[E3 2004#149]「Half-Life 2」のムービーを細かく解読! - 2004/05/20 16:29


 E3も終わって一息ついた頃なので,ここでもう一度forGamerで撮影した「Half-Life 2」ムービー(ファイルは「こちら」,高解像度版は「こちら」)を検証し,あと数か月で発売される予定の本作に迫ってみる。
 どうしても聞き取れない部分やBGMで消されてしまって解釈のできない英語もあったが,G-Manなど登場するキャラクター達が何を言っているのか,どのような目的で特定のクリップが紹介しているのかが大体分かるようにしたつもりだ。多少の誤訳や偏った解釈は多めに見ていただきたい。まずは,Vivendi版のムービーから。(奥谷海人)

●G-Manに叩き起こされるフリーマン

 G-Manのアップと共に始まるオープニングのセリフ。2003年のムービーと同じく背景が黒で,少し緑がかった照明が当てられている。ときおりインバース効果で色彩が反転するようなことがあるが,それは何を意味しているのか?
 G-Manのセリフは,以下の通りだ。

G-Man:
Rise and shine, Mr. Freeman. Rise and shine. Not that I have a mission to invite you having been the sleeping one but the job......no one is more deserving for the rest and all the effort in the world would gone to the waste until ...... well, let's just say your (…) hasn't come again. So, wake up Mr. Freeman. Wake up and smell the ashes.

和訳:
 起きてくださいよ,ミスター・フリーマン。あれだけ活躍したのだから休息は当然のことでしょうし,あなたがお休みになっているときに来なくちゃいけない任務があるわけでもないのですが,このままではすべての努力が無駄になってしまいます。……あなたの(永眠の?)時間はまだ来ていないとだけでも言っておきましょうか。さあ,起きてくださいよ,ミスター・フリーマン。起きて灰の匂いを嗅いでくださいな。


 技術的には,ここは身の毛もよだつようなG-Manの表情の動きが1分ほど紹介されている部分だ。G-Manとオーバーラップするように,何か高圧電流の走る巨大装置が映る。セリフとこのイメージから想像するに,前作から10年間は,フリーマンは何らかの永眠装置で仮死状態にあったのかもしれない。この推測は,ATI社のブースで見せていたムービーにあった,博士イーライの「君は全然変わっていないね」というセリフとも一致する。
 とにかく前作の惨事以降,地球は収拾のつかない事態に見舞われており,再びゴードン・フリーマンが必要とされているといったところだろう。「起きて灰の匂いを嗅いでください」とは,他人事のようであり強烈なメッセージである。



●新キャラクター,ドクター・ブリーンとは?

 この後,G-Manのシーンは列車のシーンにフェードイン。G-Manは回想だったのか,直前まで夢を見ていたのかは分からない。駅へ降り立つのは,確実に前作のブラックメサのモノレールをオマージュしたのだろう。駅に降り立つと,いきなり浮遊型のセキュリティロボットによって撮影される妙な世界。なんとなく普通でないのは確かである。
 駅構内では,いくつも掲げられた巨大スクリーンに初老の男が映し出されている。ドクター・ブリーン(Dr. Breen)という,これまで発表されてこなかった謎の男だ。ドクター・ブリーンのセリフは,どこか映画「トータル・リコール」を連想させる。

Dr. Breen:
Welcome! Welcome to City 17. You have chosen, or been chosen to relocate to one of our finest (……) urban cities. I am fond so much of this City 17 so that I'm reluctant to establish my administration here, in the citadel so thoughtfully provided by our benefactor... I've been proud to be close to City 17 my own. So, why don't you want hare to stay, passing through (……) to parts unknown? . Welcome to City 17. It's safer here.

