「GAMEBRYO」がクロスプラットフォーム展開へ 「GDC 2003」スペシャルレポート #20 - 03/11 22:17


Text & Photo by トライゼット西川善司

■NDLが「NetImmerse」エンジンを「GAMEBRYO」に改称,
   クロスプラットフォーム展開へ

 「NetImmerse」エンジンは,「LithTech」などと肩を並べる著名かつ定番のゲームエンジンだ。最近では「Dark Age of Camelot」「The Elder Scrolls III : Morrowind」「Star Trek:Bridge Commander」「Freedom Force」などの有名なタイトルで採用されている。
 今回,NDLはNetImmerseエンジンをバージョンアップ,そしてクロスプラットフォーム展開することになった。これに伴い,エンジン名をNetImmerseから「GAMEBRYO」(ゲームブリオ)に改称している。
 対応するプラットフォームはPCPlaystation2XboxGameCubeの四つ+α。これにより,それぞれのハードウェア特性を活かした開発ができるのはもちろん,APIデザインの仕様統一がなされるため,一つのプラットフォーム上で制作したゲームタイトルは,工数をかけずに移植が行える。またPC版のGAMEBRYOエンジンは,DirectX 8世代のDirect3Dベース。おそらくXbox用GAMEBRYOエンジンとかなりの部分で仕様の統一が行われていると思われる。
 DirectX 8ベースと聞いて気になるのが,プログラマブル頂点/ピクセルシェーダへの対応度だが,これはかなり積極的に行われているといっていいだろう。エンジン側で提供される"固定機能としての"グラフィックスエフェクトの多くは,プログラマブルシェーダベース。だがこれ以外に,ゲーム開発者オリジナルのシェーダプログラムをアドオンできるような仕組みを提供している。また,GAMEBRYOエンジンSDKにはシェーダプログラムライブラリが付属しており,ゲーム開発者自身がこれをリファインしたり改造したりして使うこともできるとのことだ。

 プログラマブルシェーダを活用したエフェクトとして,GAMEBRYOエンジンがウリにしているのは,ゲームシステム&物理エンジン側とレンダリングシステム側のインタラクティビティだ。たとえば,テクスチャや法線マップの書き換えが,キャラクターアクションや当たり判定と関連付けられるのだ。具体的には,刀で壁を斬りつけたとしたら,その傷の凹凸がバンプマッピングされたりする。あるいはキャラクターが水の中に入って動けば,その軌道の通りに水面のさざ波が起こる……という具合。さらに銃弾を撃つとその弾痕が壁にできるいわゆる「デカール処理」などは,今や一般的となったテクニックだが,GAMEBRYOではこれをさらに発展させている。ゲーム物理エンジンとレンダリングエンジンの相互作用性を実現しているわけだ。
 また影は,セルフシャドウを含むそのシーンの光源の動きによって投影の仕方が変わる動的なシャドウ生成に対応。動的LODは,単なるポリゴン数の増減だけでなく,ボーンLODにも対応しているのがGAMEBRYOのウリだという。
 念のため説明しておくと,ボーンLODとは視点からの距離に応じて3Dキャラクターのポリゴン数だけでなくボーンまでを増減させる仕組み。たとえば視点から離れた位置の3Dキャラクターは指の動きまでは見えなくなるはずなので,このボーンを削除してしまうのだ。すると,その部分のスキニング処理も省略されジオメトリ処理数も減るので,CPUやGPUの負荷が減り,パフォーマンスが向上する。ブースでのデモでは,256体のペンギンをダイナミックシャドウ付きで登場させても,フレームレートにほとんど影響がないことを見せてくれた。

 このほかプレゼンターがこっそり見せてくれたのが,PocketPC用Windows CE(.NET版)のGAMEBRYOエンジン。まだα版だが,3DアクセラレータのないPocketPCで,テクスチャ付きの3Dオブジェクトが動き回る簡単なゲームを動かしていた。PocketPC版では,もちろんGAMEBRYOのフルフィーチャーがサポートされるわけではないが,ツールなどは共有できる。GAMEBRYOベースでゲーム開発経験のあるゲームスタジオであれば,開発効率は高くなるはずとのことだ。

この画面は,すべて実際にGAMEBRYOエンジンでレンダリングされたもの。会場でもこのデモを使って機能解説を行っていた

半透明な3Dキャラクターの背景は屈折して見える。これもプログラマブルシェーダによって実現されている

刀の軌跡にブラーが出ているのが分かるだろうか? GAMEBRYOエンジンでは,ハイライトアクセントが動くとその部分にブラーを出すことができる。いわゆる劇画的な演出が可能なのだ


(写真左)動いている画面を撮影したためブレてしまっているが,これが本文中でふれている,"256体のペンギン"のデモ
(写真中央)PocketPCには3Dアクセラレーションがないので,テクスチャマッピングもGAMEBRYO自前のエンジンで行っている
(写真右)GAMEBRYO採用ゲームスタジオ一覧。Codemastersが目を引くが,それはともかくリチャード・ギャリオットのDestination Gamesがないのが気になる。たしか彼の新作「tabula rusa」はNetImmerseエンジンベースで開発が進められていたはずなので,当然今はGAMEBYROエンジンに移行していると思われるのだが……


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