[GDC2004#06]ウォーレン・スペクター氏の語る「ゲームストーリー」 - 2004/03/26 23:46

〜レクチャー2:物語とは何か?
Game Narrative:What would Aristotle do?

 今年のGDCにおけるホットトピックの一つが,「ゲームエンターテイメントのストーリーとは何か」という命題である。
 23日夜に行われたデベロッパズチョイス・アワードでも,「Star Wars:Knights of Old Republic」や「Prince of Persia - The Sands of Time」のようなストーリー重視のシングルプレイヤー専用ゲームが脚光を浴びた形になっていた。
 インタラクティブメディアでは,古くから多くのデザイナーや脚本家達が挑戦してきたことであるが,未だに確実な方法論が編み出されていないことも,開発者達の焦りの遠因になっているのかもしれない。

 2003年に「Deus Ex:Invisible War」をリリースしたION Storm社のウォーレン・スペクター(Warren Spector)氏は,地方大学の映画科で教鞭をとっていた時代もあるほどで,物語に関する造詣は深い。スペクター氏自身「もし,なんらかの法律でゲームにストーリーを挿入できなくなったら,ゲーム業界から足を洗っちゃうよ」と話すくらいに物語性を重視している。
 彼が壇上に立った「Game Narrative:What would Aristotle do?」(ゲーム中の物語:アリストテレスならどうするか?)という講義において,ゲームのストーリーは,

1) 一直線に進んでいく「リネア型」……「Half-Life」や「Prince of Persia」「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズなど
2) 過去や現在進行形の物語をNPCから伝えられる「リトールド型」……MMORPG全般や多くのRPG
3) プレイヤーが紡いでいく「プレイヤージェネレイテッド型」……「シムピープル」や「ネヴァーウィンター・ナイツ」など
4) 開発者の牽引でプレイヤーが物語を導き出す「シェアード・オーサーシップ型」……「Grand Theft Auto」「Deus Ex」シリーズなど

の四つに大別できるとした。
 スペクター氏は,この中で最もインタラクティブなのは四つめのシェアード・オーサーシップ型だと語る。これは,グローバルなレベルでは開発者が制作した道筋があるが,ローカルレベルではプレイヤーに自由が与えられている仕組みだ。
 プレイヤーになんでもできるような錯覚を与えながらも,飽きたり見失ったりしないように大きな部分でのストーリーを確保しておくのである。氏は,「ゲームを楽しんでいる行為そのものが労働であり,それに対して報酬を払うとすれば,プレイヤーが満足できるだけのストーリーを与えるべきだ」と締めくくった。

 またスペクター氏は,この日にIGDAの中核メンバーであるエリック・ジマーマン(Eric Zimmerman)氏が企画した「The Love Story」(ラブストーリー)という講義にも参加している。これは,「Star Wars Galaxies」のラフ・コスター(Raph Koster)氏や「シムピープル」のウィル・ライト(Will Wright)氏など大御所も加わって,もし彼らがラブストーリーのあるゲームを作ればどうなるか,という企画持ち寄り型の発表会である。
 コスター氏はハーレクイーンロマンスの要素を取り入れたMMORPGを,ライト氏は「Battlefield 1942」と映画「カサブランカ」を組み合わせた"第一人称視点型キスゲーム"を発表して満員の会場を沸かしていたが,スペクター氏は生真面目な性格なのか,自分は恋愛ゲームを作ることは不可能だとしながら,「コンピュータ内のキャラクターに感情移入させるというのが前提なら,僕がDeus Exの開発中に感じたクモBOTに対する思いについても語らなきゃ」と発言して,会場を笑いの渦に巻き込んでいた。

「Deus Ex:Invisible War」の記事一覧は,「こちら」

Deus Ex: Invisible War. (C) 2003 Eidos Inc. Developed by Ion Storm. Published by Eidos Inc. Deus Ex: Invisible War, Ion Storm and the Ion Storm logo are trademarks of Ion Storm. Eidos and the Eidos Inc. logo are trademarks of Eidos Group of companies. All Rights Reserved.


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