[GenCon SoCal 2004#07]Mythica - 2003/12/17 22:07

マニアックに作り込まれたノース神話のMMORPG

 Microsoft「Mythica」は,2004年にリリース予定の次世代MMORPGの一つ。GenConでは,夏のセントルイス大会に続いてブースを出しており,多くの本格派RPGファンを取り込みつつあるようだ。開催中には,さらにその中からごく少数のファンを集めて特別イベントを行い,その場でMythicaについての詳細も語られた。
 すでに,当サイトでも何度もレポートしている通り,Mythicaはバイキングの北欧神話をベースにしている。ゲームの開始時点では,プレイヤーは戦争で死んでしまったばかりの戦士という役どころで,アスガルドの神々の加護を受けて再生するところから始まる。ファイアージャイアントの軍団が大挙して地上を侵略しており,民衆の村は焼かれ,生き残ったものは魔力の汚染によってさまざまなモンスターに変化してしまっているのだ。

 プレイヤーが選択できるキャラクタークラスは,バーサーカー(トール神),デーモノジスト(スメルト神),ドルイド(フレヤ神),ハンター(スカディ神),ストームライト(フレイ神),トリックスター(ロキ神),ウォーリアー(ティア神),そしてパイロマンサー(ホラ神)の8種類になっている。括弧の中は,それぞれの職業が加護を受ける神で,プレイヤーは地上に戻って民衆を助けるなり畏怖を感じさせるなりして,信仰を広げていくのである。
 キャラクタークラスの中でもユニークなのがパイロマンサーで,すでにE3デモで公表されていたように,火を自由に扱うメイジのような存在。ほかにも,12種類ほどのデーモンをペットのように召喚させるデーモノロジストや,気象に関わる壮大な魔法を使いこなすストームライトなど,このゲーム独特の職業が考案されている。
 プレイヤーキャラクターが選択できる種族は基本的にはなく,ゲーム開始時点では標準的な誰もが人間の形をしている。ただゲームを進めていくと,世界の中での行動やプレイスタイル,そして信仰を広める対象のNPC種族などと関わることによって,少しずつ容姿が変化していく。

 グラフィックス能力は非常に素晴らしく,アーマーなどのメタル系の素材のバンプマッピングから,水の反射に至るまで,E3で発表されたとき以上に素晴らしい仕上がりになっている。とくに感嘆すべきが質量感のある雲で,これは"Microsoft Flight Simulatorシリーズ"の技術チームとのコラボレーションによるものだ。見上げるとボリュームのあるデコボコした雲が流れているだけでなく,リアリスティックに天候が変化していくのである。
 キャラクターアニメーションは,ハリウッドでも活躍している"剣技の指導者兼ダンサー"という便利な人材を使ってモーションキャプチャが行われ,剣や斧の振り方からダンスや挨拶に至るまでのエモートが600種類以上も用意されているという。ユニークなのが,千鳥足も表現されていることで,北欧の男らしく酒場で酒を飲んでふらつくようなことになるのだろうか……。
 開発者は,「考え付く動作はすべて盛り込んだ」と豪語していたので,ゲーム内ではさまざまな感情表現が可能になるはずだ。
 ちょっと驚いたのが,千鳥足で歩いていた酔っ払いの背中の剣が,非常にリアルに揺れていたこと。Mythicaは,物理エンジンに「Half-Life 2」などでも利用されているHavokエンジンを使っているので,こんな些細なことでもリアリティの向上に一役買っている。

 「まだMicrosoftの幹部連中も見たことがない」という,屋外からダンジョンへ進入するときにもローディングがないシームレスな移動は見事だった
 ダンジョン内は非常に広大で,本当に地下に潜っているような気分にさせられる。また,MythicaではMMORPGとしては始めてのポジショナルオーディオが採用されており,多重スピーカーやヘッドホンがあれば,背後から迫り来る敵も耳で察知できるようになる。ダンジョン内では,周囲から水が滴り落ちる音が反響し,何か音楽を聞いているような気分になった。

 ゲームの序盤は,戦闘があるものやないものを含めてミッションの比重を高くし,安易なモンスター狩りでお茶を濁したくないのだと開発者はいう。
 現在公開されているミッションは,E3でも披露されたファイアージャイアントの侵攻で浮遊城が出現した村のクエストしかなかったが,Mythicaの魅力を語るには十分。ファイアージャイアントの攻撃から村を守るには,中央に浮かぶ浮遊城を破壊するしかないのだが,その前にまずは民家を焼くマグマ砲を取り除かなければならない。そのためにはハンターがモンスター達に気づかれないように近くまで忍び寄り,マグマ砲を誘導するためのマーキングを特殊な弓矢でつけ,離れたところに待機しているパイロマンサーの強力な火の玉で一撃を加えるのだ。そこで,プレイヤー達と合流していた村の騎馬隊と共にモンスター達と戦い,最後にボスモンスターをやっつけてクエスト完了となる。
 開発者の話では,クエスト遂行前と完了後では,世界に変化がある。例えば鉄鉱の採掘所を開放した場合は,その後はその採掘所を訪れるたびにプレイヤーを神と信奉する労働者達が鉄鉱を差し出してくれるなどの特典も付き,クエストを遂行した影響が持続することになる。
 またハイレベルなキャラクターになれば,デュアルウェポンなども使用できるようになるなど,Mythicaにはまだまだ正式発表されていない事柄も多いようだ。

 社内にも二つしかないという「Mythicaアートブック」を見せてもらったが,キャラクター,武器,建物に至るまで,非常にオーガニックで独特な世界観が表現されている。Microsoft社の内部プロジェクトということもあり,DirectXチームからFlight Simulatorチームまでのノウハウを駆使した,非常にクオリティの高いグラフィックスの堪能できる。
 あのボリューム感のあるFlight Simulatorの雲を,地上から眺めるだけでも感動するはずだ。発売は2004年中とだけ発表されており,夏頃にはβテストも始まるかもしれないとのこと。日本でのサポートは発表されていないが,輸入して楽しむ価値は十分にありそうだ。(奥谷海人)

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