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■Kim, Young Ho氏プロフィール■
1976年,韓国ソウル生まれ。大学/大学院でコンピュータ工学を専攻。1997年に三星ソフトウェアメンバーシップ(ソフトウェア開発者養成所)に参加して友人達とゲーム開発を行ったのをきっかけに,ゲーム業界に関わるようになる。そのとき氏を含む5人のチームは,当時としては前代未聞の3D
MMORPGである「アドネット」の開発に取りかかったという。しかしIMF危機に見舞われていた当時の韓国では「StarCraft」のようなRTSでなければ見向きもされず,やむなくRTSの開発に切り替え,その結果誕生したのが2002年10月に発売された3D
RTSの名作「Ace Saga」だ。現在はMaiet Entertainment社の取締役で,GUNZ THE DUELの開発総責任者も務めている。 |
非RPGのオンラインゲームの時代が来るか?
今話題の「GUNZ THE DUEL」の
開発者に突撃インタビュー
MMORPGが溢れかえっている韓国オンラインゲーム市場に,最近FPSジャンルの風が吹いている。現在サービス中/開発中のオンラインFPS(三人称視点の3Dシューティングを含む)は,10タイトルを超えるほど存在するのだ。
その中で,独特のコンセプトを打ち出して目立っているのが,「GUNZ THE DUEL」(以下,GUNZ)である。本作の開発チームの面々は,GUNZは既存のオンライン3Dシューティングとは違うと語る。多くのFPSは"照準"(エイミング)と射撃が重要だが,三人称視点を採用した本作の場合は,もっと全体的な"動作"が重要で,いわばコンシューマゲームに近い作りになっているというのだ。実際本作のβテスト開始直後,カプコンの「デビル
メイ クライ」のオンライン版のようだと韓国で評判になり,わずかテスト開始4日間で同時接続者1万人突破したというのは,[韓国ゲーム事情#184]でお伝えしたとおりである。
2004年4月2日からは正式サービスに移行し,今では会員数130万人,同時接続者1万5000人を数える人気となっている本作について,GUNZの開発プロデューサーであるKim,
Young Ho氏に聞いてみた。
三人称視点の
オンラインゲーム3Dシューティング,
「GUNZ THE DUEL」とは? |
〜物陰に隠れて相手をスナイプするよりも,弾丸を刀で
はじき飛ばしながら突撃するほうが有利なゲームなんですよ〜 |
Kim, Dong Wook(以下,4G):
こんにちは。蒸し暑い毎日が続いていますが,最近のGUNZ人気もかなり熱いですね(笑)。
Kim,
Young Ho(以下,Kim):
いやぁ,まだまだですよ。とはいえ,ありがとうございます。
4G:
最近韓国では,オンラインFPSが続々と登場していますよね。GUNZもオンライン3Dシューティングではあるけど,FPSではなく三人称視点を採用して,よりスタイリッシュなゲームになっていますよね。どうしてこのようなゲームスタイルにしたのでしょうか?
Kim:
簡単にいえば,既存のFPSの画一的なプレイスタイルから脱却したかったからです。
私は本作を開発するにあたって,ゲーム内でかなりの苦境に陥っても,それをプレイヤースキルで乗り越えられるゲームにしたいと思いました。そのための方法の一つとして,宙返りや壁を走る行為などハデなアクションをゲーム中に取り入れることを思いついたのですが,こういう行動は,一人称視点のカメラでは表現が困難。そこで,画面上にキャラクターの姿が見える三人称視点を採用したんです。
また私は,自分の操作するキャラクターを"一人の兵士"としてではなく,"自分だけの主人公"として育成していくゲームにしたいと考えていまして,そういう意味でも,キャラクターが見える三人称視点のほうが向いていたといえます。
4G:
なるほど,そういうことでしたか。実は私もGUNZをプレイしているので,三人称視点ならではの良さというのはよく分かるつもりです。
ところで,GUNZはテスト開始以降,カプコンの「デビル メイ クライ」を連想させるという評価が(韓国では)多かったですよね。Kimさんはやはりデビル メイ クライが好きなんでしょうか?