和訳:
 ようこそ! City 17にようこそ! あなたは,我々の最良の都市に移住することを希望したか,移住するよう選択されたのです。私もこのCity 17が大好きですので,ここから遠くない場所にあるシタデルに,我々の後援者が提供してくれた私の本部を設置したのです。City17の近くにいることを,私も誇りに思っています。さあ,ここから出て行く理由なんてありませんよね,ここを通って未開の地に行くなんて。ようこそCity17へ。ここは,より安全な場所です。


 ドクター・ブリーンのセリフは,明らかにプロパガンダである。それは,駅を歩き出して早々,銃を携帯した覆面部隊のコンバイン・アーミーが,同じ電車に乗っていたと思われる人の荷物検査をしていたり,えらそうに小突き回していることからも分かる。
 このCity 17は,第二次世界大戦中のユダヤ人居住区を思わせるもので,このCity 17で権力を振るうドクター・ブリーンとコンバイン・アーミーは,強権政治そのものだ。コンバインというのは,"連合"という意味の単語。英語を話し,身振りや素振りが人間的なことから,エイリアン種ではなさそうだ。人口の減った世界諸国が連合して一つの軍隊を築いたのか? そもそも,ブリーンの言う「我々の後援者(保護者)」というのは,何者なのだろう?

 待合室へ進むと,机にうなだれているNPCがいる。「飲み物に薬を混入されて,ここに来るまでの記憶がない」などと言っている。スケジュール表を唖然と見上げては,考え込んでいるような人もいる。プレイヤー同様,何がどうなってCity 17にやって来たのか理解できていないようだ。
 そしてさらに,フェンスで覆われたセキュリティ・チェック。コンバイン・アーミーに促されて中央に進むと警報が鳴る。脇の個室に連れていかれる途中,尋問されて「これは何かの間違いだ」と騒いでいる人がいる。さらに奥に入ると,開いた部屋の中には歯医者にあるような不気味な椅子が。そして,床には血が滴っている……。

 ここまで来ると,プレイヤーは自分が歓迎されていないのが分かる。ドクター・ブリ―ンとコンバイン・アーミーは,この都市を外敵から守って平和を維持する守護であり,同時に人々から憎まれている独裁政権なのだろう。フリーマンは,この時点ではピストルもカナテコ(バール)も持ち合わせておらず,まだ戦闘できる態勢ではない。ここまで4分弱でオープニングシーンは終わる。



●物理エンジンがゲームに生かされた新しいスタイル

 二つめのシーンは,ダムのような大きな湖が目下に見える道路を,バギーに乗って疾走しているものだ。道路にはコンバイン・アーミーが設置したという青く光る球体が落ちており,これがバギーに引っ付いて走行不能となる。
 プレイヤーはまずカナテコでこの二つをダムの底に突き落とすが,この吸盤付きの球体が何をするものなのかは不明。プレイヤーにまとわりついて来るが,ヘルスも2ポイントしかダメージを受けていない。
 そして,ここからが物理エンジンの力の見せどころ。プレイヤーはマニピュレータ(Manipulator)と呼ばれる,特定の物体を引っ付けては遠方に飛ばす武器を持ち出して,谷間に落ちそうになっているバギーを救う。バチバチと強力に突き上げて道路上に戻すが,かなりトリッキーな操作に見える。
 さらに進むと,敵の検問所のような場所に到達する。ここでは,コンバイン・アーミーではなくコンバイン・ガードと説明されていたが,その違いは明確ではない。ここでは5人程度の敵を相手に戦い,かなり激しい銃撃戦となる。またしても二つの球体がまとわりついて来るが,ここでもマニピュレータの使用が重要。球体は銃で撃っても破壊できないようで,マニピュレータで球体を引き寄せては敵に投げつけたり,バギーを押して後方の敵を押し潰したりする。こういう環境を使った戦い方が,Half-Life 2では焦点となりそうだ。

 建物の中に入っても,机をはじき飛ばして敵を圧殺したり,木箱を吸い付けて窓ガラスを割ったりという行動を頻繁に行っていた。球体は,ついにドアを閉めて近づけないようにする始末。こいつはマップの最後までついて来る気なのだろうか?
 そしてさらに,青い光線を放つグラビティ・ガンも登場。どういう科学的根拠に基づいているのか不明だが,敵を青い光に包んで蒸発させてしまうような効果がある。このほかにこのマップで確認できた武器は,コンバイン・アーミーと同様のマシンガンと,最後に一瞬だけ現れたピストルだった。
 この戦闘シーンのあとは,水陸両用の一人用ホバークラフトに搭乗。水路か河川を,障害物をよけながらひたすら走る。両岸から時折発射されるロケットや,水雷を落としてくるヘリなどに注意しながら,油の流出で通れなくなった場所を回避するために,横の鉄板を利用してジャンプするという簡単なパズルも見られた。



