結のほえほえゲーム演説：第143回「ロクにデートも誘わず寝てばかりの男が藤崎詩織と付き合ったって？」

　花火大会も，縁日も，コミケもない2021年の夏。

　しかし我々には「RTA in Japan Summer 2021」というお祭りがあるッッ!!!!

　Real Time Attack，通称RTA。ゲームをどれだけ早くクリアできるのか競い合うもの。「RTA in Japan」とは，RTAプレイヤーが一堂に会し，それぞれの得意なゲームを代わる代わるRTAとしてプレイしていくイベント。あ，どうも皆さんごきげんよう。タレントとして活動しております。結です。2021年8月11日〜15日に行われていたRTA in Japan Summer 2021がね，あまりにもアツかったので，語らざるを得ないんですよ。

　個人的に最も印象的だったのは，世間でも大きな話題となった「ときめきメモリアル」（以下，ときメモ）のRTA。ときメモといえば，高校生活の3年間の中で，意中の女の子に告白されることを目指す恋愛シミュレーションゲーム。このRTAは，ときメモの最難関ヒロインである藤崎詩織に告白されるエンディングへ，いかに早くたどり着くかを競うというもの。メモラー歴22年。私のゲーム人生で，最も多くの時間を費やしてプレイしたゲームである，ときメモシリーズ。いつの日も，女の子と出会い，部活に打ち込み，受験勉強に励み，デートをこなし，女の子の爆弾を処理してきました。しかし，22年かけて私が自分なりに築いてきた“ときメモの概念”が，このRTAで見事に覆されるのであった……。

　RTAが始まってすぐ，RTA走者のKazupoonさんから衝撃的な一言が。

　「高校生活始まりました。何をしますか皆さんは？　そうですね，まず彼女を作るためには寝ていきますね」

　えっ!?　デートするわけでも，パラメーターを上げるでもなく!?
　余計なヒロインを登場させないために，新生活でウッキウキな春を寝て過ごす。徹底した無駄のない動き。これがRTAか……。

　ときメモシリーズでは，女の子を放置していると傷心度が高まって「爆弾」が発生します。それを放置していると，女の子が激怒して変な噂を流され，ほかの女の子達からの好感度まで下がってしまう，あまりにも残酷なシステムがあります。高校生活で女の子と知り合っただけなのに，気を持たせるようなことを言ったわけでもないのに，なぜこんな仕打ちをされなければいけないのか。人の感情はときに理屈ではない。そう，爆弾システムとは，多くの人類が初めて味わう理不尽ではないでしょうか。

　つまりRTA的には，ヒロインが登場すればするほど，爆弾のリスクは高まり，下校イベントなどのタイムロスも多くなってしまうというわけです。しかし高校生活2年目になると早乙女優美ちゃんというヒロインが強制登場します。これをどうかわしていくのか？　と思っていると……。

　Kazupoonさん「（優美ちゃんを）ある方法を使って静かにさせようと思います！」

　な，なんだか物騒な匂いが……。そして実際に，優美ちゃんに電話をしてデートの約束をしたにも関わらず，あえて優美ちゃんとのデートをすっぽかし，下校イベントを発生しないように調整していく。ここだけを切り取ってみると，優美ちゃんの好きなデートスポットで必死に機嫌を取っていた私より，よっぽど酷い行動をしているように見える主人公ではありますが，優美ちゃんは納得した様子。

　そして高校生活2年目の11月。まだ一度もデートをしたことがないにも関わらず，ときめき状態になる詩織。あのラスボスとも呼ばれた詩織が。なんてこった。どうした詩織。しっかりしろ詩織。ときメモとは，部活で活躍し，テストで良い点をとり，あらゆる努力をしてヒロインに振り向いてもらうゲームだったはず。

　ここで私は重大なことに気が付きました。
　そうか，私のプレイでは，恋愛の主導権が必ずヒロイン側にあったのだ。
　ゲームでも現実でも，主導権を握ることが大事。
　そういうことですね!?　Kazupoonさん!!!!（たぶん違う）

　ようやくやってきた詩織との初デート。あえて容姿パラメータが低い状態で，詩織との待ち合わせに向かう。ダサい恰好を見せ，ドン引きした詩織がデートの途中で帰ることにより，記念すべき初デートでもタイム短縮に成功。こんな男に，俺達の詩織が惚れている……だと……？
　もちろんタイム短縮のために，クリスマスもバレンタインも無視。そうか，私のリアル学生生活はRTAだったのか。
　これだけじゃありません。好感度調整のために，あえて「ノイローゼ」になることでテストの順位を落とす。主人公宅まで初詣の誘いに来てくれた詩織をバッサリ断り，一人で初詣に向かい，今しがた誘いを断ったばかりの詩織との恋愛成就をお祈りする。……など，タイム短縮に成功すればするほど，主人公の“人間としてのヤバさ”がガンガン加速していくばかり。

　そして48分36秒。詩織から告白され，見事エンディングを迎えます。主人公と詩織の思い出が少ないにも関わらず，謎の感動が……。

　やはりRTA走者であるKazupoonさんが，ときメモが大好きであることが伝わってくるのが良かったですね。エンドロールで未登場のヒロインが現れるたびに「虹野沙希さん，3番目くらいに強い敵です」と解説が入るのも面白かったです。敵と呼ばれるヒロイン達よ。エンディング後に詩織と思い出のアルバムを振り返り，RTAラストスパートで「近所の公園」に4回連続でデートした写真を眺めながら，Kazupoonさんが「フォーカードと呼んでいます」とおっしゃっていたのも忘れられません。

　ゲームのやり込みって，プレイヤーランクや，入手困難な武器を持っている……みたいな話になりがちだけど，RTAのように，自分なりの楽しみ方を見つけられるのも魅力だなぁと思っています。「Vジャンプ」の連載漫画「犬マユゲでいこう」で，作者の石塚祐子さんが「かまいたちの夜」をプレイするときに，主人公の名前を「透と百人の忍び」「真理とヒグマ」に設定してシュールなストーリーを楽しんでいたように，自分なりの楽しみを探し出せるゲーマーに，今も昔も，いつだって憧れてしまいます。

　あらためてRTA走者様，解説者様，運営様，アツい夏をありがとうございました！

　ちなみにときメモ藤崎詩織攻略，普通にプレイしたらどうなるの？　と気になったアナタ！　私の実況プレイをぜひご覧ください。詩織と甲子園優勝を目指していたものの，爆弾は爆発するわ女の子にブチ切れられるわとんでもない修羅場が待っています。

最近プレイしているゲーム（2021/8/7）
Steam:「Among Us」
PlayStation 4：「GUILTY GEAR -STRIVE-」
PC：「インペリアル サガ エクリプス」
iOS：「ロマンシング サガ リ・ユニバース」
iOS：「アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ」

■■結（女優・タレント）■■
女優・タレントとして活動中。国内映画祭にて主演女優賞を多数受賞。幼少期からのゲーム好きが高じ，数多くのゲーム番組でMCを務め，イトキチ（糸吉）の愛称で親しまれている。

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