NVIDIA社のGeForce 6800で3Dゲームが新世代に突入! - 2004/04/16 23:57


※GeForce6の各種ムービーやベンチマークなどは,記事一覧の「こちら」からどうぞ。

※本記事は元々アメリカでの発表会のもので,末尾に日本の発表会の記事を付記しています。また,テクノロジーの細かい話やベンチマーク結果などは,追って記事にいたします

 4月1日アメリカのサンノゼ市にあるHotel Valenciaにおいて,同市に本拠を構えるNVIDIA社が,Shader Model3.0に対応した第6世代のグラフィックスチップ"GeForce6シリーズ"の「GeForce 6800」を発表した。これは一部のプレス限定で公開されたもので,コードネーム"NV40"として長らく噂されていたものだ。事前情報によるとこのNV40は,NV3x世代のGPUに比べて飛躍的にパフォーマンスが向上しているという話。ついにNVIDIA社がグラフィックスチップ界の王座奪回に向けて立ち上がったわけだ。

■新名称は「GeForce 6800」

 ここしばらく,NVIDIA社のロードマップに存在していた「NV40」の正式名称は,「GeForce 6800」に決定した。同時期にリリースされるハイエンドモデルは「GeForce 6800 Ultra」となり,どちらも"GeForce FX"の「FX」は切り取られている。これについてNVIDIA社社長のジェン・スン・ホワン(Jen-Hsun Huang)氏は,「名称の混乱については承知しているが,それはIntelやAMDでも同じこと。我々も,ユーザーにとって分かりやすい表記ができるように思考錯誤しているのです」と話す。昨年の春には「GeForce FX 6800」と呼ばれる予定だった「NV35」の名称が「GeForce FX 5900 Ultra」に変更されたことからもNVIDIA社側の苦心を感じるが,FXがなくなっただけでもスッキリとしている。




 ここ1年に渡って同社のフラッグシップとなっていたNV3xコアのGeForce FXシリーズは,128ビットというメモリパイプラインの制約を受け,コアプロセッサやメモリクロックを500MHzにまで高めた結果,極端な発熱対策が必要となった。そのために一つ下の空スロットを放熱口として利用しなければならず,しかもそれがうるさかったことで,一部のユーザーからは"ヘアドライヤー"や"騒音機"などと揶揄されていたことも記憶に新しいところだろう。
 「GeForce FX 5900」は256ビットのメモリパイプラインに進化していたが,2003年の後半にもなるとプログラマブルシェーダ機能を使ったソフトが登場。「Tomb Raider:Angel of Darkness」や「Deus Ex:Invisible War」など,NVIDIA社の製品ではプレイしづらいことがゲーマーの間でも不評を買い,さらに「Half-Life 2」がRADEONのハイエンドモデルにバンドルされることが発表されるや否や,GeForceシリーズの評価は急落した。このあとドライバのリリースによってそれは改善されたが,そもそもメモリパイプラインを始めとするNV3x世代のアーキテクチャに問題があったのは言うまでもない。
 しかしその裏で次期リリース予定のNV40が着々と開発されていたことは,我々ユーザーにも伝わっていた。そして憶測や噂のレベルだったにせよ,かなり期待できるものであることも同時に予想されていた。それが,今回の発表で公開された「GeForce 6800」なのだ。

■「GeForce 6800 Ultra」のスペック

 NV40の内部構造は凄い。現行では最強のCPUといえるPentium4 エクストリーム・エディションよりも30%近く多い2億2200万トランジスタを擁し,300ミリのウェファ上には.13ミクロンプロセスのコアが並ぶ。また業界最速の"GDDR3メモリ"を搭載しており,今夏にもリリースされるPCI Express/16Xにも対応することになる。
 ここで心配なのは電源。カードの背後には二つの4pin電源コネクタのスロットが付属しているが,AGPスロットが供給できる電源の最大値は25Wしかなく,4pin電源コネクタを一つだけ利用しても電源不足でハードウェアの能力が自動的に抑えられてしまう。PCI Expressは60Wまで供給できるので,この状況を軽減できるものと思われるが,NVIDIA社ではGF600Ultra搭載PCには480Wのメインパワーを奨励しているので,多くのユーザーはアップグレードが必要かもしれない。このあたりで購入を控える人も少なからずいるのではないだろうかだろう。