Kim:
ええ,もちろん好きですよ。コンシューマゲームファンとして,デビル メイ クライは好きなゲームの一つです。
4G:
ということは,GUNZはデビル
メイ クライの影響を受けて作られている?
Kim:
見た感じが似ているため,GUNZはよくデビル メイ クライと比較されますが,実際のプレイスタイルはまったく違うと思っています。"武侠"で説明するならば,デビル
メイ クライは"草式"がメインの武術で,GUNZは軽空術がメインとなりますね。
4G:
日本の読者に向けて,ちょっと詳しく説明してください。
Kim:
デビル メイ クライは,基本的な攻撃技の一つ一つに重点を置いているため,攻撃をいつ,どのように行うかが重要になってくるんですね。GUNZの場合は,走ったりジャンプしたりといった攻撃以外のアクションにも重点を置いています。ハデに動き回りながら,操作次第ではデビル
メイ クライのような攻撃もできる,といった感じでしょうか。
4G:
ではGUNZならではの特徴というのは,どういう部分になるのでしょうか?
Kim:
既存の3Dシューティングは,いかに現実に近い戦闘シーンを描くかを目標にしていますが,GUNZは,よりハデで痛快な戦闘シーンを描くことに注力しています。例えば物陰に隠れて相手をスナイプするよりも,弾丸を刀ではじき飛ばしながら突撃するほうが有利なゲームなんですよ(笑)。GUNZでは,誰もが積極的に攻撃を行うように,システム/バランスを調整しています。ゲームなんだから,こっちのほうが面白いですよね。
4G:
ええ,本作の戦闘はとにかくハデでにぎやかで面白いですね。このハデさにはビジュアル面も一役買っていると思うのですが,本作のイメージイラストは,かなりコミック風ですね。影響を受けたコミックはありますか?
Kim:
そうですね,コミックからいろいろなヒントを得ていると思います。というのも,キャラクターの成長と活躍を描くという意味で,ゲームとコミックは似ている点が多いんですよ。また演出や画面効果という点では,映画やほかのゲームタイトルが参考になりますね。
新興会社ならではの苦労&
オンラインゲームの今後について |
〜"オンラインゲーム"という区分すら,
もうなくなってしまうのではないでしょうか〜 |
4G:
前にAce
Sagaを開発したときと現在を比べたとき,Maiet Entertainment社はどのような部分で成長したと思いますか?
Kim:
Ace Sagaのときはスタッフ全員初めてのゲーム開発ということもあり,さまざまな試行錯誤を行ったため開発期間が非常に長くなってしまいました。しかし今ではそのときの経験を生かすことで,開発効率がずいぶん良くなりましたね。また,独立した会社としての位置も明確になったと思っています。
4G:
なるほど。しかし,人手が足りないことによる苦労も多いのではないですか?
Kim:
ええ,それはありますね。実を言うと開発スタッフを募集しているのですが,なかなか良い人材が見つからなくて……。
ここ数年,韓国のいくつかのゲーム会社が大きな成功を収め,そのたびに会社の規模を大きくして開発者をたくさん雇用したため,今の韓国で新たに開発者を雇用するのが非常に厳しい状況です。それなりに良い勤務条件を提示しているのですが……かなり難しいですね。
4G:
その当たりの問題は,新興の会社はどこも苦労しているようですよね。GUNZは,何人くらいのスタッフが,どれくらいの期間をかけて作ったんでしょうか?
