プレイレポート
プレイヤーの好奇心を刺激する「黒い砂漠」の世界。プレオープンテストで,世界の“何か”を自分で発見する楽しさを体験してみた
本作の特徴は,美しいグラフィックスと,それがシームレスでつながる広大な世界だ。そして現在主流のコンテンツ主導型やテーマパーク型のMMORPGとは一線を画した,プレイヤーが思い思いの遊びができるサンドボックス型のMMORPGとして,注目を集めている。今回,プレオープンテストに参加して分かった本作の情報や魅力をレポートしていこう。
豊富なカスタム要素で自分だけのキャラを作成
細かすぎて納得いくキャラを作るのは大変かも?
「黒い砂漠」のキャラメイクは,「ウォーリア(男)」「レンジャー(女)」「ソーサレス(女)」「ジャイアント(男)」と,クラスによって性別こそ決まっているが,顔や髪型,身体の特徴はかなり細かなところまでエディットできる。
たとえば,基本的なヘアスタイルはプリセットで用意されているが,毛先の位置やカールの強弱など,細かな調整が可能だ。かなり微細な設定ができるので,髪型やキャラクターの造形にこだわる人であれば数時間どころか,数日にわたって作り込むという人もいるだろう。
とことん突き詰めればそれに応えてくれるキャラメイクだが,見た目とは別に,ゲームに大きく関わる項目がひとつある。それがキャラクターを最初に作ったときに設定する「家名」だ。
本作では,ひとつのアカウント上で作成されるキャラクターに,この「家名」が付くことになる。さながら「同じ名字を持った一族」といったところだ。このアカウントに紐付いた共通の家名を持つキャラクターは,「黒い砂漠」の重要な要素である「知識」,NPCとの重要な会話や生産活動で消費する「行動力」,世界での貢献でNPCからの信頼を得た証しになる「貢献度」などを共有することになる。
たとえば,ウォーリアである程度ゲームを進めたあとにソーサレスを作ってゲームを始めると,最初からウォーリアが得た「知識」や「行動力」,「貢献度」でプレイできる。もちろん,キャラクターレベルやアイテム,生活系スキルのレベルなどは,そのキャラクターの初期値になるが,得ている知識のおかげで,すぐにクエストが発生するなど,最初に始めたときよりも,かなり楽に育成が進むはずだ。
いわば,「強くてニューゲーム」ならぬ「賢くてニューゲーム」といったところだろう。なお,新キャラクターを作ると,チュートリアルクエストも最初からプレイできるが,一部は省略されるので,最初のプレイでじっくりと体験してほしい。
ロバどころか馬車までクエストでゲットできる!?
チュートリアルクエストをしっかりこなそう
本作では,ストーリーのキーキャラクターである「闇の精霊」や,村のNPCから提示されるチュートリアル的なクエストをクリアしてゲームを進めていく。これらのクエストをクリアすると,結構な量の経験値が得られるので,序盤はあまり戦闘でのレベル上げを意識することはないだろう。
さて,サンドボックス型と銘打たれたMMORPGなのに,ストーリーを追うクエスト主体なのかと疑問に思う読者もいるだろう。もちろん,これらのクエストをすべて飛ばして好き勝手に遊んでもかまわない。しかし,この世界にやってきたプレイヤーの多くは,「さあ,好きなように遊んでください」と,いきなりすべてを自身の判断に任されても,どうすれば良いのか困惑してしまうはずだ。
実際にプレオープンテストでは,まだ情報も少なく,遊べる期間が限られていることもあるからか,「ロバや馬に乗りたい,捕まえたいけどどうすればいいか分からない」と,オープンチャットで質問するプレイヤーをよく見かけた。実のところ,序盤のクエストをしっかりと進めていけば,わりと早い段階でロバが手に入るのだが……。
自由だからこそ,若干複雑なゲームシステムになっているので,最初はふたつめの村であるベリア村で受けられるクエストがなくなるぐらいまで,あせらずにクエストを追って,スキルを使った戦闘の指南から,生産系コンテンツのやりかたまで,基本的なゲームの遊び方を学んでほしい。
どのクラスも攻撃を重視するアタッカータイプ。スキルの連携を駆使することで爽快なバトルが楽しめる
本作のバトルは,ノンターゲティングを採用しており,W/A/S/Dキーによる移動と,マウスボタンの組み合わせで攻撃する。ショートカットにスキルをセットすれば,ボタンひとつでスキル攻撃も可能だ。マウスをクリックし続ければ連続で攻撃を行うこともでき,比較的簡単な操作で爽快感のあるバトルが楽しめる。
ただ,攻撃は攻撃範囲に入っている敵にほぼ無条件でヒットしてしまうので,連戦を望まないなら単体攻撃で敵を引っ張って安全なところで戦った方がいいだろう。とくに射程の長いレンジャーは誤射に注意したい。
