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Access Accepted第716回:ウクライナ侵攻でゲーム業界はどう動いたか?
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印刷2022/03/07 12:00

業界動向

Access Accepted第716回:ウクライナ侵攻でゲーム業界はどう動いたか?

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 2月24日に開始したロシアのウクライナへの軍事侵攻も,本稿が掲載される時点ですでに2週間目となる。現在,多くの市民の犠牲が報じられるなどしているウクライナにもゲームデベロッパは少なからず存在するし,ゆかりのある業界関係者も少なくないが,この大きな危機に瀕して寄付をしたり呼び掛けたり,自身を含む近辺を報告したりとさまざまな形で手が差し伸べられている。



東欧のゲーム開発の先駆者だったウクライナの危機


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 これまで,国境沿いに軍隊を集結させ,派手な演習を行ったりするなど,踏み込んだ軍事行動を何週間にもわたって行ってきた末,北部,東部,そして南部の海沿いからロシア軍が一斉にウクライナへと侵攻を開始したのは日本時間の2月24日のこと。侵攻は今なお続き,激しいウクライナの抵抗や各国の経済制裁の発動などが行われ,本原稿の執筆時点でも緊張具合は高まっている。

 ウクライナには少なくない数のゲーム会社が存在する。ソビエト体制の崩壊後にウクライナの地で初めて商業的なゲーム開発メーカーとして登場したのが,1993年に設立されたMeridian'93で,国内リリースのみながら「Admiral Sea Battles」でデビュー。その後,2作品をリリースしており,その経験が認められて多くのメンバーはCreative Assembly Australiaに引き抜かれ,2006年の「メディーバル2:トータルウォー」以降の作品に関わっているという。

ゲーム業界と直接関係はないものの,著名作家のスティーブン・キング氏。「いつもは自分の写真を投稿しないけど,今日は特別だ」とウクライナのTシャツを着て登場。(画像は自身のTwitterアカウントより転載)
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 おそらく,ウクライナで最も有名なゲーム会社と言えるのが,1995年にキエフに設立されたGSC Game Worldで,2001年のRTS「Cossacks - European Wars」で世界的にも注目を浴び,さらにNVIDIAからのたった9万ドルの資金援助で生み出したのが,2007年の「S.T.A.L.K.E.R.: Shadow of Chernobyl」だ。
 1人称視点のオープンワールド型のサバイバルシューティングというゲーム性だけでなく,それまでのシューターでよく見られたサバサバした雰囲気とは大きく異なる,どこかジメっとした湿度と寒気が漂うような独特の世界観は,日本でも大きな話題になった。これに触発されて,ロシアやポーランドなど東欧諸国でも盛んにゲーム開発が行われるようになり,最近では秀逸な作品が次々とリリースされているのはご存じのとおりだろう。
 このGSC Game Worldが経営危機に陥った際に,開発者たちが分裂して立ち上げたのが,「Metro Exodus」の4A Gamesや,「Survarium」のVostok Gamesだが,このほかにも「The Sinking City」で名を馳せたFrogwaresや,2016年以降,「Assassin’s Creed」や「Far Cry」などAAAタイトルの開発サポートを行ってきたUbisoft Ukraine,さらには「World of Warplanes」を開発したWargaming Kievといった各メーカーの開発拠点が存在。現在,国内では2万人ほどの人がゲーム開発に従事し,年間2億ドルほどの利益をあげているという。

 ロシアの侵攻開始に際していち早く声を上げたのが,ウクライナ国内のメーカーたちだ。この3月1日で創設10周年を盛大に迎えるはずだったVostok GamesやGSC Game Worldは,「ウクライナ軍に援助してください」というツイッターメッセージを侵攻が始まって間もない頃に呼びかけており,Vostok Gamesは,これとは別に30万フリブニャ(約116万円)ほどを寄付したことをアナウンスしている。残念なことに,発売が近づいていたGSC Game Worldの「S.T.A.L.K.E.R. 2: Heart of Chernobyl」については,その発売は延期必至が現状になってしまった(関連記事)。
 また,ポーランドを拠点にする11 bit studiosについては本誌でもニュースで伝えたとおりだが,同社のサバイバルストラテジー「This War of Mine」の全てのプラットフォームとマーケットプレイスで販売される,全DLCを含める売上すべてをウクライナ赤十字に寄付することを発表。2014年にリリースされた古いゲームであるものの,1週間で71万5千ドル(約827万円)が売り上げられたことをアナウンス(外部リンク)している。



