連載
「そうだ アニメ,見よう」第99回は平尾アウリ氏原作の「推しが武道館いってくれたら死ぬ」。アイドルとドルオタのちょっぴり百合な物語
とある地下アイドルを応援するファン達の姿をコミカルに描いた,平尾アウリ氏原作のコミック「推しが武道館いってくれたら死ぬ」(徳間書店刊/既刊6巻)。「月刊COMICリュウ」で連載中の本作は,2017年に「このマンガがすごい!」や第3回「次にくるマンガ大賞」に入賞した話題作だ。
というわけで,「そうだ アニメ,見よう」第99回のタイトルは,同作をアニメ化した「推しが武道館いってくれたら死ぬ」。制作はエイトビット,シリーズ構成は赤尾でこ氏が担当。「ヤマノススメ」シリーズや「ナイツ&マジック」(関連記事)の山本裕介氏が監督を務めている。
「推しが武道館いってくれたら死ぬ」
しかし,あまりの熱烈ぶりに周囲の人達から距離を置かれ,今ではくまさ(CV:前野智昭)と基(CV:山谷祥生)だけがChamJamファン仲間という有様。握手会では,舞菜からも塩対応されてしまうえりぴよだったが,「いつか舞菜が武道館のステージに立ってくれたなら……死んでもいい!」と断言し,精力的に活動を続けていた。
じつは,舞菜はえりぴよのことを嫌っているわけではなく,むしろ好意を抱いているのだが,不器用でうまく伝えられずにいた。すれ違う2人の想いは通ずる日が来るのだろうか。
アイドルに限らず,誰しも自分の中のお気に入り,“推し”を持っているもの。もし,推しなんかないよって人は,まだ出会っていないだけなのだ(断言)。本作の主人公・えりぴよは,マイナーアイドルの舞菜と出会ったことで,人生が一変。ChamJamのCDを買うために服も高校時代の指定ジャージで済ませ,果ては「臓器を売るか……」と言い出すほどの入れ込みぶりだ。
ここまでは,重度のアイドルオタクならありそうな話(?)だが,えりぴよはなんと女性で,なかなかの美人さん。アイドルオタクの女性も珍しくない昨今だが,ここまでのガチ勢はそうはいないのではないだろうか。本作は,そんなえりぴよと舞菜のちょっぴり“百合”な物語と,ChamJamファン達の活動を生き生きと描いた“ドルオタ”ストーリーなのだ。
ドルオタ業界のディープな生態
CDは10枚単位で購入し,どんな地方のライブでも最前列に並ぶために朝一,もしくは前日に現地に入る。こうしたアイドルオタクの生態を本作では,えりぴよの目を通して描いている。原作者の平尾氏はもともとかなりのアイドルオタクで,自身の経験から本作のエピソードを生み出しているのだとか。作中に登場する“積み”や“釣り”など独特のドルオタ用語も,その世界ならではのルールを垣間見ることができて興味深い。
もちろん,えりぴよはその中でも突出してディープなファンで,その行動はハチャメチャだ。しかし,その原動力は舞菜への真摯な愛情。その思いの強さに,ジャンルは違えども共感を覚える人も多いだろう。
サイリウムは舞菜のカラーであるサーモンピンクを使用 |
ChamJamのダンスシーンに注目
ChamJamは,舞菜を含む7人のアイドルグループだ。センターのれお(CV:本渡 楓)をはじめ個性的なメンバー達が揃っており,なかなかの粒揃い。本作では,ChamJamメンバーサイドの物語も描かれ,アイドルの本音も見ることができる。
第5話の人気投票の回は,そんな彼女達のグループでの立ち位置や密かな思いがメインとなっている。グループ内でも特に親密な眞妃(CV:榎吉麻弥)とゆめ莉(CV:石原夏織)のエピソードには思わずホロリとさせられた。百合っていいよね。
また,作中のChamJamのライブシーンは流行のCGではなく,実際のステージでChamJamに見立てた7人のアイドルやダンサーに踊ってもらって,それをライブアクション(実写とアニメを同一画面で合成する手法)で起こすという手法がとられている。
その7人も身長の対比はChamJamのメンバーに近い人が集められ,ダンスの技量まで考慮してキャスティングされていたとか。こうしたスタッフのこだわりが,ChamJamに実際にいるアイドルグループのような存在感を与えているようだ。
