ローカライズチームの面々。左から,ジ氏,カン氏,ソクさん
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運営チームのインタビューが終わると,再び2階の会議室へと移動して次のインタビュー。今回は,ローカライズチームだ。コルムオンラインは,
日本国内にサーバーや代理店を持たないでサービスを行っているので,公式サイトももちろん韓国に置かれている。つまり,ゲームや公式サイトの日本語ローカライズはNetclue社内で行われており,それを担当しているのがローカライズチームというわけだ。
ローカライズチームのインタビューは,カン・ボン・ソクチーム長と,ジ・ハン・メイ氏,ソク・ナン・ヒさんの3人で行われた。このインタビューでは,日本でサービスされているMMORPGをほとんど遊びつくしたという日本産ゲーム通(?)のジ氏が,我々の質問をカン氏に翻訳して伝え,その答えをソクさんが日本語に翻訳して我々に伝える……という一風変わった流れで行われた。
コルムオンラインは,クローズドβテスト開始時から
比較的クォリティの高いローカライズがなされており,本誌スタッフも「ほかのMMORPGとは何かが違う」と感じていた。そのあたりを中心にして質問を投げてみた。(Seal)
forGamer編集部(以下,4G): コルムオンラインは,クローズドβテスト時からクォリティの高いローカライズがなされていたのが印象的でした。ローカライズというのは緻密な仕事だと思いますが,どのような流れで進められているのでしょうか。
カン氏: ローカライズ作業は,大きく
3ステップに分けられます。最初のステップは開発側から来たマニュアルやテキストを読み,ゲームのプレイ方法を学びます。このとき,ゲームをプレイしないと分からない部分もありますので,ある程度はプレイして用語のイメージを掴んでおきます。
2番めのステップが,実際の翻訳作業となるわけですが,単語の直訳ではなく,
日本でよく使われるオンラインゲーム用語などを使うなど,いろいろなことを考慮して,プレイヤーが違和感なく読めるように気をつけています。
4G: 実際にプレイしてイメージをつかんでいるから,あのクォリティの高さでクローズドβテストが開始できたというわけですね。ほかに気をつけている点などはありますか?
カン氏: 日本語にローカライズされているゲームをプレイして,どのような用語が使われているかなどの調査もしています。ジは,ほとんどのローカライズされたゲームをプレイしています。まぁ,ただのゲームマニアともいえますけど(笑
4G: それはすごいですね。3番めのステップはどのようなものですか?
カン氏: 3番めのステップが,実際にゲームに適用する過程です。開発側にテキストを投げ,コンバージョン作業を行います。それから戻ってきたものを再度チェックして完成ということになります。eSOFNETには日本語が堪能なスタッフがいないので,正常に組み込まれているかをチェックするのも結構重要な作業ですよ。
1Step |
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(ゲーム内容検討段階) |
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- 韓国国内バージョンのゲームプレイを通じ,ゲーム内容や操作方法を修得
- 開発会社より,提供を受けた韓国語ゲーム内テキスト検討
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2Step |
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(韓国→日本Conversion段階) |
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- インターフェイスを含めたゲーム内テキストの日本語Coversion作業
- ゲーム内の日本語用語統一作業
- 日本語翻訳&ゲーム状況と内容にふさわしい翻訳になっているかについての検収作業
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3Step |
(日本語検収&ゲームテスト段階) |
・ゲーム起動テスト
・日本語チェック1 |
・ゲーム起動テスト
・日本語チェック2 |
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- 基本的な起動&動作テスト
- ゲーム内の日本語チェック&テスト
- ゲームの機能テスト
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3ステップに分けられたローカライズ作業を管理するチーム長のカン氏。オンラインゲームでよく使われる用語を使って違和感のないローカライズを目指しているという
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4G: それらの3ステップに要する時間はどのくらいかかりますか?
カン氏: えーと……,おおよそ1週間くらいですね。アメリタットパッチくらいの大規模なもので約1か月,コルムオンラインのクローズドβテストのときでは,全てのローカライズ作業に3か月ほどだったと思います。
4G: それって,非常に短い期間のように思えますけど……
カン氏: そうですね。私たちのリサーチでは,最初のローカライズ作業でおおよそ半年くらいかかるのが平均みたいです。しかし,
ローカライズの時間をもっと短くしていきたいと思っています。ゲームがアップデートされるとすぐにローカライズされるのが理想ですが,不安定なバージョンで作業して後で修正するよりも,安定したバージョンになってからローカライズするほうがトータルでの時間は短く済みます。日本のプレイヤーにもすぐに遊んでほしいのですが,このあたりはごめんなさいということで。
4G: ローカライズチームにはどのくらいの人数が所属しているのですか?
