[GDC2004#02]MSの次世代開発プラットフォーム「XNA」 | - 2004/03/25 22:50 |
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GDC会場となったサンホゼコンベンションセンターにはノワール映画を連想させるXboxのタペストリが連なっているが,今回発表されたのはXbox2そのものではなく,次世代機の開発プラットフォームとなる「XNA」であった。 新しいゲーム機の情報を期待していた我々ゲームファンには残念だが,今後のハイビジョンテレビ(High Definition TV)の普及を見越して「ハイデフゲーム」という造語までを持ち出してきており,次世代でも非常に精密なグラフィックスに力を入れていく方針と思われる。高解像度技術ではPCゲームの開発者がノウハウを持っていることもあり,Microsoft社は大きな期待を寄せているようだ。 壇上に立ったMicrosoft社Home and Entertainment部門副社長のロビー・バック(Robbie Bach)氏は「現在の開発サイクルではゲームのアーキテクチャを作る"Construction"に経費の80%がかかり,本来重要なはずのゲームを創作する"Creation"には20%しか費やせない。開発コストを低げてこの数字を反転させることが,次世代機のゲーム開発には必要だ」と説明する。これを達成するのがXNAであり,XNAのチーフ・アーキテクトであるジェイ・アラード(J Allard)氏は,バック氏に続いて開発者側からのフィードバックの大切さを語った。 XNAとは,Xbox2にも使用される予定のDirectX 9のHLSL(High-Level Shader Language)のほかにも,パイプラインの分析ツールである「PIX」や音楽制作ツールとして登場した「XACT」,Input APIs,さらにはネットワーク仕様にするための「Live Tools」といったアプリケーションを統合し,より使いやすい開発キットに仕立てることを意図している。 このXNA戦略への指示を表明している開発会社の顔ぶれも面白い。ミドルウェアや開発ソフト関連では,Criterion社,Alias社,Discreet社,Havok社,Touchdown Entertainment社,Epic Games社,Right Hemisphere社,Softimage社,VirTools社など,大方の賛同は得られているようだ。 ゲームソフトの開発会社も,Valve Software社やCryTek社を始め,Factor 5社,Pseudo Studios社,Vicarious Visions社,High Voltage Software社といった渋めのパートナーと提携している。ビデオレターでコメントしていた開発者達には,UBI Software社やLionhead Studios社,Sigil Game Online社,Argonaut社,Sammy社,Bungie Studios社などが見られる。しかし,ここで欧米の大手や日本の会社がほとんど出ていないのは,非常に気になるところだろう。 紹介されたデモは,フサフサした毛皮のゴリラやアルマジロ,クモなどがモーフしていく「Xenomorph」(High Voltage社),エヴァと呼ばれるセクシーな女性がタバコを吸い,足を揺らしながらカフェに座っている「Film Noir」(元id Software社のPaul Steed氏が率いるMS内部チーム),そしてSALEENという青いスポーツカーが壁に激突する「Crash」(Pseudo Studios)の三つ。 Crashは,壁の角度やスピードによって車の破壊の仕方が異なるなど,インタラクティブな仕様になっていた。これらのデモは,XNAの公式ページ「こちら」でストリーミングビデオを見られるようになっている。 GDCが開発者のための講演会であるとはいえ,Xbox 2に関する初めての情報公開となった今回が,かなり地味な印象に見えたのは事実だ。派手さよりも実利を優先したのだろうが,スペック等の詳細はまったく語られることはなかった。 "ハイデフゲーム"で,新しい市場は獲得できるのだろうか? Xbox2の公式発表は,5月に行われるE3ではなく夏ごろではないかとのウワサもあるが,オンラインゲームに関してはPCとXboxでの連携も考慮されていることから,今後の情報にも注目していきたい。(奥谷海人) |