戦災に巻き込まれる仲間たちも出てきたゲーム業界が声を上げる


 11 bit studiosが拠点とするポーランドはウクライナと国境を接し,今回の紛争においても数十万の単位で戦火を逃れた人たちを受け入れている。NATOにとっての最前線であることもあり,ウクライナで発生している問題は当然,他人事ではない。実際,多くのゲーム開発者が両国を行き来しているが,サバイバルアクション「Last Oasis」で知られるDonkey Crewにもウクライナ国籍のマックスさんらが在籍しており,3月1日にYouTubeに掲載されたメッセージ映像で,彼の生まれ故郷が侵攻初日に攻撃を受け,彼の実家が破壊されてしまったことなど,多くの市民が巻き添えになっていることを訴えている。


 また,Wargamingがウクライナ赤十字に100万ドルの寄付を行うことをアナウンスした(関連記事)。同社は10年前からキエフに支部を抱えており,550人ほどいる従業員やその家族らに対し,転居の支援や給与の早期支払いを行うことを表明するなど,全面的なサポートをアナウンスしている。Wargaming Kievもまた,3000万フリブニャ(約1億1600万円)を別口でウクライナ赤十字に寄付したという。
 これまで「World of Tanks」をはじめとするオンラインゲームをヒットさせてきたWargamingは,ロシアとは軍事的同盟関係にあるベラルーシに誕生したメーカーであり,税務上の恩恵の高いキプロスに本社を置くものの,その本拠はベラルーシの首都ミンスクにあることは,以前に筆者が取材したとおりである(関連記事)。“ヨーロッパ最後の独裁国”と揶揄されるほど統制の厳しい国で政府の思惑に反して,ウクライナの従業員とそのほかの被災者たちの保護活動を行うことができているわけだ。一方で,ロシアのドネツク地方侵攻を支持するメッセージを個人のFacebookで公開した同社のクリエイティブ・ディレクターを解雇するといった難しい対処も行っている。

Wargaming Kyivでは,「World of Warplanes」の開発や運営を担当していたという。同じキエフに存在する「S.T.A.L.K.E.R.」シリーズのGSC Gaming Worldなど,現在ゲームの開発や運営ができない状況になっているどころか,彼ら自身の命も危険に晒されている
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 もちろん,このほかにも多くのメーカーが支援を表明しているので,以下,本原稿執筆時点で分かっている限りのメーカーの動向をまとめておこう。

4A Games
 税務上はマルタの企業となっているが,開発母体がキエフにある4A Gamesは,家族や友人の安全を優先することを表明した。

Frogwares
 侵攻開始時には「Sherlock Holmes Chapter One」のPlayStation 4への移植作業を行っていたというFrogwaresだが,3月2日には銃を持った人がオフィスの外を走る姿など,連日キエフの現状を克明にFacebookTwitterで伝えている。

Raw Fury
 スウェーデンのRaw Furyは,ウクライナ赤十字に寄付を行い,同国の人道支援を発表。他のデベロッパも同様の対処を行うよう促した。

CD Projekt RED
 ポーランドのCD Projekt REDは,「我々の友人であり隣人であるウクライナで起きていることに驚きと怒りを感じます」とし,ポーランドに逃げ込んだ避難民の援助として100万ズウォティ(約2675万円)をPolska Akcja Humanitarna(Polish Humanitarian Action)に寄付したことを表明

Techland
 「ダイイングライト 2: ステイヒューマン」の開発元であるTechlandも,ウクライナ出身の開発メンバーやその家族への対応を優先していたことを述べつつ,Polska Akcja Humanitarnaへ100万ズウォティの寄付を発表している。

People Can Fly
 最近では「Outriders」で日本での知名度も一層高くなったポーランドのPeople Can Flyも,同じくPolska Akcja Humanitarnaへ100万ズウォティの寄付をアナウンスした。

NaVi
 ウクライナのeスポーツチームNaVi(Natus Vincere)のチームマネージャーであるヤロスラブ・クロチュコ(Yaloslav Klochuko)氏は,ベラルーシ出身ながら「ウクライナが第2の故郷」であるとツイートし,戦禍にありながらもウクライナとロシア出身のチームメイトがポーランドで25日に行われたイベントに出席したことを讃える一方で,ロシアのスポンサー企業ESForceとの提携解消をアナウンスした。

