そうだ アニメ，見よう：第180回は赤坂アカ氏×横槍メンゴ氏の「【推しの子】」。国内外のアニメファンに衝撃を与えた初回90分放送の内容とは

　「かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦」で知られる赤坂アカ氏が原作を手掛け，「クズの本懐」の横槍メンゴ氏が作画を担当する漫画「【推しの子】」（ヤングジャンプコミックス/既刊11巻）。「週刊ヤングジャンプ」で連載中の本作は，2021年に「第5回みんなが選ぶTSUTAYAコミック大賞」で3位，「次にくるマンガ大賞 2021」でコミックス部門1位を受賞し，2023年3月の時点でコミックスの累計売り上げが500万部を突破しているヒット作品だ。
　というわけで，「そうだ アニメ，見よう」第180回のタイトルは，同作をアニメ化した「【推しの子】」（毎週水曜日23時00分〜/TOKYO MX，ABEMAほか）。制作は動画工房，シリーズ構成は「プリキュア」シリーズや「ゆるキャン△」の田中 仁氏が担当。監督は「私に天使が舞い降りた！」や「恋する小惑星」を手掛けた平牧大輔氏が務めている。なお，作品の性質上，いろいろとネタバレが含まれているので注意してほしい。

「【推しの子】」

　田舎の産婦人科医・ゴロー（CV：伊東健人）は，アイドルの星野アイ（CV：高橋李依）を推すアイドルオタクだ。12歳で亡くなった患者の少女・さりな（CV：高柳知葉）の影響でその道に目覚めてしまったのだという。そんなゴローの元にある日，活動休止中のアイが双子を身ごもった状態で現れた。

　子供を産むこともアイドル活動も辞めないと言うアイに，主治医として付き添うゴローだが，アイの出産日にゴローはアイのストーカーによって殺されてしまう。そして，ゴローはアイの子供，星野愛久愛海（アクア，CV：大塚剛央）としてなぜか生まれ変わった。一方，双子の妹である星野瑠美衣（ルビー，CV：伊駒ゆりえ）の中身も転生者で，こちらはさりなが生まれ変わった姿だった。2人はふとしたことから，互いに転生者であることに気づくが，その中身までは知らないままだった。


　2人は，アイドル活動を再開したアイを応援しつつ，すくすくと成長していく。普段はマネージャーの子供という体でアイの現場に同行したりしていた2人だが，やがてアクアは，アイの出演映画に早熟な子役としてデビューすることになる。
　そして，映画出演をきっかけにアイは人気が急上昇し，ついに東京ドームでのライブを控えるまでになった。しかし，アイは自宅に押しかけてきた，かつてゴローを殺したストーカーの凶刃に倒れてしまい……。

衝撃の第1話「Mother and Children」

　アイドルグループ文化が浸透し，アイドルファンの間で使われていた“推し”という単語も一般的なものとなった。本作は，そんな推しアイドルの子供＝推しの子たちの物語となる。しかも，自分が推しアイドルの子供に転生するという，かなりファンタジーチックな設定で，双子の妹も転生者という徹底ぶり。あまりに斬新なアイデアに，さすが「かぐや様」を世に送り出した赤坂氏だと，ひとしきり感心させられた。


　その設定から，当然ストーリーは一風変わったアイドルものだろうと思っていたが，90分拡大枠の第1話「Mother and Children」の視聴後に，その考えも浅はかだったと思い知らされた。シナリオが進むにつれ，アイドルものから，芸能界のリアルを描く業界もの，ついには「2人の父親はだれなのか？」というミステリアスなお話へと変貌していく。なかなかに衝撃的で，誰も予想がつかないような展開に驚かされた人も多いはずだ。

歴代1位の高評価のワケ

　初回が90分という映画並みの特別枠でスタートした本作は，その第1話のインパクトで，国内のみならず世界のアニメファンを驚かせた。日本のアニメや漫画を専門とした海外の大手サイト「My Anime List（MAL）」では，「鋼の錬金術師」や「進撃の巨人」を超えて，歴代トップの評価をたたき出しているという。

　なぜそこまで高い評価を受けているのか？　それは，斬新な設定と衝撃的なストーリー展開もさることながら，目の肥えたアニメファンをうならせた動画工房の作り上げる画面のクオリティの高さに一因があるのではないか。
　アイの歌唱シーンや人物のしなやかな動きなど，手書きアニメならではの柔らかいタッチと，ビビッドな色彩に満ちた各シーンは，見ているものをグイグイと画面に引き込んでいく。派手な戦闘シーンがあるわけではないが，日常の細かいシーンも丁寧に仕上げられていて心地良い。特徴のある横槍氏の絵柄をアニメに落とし込んでるのも好印象だ。


