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ドレスデンのドイツ連邦軍軍事史博物館で,中世から現代までの軍事にまつわるあれこれを堪能してきた
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印刷2015/12/19 12:00

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ドレスデンのドイツ連邦軍軍事史博物館で,中世から現代までの軍事にまつわるあれこれを堪能してきた

 本日(2015年12月19日)掲載した記事でお伝えした「軍事史研究会」の年次大会だが,それが開催されたドイツ東部の街ケムニッツから列車で1時間ほどにある都市ドレスデンには,ドイツ最大の総合的な軍事博物館である「ドイツ連邦軍軍事史博物館」が存在している。
 過去,「ムンスター戦車博物館」「コブレンツ軍事技術博物館」など,ドイツの軍事博物館に取材を行ってきた4Gamerとしてはここを素通りするわけにはいかない。
 ということで,さっそく行ってきました。歴史的な建築物が立ち並ぶドレスデンの街は,何やらクリスマスで盛り上がっていたが,筆者には関係ない。

「ラスボスがいる城です」と言われても納得してしまいそうな外観の「ドイツ連邦軍軍事史博物館」
画像集 No.001のサムネイル画像 / ドレスデンのドイツ連邦軍軍事史博物館で,中世から現代までの軍事にまつわるあれこれを堪能してきた

研究者の目に歴史ゲームはどのように映っているのか。ドイツで行われた軍事史研究会をレポート


 お目当ての軍事史博物館は,ドレスデン中央駅からトラム(路面電車)で北に20分程度のところにある。最寄り駅は「シュタウフェンベルク通り」で,この名前はヒトラー暗殺計画の中心人物だったクラウス・フォン・シュタウフェンベルク伯爵にちなんでいる。日本でも,映画「ワルキューレ」などでご存じの人も多いのではないだろうか。
 博物館は2011年に大規模な改築が行われたばかりで,まだ新しい。掲載した写真のように建物の外観は非常にユニークで,クラシックなデザインと前衛的なデザインが融合したような感じだ。こうした設計思想は,連邦議会議事堂など,ドイツのほかの公共建築物にも共通している。

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金属の構造物は19世紀の建物を切断するように設置されている
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軍事史博物館のお隣は,ドイツ連邦軍の基地。見学は無理だった
エルベ川の対岸から見たドレスデン旧市街。普通の日本人観光客は,こちらを目指す
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中世から現代まで,戦争に満ちたドイツ史の流れを知ろう


 この博物館は,大きく分けて2つの区画から成り立っている。まず,照明を抑えた旧館では,1300年代から現代までのドイツ地域における戦争や軍事技術に関する資料が展示されている。普通「博物館」と聞いて想像するのは,こちらのほうだ。
 戦車などの兵器の展示が主体の軍事博物館とは異なる,ドレスデンの大きな特徴は,社会的,文化的側面から見た軍事技術の変化や,ドイツ史の推移を説明している点だ。そのため「軍事史博物館」の名が付けられている。
 兵器の展示に加えて,兵器にまつわる史料や社会背景が(ドイツ語と英語で,という点が日本人にはつらいが)丁寧に説明されているのだ。

旧館に入って最初の展示が,このインパクトのある射石砲。ちなみに名前は「ぐうたらメイド」(Faule Magd)
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中世後期や近世のコーナーには,モーニングスターや甲冑など,日本のファンタジー作品でもおなじみの武具や防具が並ぶ
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時代が下ると,銃器の展示も増える。これでもか,というくらい展示品を並べるのは,ドイツのほかの歴史博物館とも共通している
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活版印刷術の普及により,勝敗速報を兼ねた会戦の布陣図も各地に広まっていった
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こちらは,創傷の種類について書かれた医術書。見るだけで痛そうなイラストだ

 それにしても,中世から近世にかけての展示を回っていて強く感じるのは,ドイツ史がいかに大規模な戦争に満ちているかだ。16世紀の農民戦争や17世紀の30年戦争,そして18世紀のオーストリア継承戦争七年戦争などは,それぞれの戦争をテーマにした博物館が建ってもおかしくない。
 だが,この軍事史博物館では各出来事の展示は比較的あっさりと済まされていて,それがかえって凄みを感じさせる。しかも訪問者の多くは,この先に待ち構えているのが,ナポレオンに対する諸国民戦争,ドイツ統一戦争,2度の世界大戦など,さらにヘビーな戦争であることを知っている。

