GDCの仕掛け人,アラン・ユウ突撃インタビュー!「GDC 2003」スペシャルレポート #2 - 03/07 19:01

Text & Photo by 奥谷海人

■ディレクターアラン・ユウ氏が語る"GDCの魅力"とは?
 GDCの一切を手掛けるのが,弱冠30歳のディレクター,アラン・ユウ(Alan Yu)氏だ。彼がディレクターに就任してから,今年で8年目となる。彼は企業資本を取り込んで会合の安定化に成功。任天堂の宮本茂氏を始めとする要人たちを招聘したり,GDCをPlayStation 2やXboxの初公開の場所として提供するといったように,彼はGDCがゲーム業界の中心点として機能するように貢献してきた。
 GDC開催中の彼はカンファレンスが潤滑に催されるよう,右へ左へと奔走している身だが,幸いにも話を聞くことができたので,GDC 2003の特徴やゲーム業界の今後に関して,思うがままにコメントしてもらった。さっそくその様子をお伝えしよう。

4Gamer.net (以下,4GN)
 まず,今年のGDCの目玉ってなんでしょうかね?

Alan Yu(以下,ユウ)
 やはり,初めてとなる"GDC Mobile Summit"の開催でしょうね。日本はNTT DoCoMoなどのサービスが大きな成功を収めており,我々アメリカやヨーロッパの人間も学ぶところが多いと考えています。ネットワークのオペレーター,コンテンツ制作者,テクノロジープロバイダーらが情報を交換し合い,今後世界的に急成長するであろう,この新しいエンターテイメント分野に備えるためにも,非常に大切な会合になったと思います。
 また,今年は日本でもIGDAの東京チャプター(国家や都市単位でのIGDAメンバーによる集会)が開かれて約1年になり,日本からの参加も多く見込まれています。セミナーやレクチャーも,今年は日本や韓国などアジアからの参加が多くて,非常にエキサイティングになりましたね。

4GN:
 GDCはゲーム業界にとって,どのような位置付けなんでしょうか?

ユウ:
 GDCの機能は,ゲーム業界のコミュニティの場として,旧知のゲーム開発者が久しぶりに出会ったり,新しいコネクションを作るというフランクなものとしての一面と,お互いが情報やリソースを共有し合って,今後のゲーム制作に役立てようという一面があります。

4GN:
 GDCのミッションも,そのあたりになるのですかね?

ユウ:
 ええ。ゲームというのは,ただのオモチャではない,何かそれ以上の意味を持ったエンターテイメントだと思うのです。1億ドル産業へと発展した現在,供給している側がその価値と意味を理解するためにも,みんなで寄り集まって試行錯誤しているんです。クリエイトすることの意義を見い出そうとしているとも考えられますね。

4GN:
 現在のゲーム業界を,どのように見ておられます?

ユウ:
 浮き沈みが激しいけど,だからこそ皆で情報を交換することを求めているのかもしれません。殻に閉じこもっているだけでは,周りの新しいことに目が届かないじゃないですか。実際にGDCによる業界の成長度をグラフにして示す術はありませんが,ゲーム業界がポジティブな方向に流れていることは肌で感じられます。今後,もっとゲーム開発者の創造性に報いられるように発展していけば良いですね。

4GN:
 それは,開発者と販売会社との関係において?

ユウ:
 マーケティング面からの圧力で開発者の自由意思が損なわれてしまうという,先週シェーマス(Seamus Blackley。D.I.C.E.サミットにて講演)が話したことも一理あると思うんですけど,開発者自身も自己の責任において創造力を養うことを放棄してはいけません。

4GN:
 殻に閉じこもるといえば,日本の開発者たちは自分の会社外へ情報を持ち出さないという,内向的なイメージもあったと思います。

ユウ:
 うーん,確かに。しかし,松浦雅也さん(「パラッパラッパー」のプロデューサー)のように,毎年GDCに参加していただいている人もいますし,最近では日本でも情報交換する意義を見出している人たちが増えているように思えます。
 現在,アメリカの市場を研究せざるを得ない状況になっているでしょう? だからこそ,GDCのような会合は有意義なものになるはずですね。今は日本の景気が鈍化していて大変ですが,2002年の東京ゲームショウでは,まだまだアメリカにはないような独創的な作品もいっぱいありました。日本がゲームデザインに関するアイデアの宝庫であることは疑う余地がありません。今後,日本とアメリカのゲーム開発者がもっと密接に関わって,お互いを刺激していければ,素晴らしい結果が生まれるはずです。

4GN:
 そういう日米間での温度差は,今後縮まっていくのでしょうか?

ユウ:
 その兆候が,今年の日本からの参加者の多さによって表れていると思うんです。今年は,中東や北朝鮮での政情不安やテロへの心配もあり,海外や大学機関からの参加に影響することが懸念されていたんですけど,この調子でいけば史上最大規模のGDCになることは間違いありません。

4GN:
 今後,GDCはどのように発展していくのでしょうか?

ユウ:
 GDCはゲーム業界の鏡だと思うんです。今,ゲーム業界で起こっていることや,開発者が考えていることが,GDCのカンファレンス内容に反映されるわけですから。モバイル化やオンライン化を通し,“ゲーム”という言葉も多様化していますから,そのペースに同調できるようなスタンスでいたいですね。

4GN:
 では,最後にご自身のことも含めてPRを。

ユウ:
 私の所属するCMP Media社が,GDCの運営権利をIGDAから委託されたのが,1995年のことでした。その頃は,ただのアシスタントで電話を受けたりしていたのですけど,ゲーム好きであることが知れ渡っていたために,幸運にもGDCの運営に携わるようになったんです。ディレクターという任務は,「GDCが失敗したボクのせい」ってことですね(笑)。日本の開発者の皆さんには,オープンになることを怖がらずに,気軽にGDCに参加して欲しい。今は新しいゼルダと「DOOMV」を待っているんだけど,「DOOMV」をプレイするには,新しいマシンに買い換えなきゃね。もっと働かなくちゃ(笑)。


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