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Nordic Game Discovery ContestのREBOOT Develop予選で激戦を繰り広げたインディーズゲーム2作品をレポート
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印刷2019/04/16 14:59

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Nordic Game Discovery ContestのREBOOT Develop予選で激戦を繰り広げたインディーズゲーム2作品をレポート

 クロアチアで開催されたゲーム技術のカンファレンス「REBOOT Develop」では,インディーズゲームも多数展示されていた。昨今,インディーズゲームの過当競争が問題視されているとはいえ(あるいはそれだからこそ),インディーズゲーム展示コーナーは活気にあふれていたのだ。
 そんな中でも,ここでは特に注目のゲーム2作品に絞って紹介したいと思う。ルーマニアのデベロッパが開発中の尋問ゲーム「Interrogation」と,エストニアとロシアの開発者が作っている2人用アクションゲーム「TVVO」だ。

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Interrogation:
腐敗した悪辣な尋問で「真犯人」を逮捕せよ


 まずは「Interrogation」から見ていこう。
 この作品は,警察官であるプレイヤーが容疑者を尋問して,真犯人に罪を自白させるのが目的となる。舞台となるのは架空の国家だが,そこでは「解放戦線(Liberation Front)」と名乗るテロリストグループが活動を行っており,プレイヤーは解放戦線のメンバーを看破して逮捕したり,彼らの隠された狙いを引き出すことになる。職業はまったく異なるが,「Papers, Please」を想起しもらえれば,ゲーム全体の雰囲気は分かってもらえるかと思う(本作はより「ノワール」寄りだが)。 

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 ゲームとしては「会話パズルゲーム」としてデザインされており,プレイヤーは容疑者に対して「何を」「どのように聞くのか」を選択肢から選ぶ。すると容疑者はその質問に答えるだけでなく,プレイヤーに信頼を寄せたり,恐怖を感じるようになる。
 このようにして,信頼感や恐怖感をうまく利用しながら,容疑者に真相を自白させるのが理想の展開だ……が,やりようによっては「テロリストとして起訴されたくなければ,この犯罪は自分が犯したと自白しろ」といった,明らかに危険な方向から自白を引き出すこともできる。

 ちなみに,本作はあくまでノワールものなので,選択肢として拷問や暴力が登場することもある。尋問は録音されているが,録音を停止すれば暴力を振るって怯えさせることすら可能になるのだ。取り調べの透明化って大切ですね,と痛感せざるを得ない仕様である。

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 ゲームは,尋問によって事件を解決していくことで進行し,現状では1尋問=1ステージという単位で進んでいく(1回の尋問で複数人を尋問することもある)。
 また,尋問だけでなく,さまざまなスペシャリストからなる捜査チームを編成し,予算を使って特別な作戦を実施するといった,マネジメント要素も備えている。みんなが嫌いな「報告書を書く」要素もゲームに取り込まれており,ゲームの幅はなかなか広い。
 とはいえ,あくまで本作の中心は尋問であり,会話(と言葉ないし物理的暴力)によって容疑者を追い詰めていくという体験は,恐ろしくも得難いものと言える。

チームをマネジメントしたり,報告書を書いたり
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 さて,開発途中の本作には,いくつか問題点がある。
 ひとつめの問題は,現状では「会話パズル」と題されてはいるが,パズルとしてはまだまだ練り込みが必要だと感じられる点が多々あるということだ。安心感や恐怖を表示するゲージが小さすぎることもあって,「この選択肢によってこう変わった」という,一種の進捗感が得にくいのも悪影響を与えているように思える。

 もうひとつの問題はUIだ。本作は膨大なテキスト量を有するゲームであるにもかかわらず,英語表現のニュアンスの違いを正確に読み取れないと,適切な判断ができない。一方で英語を読めるから大丈夫かと言えば,どうしてもシナリオライターとプレイヤーでセリフの解釈が違うといったことが起こり得る。「この発言にはどのような感情が乗るのか」「どのような反応を引き出そうとしているのか」という点については,アイコンなどで表示してしまっても良かったのではないだろうか。

 しかし,本作はまだまだ未完成の作品であり,これからシナリオも追加されていくそうだ。各種UIの改善にも大いに期待できる(リリースは早くて2019年夏〜秋とのこと)。ゲームの持つ雰囲気はすでに素晴らしいだけに,最後まできっちりと仕上げてほしいところだ。

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TVVO:
「なんだか見たことがあるゲーム」を越えられるか


