「e-SPORTSメシ開発プロジェクト」決勝プレゼンテーション大会レポート。eスポーツと食事をテーマに，高校生たちがさまざまな企画を立案

　角川ドワンゴ学園は，「e-SPORTSメシ開発プロジェクト」の決勝プレゼンテーション大会を，2022年12月16日にオンラインで開催した。
　これは，“eスポーツの世界で活躍するプレイヤーをサポートする食品”を企画・開発することをテーマに，高校生たちが商品企画を立案するものだ。優秀な企画は商品化され，首都圏のローソンで来春に発売される予定となっている。さまざまな着眼点から新商品が企画された，大会の様子をお伝えしていこう。

ドワンゴ学園のN高等学校とS高等学校

茨城県立水海道第二高等学校の生徒が参加

　「e-SPORTSメシ開発プロジェクト」は，ドワンゴ学園のN高等学校とS高等学校（以下，N/S高）と，茨城県立水海道第二高等学校（以下，水海道二高）が合同で進めている，課題解決型学習「プロジェクトN」の一環として行われている取り組みだ。

　“eスポーツ選手を食事からサポートする”というユニークなテーマのもと，N/S高及び，水海道二高の家政科・商業科の生徒約160名が42のチームを編成。2022年9月より，N/S高eスポーツ部のプレイヤーへのインタビューや参加各校による意見交換会，予選会といった活動が行われてきた。

　この日に行われたのは最後のプレゼンテーションで，予選会を勝ち抜いたN/S高の6チームと，水海道二高の4チームが練りに練った企画を披露した。
　審査員は，ローソン 商品本部 関東商品部長の友永伸宏氏と，プロゲーミングチーム「FAV gaming」のVALORANT部門からPhantom選手，角川ドワンゴ学園理事の夏野 剛氏の3名が担当し，それぞれの立場からコメントを行った。
　なお，実際に商品化される企画の発表と表彰式は，2023年1月13日に行われる予定となっている。

【各チームの企画内容】

●「ブーストトルティーヤ」（N/S高 チーム17）

　eスポーツ選手へのヒアリングでは，「お腹いっぱい食べたら眠くなる」という意見も。また，「長時間プレイするため集中力の維持が難しい」という課題なども明らかになっていた。
　そのため，「味の満足感」と「手軽さ/食べやすさ」「集中できる」「eスポーツ選手はアスリートなので健康的であるべき」という4点から，ヘルシーな鶏胸肉と集中力に効くチロシンを含むピーカンナッツ，目に良いルテインが取れるほうれん草を具材に使用。崩れやすいパンやパイ生地ではなく，トルティーヤとして仕上げた。


　サイズは，お腹いっぱいにならない程度のものを考えているという。既存のトルティーヤは，真ん中から切られているものが多いが，それでは中身がこぼれてしまうため，本品ではしっかりと具を包んだ上で，包装にトレーを用いてコンパクトにまとめている。


・友永氏のコメント
　ゲームやビジネス中は，机に食べ物は置きにくいことも多い。その困りごとを解決する品は既存のものには少ないので，練りに練ったロジカルな企画だと思う。

●「ぱくぱくプロテインど〜なつ」（水海道二高 Bチーム）

　企画商品は，プロテインの入った約3cm大のチョコレートドーナツだ。eスポーツでは頭を使うこともあり，糖分の摂取はマストで，さらに手やゲーム環境を汚さないことと腹持ちの良さをコンセプトにしている。
　eスポーツ選手は食事の頻度が低いという調査結果から，普段の生活をサポートするという目的もある。プロテインとドーナツとの意外な組み合わせによる，コンビニでの注目度アップも狙っている。
　ゲーム中にも食べやすい“自立する容器”に，手を汚さないための“ピック”を同封する工夫も。ピックが刺さりやすいように，チョコレートは生クリームを入れた柔らかいものにしている。


・友永氏のコメント
　ドーナツにプロテインという，ありそうでない組み合わせがユニーク。男性にはプロテイン，女性には可愛さ，どちらにも魅力的な要素が入っている。

●「全てのゲーマー女子へ ちゅるきゅんぽっぷケーキ」（N/S高 チーム4）

　商品のターゲットは「ゲーマー女子」。ゲーム機やPC，周辺機器を可愛らしくデコレーションし，食べるものもインスタ映えを重視している層だ。そんなゲーマー女子ならば，お菓子も可愛らしいものを好み，SNSへの露出も増えるだろう……ということで，キャンディを思わせる丸いケーキが企画された。


　味はいちごと紫芋の2種を用意し，前者にはフリーズドライのいちご，後者は目にいいと言われるアントシアニンを含んだ紫芋が使われている。
　スポンジはどちらも紅茶味で，これはeスポーツで重要なカフェインを摂れるようにという配慮だそうだ。同封のピックを刺すことで，キャンディのような見た目になる。


・夏野氏のコメント
　あえてターゲットを絞ることで，尖った商品になっている。差別化としていいのではないか。

●「シャキっと！スパイス香る 豆乳eスープ」（水海道二高 Eチーム）

　eスポーツでは，肩や目，首が疲れることに着目し，「1杯で疲労回復でき，手軽に栄養が摂れる」ことをテーマとした，豆乳ベースのスープの用意していた。


　食材は，疲労回復効果を持つビタミンBを重視し，これを多く含む豆乳や鶏肉，エリンギ，にんじん，ほうれん草，玉ねぎをチョイス。また，歯ごたえのあるものを噛むことで脳が活性化する研究結果もあることから，レンコンも使われている。味は，食欲をそそるカレー風味だ。