　こうしたこだわり抜いた画面作りがアイやアクア，ルビーたちキャラクターを魅力的なものに仕上げていく。アニメーションはやはり総合芸術なのだと再確認させられた。

YOASOBI＆女王蜂の新曲が花を添える

　そして，その物語を盛り上げているのが，YOASOBIのオープニング主題歌「アイドル」だ。YOASOBIの曲は，「BEASTARS ビースターズ」や「機動戦士ガンダム 水星の魔女」などでもそうだったように，アニメとの親和性が高く，主題歌として印象に残りやすい。今回の曲も本作にマッチした軽快な曲で，街中などで耳にするとつい口ずさんでしまいそうになる。なんでも，赤坂氏が書き下ろした小説「45510」をもとに楽曲を制作したのだとか。


　また，女王蜂も新曲「メフィスト」をエンディング主題歌として提供している。こちらは，ゾクッとするようなバラード曲。願いの悪魔「メフィスト」の歌なのだそうだ。どんな意味が込められているのか，楽曲が収録されているPVが公開されているので，自分の耳で確かめてほしい。

アクアとルビーの物語を展開

　初回の90分枠は，原作1巻をまるまる描いたものだった。そしてこの第1巻は「【推しの子】」という作品を語る上で重要なプロローグとなる。どこで切っても，「【推しの子】」の持つ物語のインパクトは薄れていただろう。これを削らずに1話として放送した制作陣の英断には頭が下がる思いだ。

　第2話以降は，ストーリーが大きく展開し，アクアとルビーが中心の物語となる。2人が“推し”であった母親・アイの生き様をどう受け取り，どう生きていくのかが気になるところだ。大作ひしめく今期でもトップクラスの注目作となった「【推しの子】」。アニメ化がきっかけで，
本作を“推し”始めた人も多いはずだ。

TVアニメ「【推しの子】」公式サイト

TVアニメ「【推しの子】」公式Twitter

放映データ
2023年4月〜
毎週水曜日23時00分〜/TOKYO MX，ABEMAほか

キャスト
アイ：高橋李依
アクア：大塚剛央
ルビー：伊駒ゆりえ
ゴロー：伊東健人
さりな：高柳知葉
アクア（幼少期）：内山夕実
有馬かな：潘めぐみ

スタッフ
原作：赤坂アカ×横槍メンゴ（集英社「週刊ヤングジャンプ」連載）
監督：平牧大輔
助監督：猫富ちゃお
シリーズ構成・脚本：田中 仁
キャラクターデザイン：平山寛菜
サブキャラクターデザイン：澤井 駿
総作画監督：平山寛菜、吉川真帆、渥美智也、松元美季
メインアニメーター：納 武史、沢田犬二、早川麻美、横山穂乃花、水野公彰、室賀彩花
美術監督：宇佐美哲也(スタジオイースター)
美術設定：水本浩太(スタジオイースター)
色彩設計：石黒けい
撮影監督：桒野貴文
編集：坪根健太郎
音楽：伊賀拓郎
オープニング主題歌「アイドル」YOASOBI
エンディング主題歌「メフィスト」女王蜂
音響監督：高寺たけし
音響効果：川田清貴
アニメーション制作：動画工房

◆Blu-ray＆DV情報

【推しの子】Blu-ray＆DVD 1
2023年６月28日（水）発売

【Blu-ray】
品番：KAXA-8601　価格：￥9,900（税込）

【DVD】
品番：KABA-11371　価格：￥8,800（税込）
収録内容：第１話＋特典映像

初回生産特典

• キャラクターデザイン・平山寛菜描き下ろしデジパック
• スペシャルケース
• スペシャルブックレット
• 特製リーフレット
【推しの子】Mother and Children入場者プレゼント：キャラクターデザイン・平山寛菜描き下ろしミニ色紙イラスト全4種を再録

• 絵コンテ集
• イベントチケット優先販売申込券（昼の部）

◆毎回特典

• 映像特典：【OSHI NO KO】Behind the Scenes
• オーディオコメンタリー
※商品仕様・価格などは予告なく変更になる場合がございます。
(C)赤坂アカ×横槍メンゴ／集英社・【推しの子】製作委員会