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「エヴァVR」「ガンダムVR」を手がけたクリエイターが語る,アニメIPのVRコンテンツの作り方とは。「BitSummit」で行われた講演をレポート
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印刷2017/05/22 19:29

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「エヴァVR」「ガンダムVR」を手がけたクリエイターが語る,アニメIPのVRコンテンツの作り方とは。「BitSummit」で行われた講演をレポート

画像集 No.001のサムネイル画像 / 「エヴァVR」「ガンダムVR」を手がけたクリエイターが語る,アニメIPのVRコンテンツの作り方とは。「BitSummit」で行われた講演をレポート
 2017年5月20日に京都府「みやこめっせ」にて開催されたインディーズゲームイベント「A 5th of BitSummit」では,「アニメIPのVRを創る時に考えるコト」と題した講演が行われた。登壇者は「エヴァンゲリオンVR The 魂の座」「ガンダムVR『ダイバ強襲』」といったVRコンテンツを手がけた「コヤ所長」と「タミヤ室長」。2人が「現実への超解釈」について語った講演の模様をレポートする。


発想を逆転させなければならない,アニメIPのVR


 壇上には「コヤ所長」こと,バンダイナムコエンターテインメント AM事業部 エグゼクティブプロデューサーの小山順一朗氏と,「タミヤ室長」ことAM事業部 AMプロデュース 1部 プロデュース 4課 マネージャーの田宮幸春氏が登場。講演は,両氏が手がける「Project i Can」の説明からスタートした。

「コヤ所長」こと小山順一朗氏(左)と,「タミヤ室長」こと田宮幸春氏(右)
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 「Project i Can」とは,「さあ,取り乱せ」をキャッチコピーに,「本能に訴えかける最高の実在感を伴うVRエンタメを追求するプロジェクト」だ。最新作「エヴァンゲリオンVR The 魂の座(以下,エヴァVR)」が2017年夏に新宿・歌舞伎町の「VR ZONE SHINJUKU」で公開を控えているほか,これまでもアニメを原作とした「ガンダムVR『ダイバ強襲』」「装甲騎兵ボトムズ バトリング野郎」「ドラえもんVR『どこでもドア』(以下,ドラえもんVR)」,そしてオリジナルの「高所恐怖SHOW」「脱出病棟Ω」といったVRコンテンツを発表している。

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 その上で,アニメIPのVRコンテンツを作る場合は,オリジナルの場合と発想を逆にしなければならないとコヤ所長は語る。
 オリジナルだと,まず「どんな体験をさせたいか」というテーマがあり,そこで得られる驚きを最大限にするための工夫が行われたという。例えば「高所恐怖SHOW」では,高い所にいる体験をテーマとし,その驚きを最大限引き出すため「高さ300mあるビルの縁から板きれが伸びており,その先にいる猫を助けなければならない」という設定が考えられている。高所にいるという,皆が共通認識として持っている感覚を最大化するための工夫がされたわけだ。

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 一方,アニメIPの場合,舞台にできるのが原作に登場する場所に限られており,その中でどんな体験を生み出すかを考えなければならなかったという。先の例からすると「300mの高所にいる体験をさせたい」と思っても,原作にそうした場所が存在しないのであれば,アニメIPのVRコンテンツとしては成立しない。原作とはかけ離れたものになってしまうからだ。あくまで原作に登場する場所でVRコンテンツに向いた驚きを探し出さなければならないのである。

 そのため,「現実の超解釈」という難しい作業が必要になるという。原作では,演出を優先して誇張されたり,曖昧にされている部分があるが,ここをしっかりと考察・解釈しないと,VRコンテンツにした時に説得力のあるものにならないのだ。