 GeForce 6800 UltraGeForce FX 5950 Ultra
コードネーム NV40 NV38
プロセス(ミクロン) 0.130.13
トランジスタ 2億2200万 1億3000万
コアクロック(MHz) 400 475
ピクセルパイプライン 16 4
フィルレート(GPixcel/秒) 6.4 1.9
メモリタイプ 256MB G-DDR3 256MB DDR
メモリクロック(MHz) 550(1.1GHz) 475(950MHz)
メモリバス幅(bit)
256256
メモリバンドウィズ(GB/秒) 35.2 30.4
DirectX 9.0c 9.0b
OpenGL 1.5+ 1.4






■「GeForce 6800 Ultra」の外観

 さて本誌では,実はまだ100社ほどのデベロッパにしか送られていないというGeForce 6800 Ultra搭載のリファレンスカードを入手できた。公式の画像とは異なり,GeForceのロゴのない銀色のファンケースが剥き出しになったものである。
 パッと見の感じでは「GeForce FX 5950」などと非常に似ており,冷却装置はかなり大きい。"後方からファンで空気を吸い取って内部に向けて排出する"という従来と同じ構造が少し不安だが,そこはサードパーティからさまざまなデザインのものが発売されることを期待しよう。

 明日以降(もしかしたら週明けに),テクノロジーやベンチマークについても触れる予定なので,乞うご期待。(ここまで,文・写真/奥谷海人)

#以下の写真はすべて(その性質上)拡大写真が大きなサイズになっていることをご了承ください。


(右上)まず,大きさが比較できるようにCD-ROMを脇に置いて比較したもの。GeForce 5xxx系よりも少しだけ大きいようだ

(上段真ん中)レファレンスのディスプレイコネクタは,噂通りD-SUB15ピンがなくなり,DVI-Iが二つとS-Video一つという出力端子構成となっている。ゲーマーの間ではまだまだCRTモニタへの接続が一般的なので,各社製品版にはD-SUBが一つ付くか,DVI-IからD-SUB15ピンへのコンバータが一つないし二つ付属するものと思われる

(左上)ヒートシンクやヒートパイプは,銅ではなくアルミニウムで製作されている(手で磨かれたような掻き傷も残っている)

(右下)ビデオカードの背部。DDRIIIメモリは,SAMSUNG社の600MHz版。よく見ると,AGP端子近くにコイルと緑色の配線が手付けされているのが見えるが,これは最終段階でファンの電圧を変更したためである

(下段真ん中)ビデオカード後部からの写真。ハードディスクドライブに接続するのと同じ4pin電源コネクタのスロットが二つ並んでいる。これを両方接続しないと動作が安定しない

(左下)実際にAGPスロットに挿入してみた写真。筆者のPCケースはATXのミディアムサイズだが,サブで使っていたハードディスクドライブと重なり合うために,若干位置を調整しなければならなかった



■■NVIDIAの最新GPU GeForce 6800国内発表■■

 海外含めあらゆるサイトで既報のことだが,NVIDIAの新世代GPU「GeForce 6シリーズ」が発表された。本日4月16日は,やっと日本での正式発表というわけだ。
 上記アメリカでの発表会同様,今回発表されたのはコードネームNV40と呼ばれていたもので,GeForce 6800とGeForce 6800 Ultraの2種類。実クロックはベンダーにより変動するのであくまでも参考値だが,GeForce 6800Ultraのコアクロックは400MHz,メモリは最大550MHzとされている。ノーマル版のGeForce 6800はこれより低い周波数とされているほか,Ultraでサポートされているレンダリングパイプライン数が16であるのに対し,12本と少なくなっている。ただし,コアとしては同じものを使用するとのことだ。おそらくは,パイプラインが16本動作しないものや高クロックで動作しないものをボンディングなどで設定変更してノーマル版として出荷するのだろう。
 これらの製品はNVIDIA自身が「これまでで最大の飛躍」と呼ぶだけあって,性能はもちろん機能面でも,従来のGe Force FXに比べて格段の進化を遂げている。性能はざっくりいって,Ge Force FX 5950 Ultraの2倍(GeForce6800 Ultra使用時,GeForce6800では約1.5倍)。解像度が高く,複雑なシェーダーを使っているシーンでは3倍以上にもなる。これまでのグラフィックコア以外にビデオプロセッシングのためのマルチメディアコアが追加され,画像関連の処理をまとめてこなすプロセッサとなっているのも特筆すべき点だろう。