カン氏: 最初のローカライズのときには20人くらいが関わりました。現在は,メールなどでプレイヤーに指摘された部分の修正が多いので,最初よりは少ないですね。
4G: うーん,日本のメーカーが日本語版を作るときも見習ってほしい流れですね。ところで,コルムオンラインをプレイしていて,非常に気になったのが,セットアイテムにある"ナトー"や"クォディッチ","レディズ"といった名前なのですが,このようなカタカナ表記の用語には特別な意味があるのですか? 人物の名前みたいですけど……。ほかが比較的すべてキチンと日本語化されているのにカタカナで残っているということは,おそらく意味があるんだと思うのですが。
カン氏: えーと,それはちょっと難しいですね。おそらく開発者たちが考えた固有名詞だと思います。開発側の希望でもありますし,韓国語にはない単語なので,日本語ローカライズしたときにカタカナ表記にしました。
我々の質問の要点を瞬時に察知して,カン氏へと通訳するジ氏。さすがに日本語ローカライズされたゲームをプレイしつくしているだけはある。でも,日本語の発音は苦手らしい
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4G: なるほど,こちらのスタッフも把握できていないのですね。ちょっと残念(編注:この件は,開発者インタビューで明らかに!)。翻訳で苦労したのはどのような部分ですか?
ソクさん: 苦労したのは,日本語には一つの事柄に対して複数の言いまわしがあったり,男女の言葉使いに違いがあったりする部分ですね。韓国語は男女の言葉使いに差はないですし。日本語に該当する言葉がなかった場合には,最適な言葉を見つけられるように時間をかけています。
4G: 日本語にない言葉というのは,例えばどのような?
ソクさん: ええと,ちょっと待ってくださいね……例えば,韓国では
多くの敵に囲まれている状態を表す"タグル"というオンラインゲーム用語があるのですが,これは日本語にはない言葉なんです。
4G: "ボコにされる"とかいう感じですかね……なるほど,確かにそういうのはちょっと日本語に訳すのは難しいかもしれませんね。そういうローカライズ時の苦労はたくさんあると思いますが,もしも,ほかの韓国でサービスされているMMORPGのローカライズのオファーがあった場合はやりますか?
カン氏: それは(社長次第ですが)もちろんやります。Netclueはパブリッシャーのように見えますが,そうではなくゲームのローカライズから運営まで開発以外のすべてを取り仕切っています。私たちも開発と一緒になって完成させていくので,その思いは強いですよ。現在はコルムオンラインを成功させることが目標ですから,それに向かって全力投球しているところです。
4G: ところで公式サイトのローカライズには関わっているのですか?
カン氏: 公式サイトは,運営チームと共同で作成しています。最終チェックには日本人スタッフがチェックをしていますので,意味が分からないような変な訳とかはないと思います。あったらぜひ教えてください!
ゲームの話ですが,今後は,現在のバージョンのローカライズ作業を進めてクォリティを上げていき,次にアメリタットパッチ部分のローカライズへという感じですね。オンラインゲームは,シングルRPGと違って完成していない段階で公開されるので,徐々にクォリティを上げていかなければなりません。もう少し時間がかかってしまうかもしれませんが,みなさんが安心してプレイできる環境にしていければと思っています。
4G: 2004年1月28日から韓国で正式サービスが始まるとのことですが,アメリタットパッチ以後の予定を聞かせてください。
カン氏: 最終決定してないものが多いのですが,3月からは
日本風のアイテムやダンジョンが登場する予定です。着物や足軽,忍者刀といった単語を使ったり,日本サーバー独自のアイテムやグラフィックスもあるかもしれません。これのローカライズは,全体で少なくとも3か月くらいかかると思います(※編注:アイテムが導入されるのは3月から開始)。
Netclueと開発側を含めた
メーカーと,みなさんとの差を縮めていくための努力をしています。活動が見えづらい部分ではありますが,コルムオンラインを成功させるために頑張っていますので,応援してください!
きれいな日本語で通訳してくれたソクさん。画像中央は開発チームの机上にあったデザイン画。まだ,日本サーバーに実装されていないものがあるかも?
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