インタビュー
「Hearthstone」の国際大会“HCT冬季選手権”に出場したb787選手へのインタビューを掲載。世界一を決める大舞台ならではの戦術や緊張感とは
同選手はグループリーグで敗退してしまったものの,アジア太平洋地域(APAC)でのプレイオフを制し,HCT冬季選手権に出場したことそのものが快挙といえるだろう。
今回はb787選手に,各試合を含む大会全体を振り返ってもらった。現在の日本を代表するプレイヤーがどのような戦術で世界へ挑み,そしてその舞台で何を感じたのか。現在公開されている各試合の配信アーカイブと合わせて参考にしてほしい。
「Hearthstone」の国際大会“HCT冬季選手権”がカリブ海のバハマで開催。リゾート地で繰り広げられたトッププレイヤー達の戦いをレポート
HCT冬季選手権に日本からb787選手が出場
現環境を踏まえた海賊/アグロのメタに加え,“自分らしいデッキ”で挑戦
4Gamer:
HCT冬季選手権,お疲れ様でした。さっそくですが大会で使用したデッキについて,簡単に解説をお願いします。
b787選手:
今シーズンの環境では,海賊系のカードを軸にしたアグロデッキが猛威を振るっており,HCT冬季選手権でもそうなることが予想できました。そこで,海賊/アグロに対抗できることを踏まえ,そのほかのデッキに対してもそこそこ戦えるくらいのバランスでデッキを調整しました。
4Gamer:
そのうえで,コントロールウォリアーとレノプリーストを持ち込んでいるのが特徴なのでしょうか。
b787選手:
そうですね。現在のプリーストはドラゴンプリーストが多いですが,今回は海賊へのメタを視野に入れたオリジナルデッキを作成しました。もうひとつのコントロールウォリアーに関しては,メタがどうこうというより,自分がもっとも好きだという理由で採用しています。
4Gamer:
APACのプレイオフ後のインタビューでは,コントロールウォリアーにこだわる理由として,mattun選手の名前を挙げられていましたね。
b787選手:
昨年の大会でmattun選手が活躍していたのを見て,「自分もああいったプレイがしたい!」と思い,それがきっかけでHearthstoneに真剣に取り組むようになったんです。そのときにmattun選手が得意としていたのがコントロールウォリアーで,自分も参考にプレイしていたら,いつしかお気に入りになっていました。
以前,別の大会に出場したとき,自分の意に沿わないデッキで挑んだことがあったのですが,そのことをとても後悔しているんです。今回は,たとえ負けても構わないので,自分の好きなデッキで挑戦したいという想いが強かったですね。
HCT冬季選手権における各試合の感想を聞く
ヒーローを繰り出す順番にも奥深い戦術が
4Gamer:
それではb787選手の1試合目,Fr0zen選手とのマッチを振り返っていきます。スコアを見る限り,3-1のリードからの3連敗による逆転負けが印象的でしたが。
第1試合 b787選手 対 Fr0zen選手
(twitch配信アーカイブへのリンク)
b787選手 | Fr0zen選手 | |
---|---|---|
1戦目 | ○ミッドレンジシャーマン | ●ミラクルローグ |
2戦目 | ●レノメイジ | ○ミラクルローグ |
3戦目 | ○レノロック | ●ドラゴンプリースト |
4戦目 | ○レノメイジ | ●マリゴスOTKドルイド |
5戦目 | ●レノプリースト | ○フリーズメイジ |
6戦目 | ●レノプリースト | ○マリゴスOTKドルイド |
7戦目 | ●レノプリースト | ○ドラゴンプリースト |
※BAN対象は,b787選手がコントロールウォリアー,Fr0zen選手がレノロック
試合のレギュレーション:
・各選手は事前に5体分のデッキを提出。相手のデッキも確認できる
・試合前に,相手選手デッキの中から1つを使用不可(BAN)に
・試合形式はBO7(Best of 7の略)。7回戦い先に4本を取った側が勝利
・一度勝利したヒーローは,それ以降使えなくなる
b787選手:
