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Access Accepted第683回:40年以上も続くゲーム業界の慣習 〜 開発者が隠した「イースターエッグ」
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印刷2021/04/12 12:00

業界動向

Access Accepted第683回:40年以上も続くゲーム業界の慣習 〜 開発者が隠した「イースターエッグ」

画像集#001のサムネイル/Access Accepted第683回:40年以上も続くゲーム業界の慣習 〜 開発者が隠した「イースターエッグ」

 ゲームを熱中してプレイしたあと,何か新しい情報はないかと攻略掲示板やSNSなどを見ていて,「イースターエッグを発見した」というような書き込みを見つけたことはないだろうか。“イースターエッグ”は,春の宗教的行事である復活祭(イースター)で利用されるシンボルである卵を由来とする,ゲーム開発者たちのお遊びのようなものだ。40年以上も続く慣習であり,中には誰にも暴かれなかった壮大な仕掛けも存在する。


イースターエッグの意味とその歴史


日本ではあまり馴染みのない,ホンモノのイースターエッグ。エッグハントにウサギのモチーフが使われるのは,このたまごを運んでくる使者であるらしい
画像集#002のサムネイル/Access Accepted第683回:40年以上も続くゲーム業界の慣習 〜 開発者が隠した「イースターエッグ」
 ゲーマーなら,一度や二度は「イースターエッグ」という言葉を聞いたことがあるはずだ。イースターは,キリストが亡くなって3日目に目を覚ましたという故事にちなんで,“春分の日の後の,最初の満月の次の日曜日”に行われる復活祭のこと。キリスト教徒が多い国ではクリスマスと同等に重要な意味を持つ祭事である。
 そんな祭事が中世のイギリスで娯楽化し,庭や公園の茂みに大人が置いた幾つものゆでたまご(イースターエッグ)を,子供たちが見つけ出すという「エッグハント」と呼ばれる遊びが生まれた。

 ゲームにおけるイースターエッグは,開発者たちが隠した何かしらの隠し要素のことだ。エッグハントの遊びに見立てイースターエッグと呼ばれるようになったという。
 ゲーム開発者のちょっとしたお遊びであり,次作につながるヒントや内輪ネタもあれば,ゲーム世界とは全く関連のないものも少なくない。最近ではSNSの発達により,より多くのゲーマーたちにイースターエッグの情報が共有されることも多くなった。

 イースターエッグとは呼ばれなくとも,日本でも昔から隠しコマンドやアイテムのようなものは数多く存在している。それらは,プレイヤーが発見することを意図して用意されることが多いが,「イースターエッグ」はプログラマーやアーティストが上司の許可なくイタズラでこっそり潜ませている場合が多く,そのために広報されることもないまま,誰にも気付かれることなく存在そのものが忘れられていくこともある。
 もっとも古い例では,1979年にAtari 2600向けに開発された「Adventure」という作品に,白い壁のピクセル1つだけが薄い灰色になった部分をクリックすることで到達できるという隠し部屋があり,そこに入ると「Created by Warren Robinett」(ウォーレン・ロビネットが開発しました)という文章が現れるというものだった。当時はまだ開発者の名前をクレジットするという文化がなかったため,こうした形で自分の名前を残したらしいが,4Kバイトしかないメモリーの5%をこのために使用していたとロビネット氏は後のインタビュー(関連リンク)で述べており,もし在任中に見つかっていたら問題視されていたかも知れない。

ゲーム業界最古のイースターエッグと言われる「Adventure」の隠し部屋
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 実際,決定権のない開発メンバーの独断によりイースターエッグが仕込まれ,それが元で解雇されたという例もある。1996年にMaxisがリリースしたシミュレーションゲーム「SimCopter」のプログラマーだったジャッキ・サーヴィン(Jaques Servin)氏は,地元のバークレーでオープンに活動するゲイ・アクティビストであり,自分やパートナーの誕生日に特定のミッションをこなすといったいくつかの条件が重なることで,目下の道路にビキニパンツだけをまとった男性キャラクターたちがあふれ,手をつないで踊り始めるというイースターエッグが仕込んだ。プレイヤー自身もヘリコプターを着陸させて機外に降り立ち,キスしたりできるという中々の規模のものだった。
 しかし,「SimCopter」がヒット作となり,多くのプレイヤーがアンロックしてしまったことで,「E レーティング」(誰でもプレイ可能)ではあるまじき問題となってしまったことで,結果としてサーヴィン氏は解雇された。
 ゲームにおける暴力や性表現が問題視されて,ESRB(Entertainment Software Rating Board)という評価システムが誕生したばかりという時代背景もあり,そうした判断をくだしたのかもしれない。Maxisは人権団体から不当解雇の抗議を受けてサーヴィン氏に再雇用を打診したものの,彼自身はその後,別の道を選んでいる。

筆者には思い出深い「SimCopter」だが,このイースターエッグに出くわした記憶はない。ビキニパンツの男たちは,今でも日本のお笑い番組でよく見かけるが,オープンなイメージなアメリカで問題視されたことも興味深い
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4Kリマスター版がイースターエッグに?


