[E3 2004#073]開発が軌道に乗り始めたMMORPG「Warhammer Online」 | - 2004/05/15 18:34 |
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「The Matrix Online」の陰に隠れて大きな話題にはなっていないが,E3が開催されたロサンゼルス時間で5月12日朝に行われたセガ オブ アメリカの発表会でも,同社がサービスを手がけるMMORPGとして紹介されている。ヨーロッパではSega of Europe社が本作をプロデュースすることが決定しており,日本でのサポートは未定であるものの,すでに日本語ほかフランス語,スペイン語,ドイツ語,イタリア語,中国語への対応も決定している。 セガのブースではムービーしか流れていなかったものの,Climax社とボードゲーム「Warhammer Fantasy Roleplaying」の元締めであるGame Workshop社が小さな個室を用意しており,そこで最近の事情を聞いてきた。 Warhammer Onlineの詳細は,情報としては古くなってしまっているが,先述の[インタビュー記事]で確認してほしい。ボードゲーム版の,実世界と非常によく似た大陸のベルギーあたりのごく一部がPCゲーム化されたに過ぎないが,それでも実測で400平方kmという広大な地域には,建物が1000戸近くひしめき合う巨大都市が三つ,100戸単位の町や10戸単位の村が無数に存在している。この地域は,ブリトンとエンパイアの二大勢力が抗争を続けており,南部からはオークも侵攻してきているという世界観だ。 ボードゲームのために制作されていたという地域マップに則って地形がレンダリングされていて,丘陵や谷間など起伏のある場所でも町や村が形成されている。現在発売されているほとんどのゲームでは,町は平地にあるか山岳部でも平坦な場所に家が立っているものだが,Climax社は坂道に沿って広がる家々を一つ一つを手作業で設置するという職人気質を見せている。 そういう頑固なこだわりは,例えばプレイヤーキャラクターのネーミング一つにも現れている。なんと,アカウントホルダーは自分で好きなキャラクター名を付けることができず,ジェネレータによって種族と性別に合わせたものから選択するという方式を採用したのだ。かなりの英断だが,これは名前に差別用語や小説などキャラクター名,さらには記号や数値の入ったクラン名などが使われるのを嫌った処置。プレイヤーに自分の個性や世界観を持ち込んでもらうのではなく,Warhammerの世界で目一杯楽しんでもらうために選んだ仕様なのである。 さらにWarhammer Onlineの開発者達は,キャラクターの頭上に浮かぶ名前や文字も毛嫌いしているようで,プレイヤーキャラクターや町のNPC,モンスターに関係なくアイデンティティや色分けによるレベル表示はいっさいない。 それでは攻撃するべきモンスターが,自分より強いのか弱いのかさえ分からないと思う人もいるだろうが,開発者は「それは現実世界だって同じこと。チェーンメールを着込んだ筋肉隆々の男には,相当な自信がなければ喧嘩をふっかけようとは思わない」と話す。つまり,敵やモンスターも,それぞれの体格や防具,武器の見た目で判断して戦うことになる。「上半身が裸でエプロンを付けている男が炉の前に立っていたら,わざわざ表示しなくても鍛冶屋だというのが分かる」とデモの担当者は言うのだ。 この,不必要な数字や文字を画面上に出さないという仕様は,プレイヤーのインタフェースでも統一されており,通常のインジケータ以外に数字でヘルス値を表すということはしない。それどころか,魔法もボトルから液体でマナを体内注入するのではなく,世界中に満ち溢れている目に見えないカオスの力を引き出して利用するというアイデアを採用。使いすぎると魔の汚染によって精神的/肉体的にダメージを受けたり,怒った魔界の悪魔が出現したりすることになる。 キラキラと輝くパーティクル効果で彩られた不自然な魔法もなく,「紫やピンク色の光を放つ魔法なんて登場しない」と断言する開発者の目は,笑いが浮かびながらも真剣である。Warhammer Onlineは,美しい容姿のキャラクター達が団らんする場所ではなく,血と汗にまみれて戦う非常に男臭いMMORPGなのである。 ここまで読んで想像できるだろうが,Warhammer Onlineの戦闘は相当に残虐なようだ。金属が叩きつけられる音と共に血しぶきが舞い,死体の周囲にはどす黒い血のプールができる。 プレイヤー vs. プレイヤーもほとんどの地域で可能になっているのは,Warhammerの世界では種族や陣営以外にも職種による対立もあるからだ。例えばウィッチハンターは街中であってもカオス・オブ・カルトを付け狙うなど,相性が悪い職業のキャラクターには,その目的達成のためにペナルティを与えることはしないらしい。こうすることで,同業者が寄り集まって助け合う本来のギルドが,自然に形成されていくだろうという目算もあるそうだ。 Warhammer Onlineは,順調にいけば2004年末か来年早々にはβテストへと突入。来年の夏頃には正式なサービスが開始されるとのことだ。硬派なMMORPGゲーマーお気に入りの一本になるのではないだろうか。(奥谷海人) →「Warhammer Online」のインタビュー記事は「こちら」,記事一覧は「こちら」 © Copylight Games Workshop 2004 |