お気に入りタイトル/ワード

タイトル/ワード名(記事数)

最近記事を読んだタイトル/ワード

タイトル/ワード名(記事数)

LINEで4Gamerアカウントを登録
「第2回eスポーツ国際教育サミット2021」開催。教育の現場でeスポーツに取り組む教員たちが意見を交換した
特集記事一覧
注目のレビュー
注目のムービー

メディアパートナー

印刷2021/11/15 17:36

イベント

「第2回eスポーツ国際教育サミット2021」開催。教育の現場でeスポーツに取り組む教員たちが意見を交換した

 2021年11月14日,北米教育eスポーツ連盟 日本本部(NASEF JAPAN)は「第2回eスポーツ国際教育サミット2021」を東京・板橋のCLARK NEXT TOKYOおよびオンラインで開催した。
 第2回となる今回は,実際の教育の現場でeスポーツを活用する教育関係者やその指導を受ける生徒たちが登壇し,講演や発表を行った。

NASEF JAPANスカラスティックディレクターの坪山義明氏(左),会長の松原昭博氏(中央),統括ディレクターの内藤裕志氏(右)
画像集#001のサムネイル/「第2回eスポーツ国際教育サミット2021」開催。教育の現場でeスポーツに取り組む教員たちが意見を交換した

 本題に入る前に北米のNASEFの主旨についてお伝えしておくと,同連盟は「eスポーツを広げること」ではなく「eスポーツを通じて次世代の成長をうながす」ことを掲げて活動している。
 もう少し噛み砕いて説明すると,eスポーツ(やゲーム)を入口に,子どもたちに「社会性」「英語」「チームワーク」を学んでもらったり,プログラミングに必要となる「論理思考」や「IT技術」,映像配信に必要な知識など,「今後の予測不能な社会で,生きる力を養う」ことを目指しているという。
 つまり,子どもたちが大好きなeスポーツを活用し,自発的な学習をうながそうとしている団体というわけだ。

 ビジネスや人材の動きがグローバル化した現在,こうした活動を他国にも広げることは,生徒同士が国を越えたコミュニケーションを経験するきっかけになるなど,多くのメリットがある。そのためNASEF JAPANの活動は米国大使館などが後援している。
 またNASEFはこの活動を日本だけでなく,アジア各国にも展開していきたい思いもあるようだ。
 
基調講演を行う内藤裕志氏
画像集#002のサムネイル/「第2回eスポーツ国際教育サミット2021」開催。教育の現場でeスポーツに取り組む教員たちが意見を交換した

 さて,当日行われた講演や発表のなかでもユニークだったのは「救済策としてのeスポーツ」と題した茨城県立東海高等学校・千葉徹也教諭による講演。現在,新型コロナの流行にともない「孤独感を感じる」「何もやる気がなくなった」「理由もなくイライラすることが増えた」など,生徒たちの気持ちに変化が起きているらしい。

オンライン参加する千葉徹也教諭(モニター)
画像集#003のサムネイル/「第2回eスポーツ国際教育サミット2021」開催。教育の現場でeスポーツに取り組む教員たちが意見を交換した

 千葉氏は神奈川県立藤沢清流高校の教諭だった2018年当時,第1回全国高校eスポーツ選手権の開催を機に,学校にeスポーツ部を発足させたことがある。同校は大学のような単位を選択できるシステムを導入しており,大学進学率6割,部活加入率が9割を超える学校だ。

画像集#004のサムネイル/「第2回eスポーツ国際教育サミット2021」開催。教育の現場でeスポーツに取り組む教員たちが意見を交換した

 そんな「文武両道」がうまくいっているように見える環境でも,「やりたいことがわからない」「うまく自分を表現できない」という生徒は出てくるもの。その受け皿になったのがeスポーツ部だったという。

 せっかく生徒たちが熱心に遊んでいるゲーム,「遊んでおしまい」ではもったいない。eスポーツ,競技として取り組むことで自発的な学習,いわゆる「アクティブラーニング」が可能なのではないか──。
 そんな仮説を立ててeスポーツ部を指導してみたところ,「部活が楽しみになり自発的に登校する」「部活に支障が出ないよう授業の課題提出を怠らないようになる」「相手へのマナーや関係者への感謝など,スポーツマンシップを学ぶ」「チームで戦うことでコミュニケーション力が育つ」など,生徒たちに好ましい変化や成長が見受けられたそうだ。