 NVIDIAでは,このチップに五つのゴールを設けて開発を進めてきたという。すなわち,
・これまでで最速のGPUとすること
・技術的に先進的で標準のAPI(DirectX 9 ShaderModel3.0など)にフル対応すること
・ビデオ/マルチメディア機能の融合
・フォトリアリスティックな表現の追求
・互換性/安定性/信頼性の確保
の5点だ。その中から製品としての特徴を抜き出すと,次の2点になるだろう。

●ShaderModel 3.0に対応したGPU
 DirectX9のVertexShader3.0,PixelShader3.0に対応している。「ShaderModel」という呼び方は,OpenGLでのVertexShaderのバージョンが整合しないので,DirectXでの3.0レベルのものということで混乱を避けるために出てきたもののようだ。詳しくはこのあとUpされる別記事を参照してほしい。

●プログラマブルなビデオプロセッサ搭載
 MPEG 1/2/4などのデコード/エンコードを行うことができるようになった。100%ハードウェア処理ではないが,デコードで95%程度,エンコードで60〜65%程度がハードウェア処理によって実現されるので,CPUの負荷は非常に低いものになる。ビデオプロセッサはプログラマブルなので,今後登場するであろうさまざまなコーデックにも対応できるような設計になっている。

 気になる価格だが,「(GeForce 6800 Ultraは)GeForce FX 5950 Ultraの登場時とほぼ同じ価格になるだろう」とだけ語り,さすがに具体的な価格を提示することはなかった。その言葉から素直に想像するに,6万円台後半〜7万円台前半,といったところだろうか。メモリ512MB搭載のハイエンドバージョンも夏頃には出てきそうで,AGPのほかにPCI Expressに対応したものも順次発売されていく。DDR3メモリがLowボルテージ仕様なため,チップ自体の発熱は増えたもののメモリ部分での発熱は少なくなり,さらに冷却システムの改良などにより,カード全体の発熱はかなり抑えられている。ファンの騒音もGeForceFX 5950 Ultraよりもむしろ低くなっているという。
 GeForce 6800 Ultraではカード上に2個の電源コネクタを持っているほか,PCの電源ユニットも480Wが推奨されているなど制限が厳しくなっている(しかしノーマル版やPCI Express版では,カード上の電源コネクタは1個になっている)。
 そのぶん描画性能は圧倒的で,現状のゲームでは相当解像度を上げても負荷はかなり低いままだろう。GeForce6シリーズで拡張された機能を使いこなせば,さらに負荷を減らしながら高度な描画処理ができる。
 中でも,会場で撮影不可ということで公開されたUnreal3エンジンのデモは圧巻だった。GeForce6の開発時から協力しているというだけあって,デザイン時は2億ポリゴン級で作成された荒廃した街並みデータやキャラあたり200万〜600万ポリゴンという精緻なモデリングデータをプリプロセッシングで1万ポリゴン程度にしたというキャラクターが,リアルなライティング,自然な影,滑らかなモーションで動き回る。GeForce6の底力を見せつけるものだった。GeForce6時代のゲームに大いに期待したい。


(右)NVIDIAデスクトップGPUハイエンドプロダクトマネージャ,スティーブン・シムズ氏

(左)画面右端にチラリと写っているが,これはPentium4 エクストリームエディション 3.4GHz+GeForce 6800 Ultraでの結果。おそらくはなんらかのクロックアップがなされているもののようで,Eliteの技術者が送ってきたとのこと

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