Hinderland Games
 カナダのHinderland Gamesは,会社名義,そしてCEOであるラファエル・ヴァン・リーロップ(Raphael Van Lierop)氏の個人名義を合わせて,合計で12万5000カナダドル(約1145万円)のウクライナ赤十字への寄付を発表

Crytivo
 アメリカのカリフォルニア州を拠点にする新興パブリッシャのCrytivoは,2月と3月に得た同社の収益全額を,ウクライナ赤十字に寄付すると発表。同社を率いるのはロシア出身のアレックス・コシェルコフ(Alex Koshelkov)氏。

State of Play
「Lumino City」や「KAMI 2」,「South of The Circle」,そして「INKS」などで知られるイギリスのState of Playは,11 bit studiosに倣い,Apple App Store,Google Play,Steamで得た1週間分の収益全額をウクライナ赤十字に寄付と表明

The Farm 51
 チェルノブイリ原発事件をテーマにした「Chernobylite」が最新作であるThe Farm 51も,同様に11 bit studiosに触発されたとして,各プラットフォームでの1週間分の収益全額を,ウクライナ赤十字に寄付へ(外部リンク)。

Amanita Design
 チェコを拠点にする独立系スタジオのAmanita Designも,「Machinarium」,「CHUCHEL」,そして「Creaks」で得た1週間分の収益全額を,ウクライナ赤十字に寄付すること発表

Crunching Koalas
 ポーランドのパブリッシャであるCrunching Koalasは,「Ruiners」や「Darkwood」,「This War of Mine」(Switch版)など同社の全ラインアップから得た1週間分の収益全額を,同様にウクライナ赤十字に寄付すること発表

Acid Wizard Studios
 ポーランドを拠点にユニークなホラーアクション「Darkwood」を手掛けたAcid Wizard Studiosは,3月8日までの2週間にわたっての同作で得られた全プラットフォームの収益全額を,Crunching Koalasとは別にウクライナ赤十字に寄付すると声明を出している。

Riot Games
 Riot Gamesは,Gambit,NaVi,FunPlus,Phoenixなど「VALORANT」の複数のプロチームがウクライナとロシアからの混在チームであることには配慮し,VCT EMEA Valorant第3週の開催を中止することをアナウンス。今後の予定の見通しは立っていない。
 また,3月12日までのバトルセールスのセールスから得られる収益を人道支援に寄付することをアナウンスするとともに、それとは別に100 万ドル(1億1500 万円)を、国際医療隊、国境なき医師団、ポーランド赤十字に献金することを発表している。

Digital Extremes
 「Warframe」で知られるカナダのDigital Extremesは,カナダ赤十字に,ウクライナ国内での被災者救済のため10万ドルを寄付したことをアナウンス

Ice-Pick Logde
 ロシアのモスクワを拠点に,サバイバルホラー「Pathologic」シリーズを開発するIce-Pick Lidgeが声明文を公開した。過去作品には5人の“ウクライナの友人”が関わっており,自分たちの立場を表明しておきたかったのだという。

Thunderful Games
 スウェーデンのパブリッシャ,Thunderful Gamesは「Steamworld Heist」と「Bridge Constructor」で得た1週間分の収益全額を,スイス・ジュネーブの赤十字国際委員会に寄付するとアナウンスしている。

Ubisoft Entertainment
 キエフに開発支部を持つ大手パブリッシャのUbisoft Entertainmentは,ウクライナ赤十字とSave the Childrenに合計20万ユーロ(約2565万円)を寄付(外部リンク)。ウクライナ国内の従業員とその家族へのサポートも明言している。

Embracer Group
 4A Gamesの親会社でもあるEmbracer Groupは,赤十字国際委員会,SOS Children’s Village,ACT Allianceなどの慈善団体に100万ドル(約1億1578万円)の寄付を発表。これとは別に,同社CEOのラース・ウィングフォース(Lars Wingefors)氏は,個人名義で100万ドルを上乗せすることをアナウンスした。