順を追って説明すると,自分が3勝を上げたときに最後に残ったヒーローはレノプリーストでした。つまり,このレノプリーストで,もうあと1勝しなければなりません。
一方のFr0zen選手は,マリゴスOTKドルイド/フリーズメイジ/ドラゴンプリーストの3種類から選べる状態です。
そして過去の戦績を踏まえると,レノプリーストが,マリゴスOTKドルイドやフリーズメイジに勝利できる確率は,ほとんどありません。ドラゴンプリーストだけは違っていて,自分のレノプリーストがやや有利に戦えます。
4Gamer:
Fr0zen選手は,そのことを把握していたのでしょうか。
b787選手:
つまりFr0zen選手の立場になって考えると,相手がレノプリーストしか選べないのなら,マリゴスOTKドルイドとフリーズメイジを先に出せば,余程の事故が起こらない限り,ほぼ確実に2勝を収められるわけです。であれば,先に出すのは当たり前ですよね。
自分も,5戦目と6戦目は負けることを覚悟したうえで,Fr0zen選手がドラゴンプリーストを出さざるを得ない7戦目に,すべてを賭ける狙いでした。
4Gamer:
デッキを出す順番にも戦術があるんですね。
こういった戦術は,大会出場の経験がないとなかなか分からない部分だと思いますが,普段はどういった風に決めているのですか。
b787選手:
まずは,相手の立場になって考えることです。
やっぱり誰もが,相手に対して勝率の高いデッキから出したくなるものです。そのデッキに対し,自分はどのデッキで挑めば良いのか? というのを突き詰めていきます。
具体的に説明すると,今回のFr0zen選手は,最初にミラクルローグかマリゴスOTKドルイドを出してくるだろうと予想していました。であれば,自分はそれに対して比較的有効に戦えるミッドレンジシャーマンをぶつけよう,といった感じですね。
4Gamer:
なるほど。
b787選手:
4Gamer:
今回の第1試合では,デッキ同士の当たり方に限っていえば,b787選手の狙い通りだったのでしょうか。
b787選手:
はい。この読みは当てられたのですが,自分にとって勝率が高いはずのプリーストミラーを落としてしまったのが,直接の敗因ということになります。スコアを見る限りだと“3連敗”なんですけどね(苦笑)。
4Gamer:
続いての第2試合は,ルーザーズトーナメントにおけるXHope選手とのマッチです。この試合における大きな局面はどの辺りでしょうか。
第2試合 b787選手 対 XHope選手
(twitch配信アーカイブへのリンク)
b787選手 | XHope選手 | |
---|---|---|
1戦目 | ●レノメイジ | ○ミラクルローグ |
2戦目 | ●レノメイジ | ○翡翠シャーマン |
3戦目 | ●レノメイジ | ○フリーズメイジ |
4戦目 | ○レノロック | ●海賊ウォリアー |
5戦目 | ○レノメイジ | ●海賊ウォリアー |
6戦目 | ●ミッドレンジシャーマン | ○海賊ウォリアー |
※BAN対象は,b787選手がコントロールウォリアー,XHope選手がレノロック
b787選手:
最初の大きな局面は3戦目のメイジミラーですね。レノメイジ対フリーズメイジで,自分にとって有利な組み合わせだったのですが,手札が悪かったこともあり落としてしまいました。自分としては,ここで勝って1-2に持ち返す予定だったのが,0-3になってしまい,かなり焦りましたね。
4Gamer:
その後の4戦目以降は,XHope選手の残りヒーローが海賊ウォリアーになります。これに対しb787選手は,メタデッキをたっぷり揃えていますね。
b787選手:
ええ,相性的にはかなり有利でした。でも自分のデッキは,海賊/アグロ以外にもワンチャンくらいの可能性を残すように作っていたので,その分,海賊/アグロに対する純粋なメタという意味では,若干弱い部分がありました。相手に目立ったミスもなかったですし,さすがに0-3からの逆転は無理でしたね。
国際大会ならではの過酷な環境とは
4Gamer:
選手にとっての試合環境は,実際のところいかがでしたか?
