[E3 2002#75]独占情報! 戦闘もインベントリーもない「Myst Online」 - 05/28 03:00


 「Myst Online」は,これまで「Mudpie」というコードネームで存在がウワサされていた,「Myst」や「RIVEN」で有名なCyanWorlds社の最新作である。この作品は,"ターン・ページ・アドベンチャー"などと呼ばれるMystの世界観やゲームシステムを,ほとんど変更するなく大型ネットワークゲームに当てはめているのだ。そのため,既存のRPGの解釈しかできなかった当サイトスタッフは,デモを見せてもらったCyan Worldsのプロダクション最高責任者,スーザン・ボンズ(Susan Bonds)さんの説明を理解するのに時間が掛かった。どうやらMyst Onlineは,既存のオンラインゲーマーの感覚で考えるのではなく,従来のMystファンや戦闘を好まないカジュアル層,これまでオンラインゲームを体験したことのない人たちに向けたものである,という視点から見なければいけないようなのだ。

 Myst Onlineは,Mystと同じD'niの世界を舞台とする。プレイヤー自身がD'niに迷い込んだという設定のため,プレイヤーキャラクターはもちろんプレイヤー自身。それゆえに,キャラクターは普通の人間の格好をしているし,男女2体のモデルのみとなっている。もちろん容姿はカスタマイズできるようになっており,髪の毛,髪型,上半身,腕,下半身,脚部の7か所を調整するのだ。ロールプレイングゲームではなく,あくまでも"アドベンチャーゲーム"の系統に属しているMyst Onlineでは,これ以外の設定は必要ない
 ゲーム画面には,スキル設定もなければ,インベントリーウィンドウやペーパードール,ミニマップも存在していない。なんといっても,Myst Onlineではモンスターやプレイヤーが戦い合うことなどないし,プレイヤーがスキルを上げることも,家を買ったりアイテムを保有することもないのである。プレイヤー同士が平和的にプレイするという,「Mystそのものを複数でプレイした感じ」と表現するしかないのだ。
 ボンズさんが明かしてくれたところによると,テキストチャットやボイスチャットなど,他人との交流に必要な事柄をまとめたコミュニケーション・デバイスの画面,そしてMystシリーズではお馴染みの,さまざまな時代へと誘ってくれるリンキングブックくらいがインタフェースに登場するだろう,とのことだった。これは,インターフェイスが画面を最大限に見せることの妨げになるのを抑制するためなのだそうだ。
 プレイヤーが降り立つゲーム世界は,大きなD'niの街である。この巨大な街を散策できるし,プレイヤーが市長となってプレイヤーの意見をまとめるという活動も行えるらしい。どうやら,この街(一つのサーバーかどうかはまだ謎)では数100人規模のプレイヤーをサポートし,これが"コミュニティ"と名付けられた最大150人からなる区画に分かれる。さらに,その中の5人から25人のグループが"ネイバーフッド"として区分され,プレイヤーはランダムに選ばれたネイバーフッドの一員として,ゲームに初めて参加したときに半強制的に振り分けられていく。これは,
「このゲームがプレイヤー同士の社交やグループ作りを必要とするから」
なのだと,ボンズさんは語る。

 このネイバーフッドのメンバーが何をするのかというと,共同で別の時代に向かい,その世界を散策してはパズルをこなしたりミステリーを解いたりしていくのだという。このイベントは,数日から数週間単位でサーバー管理者側に提供され,その街のどのコミュニティのネイバーフッドでも,同じものが用意される。プレイヤーらは,時間の都合のつくときにD'niの世界で落ち合い,用意された時代に飛んで,そこでの事実を探っていくというわけだ。提供される時代は,10時間程度で散策できるほどの大きさだが,もちろんミステリーを解決するのは,仲間たちとの協調や手腕で異なるに違いない。数日ダニの世界に接続していなければ,別グループが謎を解いたことによって,現実世界(仮想内の,だ)さえも状況が変化していることもあるという。

 今回のデモでは,テレダーン(Teledahn)が紹介されたが,洞窟の中にうっそうと茂る巨大マッシュルームの発光が幻想的で,DirectX 8.0に対応したグラフィックスエンジンの技術の高さが伺えた。このグラフィックスエンジンは,Mystの世界観を3D化した「Real Myst」で独自開発したものを3年半もかけて大幅にチューンナップし,そこにCyanが「世界最高峰になる」と自認するフィジクスエンジンを開発して,すべてのオブジェクトとインタラクトすることを可能にしたり,多くのプレイヤー心地良くプレイするためのネットワークエンジンを搭載したのだという。
 興味深かったのは,リアルタイムでありながらも,洞窟内部から外部へ出たときに,カメラがプレイヤーの前方へと自動的に移動したことだ。こんなとこにでも,アドベンチャーゲームの手法を温存しようという努力をしているのだろう。

 コンテントが頻繁にアップデートされていくという新しい発想のMMOアドベンチャーゲーム「Myst Online」は,早ければ年内にはβテストが始められるようだ。販売元のUBI SoftwareではUBI.comのサービスを拡大させていく意向で,Myst Onlineはその中核的なフラッグシップタイトルになるであろう。(Okutani)


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