●戦う聖職者,ファーザー・グレゴリーとの出会い

 いきなり,男との会話で始まるシーン。すでに名前が公表されているファーザー・グレゴリー(Father Gregoli)に違いない。場所は,彼の会話とATI版のムービーから,レイヴンホルムというという町であるのが分かる。どういう状況かは把握できないが,すでにストーリーの中盤に差し掛かっているようだ。

Father Gregoli:
Greetings, Brother! And so we meet at last. You are to be commended for avoiding my traps... well... work of a man who want to have too much time on his hand, and Al Einstein for nothing but the work of salvation. I suspect you have little wish to remain in Ravenholm, so I'll show you to the mine. Follow me brother, and travel light for this is a high-load ground.

和訳:
 初めまして,兄弟よ! ようやく会えましたね。私が仕掛けた罠の数々を避けてくるなんて,賞賛に値しますな。あの罠も,時間稼ぎがしたくて,そして救済のためにアインシュタイン(のような頭脳)を無駄に使っている男のやったことなのです。このレイヴンホルムの町に長居をしようとは思っていないでしょうから,炭坑への道筋をご案内します。私について来なさい,兄弟よ。この先はいろんな物が埋まっていますから,なるべく軽装でね。



 その口調はかなり気さく。City 17のコンバイン・アーミーに保護されていない地域を,彼とその一派で必死に守っているのだろうか。ハッキリと確認できないが,胸に十字架のようなものをぶら下げていることから,本物の聖職者なのだろう。ショットガンを振り回して話すのがいただけないが,これも時流である。
 フリーマンがレイヴンホルムの地にやってくるという情報は,前々から伝わっていたのだろうか? イーライやアレックスと同じく,彼もまたコンバイン・アーミーや第3の敵から自由を勝ち取るために戦っているのは間違いない。彼は,しばらくの間フリーマンのサイドキックとなり,おそらく目的地へと到達するのに必要な炭坑への入り口まで進んでいくのだろう。
 途中,フェンスに掛けられた板を飛び降りるときにカクっと止まる部分があるが,前作同様マップはかなり細かく分けられているようだ。その奥で登場するモンスターは,まるで猿のような速さで突っ込んでくるゾンビ。正式名称はなく,単に"ファースト・ゾンビ"とだけ呼ばれている。たった1分のシーンだが,ストーリーの前後はかなり把握できる内容だ。



●ストライダーとの闘争

 昨年も公開された三本足のストライダーとの戦闘場面だが,今回は夕暮れで,異なるシーンのようだ。ストライダーの実態は非常に分かりにくい。異世界のクモのようでもあるが,コンバイン・アーミーと同系統のマシンガンを腹部に装着している。仲間達の叫び声や,金属やコンクリートがひずみ会う音,激しい銃砲が繰り返され,混沌とした様子が伝わってくる。
 ここで気になるのが,さきほどとは異なるグラビティ・ガンで,赤い光に包まれたNPC達の様子が写し出されるシーン。良く見ると,向かいにあるビルからロケット砲が発射され,プレイヤーのいたビルの支柱が破壊されているので,このグラビティ・ガンは,遠方の敵を重力で吸い付け,近くまで持ってきて蒸発させているのだろうか? 2色のグラビティ・ガンの性能は異なるようだ。

 プレイ画面はここで終了。また,G-Manのモノローグに入るが,かなり奇妙な内容だ。

G-Man:
That's all for now. The right plan and the wrong place can make all the difference in the world. I will see you up again......

和訳:
 今のところはここまで。悪い場所でも良い計画を持っていれば,結果も大きく違ってくるものです。また,あなたが起きるのを楽しみに……。



 これは,E3デモのために特別に作られたものだろうか? でなければゲームのエンディングとなるはずだが,それをココで紹介するはずはないだろう。ただ,Half-Lifeシリーズは3作めまで続くのは事実。
 何か,もったいぶった余韻で終わるのが,さらにHalf-Life 2について知りたいと思わせる。(奥谷海人)

→E3 2004で公開された「Half-Life 2」のムービーは「こちら」,高解像度版は「こちら」
「Half-Life 2」の記事一覧は,「こちら」


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