b787選手:
椅子に座って見下ろすとディスプレイがあるのですが,そこから少し目を上げると,対戦相手の表情や仕草などがバッチリ見えるんです。すぐ近くには何台ものカメラが動いていて,観客の視線も感じるのに,選手だけは実況音声などが聞こえないようにヘッドフォンを装着しています。しかも,このヘッドフォンからは常に大きなノイズ音が出ており,なかなか集中できません。
普段のプレイ環境とはあまりにも違っていて,最初の内は頭の中が真っ白になりましたね。
4Gamer:
そのほかのコンディションなどはどうでしたか。
b787選手:
もともと自分は緊張に弱いタイプで,試合の前夜は2時間しか眠れませんでした。バハマは日本との時差が13時間もありますし,第1試合を終えた後は,次の試合が始まるまで選手控室で爆睡していたほどです。
4Gamer:
やっぱりキツいですよね……。
b787選手:
でも,そういった過酷な環境でも,普段通りのプレイングができたんです。負けてはしまいましたが,与えられた環境で自分の全力を出し切ったので,そういった意味での悔いはありません。
4Gamer:
普段とはかけ離れたこの環境でも,普段どおりのプレイができないと,世界トップレベルの舞台で勝ち進むことは無理なんでしょうか。
b787選手:
そう思いますね。今回,その環境に少し触れることができましたが,自分も含め日本人のプレイヤーにとっては触れる機会がまだ多くないので,大きな課題になりそうです。
4Gamer:
そういった意味では,日本の大型大会「Hearthstone Championship Tour Japan Major」も発表されましたし(※関連記事),環境が少しずつ変わっていきそうですよね。
b787選手:
ええ。Japan Majorのことはバハマの滞在中に知ったのですが,本当に嬉しかったです。日本には,世界レベルでも通用するテクニックを持ったプレイヤーが何人もいますし,後は大舞台の経験さえ積めば世界に実力を示せると思います。
4Gamer:
b787選手:
自分は元々,じっくり考えてプレイするコントロール系のデッキが好きなんです。でも現環境では海賊やアグロが猛威を振るっていたので,それが変わることに未練はありません(笑)。
4Gamer:
ウンゴロによる新カードの追加だけでなく,多くのカードが“スタン落ち”しますが,その影響に関してはどうでしょう。
b787選手:
コントロールデッキ好きの視点では,長期戦で役立つ回復系のカードが無くなるのが痛いですね。「レノ・ジャクソン」や「スナック売り」,あとは「ジャスティサー・トゥルーハート」などが無くなるわけで,戦術を大きく変える必要がありそうです。
4Gamer:
b787選手:
おぉ……これは面白いですね。雄叫びがうまく決まればメチャクチャ強力だし,「旋風剣」からつなげてもいいですよね。9マナという重さを,どうやってカバーするのかがポイントになりそうですが,新しい形のコントロールウォリアーが生まれそうな予感がします。
やっぱり,新しいカードが登場するのはワクワクしますね(笑)。
4Gamer:
そのほか,今回のHCT大会全体を振り返って,感想はいかがですか。
b787選手:
本当に楽しかったです。試合に関しては,自分が後悔しないデッキで挑めましたし,与えられた環境でやれることを全部やれたという達成感があります。また,自分以外に出場していた有名な人達に,僕という存在を認識してもらえて,直接交流ができたのも幸せでした。
あとは,滞在中の空き時間にバハマを観光したり,TV番組の取材を受けたりと,いろいろな体験ができました。こういった環境を提供してくれたBlizzardに対しても感謝しています。
4Gamer:
Japan Majorへの興味は?
b787選手:
もちろんあります!
自分は,拡張パックの登場などによる環境の変化への対応はそれほど得意ではないのですが,その辺りはチームメンバーを頼りたいですね(笑)。
4Gamer:
Japan Majorでの活躍も期待しています。
今回はお疲れ様でした。
「Hearthstone: Heroes of Warcraft」公式サイト
「Hearthstone: Heroes of Warcraft」ダウンロードページ
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(C)2017 BLIZZARD ENTERTAINMENT, INC.
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