いのは次からの点で,βテストを行うに当たってG-CIAでは,テスターがバグ報告やゲームに対するアイデアを発表する場が用意される。そしてそれらの意見や報告,アイデアが有益なモノだと判断された場合に,その発表を行ったテスターに対して,貢献度ポイント(テスターポイント)が付与されるのだ。テスターはポイントの量によってレベル分けされ,より高いレベルのテスターには,βテストの優先的なプレイ資格やオンラインゲーム利用券,果ては金銭的な報酬の提供など,さまざまな特典が付くようになるのである。 このような"テスターのやる気を刺激する"仕組みを設けることで,よりクオリティの高いテストレポートを収集でき,それがひいては,より完成度の高い作品/サービスの提供へとつながっていくわけだ。 現段階では,5段階の階層分けが予定されており,以下のような構造となるようだ。 グリーンテスター(一般ユーザー) シルバーテスター(ヘビーユーザー) ゴールドテスター(ゲームを深く愛する,いわゆるゲーマー) アナリスト(ゲームのアナリストとして,詳細なテストに対応できる) プロテスター(プロとしてテストを行う。テストごとに報酬が提供される) プロテスターの資格を得たテスターは,各種の報酬だけではなく,開発者との会議などにも出席が要請され,場合によってはゲーム会社にそのまま就職が推薦されることすらあるという。 オンラインゲームは,開発が旧体制(パッケージソフトと同じ体制)では難しいというのが通説である。このようなテスターを育成していくことが,より優れたオンラインゲームを開発していくために必要な要素だ,ということなのだろう。 今までのβテストは,どこか"タダで遊べる"という部分だけが先行し,テストであるという意味合いが薄れていた印象がある。このような仕組みによって,しっかりとした効率的なテスト作業が行えるなら,ゲームメーカーとしても願ったり適ったりなのではないだろうか。 さて,今回の発表を冷静に見直してみると,日本のオンラインゲーム市場拡大の一つの契機になりえる,非常に大きな計画だということが分かってくる。 業界の"根っこ"の部分から,オンラインゲームを盛り上げていこうという今回の計画は,PCゲームのみならず,ゲーム業界全体に多大な影響をもたらす可能性が高いのだ。BB Gamesの動向には,今後も注目していきたいと思う。 またBB Gamesのオープン予定日でもある7月25日に,東京国際フォーラムにおいて,より詳しい発表会が行われる模様。同時に「Online Game Fantasista」という大規模なオンラインゲームイベントが開催される予定だ。(TAITAI) |