Bungie
 Bungie Foundationが「Destiny 2」のストリーミングなどを利用したコミュニティ参加型のチャリティイベント「Game2Give」で,12万ドル(約1390万円)の募金が集まる(外部リンク)。これらは,Voices of Children,Direct Relief,International Rescue Committeeを通してウクライナの被災者救済に充てられる。

Gaijin Entertainment
 ロシアを拠点にするGaijin Entertainmentだが,「War Thunder」はEU圏の運営になっているためサービスが中止することはないとWar Thunder_Japanのツイッターアカウントで表明し,「戦争はゲームの中だけで十分です。平和と安全を祈ります」と付け加えている。

HasanAbi
 Twitchで190万人のフォロワーを持つトルコ系アメリカ人の人気ストリーマーHasanAbiさん(外部リンク)が,「ELDER RING」でキルされるたびに10ドルを寄付するというチャリティを慈善団体のCAREと協力して開催。20分で上限となる10万ドル(約1158万円)に達し,さらに個人分の2万5千ドル(約298万円)を追加して寄付を行った。

Electronic Arts
 EA Sportsは,「ウクライナの人々と共にある」ことを表明し,「FIFA 2022」,「FIFA Mobile」,および「FIFA Online)からロシア国家代表およびロシアの全クラブチームを一時的に削除することをアナウンス。また,ホッケーゲームの「NHL22」では,ロシアだけでなくベラルーシの国家代表と全クラブチームが削除されることも発表。「Apex Legends」の大会「Apex Legends Global Series」の一時停止も発表されている。

Unity Technologies
 Unity Technologiesは,3月末までウクライナ在住のクリエイターを中心とした500種以上のアセット集をチャリティ販売(外部リンク)し,3月末にまで得た収益全額を,ウクライナへの人道支援に充てることをアナウンスしている。また,同社は62万3000ドル(約7200万円)を寄付するとのこと。

Bohemia Interactive
 チェコのBohemia Interactiveは「ARMA III」およびDLC「Laws of War」のバンドルパックを,今後2週間にわたってSteam(外部リンク)販売し,その収益を赤十字国際委員会に寄付すると公表

Think Trunk
 2018年に「Book of Damons」というハック&スラッシュRPGをリリースしているポーランドのThink Trunkは,3月8日までの収益全額を寄付することを発表するとともに,ロシア圏内では通常の10倍もの価格となる6,666ルーブルで販売するとアナウンス

DOOM II
 ゲームデザイナーのジョン・ロメロ(John Romero)氏が,「DOOM II」向けの新しいレベル「One Humanity」を開発し,5ユーロで販売した全収益を赤十字および国連中央緊急対応基金に寄付すると発表

Pokémon Company
 日本のゲーム企業の中では,Pokémon Companyが20万ドル(約2308万円)の人道支援をGlobalGivingに対して行うことを表明。被災しているウクライナのゲームコミュニティメンバーに直接寄付が届けられるよう手配しているという。

Supercell
 「Clash of Clans」などで知られるフィンランドのSupercellは,国連YNHCR 協会や国際赤十字への募金を公式ページを立ち上げてファンへのクラウドファンディングを行うとともに,募金で集まった同額(最大100万ユーロ(約1億2580 万円)まで)を合わせて寄付するとアナウンス

SEGA
 SEGAは,雇用者から寄付を募るとともに,企業としてその合計金額と同額分を合わせ,国連YNHCR 協会,国境なき医師団,War Child などへと寄付することを発表

各種プラットフォーム
  Microsoftは,ロシア国内でのセールスを停止することをアナウンス。これは,すでにAppleやGoogleなどの判断に同調する動きであるが,ゲーム業界ではさらにElectronic Arts(外部リンク),Activision Blizzard(外部リンク),Epic Games(外部リンク),GoG.com(外部リンク)なども続いている。

ウクライナの最年少大臣でもある,ミハイル・フェドロフ(Mykhailo Fedorov)デジタル担当相は,ゲーム産業に対してロシアからのアクセス一時停止を行うことを,自身のTwitterでXboxとPlayStationにハッシュタグをつけて訴えている
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著者紹介:奥谷海人
 4Gamer海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年の開始以来,4Gamerで最も長く続く連載記事。欧米ゲーム業界に知り合いも多く,またゲームイベントの取材などを通じて,欧米ゲーム業界の“今”をウォッチし続けている。
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