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プログラミングは手段であり,プログラムすることが目的ではない。埼玉ゲームシティで行われた子供向けワークショップをレポート
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印刷2019/03/06 16:27

イベント

プログラミングは手段であり,プログラムすることが目的ではない。埼玉ゲームシティで行われた子供向けワークショップをレポート

 2019年3月1日と2日に,埼玉県さいたま市にある大宮ソニックシティにて,ゲームイベント「埼玉ゲームシティ」が開催され,ゲームに関する様々なプログラムが実施された。本稿では,その中から子供向けのゲーム開発ワークショップ「スペースインベーダーでプログラミングを学ぼう!」をレポートする。

 まずは,「埼玉ゲームシティ」について紹介しよう。埼玉ゲームシティは,埼玉県さいたま市にある複合施設,大宮ソニックシティを運営する公益財団法人埼玉県産業文化センターと,「あそぶ!ゲーム展」の展示などを企画するデジタルSKIPステーションが共催するゲームイベントだ。

 メインステージではeスポーツのエキシビションマッチや,ゲーム実況者による実演,新作ゲーム紹介などが行われていた。また,有料展示コーナーでは2015年に開催された「あそぶ!ゲーム展 STAGE.1 デジタルゲームの夜明け」が設置され,2日目には音楽ライブ,「THE GAME MUSIC CITY!! #1」も開催されるなど,様々な企画が用意されていた。

 今回のイベントは,「教育普及」という側面を持っている。イベント全体をみて,今回のワークショップがまさにこの“教育普及”の中心にある企画だ。

吉田光広氏
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 当日は,タイトーと,ITやプログラミング専門の学習塾「プロクラス」がコラボし,2回のワークショップが行われた。子供向けプログラミング教材,「スクラッチ」を使用し,「スペースインベーダー」を制作しながら,プログラミングを体験してもらおうという内容だ。小学3〜6年生を対象として,各回15組30名,計60名が参加。3年生は保護者必須で,それ以外の子供でも保護者同伴可となっていた。運営サイドの話では,抽選申込になるほどの反響で,かなりの手応えを感じたという。

 担当講師は,「プロクラス」の代表を務める吉田光広氏(以下,吉田氏)だ。20年以上のキャリアを持つベテランプログラマーであり,Webやゲーム開発を行う会社の経営者でもある。そのほか,ゲーム開発会社への支援やITを利用したコンサルティングを行ったり,社会人や子供たちへITスキルやSTEAM教育などを実施したりと,人材育成にも力を入れているという.

2020年の学校教育におけるプログラミング必修化。アメリカ,イギリスと比べても日本は5年近く遅れているという====
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まずはプログラムとは何かについて説明する。分かりやすい例と「運動会のプログラム」を提示。競技の順番,ルールや競技中の進行,演出など順を追って進める。プログラミングも基本的には同じだと説明された
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続いて「スクラッチ」の使い方。難しいコードではなく,命令が書かれたブロックを組み合わせ,キャラクターを動かしてみる。見た目が分かりやすく,簡単なプログラムを直感的に操作できるので非常に使いやすい
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いよいよ「スペースインベーダー」のプログラミングだ。時間の関係で,今回行うのは自機の移動と,弾の発射に関する部分をピックアップした内容となった
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単に子供たちに手順を教えるのではなく,どのような手順を踏む事で動きがつくのか,しっかり考えさせる
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すでに「スクラッチ」を使ったことがある子供も。吉田氏の話を聞きながら,すいすいと進める
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何度も子供たちに理解できたか,確認を行う吉田氏。サポートスタッフと共に丁寧に教えていた
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ひっかかりやすいポイントでは,子供たちに3択形式で考えるように指導していた
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講義の最後には用意してあったインベーダーのグラフィックスに,自分が作った自機を落とし込み,実際にゲームをプレイ
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 2回の講義を終了した吉田氏と,タイトーの担当者として講義をサポートしていた針谷真氏に,今回のワークショップについての経緯や所感などをうかがった。


4Gamer:
 どういった経緯でプロクラスとタイトーがコラボすることになったのでしょうか。

吉田氏:
 元々,プログラミング教室をずっとやっていたんですが,2017年から「スペースインベーダー」を教材にしたワークショップを始めました。

針谷真氏(以下,針谷氏):
 縁あって,プロクラスさんと知りあうことになって,ご提案いただいた形です。

吉田氏:
 「スペースインベーダー」ってシンプルな作りで,教材として優秀なんです。自分たちで組み立ててみても,すごい教えやすいコードですし。

針谷氏:
 アルゴリズムですとか,グラフィックスについても作りやすいと思います。思考の部分をしっかりと教えながら,簡単に作れるというのは時間的な面でもちょうどいい教材でしょう。

4Gamer:
 定期的に体験会を行っているそうですが,具体的にどれくらいの規模なのでしょうか。

吉田氏:
 場所的にはそんなに広範囲ではないです。回数はそれなりにやってますが,タイトーさん本社と,「プロクラス」本社のある京都の教室がほとんどですね。

針谷氏:
 大体,タイトーの本社と交互で月一ぐらいの頻度です。


4Gamer:
 今回のワークショップについて,感想を教えてください。

針谷氏:
 ゲーム展という下地があるところでのワークショップだったので,盛況でしたね。

吉田氏:
 いつもは募集のところからトータルでやっていますが,今回は「埼玉ゲームシティ」さんに取り仕切ってもらいました。どんな感じの集まり具合かなと思っていましたが,満席でホッとしましたね。

4Gamer:
 何人か「スクラッチ」経験者の子供たちもいたようですね。

吉田氏:
 ええ。でも,今回は経験者の子たちはもちろん,初心者の子たちもかなり理解が早いと感じました。僕を含めて,サポートスタッフのヘルプが必要なくて,びっくりしたくらいです。

4Gamer:
 プログラミングよりも,思考に注力した講義だと感じました。

吉田氏:
 思考してもらう,ということがこのワークショップの重点なんです。プログラマーの制作過程を体験してもらいつつ,実際に問題を解決するにはどうしたらいいのか,それを考えるのが面白いんです。どうやって問題が発生するのか,その解決方法,手順を考える。これが論理的思考だと思います。プログラムを作るというのはあくまで手段です。これは,大人も子供も関係なくて,ロジカルに考えるというところがポイントですね。お子さんだけでなく,親御さんにもその論理的思考の価値を感じて欲しいと思って考えたワークショップなんです。

針谷氏:
 実際,子供の集中力がこれだけ続くワークショップはあまりないです。遊びながら論理的思考を身につけられるわけです。

吉田氏:
 ゲーム制作に限らず,論理的思考というのは仕事で役に立ちます。例えば会社で資料を作るとしましょう。必要なトピックをパーツとして並べて,ロジックで組み立てることが身についていれば,しっかりした資料が作れますよね。

針谷氏:
 コミュニケーション能力も養われますよね。例えば人の意見を感覚的にではなくロジカルに理解できるようになる。

吉田氏:
 好きなゲームというツールで興味を持ってもらって,楽しみながらどうやって動いているのか,論理的思考で組み立てる。今後も続けていきたいワークショップですね。

吉田光広氏(左)と,針谷真氏(右)
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 イベントでは,親子でプログラミングに熱中している姿が印象的だった。ゲームクリエイターを目指す子供たちに対し理解ある保護者がいるという環境は,若く優秀な人材が育つ可能性を感じさせてくれる。また,ゲーム製作を通して論理的思考を身につけられるという点で,大人にとっても学びのある充実したワークショップだったといえるだろう。

親子でクリアの速さを競っている様子。ガッツポーズが微笑ましい
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