本作ではいわゆるヒーラー的なクラスはなく,HPの回復は自分で行う必要がある(攻撃スキルのなかには,ダメージを与えながらHPを回復できるものもある)。序盤は敵が弱いこともあり,それほどシビアな戦いにはならないが,ダンジョンなど強敵がいるところでは必然的にポーションでの回復が重要になりそうだ。
プレイヤーの好奇心を満たす,シームレスな世界に隠された「知識」
美しいグラフィックスで彩られた森や河,そして遺跡などがシームレスでつながるマップは,プレイヤーの好奇心を刺激するだけでなく「黒い砂漠」の重要なポイントでもある「知識」を得るための舞台でもある。この「知識」がゲームを進めるための,そしてプレイヤー自身がゲームを楽しんでいくための糧となっていくのだ。
「知識」は,敵や採集で得た木材,農作物,釣った魚,料理のレシピ,そして重要人物(NPC)の情報として,プレイに大きく役立ってくれる。知識を得ることで「行動力」の上限もアップするので,積極的に集めていきたいところだ。そのエリアで見つけていない知識は「?????」と表示されるので,ムキになって捜してしまうこともしばしばあった。
一方で,プレオープンテストの範囲では,ゲームを進める上で役に立つ「知識」なのか分からないものもあった。たとえば,序盤のクエストで訪れる「古代の石室」には,いくつもの壁画が描かれていて,これを行動力を使って調べることで,「知識」とともに古代の歴史を目の当たりにできる。これらの「知識」すべてを集めることで行動力のアップも図れるが,壁画にまつわる何か(クエストなど)が待っているのか,気になるところだ。
ほかにも古代の王が眠る納骨堂や,怪しげな人物が徘徊するセレンディア神殿,街の地下深くに存在するモンスターの解剖所……など謎めいた,しかしプレイヤーの興味を刺激するいくつもの施設がマップ上に散りばめられている。フィールドを歩き回りながら「黒い砂漠」の世界観を形作る何かを自らの手で捜し,確認していくのだ。そうした,冒険者や考古学者のようなプレイも,このゲームの楽しみ方のひとつになるだろう。
手探りでできることを見つけていく「生活系コンテンツ」
バトルと並んで「黒い砂漠」の主軸となる生活系コンテンツは,2つめの村,ベリア村から本格的にスタートする。
「黒い砂漠」の生活系コンテンツは,「採集」「加工」「料理」「調教」「錬金」「釣り」「貿易」の7つがあり,それぞれにレベルが設定されていて,それに関わる行動を取ることで成長していく仕組みだ。たとえば貿易を繰り返すことで貿易レベルが上がり,それに応じて,より上のランクの貿易品が扱えるようになる。
この7つのコンテンツの育成自体は独立しているが,倒したイタチから「採集」した肉を「加工」してジャーキーにする,「釣り」上げた魚を「貿易」品として取り扱う,「採集」した素材を「料理」するといったように,それぞれが関連して,より高い効果や利益を生み出せるようになる。
また,生活系コンテンツの経験値だけでなく,プレイヤーキャラクター自体の経験値も獲得できるので,気が付くと筆者は,モンスターとのバトルはそこそこに,ずっと何かしらの生活系コンテンツを遊ぶというプレイスタイルになっていた。正確には,クエストに関わるもの以外は,バトルを気にする必要がなくなったという感じだ。
とくに筆者がはまったのが貿易ルートの構築だ。「黒い砂漠」の貿易は,各拠点で購入したり,プレイヤー自身が生産したりして手に入る「特産品」を,ほかの拠点へ運んでその差額で利益を出すというものになる。さらに,貿易を行うには各拠点に「貢献度」を投資して貿易ルートを構築しなければならないのだ。
筆者も最初は,貿易ルートを構築しながら,ロバや馬車に特産品を乗せて貿易に勤しんでいたのだが……途中から利益はどうでもよくなっていた。たまに山賊(のNPC)に襲われながら旅をするという過程が楽しくなり,いつのまにか,「貿易するためにルートを構築する」ことよりも,「貿易ルートを構築する」ことがメインになっていたのだ。
当然,貿易ルートを構築しただけではあまり儲けは出ないので,本末転倒のような気もするのだが,「黒い砂漠」はそんな楽しみ方も許されるということを理解してもらえれば幸いだ。
いろいろな遊び方のある生活系コンテンツだが,個人的に気になったのはキャラクターの初期インベントリの少なさだ。これもクエストをこなすことで拡張されていくのだが,採集やら料理やらに手を出し始めるとあっというまにパンパンになり,何もできなくなってしまう。
「倉庫」を借りればある程度は解消できるが,それでもやりくりにはかなりの苦労がつきまとう。序盤から,もう少し持てるアイテムの数を増やす,もしくは楽にイベントリが増やせると嬉しいのだけれど。
ベリア村で水産資源枯渇の危機に直面!
