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「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」公開の今,もう1つのマリオ映画「スーパーマリオ 魔界帝国の女神」を改めて視聴してみた
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印刷2023/04/28 12:30

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「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」公開の今,もう1つのマリオ映画「スーパーマリオ 魔界帝国の女神」を改めて視聴してみた

 ゴールデンウイークを目前に控えた2023年4月28日,「スーパーマリオブラザーズ」の映画,「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」が公開された。すでに北米では4月5日に封切りされており,全世界で興行収入1000億円を突破するなど,大変な人気を博している。

 今やマリオとルイージは世界の人気者。筆者も子供のころから親しんでおり,そんな彼らの冒険活劇が楽しめるということであれば,ぜひ見てみたいと思っていた。そんなタイミングで4Gamer編集部から,「マリオの映画を観て,記事を書かないか」という提案があった。

 これは渡りに船だと快諾した数日後,編集部から宅配便が送られてきた。「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」のチケットかなと思い,ワクワクして開けてみると……。

「スーパーマリオ 魔界帝国の女神」
画像集 No.001のサムネイル画像 / 「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」公開の今,もう1つのマリオ映画「スーパーマリオ 魔界帝国の女神」を改めて視聴してみた

 ――え,マリオの映画って,こっちのこと?


当時「最悪」とも言われた映画に再評価の波。視聴するなら今だ!


キービジュアル(TCエンタテインメントの公式サイトより)
画像集 No.002のサムネイル画像 / 「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」公開の今,もう1つのマリオ映画「スーパーマリオ 魔界帝国の女神」を改めて視聴してみた
 今回紹介する「スーパーマリオ 魔界帝国の女神」は,「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」と同じく,「スーパーマリオブラザーズ」を題材とする実写映画で,約30年前の1993年に公開された作品だ。

 公開当時,中学生だった筆者も一度は見たことがあった。それが映画館だったか,テレビ放映かは覚えていないが,「設定が原作ゲームと違うし,どことなく雰囲気が怖い」と感じ,あまり真面目に視聴しなかった記憶がある。

 ゆえに,ストーリーもうろ覚えどころか,「思っていた以上にマリオがおじさんだった」「ピーチ姫は出てこなかった」「ヨッシーがやたらリアルで恐怖を感じた」といった,あらすじにかすりもしない情報しか思い出せない。

 世間の評価もまさに賛否両論で,「映画として面白く仕上がっている!」という意見もあったが,「原作と設定が全然違うし,子供向けでもない。これはマリオじゃない!」という否定的な意見や「最悪の映画」とまで評する声もあった。

 日本円で約50億円もの制作費をかけて作られた本作の収益は,アメリカではその半分程度の約25億円,日本では約3億円と相当の赤字,興行的には大失敗だろう。ロッキー・モートン,アナベル・ヤンケル両監督はハリウッドから姿を消し,主演のボブ・ホスキンス氏にすら,「出演を後悔している」とまで言わしめた。

 しかし,そんな本作は今,一部で再評価の波が来ている。インターネット上のレビューを見ても,熱狂的なファンが本作に込めた,愛溢れる書き込みをいくつも見ることできるし,2023年3月にクエンティン・タランティーノ氏が所有する劇場で夜間上映された際には,大好評を博したというのだ。

 そんな流れを考えると,「マリオブラザーズ」の映画作品として,本作を改めて視聴するのもいいかもしれない。もちろん,「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」とつながりはまったくないが,「マリオ映画」という括りで時代の流れを感じてみるのも楽しそうだ。



“現実”が押し寄せてくる,実写マリオの世界


 ここからは本作のあらすじを紹介していこう。舞台はニューヨークのブルックリン。何かから追われているようなマントの女性が,大きな卵と小さな石を教会の前に置いて姿を消すシーンから物語は始まる。

 時代は進み,20年後。配管工の義兄弟マリオ・マリオルイージ・マリオは,配管の修理を依頼された現場に向かう途中,デイジーという女性と出会う。彼女は,化石発掘のチームでリーダーを務めており,精力的に発掘活動を行っている。美しいデイジーに一目惚れしたルイージは,兄・マリオのお節介にも近い手助けにより,なんとか彼女を食事に誘うことに成功。マリオ,ルイージ,デイジー,そしてマリオの彼女であるダニエラ(日焼けサロンに勤務)の4人で食事を楽しむ。

 ここまでのあらすじを聞いて,「これ,本当にマリオなの?」と疑問に思う人は多いかもしれない。マリオとルイージは,血のつながった兄弟ではない。ヒロインらしき女性はゲーム「スーパーマリオランド」にも登場するデイジーと同じ名前であるものの,彼女は大学で化石発掘をしており,イメージとはだいぶ違う。
 また,マリオの“職人肌で頑固な面もあるが,女性に対して積極的”だったり,ルイージの“とぼけた面もあるが,やたらと勘が鋭いオカルトに興味がある若者”というキャラクター付けも,原作とは乖離している。

右がマリオで左がルイージ(TCエンタテインメントの公式サイトより)
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 そして,マリオの彼女はピーチでなく,ダニエラという女性だ。ちなみに,ダニエラのフルネームは“ダニエラ・ポリーン・ベルダッチ”。皆様は“ポリーン”という名に聞き覚えはないだろうか。そう,「ドンキーコング」などでヒロインを務めた通称“レディ”の本名がポリーンだ。「スーパーマリオ オデッセイ」ではニュードンク・シティの市長となっている,あの黒髪の女性。マリオのパートナー役としては,原作の歴史をしっかりさらっているともいえるが……なんというか,皆の設定は全体的に生々しいのだ。