なお,作中でChamJamが披露している劇中歌3曲をフルコーラスで収録したキャラクターソングミニアルバム「ずっと ChamJam」が発売されているので,ChamJamファンに目覚めた人は「こちら」で詳細情報をチェックしておこう。
ドルオタのエネルギッシュな生態を赤裸々に描いている本作。とはいえ主人公が女性であり,真摯にアイドルを応援する登場人物達のおかげで,生々しい感じは一切しない。ある意味ファンタジーとも言える本作で,えりぴよと舞菜の関係がどうなっていくか,見守りたい。
ちなみに自分のオタク度がどれぐらいなのかが計れる「オタク診断」が公式サイトに掲載されている。登場キャラクターに当てはめた診断結果が表示されるので,興味のある人はお試しあれ。筆者は「えりぴよ」タイプでした。なんてこった……。
アニメ「推しが武道館いってくれたら死ぬ」公式サイト
アニメ「推しが武道館いってくれたら死ぬ」公式Twitter
放映データ |
---|
2020年1月〜 |
キャスト | |
---|---|
えりぴよ:ファイルーズあい | |
市井舞菜:立花日菜 | |
五十嵐れお:本渡 楓 | |
松山空音:長谷川育美 | |
伯方眞妃:榎吉麻弥 | |
水守ゆめ莉:石原夏織 | |
寺本優佳:和多田美咲 | |
横田 文:伊藤麻菜美 | |
くまさ:前野智昭 | |
基:山谷祥生 | |
玲奈:市ノ瀬加那 |
スタッフ |
---|
原作:平尾アウリ(徳間書店 リュウコミックス) |
監督:山本裕介 |
シリーズ構成:赤尾でこ |
キャラクターデザイン:下谷智之/米澤優 |
CGディレクター:生原雄次 |
色彩設計:藤木由香里 |
美術監督:益田健太 |
美術設定:藤瀬智康 |
撮影監督:浅村徹 |
編集:内田恵 |
音響監督:明田川仁 |
音響効果:上野励 |
音楽:日向萌 |
アニメーション制作:エイトビット |
(C)平尾アウリ・徳間書店/推し武道製作委員会 |
■Blu-ray情報
「推しが武道館いってくれたら死ぬ」 Blu-ray Vol.1
2020年3月18日発売
PCXP-50741/16,000円+税
第1〜6話収録/本編144分+映像特典3分
各法人予約特典
http://oshibudo.com/news/archives/190
アニメイト早期予約特典
http://oshibudo.com/news/archives/192
※商品仕様・特典内容は都合により変更になる可能性がございます。
仕様
キャラクターデザイン下谷智之描き下ろし 特製ボックス
原作平尾アウリ描き下ろし 特製デジパック
初回限定特典
「推しが武道館いってくれたら死ぬ」コミックス 第0巻(64P)
<収録内容>
原作平尾アウリ描き下ろしエピソード『第0話』
第1話の桜道での出会いの後を描いた、えりぴよの人生に舞菜が現れ、えりぴよが舞菜のトップオタになるまでの物語。
初期キャラクター設定案
企画当初に描かれた<えりぴよ/舞菜/くまさ/れお/基/空音>の初公開キャラクター設定。
『第1話』ネーム
連載第1話のネームまるごとに加えて、カラー扉ラフ別案も収録。
封入特典
ChamJamメンバーイメージアイテムステッカー(全7種+シークレット/ランダム1枚封入)
5/24開催メインキャスト出演イベント<昼の部>チケット優先販売申込券
<出演>
ファイルーズあい(えりぴよ 役)、 立花日菜(市井舞菜 役)、 本渡楓(五十嵐れお 役)、 長谷川育美(松山空音 役)、 榎吉麻耶(伯方眞妃 役)、 石原夏織(水守ゆめ莉 役)、 和多田美咲(寺本優佳 役)、 伊藤麻菜美(横田文 役)、 前野智昭(くまさ 役)、 山谷祥生(基 役)予定
<場所>
メルパルクホール(Googleマップ)
〒105-8582 東京都港区芝公園2-5-20
映像特典
ノンクレジットオープニング
ノンクレジットエンディング
- この記事のURL: