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バルダーズ・ゲート2 シャドウオブアムン 完全日本語版
Text by 大路政志
11th Jul.2001

複雑さこそが「BG2」最大の魅力

クリックすると拡大します  本作「バルダーズ・ゲート2 シャドウオブアムン 完全日本語版」(以下,BG2)を含むBGシリーズは,TRPG(テーブルトークRPG)界の巨人「AD&D」をベースに作られている。長い間多くの人に遊ばれ続けた「AD&D」は改訂を繰り返し,そのたびにデータ,ルール,背景世界などのクオリティがアップしてきた。それゆえAD&DをベースとしたCRPGには,膨大なデータ・深遠なルール・広大無比な世界が搭載されることとなる。
 面倒なルール判定や計算がコンピュータ任せとはいえ,プレイヤーが覚えるべきルールや専門用語は決して少なくない。そのことが,ライトユーザーにとっては"ハードルの高さ"につながるということも当然理解できる。だが,一度その世界に飛び込めば,リアルな異世界での冒険活劇を楽しむことができるだろう。筆者も,初めてBG2をプレイしたときには,そのあまりにも複雑なゲーム世界に戸惑いを覚えた。しかし,操作方法を覚え,各クラス(職業)の特徴と役割を把握し,背景世界に対する理解度を深めていくに連れ,ゲームに対する熱中度が劇的に上昇していくのを,確かに感じることができたのだ。
 BG2のハードルは確実に高い。ゲーム内のテキスト量もハンパじゃない。覚えるべきルールや用語も多数ある。しかし本作は,決して"一見さんお断り"のゲームではないのだ。むしろ,ごく一般的なライトゲーマーをコアゲーマーにクラスチェンジ(?)させるだけの魅力と,懐の深さを備えている。この記事を読んで,多くのユーザーがBG2ワールドの住人になってくれることを願いつつ,本題に入ることにしよう。

制約の厳しいクラスシステムが,キャラに確かな個性を付与する

クリックすると拡大します クリックすると拡大します  本作の最大の魅力の一つであり,また最初の難関でもあるのが,キャラクター作成。なんと,キャラクタークラスが40種以上も用意されているのだから驚きだ。各職業にはさまざまな長所や制限が設定されており,ファイターやメイジといった2種以上のクラスを同時に兼任するマルチクラスや,ゲーム中に転職を行なうが,前職の特性を引き継ぐことができるデュアルクラスなども選択可能。それに加えて,7種類の種族,能力値,9種類のアライメント(属性),使用武器の熟練度などなど,プレイヤーが設定可能な項目が多数用意されている。このキャラメイクシステムが生み出すキャラクターの個性は,ゲームをプレイするうえで(とくにマルチプレイ時において),感情移入の大きな手助けとなってくれるはずだ。
 ちなみに筆者は,マニュアル読みや試行錯誤も含め,キャラ作成に3時間もの時間を費やしてしまった。でき合いの主人公を演じるRPGも嫌いではないが,豊富な選択肢から苦労の末生み出されたキャラの方が,やはり愛着が持てる。RPGとは,ある意味"演じることを強制される"ゲーム。だからこそ,本作のようなキャラメイクシステムには好感が持てるし,睡眠時間からスワップした3時間も無駄には思えなかった。

プレイヤーを選ばない秀逸な操作性

クリックすると拡大します  BG2は,リアルタイムで進行する俯瞰型RPG。操作は主にマウスで行ない,地形やアイテム,モンスターなどをクリックすることによって移動し,ショートカットキーやアイコンでキャラの各種アクションを実行する。
 ……という風に書くと,ディアブロ系リアルタイムアクションRPGを連想するユーザーもいるだろうが,実際にプレイしてみるとアクション性は極めて低い。最大6人からなるパーティーメンバーは,AIスクリプト(行動パターン)によってオートバトルを展開してくれるからだ。AIスクリプトには,攻撃的なものから防御的なものまでさまざまなタイプが用意されており,狙うべきターゲットや使用したい魔法などは,プレイヤーが任意に決定することも可能なのだ。また,ゲーム中に任意のタイミングでポーズをかけられるので,設定次第では,従来のコマンド選択式RPGのように,ターン性の戦闘システムを採用することもできる。
 これらのシステムのおかげで,初心者は初心者なりの,上級者は上級者なりの戦術を,たやすく構築することが可能になっている。強敵との戦闘時にポーズをかけ,じっくりと練った作戦が見事に成功したときの快感は,戦術級シミュレーションでの大規模な勝利にも匹敵する快感をユーザーに与えてくれるはずだ。

無理のないストーリー展開が,新規プレイヤーを柔軟に受け入れる

クリックすると拡大します  前作をプレイしたユーザーの楽しみを奪わないためにも,ここでのストーリー紹介は割愛させてもらう。不親切だと憤慨する人もいるかもしれないが,ストーリー紹介が一切記載されていないBG2のマニュアルに対する筆者なりの礼儀だということで,どうか了承してもらいたい。ただ,前作で一緒に冒険したイモエンやジャヘイラ,そしてミンスク(&ブー)らとは,ゲームスタート直後に謎の魔法使いのアジトですぐに出会うことになる,とだけ書いておこう。主人公とその仲間がどのような状況に置かれているのか,そのほかの仲間はどうなったのかは,実際にゲームをプレイしたときに自分自身の目で確かめてみてほしい。そのあまりにも異常な状況に,きっと驚愕するはずだ。
 なお前作をプレイしていない新規プレイヤーも,ストーリーのことはあまり気にしないでいいだろう。前述したようにBG2は前作の延長線上にある物語だが,"とある理由で,主人公=プレイヤーは記憶を失っている"という設定を前提とした選択肢が,会話シーンの随所に表示されるからだ。例えば主人公の幼馴染みであるイモエンとの会話シーンでは,「起きて! 目を覚まして! ここから脱出しなければ!」というイモエンに対し,「お…お前は誰だ?」という選択肢が表示される。この選択肢を選べば,今自分に語りかけている女性の名はイモエンで自分の幼馴染みである,という情報が与えられる仕組みになっているのだ。本作では,会話の進め方によってシナリオが分岐する可能性もあるのだが,この新規プレイヤー用の選択肢は,シナリオ分岐のトリガーにはなっていないと思われる(恐らく)。BGシリーズを初めてプレイするプレイヤーは,この会話システムを利用して,一刻も早く記憶を取り戻して(情報を集めて)ほしい。

まさに"1年間遊び続けられるRPG!"

 ダンジョン自動生成がウリの某コンシューマRPGには"1000回遊べるRPG"といった感じのキャッチコピーが冠されていた。シンプルなゲームシステムと,そこから生まれる中毒性の高さがうまく表現された,名コピーといえるだろう。それに対抗して,というわけではないが,筆者もBG2のキャッチコピーを考えてみた。
 目新しさや派手さはないが,とにかく奥が深くて底知れないゲーム。膨大なテキスト量と複雑なルールが生み出す圧倒的な整合性の高さ。そして恐ろしいまでの中毒性。本作を一言で表現するなら,まさに"1年間遊び続けられるRPG!",これに尽きる。当レビューはBG2のシングルプレイに関してのみ書かれたものなので,マルチプレイ時の魅力は未知数。さらに拡張パックの発売も予定されているので,もしかしたら,2年くらいは軽く遊び続けられるゲームなのかもしれない。とにかく,いままでBGシリーズを敬遠していたゲーマー諸君,勇気を出して(笑),ぜひBG2をプレイしてほしい。ゲームに馴染むまでの苦労は税金だ。その直後には,充実したゲームライフが待っているのだから。

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■発売元:セガ
■価格: 9800円
■問い合わせ先:セガ TEL 0570-000-354
■動作環境:Windows 9x/Me,PentiumII/233MHz以上(PentiumII/266MHz以上推奨),メモリ32MB以上(64MB以上推奨),空きHDD容量800MB以上(1.2GB以上推奨),4MBのVRAM搭載DirectDraw対応ビデオカード,DirectSound対応

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