Kim:
企画担当が一人,プログラムが4人,グラフィックスが3人の計8人ですね。開発開始からサービス開始まで,ちょうど1年間くらいかかりました。ただオンラインゲームですから,まだ現在も開発を続けていますよ。
4G:
なるほど,やはり多いとはいえない人数ですね。ぜひGUNZを大ヒットさせて,大きな会社に育てていってください。
Kim:
ありがとうございます。具体的な売り上げの数字は社外秘ですが,今のところ,GUNZの受益率は非常に高いですよ。
4G:
おお,それはいいですね。GUNZは,基本プレイは無料で,一部のゲーム内アイテムをリアルマネーで販売するという課金方式を採用していますよね。日本でも最近そのシステムは増えてきて,注目されている部分です。ところで,今一番人気のある武器と服装ってなんですか? そういうシステムなら,たぶん人気のあるものって決まってくると思うのですが。
Kim:
武器では,両手に一つずつ持って使うサブマシンガンと長剣が人気ありますね。この二つはどちらも近距離攻撃の部類に入るのですが,今はやっているプレイスタイルは,ダッシュで敵に近づいて近接戦を繰り広げるというものですので,近距離用で火力の強い武器に人気が集まるんです。
服装ではコート類が非常に人気が高いですね。ダッシュするたびに"はためく"のがかなり格好良いと評判ですよ。サブマシンガンもそうですが,映画「マトリックス」の影響もあるのかもしれません。
4G:
ほかのプレイヤーに,"格好良さ"を見せつけるのも,本作の遊び方の一つですからね。ところでKimさんは,何か好きな日本のゲームはありますか? また,日本と韓国のゲームの違いについて思うところがあれば教えてください。
Kim:
"ファイナルファンタジーシリーズ"や"ゼルダの伝説シリーズ"がとても好きです。これらのゲームに見られるように,"確固とした世界観"と"人を感動させるストーリー"は,ゲームを芸術作品に高めてくれる力だと思っています。
韓国で人気のオンラインゲームは,どれもストーリーには気を遣っていないと感じます。ゲームとしての楽しさの要素と,ほかのプレイヤーとの競争という部分に関して注力してきた結果でしょう。ただ最近は,SOFTMAX社の「Tales
Weaver」(テイルズウィーバー)や,NEXON社の「Mabinogi」(マビノギ)を始め,一部のオンラインゲームがストーリーをゲームの中心に据え始めていて,これはこれで良い兆候だと思いますね。
同じ作業の繰り返しにならないよう,それぞれのプレイヤーにとって意味のあるストーリーを展開していくことは,今後のオンラインゲームの課題だと思っています。
4G:
やはりオンラインゲームについて深く考えておられるようですね。では,今後のオンラインゲームは,どのような形態へと発展していくと思いますか?
Kim:
すでに,"ネットワークにつながっていないPCには,なんの価値もない"という時代になったと思っています。コンシューマ機も,すぐに……いや,こちらもすでに同じかもしれませんね。とくにアクションゲームに関しては,ほかのプレイヤーとの戦いが重要なウェイトを占めているので,今後はますます"オンライン"ということは意識しなくなるでしょう。
そのため,"オンラインゲーム"という区分すら,もうなくなってしまうのではないでしょうか。
4G:
確かにそれはありますね。とくにこの韓国では,オフラインのゲームのほうが珍しいですから。それでは最後に,GUNZの日本でのサービスを期待している読者に,ひと言コメントをお願いします。
Kim:
4Gamerの読者のみなさん,GUNZを日本でもサービスできるように,現在いろいろと努力中です。うまくいけば,比較的早い段階でみなさんにプレイしてもらえるでしょう。そのときまで,GUNZのことを忘れずに,ぜひ期待して待っていてください。
4G:
私も期待しています。ありがとうございました。
今回"キーマンインタビュー"として話を伺った5人の中では,比較的若い世代に入るKim氏。しかしそれだけに苦労も多く,また「ビッグになってやろう」という気迫も感じられた。
公開早々から韓国PCゲーム業界で大きな評判となったGUNZは,そんなKim氏が率いる若いスタッフ達による意欲作だ。まだまだ荒削りかもしれないが,秘めるポテンシャルはかなり高い。このように,次から次へと新しい才能が出てくるならば,元気のなくなりつつある韓国オンラインゲーム業界も,まだまだ死なずに済むだろう。
「GUNZ THE DUEL」
スクリーンショット |
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コンセプトアート |
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