 もうひとつの注目作は「TVVO」だ。この作品は2人用のアクションゲームで,「2人で協力してステージをクリアする」という構造になっている。

 アクションの中心となるのは,2人がキャッチボールする「月」だ。
 本作はゲームパッドでのプレイが前提となり,ボタンを押すとパートナーに向かって「月」が飛んでいく。この「月」の軌道上に敵がいればその敵にダメージを与えるし,障害物があれば障害物を破壊する。それ以外にも松明に点火したり,重量物を動かしたりと,さまざまなパズルアクションが用意されている。
 またこの「月」は,いわゆる溜め撃ちも可能となっている。この場合「月」は放射線を描いて飛び,2人の中央付近で爆発を起こしてから,パートナーへと飛んでいく。爆発の範囲は広めで威力も高いため,「月」を使って敵を倒す場合は溜め撃ちを上手く使っていきたい。

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右下のプレイヤーが「月」を持っている状態。ここでボタンを押すと「月」をパートナーに投げ渡す
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「月」は軌跡を描いて飛んでいく

 さて,本作の評価は難しい。「TVVO」はぱっと見た感じだと「あまり面白そうに見えない」。しかもインディーズゲームの世界には,いくつか有名な「カップルで楽しむ」系の協力型ゲームが存在しており,「どうせその手のゲームなんでしょ?」という先入観を抱かれやすいだろう。
 しかしながら,本作はアクションゲームとして大変に良くできており,操作感覚はとてもスムーズだし,「月」をキャッチボールしているだけでもなかなか楽しい。

 また,「月」の当たり判定の大きさ(特定のオブジェクトに「月」をぶつけることでクリアできるミッションにおいてはとても大事)や,敵を攻撃する場合のオートエイム能力など(敵を2人で挟み込むようにして「月」をキャッチボールすれば良いのだが,多少敵の位置が逸れても自動的に追尾してくれる),「プレイヤーがこうしたい」ことに対して非常に気持ちの良いレスポンスが返ってくる。
 つまり,本作は典型的な「遊んでみたら面白かった」系の作品であり,会場でも多くのプレイヤーが筆者と同じ感想を抱いたようだ。

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遊んでるい人たちは皆,すごく楽しげな顔になる

 とはいえ,インディーズゲームが大量に氾濫する現代において,「ぱっと見て面白そう」ではない作品は,極めて高確率で苦戦することになる。ビジュアルはなかなか個性的だし,世界観も独特だしで,アピールする要素はふんだんに盛り込まれているのだが,もう一段階何らかの工夫が必要となりそうだ。
 しかし,本作は開発開始からまだ3か月しか経過しておらず,「まずは1ステージ作ってみた」という状態にある。ここから先,ステージ数を増やしたり,さまざまなギミックを追加したりと,まさに「ゲーム開発は始まったばかり」だ。その段階において,最も基本となる「アクションの気持ちよさ」「協力して何かをテンポよく成し遂げていく達成感」が丁寧に作り込まれているというのは,かなり大きなアドバンテージと言えるだろう。

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3か月でここまで作ったというのがまず凄い。パズルの難度やヒントの提示には粗も目立つが,このあたりはまさにこれからの課題と言える


 ちなみに今回紹介した「Interrogation」と「TVVO」は,Nordic Game Discovery Contesthttps://discovery-contest.nordicgame.com/ )のREBOOT Develop予選に参加した作品だ。プロの開発者やパブリッシャを前に,彼らと質疑応答を繰り返しながら作品をアピールするという形式で行われたこの予選では,「Interrogation」が見事勝利を勝ち取っている。

 Nordic Game Discovery Contestの決勝は5月22日〜24日にかけてスウェーデンで開催される「Nordic Game 2019」が会場となる。各地の技術カンファレンスにおける予選を勝利した16作品(ちなみにオーストリア会場での勝者は「Path Out」)から最優秀賞が選ばれることになる。
 しかしながら,REBOOT Develop予選では3作品中2位となった「TVVO」も十分に面白い作品だ。これから世界的なヒット作となるかもしれないインディーズゲームを探している人であれば,Nordic Game Discovery Contestの予選で負けた作品にも注目しておくと良いのではないだろうか。

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予選はREBOOT Develop 2019の初日にセッションのひとつとして行われた
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2回のアピールと2回の質疑応答に対して審査員が「どれが一番良かったか」を示し,総合点の高いゲームが勝者となる
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これまでの予選通過作品
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予選の直後,審査員がすぐに試遊に駆けつけるひと幕も

「Interrogation」公式サイト

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