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 例えばコヤ所長が「機動戦士ガンダム 戦場の絆」を作った際にこんな問題があったという。作中に登場する母艦「ホワイトベース」は巨大なメカとして描かれているが,プレイヤーの視点をガンダムの目の位置に設定したところ,原作のような巨大さを感じられなかった。演出を優先した誇張が失われてしまい,原作を再現したものにならなかったわけだ。そこでコヤ所長は,ホワイトベースの大きさを実際の3倍にするという「現実の超解釈」を施すことで,原作で描かれる巨大感を再現したという。
 また,「エヴァVR」を制作した際はエヴァンゲリオンの全長が,「ドラえもんVR」ではどこでもドアの高さが,それぞれ明確に設定されていなかったため,制作サイドで決めなければならなかったという。どちらも現実の人間が作品世界を体感するVRコンテンツを作る上では重要な問題だ。演出を優先して曖昧になっていた部分に対し「現実の超解釈」を行ったわけである。
 もちろん,これら「現実の超解釈」は,原作サイドから見ても納得がいくものになっていなければならないため,苦労が絶えないそうだ。しかし,こうした高いハードルを乗り越えると,プレイヤーが感動してくれるため,アニメIPのVRコンテンツを作る上での頑張りどころなのだとタミヤ室長は語った。

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王道から逃げず,プレイヤーが“まず”求めるものを追求する


 バンダイナムコエンターテインメントでアニメIPをVRコンテンツにする場合,ブレインストーミングで出るアイデアはなぜか奇をてらったものになることが多いそうだ。例えば「ドラゴンボール」がテーマだった時は「桃白白になって,自分の投げた柱に乗って飛びたい」というものだったという。提案者に聞いてみると「すでにドラゴンボールのゲームは色々あるから,こうした部分しか残っていない」と思ったことからこのアイデアになったそうだが,タミヤ室長は「お客さんが“まず”何をやってみたいかを真剣に考えることがとても大事だ」と指摘する。

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 そしてタミヤ室長は「企画者としては,“VRなら今までできなかったシチュエーションを再現できる”という発想に陥りがち。しかし,何度も取り上げられてきた王道シチュエーションであっても,実体験できるVRコンテンツなら,必ず今までになかったものになる。ここから逃げずにどうなるのかを追求してほしい」と聴講者にエールを送った。


プレイヤーをヒーローにせず,あくまで自分自身が体験するVRに


 アニメIPでVRコンテンツを作る上では,プレイヤーを「ヒーローにしない」こともポイントなのだという。ここでいうヒーローとは,原作コンテンツの主人公という意味だ。例えば「エヴァVR」では,プレイヤーはシンジやレイ,アスカ達チルドレン(正規パイロット)ではなく,彼らが不在の時に選ばれた,シンクロ率の低い「臨時パイロット」となっている。制作するにあたってのテーマは,チルドレンではなく“俺(プレイヤー自身)がエヴァンゲリオンに乗った場合,どうなるか”がだったというが,原作を再現するのであれば,チルドレンが乗っている設定にすべきのはずだ。なぜ,ここではそうしなかったのだろうか。
 その理由は,プレイヤーが原作の主人公達のようにうまくできなかった場合,折角の没入感が損なわれてしまうことにあるのだという。こうした現象を,タミヤ室長は「実在感の崩壊」と呼ぶ。これを防ぐためには「プレイヤーはあくまで一般人としてその世界に参加する」というアプローチが有効だという。

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 「エヴァVR」の場合,“自分がシンジになった”という触れ込みでエヴァンゲリオンに乗ったとしよう。原作を再現してはいるのだが,もしも使徒に負けてしまった場合,落胆してしまい,実在感を楽しむよりも,VRコンテンツであることを強く意識してしまうだろう。しかし,“シンジではなく臨時パイロットになったプレイヤー自身”とすれば,自分がエヴァンゲリオンに乗っている感覚は強くなるし,例えうまくいかなくても納得できるというわけだ。

 そして,タミヤ室長は,アニメIPのVRを作る上で大切なことを「多くの人がまずやりたいと考える王道体験を,想像力豊かに現実解釈することで,期待を越えるギャップを作ることが重要である」とまとめる。「夢が叶った!(王道体験)」と「こうだったのか−!(現実解釈)」を組み合わせることで「期待通り! 予想以上!(期待と,それを越えるギャップ)」となり,ファンが求める新鮮な驚きを持った最強体験ができると考えているのだという。

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 最後に両氏は「現時点では言えないことも多いですが,VR ZONE SHINJUKUにはこうしたネタをたくさん仕込んでありますので,期待してください」と語り,講演を締めくくった。

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「ProjectiCan」公式サイト

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