 筆者が子供のころにイメージしていた「マリオ」は,どちらかといえば「妖精」や「ヒーロー」の類だった。しかしこの映画では,ライバル会社に仕事を奪われ不満たらたらだったり,オンボロの車を修理しながらなんとか乗っていたりと,生活感たっぷり。ポリーンは妙に肉感的だし,序盤ではうだつが上がらないマリオ兄弟の描写,化石発掘現場のいざこざ,ダブルデートのシーンと続く。

 今思い返してみると,子どものころはこのリアリティある描写についていけなかったのだと思う。しかし,大人になって見てみると登場人物たちはチャーミングで,実に生き生きとしているし,話のテンポも非常に良い。

 その後は4人での食事のあと,デイジーと間違われてダニエラが攫われ,続いてデイジーも囚われてしまう。そして,マリオとルイージは行方を追っていくうち,別次元にある恐竜人の国“ダイノハッタン”にたどり着く。

 ダイノハッタンは,恐ろしい独裁者“クッパ”に支配された街。クッパに否定的なことを言えば直ちに逮捕されてしまうし,民は互いに奪い合い,殴る,発砲するは当たり前。「ブレードランナー」の世界に少しポップなテイストを入れたような,とにかく治安が悪すぎる荒廃世界だ。
 マリオとルイージのふたりは,すぐに独裁者・クッパと出くわすことになり,彼がデイジーの持っていた“石”を狙っていること,その石にはすさまじい力が眠っていることを知る。そして中盤からは,その石を巡る激しい戦いとなっていく。


意外に芸の細かい原作の要素。令和の今,本作を観る醍醐味


 デニス・ホッパー演じるクッパは,爬虫類的な冷たさやセクシーさを感じるルックスで異彩を放っており,見た者の心にしっかりと残るだろう(そういう観点から言うと,本作の登場人物は全員異彩を放ちまくっているが)。クッパはティラノサウルスから進化した恐竜人なので,以前は前足だったであろう両手を,胸の前にちょこんと構えるクセがあるという芸の細かさ。原作のクッパには似ても似つかないが,キャラづくりへのこだわりに感服する。
 クッパのいとこで手先という設定のイギーとスパイク(ガボンの英名)も魅力的で,お気に入りなのは筆者だけではないだろう。イギーの白眉,スパイクのギョロっとした目や刈り上げた髪形,キッチュなファッションなどはクッパと同様にオシャレで,制作陣の熱を感じる。音楽家のトード,大きく強いビッグ・バーサなども,皆愛すべきキャラクターだ。

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 イギーやスパイクのデザインにも表れているが,よくよく見てみると,本作は相当アレンジはされているものの,けっこう律儀に原作の要素を拾っていたりする
 原作そのままの形をしたボー爆弾(ボムへい)だったり,ゲーム中で飛ぶマリオと同じ音が鳴るジャンプブーツだったり,クッパの根城の廊下にある,ドッスンの棘っぽい装飾だったりと,かなり細かい。マリオのキャラクターだけを借りてめちゃくちゃしている作品だと思われがちだが,芸の細かい原作の要素が実写になじむように取り入れられており,視聴しながらそれら見つけるのは,非常に楽しかった。

 当時怖くて夢にまで見たリアルな恐竜風のヨッシーも,今見るとすごく可愛いし,動きの繊細さに見とれてしまった。また,本作に「どことなくおどろおどろしい」という印象を付与している大きな原因であろう“キノコ”の存在も,視聴後の今となってはただただ愛おしい。

リアルな造形のヨッシー(公式PVより)
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 ちなみに今回視聴したBlu-ray版には,当時のスタッフへのインタビュー映像なども収録されており,最初の脚本は,子供向けの可愛らしいファンタジーだったが,「ブルックリン出身のふたりの配管工」「恐竜が別世界に生き延び,進化を続けている」という設定の,マリオとルイージの関係性を描く暗い雰囲気の話になり……。紆余曲折ありながら,現在の形として完成したことが語られている。

 ゲームの要素を入れつつも,リアリティのある融合を目指した,当時としてはあまりにも奇抜な作品だった「スーパーマリオ 魔界帝国の女神」。評価されるには,少しこの世に出てくるのが早かったかもしれない。しかし贅沢に製作費を投じ,当時のスタッフ・キャストが熱い思いで作り出したこの世界は,30年前の空気感でないと生まれなかっただろう。ノースカロライナ州の巨大な廃セメント工場を基にして作ったというセットもインパクトバッチリで最高にクールだ。
 ストーリーは,少々強引で単純な部分もあるが,それは本作の持つ愛嬌のひとつ。見終わった人が,自然に笑顔になってしまう娯楽作品なのだ。

 コミカルで,オシャレで,とにかくアツい本作。マリオの新作映画が公開された今だからこそ,感じられる面白さがあるはずだ。ぜひ,「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」とあわせて観賞してみてはいかがだろうか。

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「スーパーマリオ 魔界帝国の女神」 Blu-ray商品ページ(TCエンタテインメント公式サイト)

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