 中でも「生徒たちが自分の居場所を見つけられる」点が最も重要とのことで,新型コロナの影響で学業や部活動が制限を受けがちな今,オンラインでの活動も可能なeスポーツ部が,孤独感を深める生徒への救済策になるのではと考えているそうだ。
 そしてなにより「eスポーツを通じて成長していく,生徒の姿を見られるのが教師として嬉しい」という。

画像集#005のサムネイル/「第2回eスポーツ国際教育サミット2021」開催。教育の現場でeスポーツに取り組む教員たちが意見を交換した

 ただ,公立校でeスポーツを推進するのは難しい面も多いらしく,中でも大きな壁となるのが機材の不足と,ネットワークのセキュリティポリシーの整備。これに関しては関係者にeスポーツの教育効果をしっかりと説明し,地域の教育委員会などにも働きかけて整備するという地道な取り組みが必要であり,神奈川県での実績がある千葉氏ですら苦労し続けている点らしい。また各種の「支援プログラム」も積極的に利用したほうがいいとのこと。
 こうした公立校におけるノウハウに関しては,各地の教員同士でコミュニティを作り,情報交換を行いたい気持ちも強いそうだ。

画像集#006のサムネイル/「第2回eスポーツ国際教育サミット2021」開催。教育の現場でeスポーツに取り組む教員たちが意見を交換した

 その後サミットでは,高校生による「eスポーツ・クリエイティブチャレンジ」の紹介や,全国の教員による「意見交換ラウンドテーブル」などが行われた。
 
 「eスポーツ・クリエイティブチャレンジ」とは,現代社会が抱える課題をeスポーツで解決するアイディアを競うというもので,エントリー校の中から茨城県の私立水戸啓明高等学校のテーマ「グッコメ!!」が優秀賞を受賞,生徒たちによる発表が行われた。
 発表内容は,ゲーム内やSNS内でのポジティブな発言に対して「ポイント」を付与し,それをゲーム内アイテムの購入に使ったり,リアル世界の「お米」と引き換えられるクーポンとして使用できるという,ネット社会のモラル向上とお米の消費促進を結びつけようというものだった。

画像集#007のサムネイル/「第2回eスポーツ国際教育サミット2021」開催。教育の現場でeスポーツに取り組む教員たちが意見を交換した

 ラウンドテーブルでは「コロナが落ち着いたらオフラインでの合同合宿を行いたい」「遠征先に機材さえあれば,IDだけ持っていけばいいのがeスポーツ部の強み」「新型コロナの感染が落ち着いてきた本校の地域では,すでに生徒たちが『Among Us』を用いた地域活性化イベントを企画している」など,各校のこれからの部活動についての発言や,現状での問題に関する情報交換などが飛び交い,盛況のうちにサミットは締めくくられた。

画像集#008のサムネイル/「第2回eスポーツ国際教育サミット2021」開催。教育の現場でeスポーツに取り組む教員たちが意見を交換した

 なお,NASEFやNASEF JAPANが開催しているイベントや大会では,「マインクラフト」「フォートナイト」「Apex Legends」「Among Us」といった,実際に日本の中学生や高校生がよく遊んでいる欧米のタイトルが使用されることが多い。
 もちろん母体が米国の団体なのだから,このタイトル選定も当たり前といえば当たり前かもしれない。だが「鉄は熱いうちに打て」と言うように,すでに夢中になっている作品を通じて何かを学んでもらうほうが,eスポーツのために「指定されたゲーム」を新規に始めるよりも自然で,学習効果が高いように思えることも確かだ。
 ともかく,今後はeスポーツ振興への取り組みだけでなく,eスポーツやゲームを活用した次世代育成への取り組みが増えていくことは,ほぼ間違いなさそうだ。

「北米教育eスポーツ連盟 日本本部」公式サイト

  • この記事のURL:
4Gamer.net最新情報
プラットフォーム別新着記事
総合新着記事
企画記事
スペシャルコンテンツ
注目記事ランキング
集計:04月23日〜04月24日