19世紀前半のさまざまな展示品。ナポレオンの軍事文化が近世と現代との中間期に位置することが,よく分かる
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1848年に設立された,ドイツ統一海軍の海軍旗。この海軍は1852年までしか存続しなかったため,きわめてレアな品だ
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左は日本にも根強いファンがいると言われる(?)ピッケルハウベ。このあたりの展示から次第に「プロイセン色」が強くなっていく
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1870年の普仏戦争のきっかけとなった,エムス電報事件を知らせる当時の新聞
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砲弾の改良や弾道学など,科学技術と絡めた展示も見られる

 第一次,第二次世界大戦の展示スペースも,これまでの区画に負けず劣らずボリューム感たっぷりだ。戦車や航空機などの大型展示物こそないものの,パンツァーファウストなどの小中型兵器や各種模型,軍服などが数多く展示されており,まずその量に圧倒される

19世紀末のイギリスとの建艦競争の推移を表した展示。ドイツの軍艦は模型で,イギリスの軍艦は切り抜きで表示されており,当時のドイツの「いろいろがんばったけど,イギリスの建艦速度には勝てませんでした」感がよく現れている
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今から100年前のミラノ万博では,当時最先端の2連装砲塔なども展示されていたらしい
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戦車の館内展示はないが,砲身は複数見ることができる

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「World of Tanks」では,ドイツのTier 1戦車として出てくる軽トラクターの模型
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館内展示唯一の実物戦車,ゴリアテ
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パンツァーファウスト2基を搭載した,自転車

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第二次世界大戦関連の展示になると,その数も膨大だ
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 2度の世界大戦で終わりかと思ったら,大間違い。この軍事史博物館は,西ドイツ連邦軍,東ドイツ国家人民軍の展示も充実しており,現代史ファンにとっても嬉しい

ドイツ語や英語が分からなくても,東ドイツ関連の展示は「とりあえず赤い」ので簡単に見分けがつく
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西ドイツと東ドイツの兵舎の比較。ホーネッカー書記長が存在感を示している以外は,案外違わない
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現在まで続くドイツ連邦軍のコーナーは,東ドイツと比べてさすがに現代的
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テーマ別展示の新館と
数多くの軍事車両が陳列された屋外展示もお忘れなく


 展示はまだ続く。中世から現代までを時系列順にたどる旧館に対し,新館のほうは,時を越えてさまざまなものが陳列されている。展示品の数もさほど多くないので,真面目な内容の旧館を回ったあとでは,肩の力を抜いて鑑賞できる。

第二次世界大戦時の特殊潜航艇,マーダー。戦果はお察しのとおり
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(左)日露戦争の頃の,ドイツの自転車メーカーの広告。「戦地での使用にも耐える,タフな自転車ですよ」という感じ。(右)V2ロケット。こうやって見るとやっぱり大きい
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(左)こういうのが雨あられと降ってきたら,まず助かるまい。(右)列車砲「ドーラ」の砲弾なんてのもある
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ソユーズ29の帰還船。この博物館の展示品としてはめずらしい
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(左)「軍事と動物」のコーナー。ドイツには戦象はいないはずだが,戦争に使われた動物を語るうえで,やはり象は外せないのだろう。(右)「軍事とおもちゃ」のコーナーでは,ヴィンテージもののゲームも数多く並んでいる
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 博物館の外には,東西ドイツの軍事車両も数多く展示されている。

(左)ドイツ連邦軍で使用されたアメリカのM109 A3GEA2自走榴弾砲。(右)東ドイツで運用されたT-72M中戦車
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(左)陸上車両だけでなく,空や海の兵器も。これは東ドイツの131/4計画型快速魚雷艇。(右)フィアットG91 R/3戦闘爆撃機
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 以上のように,ドイツ連邦軍事史博物館は非常に内容の濃い博物館であり,じっくり見て回ろうとすると半日以上かかると思っていいだろう。実は筆者も,見学の翌日,乗るはずだった列車を遅いものに変えて,もう一度見に行ったほどで,それくらい,充実している。

 もしドレスデンを訪れることがあれば,ぜひ足を伸ばしてほしい。かつてユネスコ世界遺産にも指定されていた歴史の街,ドレスデンの別の顔が見えてくるはずだ。

 さて,クリスマスらしい写真を一枚も載せないのもどうかと思うので,最後に博物館内に飾られていたクリスマスツリーを掲載して,このレポートを締めくくろう。メリークリスマス(棒)

研究者の目に歴史ゲームはどのように映っているのか。ドイツで行われた軍事史研究会をレポート

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