 業界を巻き込む大問題に発展したイースターエッグとしては,2004年にRockstar Gamesがリリースした「グランド・セフト・オート・サンアンドレアス」“Hot Coffee MOD問題”も触れておきたい。当連載の古くからの読者であれば,「第44回: セックススキャンダルを仕掛ける男」関連記事)などで話題にしたこともあるので記憶にあるだろうが,ゲーム中で「ホットコーヒーはいかが?」と聞いてきた女性の誘いに乗ると,ベッド上や屋外で性行為を模したミニゲームを体験できるという,とんでもないイースターエッグの存在が明らかになったのだ。
 PC版でアマチュアが作成した専用MODをさらに改造する必要があり,それを見るためのハードルは少々高い。一方のコンシューマ機版では一般的なゲーマーが,そのイースターエッグにアクセスするのはほぼ不可能だったのだが,発覚後にESRBでアダルトオンリーの「AO」レーティングが一律で課されてしまい,パッケージ版は販売店舗から一時的に姿を消した。
 親会社であるTake-Two Interactiveの株価は大きく落ち込んだものの,結果として「グランド・セフト・オート・サンアンドレアス」は「PlayStation 2プラットフォームで最も売れたゲーム」という輝かしい記録を打ち立てたうえに,その後の「グランド・セフト・オート」シリーズの評価がうなぎ登りになったのは,皆さんもご存知のとおりだ。

開発者たちが内輪のジョークとして作り出したものが残されたままになっていたという「グランド・セフト・オート・サンアンドレアス」のミニゲーム“ホットコーヒー”だが,その問題の発覚により日本語版のリリースも延期された
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 最新作(と言っても2014年発売だが)の「グランド・セフト・オート V」は,もはやどこに行ってもイースターエッグが隠されているほどで,「ノーカントリー」や「シャイニング」などの名作映画をネタにしたものや,チュートリアルで川の中に凍て付いたエイリアンがいたり,さらにはプレイヤー自身がビッグフットになってプレイできたりなど,もう「「イースターエッグを探してください」と言わんばかりの状況になっている。
 「グランド・セフト・オート V」のみならず,「アサシンクリード」「ボーダーランズ」など自由に探索できるタイプのゲームは,こうしたイースターエッグがてんこ盛りだ。

「ボーダーランズ 2」にあった,マインクラフト風ダンジョン。こういうジョークは,開発チームとゲーマーに一体感をもたらす効果があるだろう
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 それでも,誰にも知られず,張本人のゲーム開発者から公表されることもなく,長い時間を経て忘れられていくイースターエッグは数多く存在するはず。4月4日,今年(2021年)の復活祭の日程に合わせて,Vlambeerのゲームデザイナーであるジャン・ウィレム・ナイマン (Jan Willem Nijman)氏が,自身のTwitter(関連リンク)で「今まで隠し込んだイースターエッグを教えてよ」と呼び掛けたところ,同業者たちから何百もの返答があり,有名な作品では「ディビジョン」における,ピザと日本刀を使ったニューヨークのヒーロー「ティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズ」のオマージュ(関連リンク)や,「ドラゴン・エイジ 2」の屋外に配置された巨大チーズの存在(関連リンク)などが紹介された。

 中でも,ゲーマーたちを驚かせたのが,Crytekに在籍していたというイギリス人プログラマー,マット・フィリップス(Matt Phillips)氏の書き込み(関連リンク)だ。その内容は2016年にリリースされた「Homefront: The Revolution」のマップ内に設置されたアーケード機で,2002年にEidos Interactiveがリリースしたコンシューマ機専用シューティングアクション「Time Splitters 2」4Kリマスター版がプレイできると告白したのだ。さすがに最適化まではされなかったようだが,それでも未発表の4Kリマスター版が存在しているというのは凄まじい。

「Homefront: The Revolution」は,「Time Splitters 2」の冒頭2つのチャプターがプレイできたことでSteam Awardsも受賞しているが,実は本編そのものも遊べたと言うから驚きだ。仕掛け人のフィリップス氏は,2018年にSEGAメガドライブ向けゲーム「Tanglewood」(関連リンク)を開発した,ちょっと癖の強いプログラマーらしい
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 元々,「Homefront: The Revolution」のシングルプレイキャンペーンで,「Time Splitters 2」の冒頭をプレイできることは知られている。今回明らかになったイースターエッグは,専用サーバーのCo-opモードマップで2つ以上のアーケード機のハッキングに成功すると,マルチプレイモードのメニューに完全版が表示されるというものらしい。
 残念ながら,「Homefront: The Revolution」には当初予定されていたマルチプレイ用の専用サーバーが用意されることがなかったため,そのままアーケード機に打ち込むためのコードが記録されていたパソコンは処分されたそうだ。そのためアーケード機をハッキングするのはほぼ不可能となり,誰も知らないまま埋もれつつあった,まさに幻のイースターエッグだった。

 ところが,フィリップス氏がTwitterでこの情報を発信したあと,さっそくゲーマーが「Homefront: The Revolution」を解析して,そのコードはあっさりとクラック(関連リンク)。明らかになったコードがまとめられて(関連リンク),見事に「Time Splitters 2」4Kリマスター版をプレイできるようになっている。作り手の遊び心や過去の作品に対する思いが,このような形でゲーマーに提供され,しかもゲーマーたちが難題をあっさりと解き明かしてしまうというのも,ゲームというメディアの楽しさの1つではないだろうか。

著者紹介:奥谷海人
 4Gamer海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年の開始以来,4Gamerで最も長く続く連載記事。欧米ゲーム業界に知り合いも多く,またゲームイベントの取材などを通じて,欧米ゲーム業界の“今”をウォッチし続けている。


来週2021年4月19日の「奥谷海人のAccess Accepted」は,筆者取材のため休載します。次回の掲載は,4月26日を予定しております。
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