採集や釣りはリソースの取り合いに?
ところで,以前のプレイレポートで「可能性」の話として,「もしかしたら水産資源が激減するかも……」と予想していたのだが,実際にプレオープンテストで,それは起こった。
資源枯渇の危機に瀕したのは,ベリア村。この村は,クエストに沿ってプレイしていくと最初に釣り方を学べる村であり,そのまま釣りに関するクエストが受けられる場所でもある。そんな2つの要因が重なる場所なら,そこで釣りをするのが必然というものだろう。その結果,水産資源量が3%まで下がってしまったのだ。序盤にモンスターの取り合いになるMMORPGは少なくないが,魚が絶滅の危機に瀕するというのは「黒い砂漠」ならではの現象かもしれない。
ちなみに,水産資源が不足したといっても,魚がまったく釣れなくなるわけではなく,魚が竿にかかるまでの時間が長くなるだけだった。偶然ではあるが,ベリア村の状況から,資源が枯渇したらどうなるのか,という懸念に対する答えが明らかになると同時に,完全に資源がなくなるわけではないことが確認できたわけだ。
一方,ほかの資源,農作物や植物,木材など地上の資源についてどうかというと,プレオープンテストでは,枯渇の心配はなかった。とくに,農産物は自分で生産もできるので,序盤はあまり心配しなくても良さそうだ。
ただ,正式サービス以降に,大砲や船など,多くの素材が必要なコンテンツ(プレオープンテスト時に大砲やイカダを作った猛者もいたが)の需要が出てくると,各資源がどのように変動するのかは未知数だ。リソース(素材)の取り合いになる可能性もあるが,それはゲーム中の経済を盛り上げることにもなるだろう。うまく需要と供給が組み合い,活気溢れる世界になることに期待したいところだ。
システムの中で自由に遊べる「黒い砂漠」。意外とソロ指向な作りで,ひとりで遊んでも大丈夫
プレオープン中はチャットでのプレイヤー間の交流が盛んで,情報交換をしたり,正式サービスへ向けてギルド勧誘をしたりといったことが活発に行われていた。そのなかで目にとまったのが「ウルティマオンライン(UO))」を引き合いに出して,「黒い砂漠」に期待しているという声が多かったことだ。
では,「黒い砂漠」はどうなのか。筆者が遊んで感じたのは,「UO」ほどなんでもアリというわけではないが,システムの許す範囲でさまざまな楽しみ方が模索できるゲームだということだ。いろいろな遊び方が楽しめるMMORPGとして,十分な魅力を持った作品だと思えた。
加えて,序盤のチュートリアルが充実しており,順番にクリアしていけば初心者でもゲームの遊び方,世界の歩き方が十分に理解でき,目的が分からず,いきなり迷子になるということがない親切な設計になっている。繰り返しになるが,チュートリアルはしっかりと体験してほしい。
一方,序盤はかなりソロ指向の作りで,大抵のことがひとりで消化できてしまう。そのため,なんとなくオープンワールド系のコンシューマゲームタイトルを遊んでいるような気分になった。もちろん,正式サービス後に大人数でこなせるコンテンツが多く登場すれば,そのあたりのイメージも変わってくるはずだ。どのようなコンテンツがあるのか,今後の情報に期待したい。
ともあれ,追い立てられるようにクエストに挑んだり,戦闘に明け暮れるMMORPGから離れて,もっとのんびりと,自由にMMORPGの世界で遊びたいという読者にオススメできそうな作品だ。この世界で“生きてみたい”という読者は,今後行われるであろうオープンサービス,そして正式サービス時で「黒い砂漠」の世界へと足を踏み入れよう。
「黒い砂漠」公式サイト
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黒い砂漠
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