・友永氏のコメント
　家政科ならではの発想。素材を大切にし，味にも気が使われている。

●「満足しまっしゅ！ポテトとチーズのソフトフランス」（N/S高 チーム21）

　企画内容は，ソフトフランスパンでベーコン入りマッシュポテトを挟み，とろけるチーズをかけた総菜パンだ。ターゲットは，プロゲーマーだけでなく趣味でゲームを楽しむ人も対象としている。これは，課金やゲーム購入のために，コンビニへ行く機会が多いことから。


　ゲーマーが食事に求めるであろう，「すぐ食べられる」「ゴミが少ない」「温めなくても美味しい」「少ない量で満足感を得られる」というポイントを考慮した結果，袋入りの総菜パンとなった。


・友永氏のコメント
　今回の案ではマッシュポテトが提示されているが，アメリカのソウルフードであるグレイビーマッシュを使うのもアリではないか。

●「BerryBibit!ブルーベリーソースの焼肉サンド」（N/S高 チーム16）

　ターゲットは中高生から20代後半のeスポーツプレイヤーとしている。疲れた時にはガッツリ食べたいというニーズを満たすため，豚の生姜焼をはさんだサンドイッチを提案。ゲームのプレイで長い時間ディスプレイを見ることもあり，目に良いと言われるブルーベリーソースを使用している。奇抜な組み合わせだが食べると美味しいといった，SNSでの口コミも狙っているようだ。


・Phantom選手のコメント
　普段冷凍ブルーベリーを食べているので，この商品が出たら食べてみたい。

●「モチベたると」（水海道二高 Mチーム）

　提案商品は，パイナップルをあしらったカスタードクリームのタルトだ。eスポーツでのモチベーションアップをコンセプトに，ゲームの合間に片手で食べられることを重視している。パイナップルを使ったのは，肌の健康維持に大切なビタミンCが含まれているため。


　これらは，eスポーツ選手へのインタビューで「ゲーム後には甘いものが欲しい」「手をケアしている」という声が上がったことがきっかけになっているという。パイナップルには，崩れないようにナパージュ（ジェル）が塗られている。また，タルトを金メダルに見立てたパッケージングを施してモチベーションを高める。


・友永氏のコメント
　モチベーションに着目したのはユニークなアイデア。スイーツに求められるのは「ごほうび感」だが，パイナップルを沢山乗せることで特別感を演出できるのではないか。

●「いちご姫とチョコナイト」（N/S高 チーム11）

　コンビニの利用者は中高齢層が多く，この層へのeスポーツの認知度を高めたいという考えから，ターゲットを50代以上に設定している。また商品化を行うローソンは，同業他社と比べて菓子パンの品数が少ないという調査結果があり，商品は菓子パンとした。
　中高齢者35名への調査では，深層心理に「人とコミュニケーションが取りたい」というニーズが見られたため，パンをコマとして遊べるゲームも提案している。


　商品は，いちご味とチョコ味のパンで構成されており，見た目ではどちらの味かは分からない。包装袋を広げて，できた矩形マスのプレイスペースに将棋の駒の如くパンを並べ，交互に自分のパンを動かして相手のパンを取って食べていく。先にいちご味を食べた方が勝ちとなる。


・Phantom選手のコメント
　認知度が低い層に，eスポーツのことを知って貰えるのは嬉しい。

●「体力ゲージ回復！和風ブラウンシチューen（イン）ライス」（水海道二高 Gチーム）

　かつおだしと醤油を使った和風のブラウンシチューに，ドライアイ予防と視力維持に効果があるわかめご飯+白米，疲労回復や目の健康に有効な食材として大豆，ナッツ，にんじんを入れた一品だ。
　eスポーツ選手やゲーマーは疲れ気味ではないかということで，手軽さや食べやすさを重視した間食よりも，疲労回復をテーマとした食事になっている。


・Phantom選手のコメント
　ゲーマーに対して疲労回復というテーマがいい。パッケージもゲーマー向けで手に取りやすい。

●「カツオピタパン」（N/S高 チーム22）

　主なターゲット層は，「若い世代のeスポーツプレイヤー」と「健康にあまり気を使っていないが，健康になりたいと思っている人」「満足な睡眠を取れていない人」たち。
　彼らは，魚介類の摂取不足，睡眠不足という特徴がある。そのような事情を踏まえ，DHA・EPA，睡眠の質を高めるトリプトファン，ビタミンB6，グリシンを多く含むカツオを食材に選択している。


　これに，タルタルソースと玉ねぎを加え，ピタパン（半円形のパン）に挟んだ「カツオピタパン」用意。「日々の仕事やeスポーツに」「睡眠をサポートする栄養素を含む」というコピーを付け，広い層にアピールする。


・友永氏のコメント
　この組み合わせなら，美味しいものができるはず。ただ，睡眠をテーマにするのであれば，コピーで使う文言を，法律と照らし合わせていかなければならないだろう。


　高校生たちが提案した10種類のeスポーツ飯は，食べやすさや栄養，健康など，追及するテーマも多岐に渡っており，唸らされた人も多いのではないだろうか。
　果たしてどの企画が商品化されるのか，2023年1月13日の表彰式を楽しみにしたい。