[TGS2004#28]いよいよ開発も終盤? クリス・テイラーに聞く「Dungeon Siege II」
2004/09/25 21:22
 「マイクロソフト ダンジョン シージ」(以下,DS1)といえば,プレイヤーの手間を徹底的に省いたプレイアビリティと,その美しいグラフィックスで人気を博したアクションRPG。全世界で大ヒットとなったため,その発売の直後から続編の噂が飛び交い,2003年のE3で,(ムービーのみの展示とはいえ)正式に続編開発がアナウンスされたときには,多くのファンが歓喜したものだ。……それから1年半,今年(2004年)の東京ゲームショウでは,「Microsoft Dungeon Siege II」(以下,DS2)がプレイアブルの状態で展示された。
 とはいえ「こちら」に掲載したように,今回の展示内容は,今年のE3(記事は「こちら」)や,Game Conventionのもの(記事は「こちら」)と大して変わっていない。しかし,もっともっと多くのことを知りたいというファンも多いことだろう。そこで東京ゲームショウに合わせて来日したGas Powered Games社のプレジデント,クリス・テイラー(Chris Taylor)氏に時間をいただき,インタビューを行った。
 長年ゲームの開発に携わってきた氏は,今でも現役のゲームデザイナー。すべてを一人で決めていたというDS1のときほどではないが,DS2でも,基本的には彼が中心になってゲームデザインが行われているという。スキルツリーやパワーといった本作のフィーチャーは,これまで何度も記事にしているので「こちら」の記事一覧で見てもらうとして,ここでは「まだどこにも出ていない情報」を中心に,DS2について聞いてきた。



■新要素や豊富なサイドクエストで,何度も繰り返して遊べるゲームに進化
4Gamer:
 こんにちは,ご無沙汰しています。

クリス・テイラー氏:
 えーと,確かDungeonSiegeの攻略本を作ってくれた人?

4Gamer:
 なんだか嬉しいような嬉しくないような,微妙な覚えられ方ですね。

クリス・テイラー氏:
 いや,冗談(笑)。でもDS2は,データ量がはるかに増えてるから……(攻略本を挟んでいた指の間隔を倍くらいに広げて)これくらいかな。次作る人は大変だろうねえ。

4Gamer:
 さっきATIブースでちょっと触ってみたんですけど,DS1と比較して細かい部分がいろいろ進化しているようですね。

クリス・テイラー氏:
 実はたまたまさっきまでここ(実はホテルの一室)で遊んでたんだけど,まぁこっちに来て見てごらんよ。E3でも見たと思うけど,DS1にはないさまざまなフィーチャーがあるんだ。スキルツリーや,クラスごとのパワー。ペット類も新フィーチャーだね。まぁE3でもGCでも見てるし,そんなことは知ってるか。

4Gamer:
 いや……いま,クラスごとって言いましたよね? DS1だと,キャラクターにクラスなんてなかったですよね。近接武器を使えば使うほど近接攻撃が得意となって,魔法を使えば使うほど魔法がうまくなるといった,プレイスタイルに合わせてキャラクターが成長していくというシステムでした。DS2では違うんですか?

クリス・テイラー氏:
 お,君らにも知らないことがあった。よかった(笑)。もちろんDS2でもプレイスタイルによって成長が変わってくるけど,DS1よりはクラスを意識したシステムになっているのは確かだね。DS1の場合は,すべてのキャラクターが,いわばマルチクラスだった。それはそれで良さがあると思うけど,半面スペシャリストが作りにくいという問題があったよね。DS2は,スキルツリーとパワーという新要素によって,マルチクラスもスペシャリストも共存できるシステムなんだ。

4Gamer:
 なるほど,よりRPGとして完成度を増してきた感じですね。ところでこの画像,さっき見たときより綺麗に見えるんですけど,解像度はいくつですか?

クリス・テイラー氏:
 今は1600×1200ドットかな。いいだろ?

4Gamer:
 うわ,このノートPC,そんなに表示できるんですね。しかしそれだけの大きさの割には動きもスムースですね。このノートPC,スペックはどれくらいですか?

クリス・テイラー氏:
 CPUがPentium4/3.4GHzで,VRAMが256MBだね。ただ1GHz+VRAM64MBというマシンでも問題なく動作するように作ってあるよ。実際このバージョンは,見た目こそE3のときのものとさほど変わっていないけど,エンジンは大幅にチューンしていて,はるかに高速になっているんだ。



4Gamer:
 このグラフィックスクオリティで高速なら,申し分ないですね。せっかくですから,噂の巨大なボスモンスターを見せてもらえませんか?

クリス・テイラー氏:
 あぁ,いいよ。DS2には,数多くの巨大なボスモンスターを用意してあるんだ。どいつも非常に大きくて,スクリーンいっぱいに……(ふと気づいたように操作を中止)いや,まだ秘密にさせてほしいな。プレイヤーを驚かせたいからね。危ない危ない。

4Gamer:
 じゃあその代わりに,別に何か派手なシーンを見せてくださいよ(笑)。

クリス・テイラー氏:
 OK。ではクエストを見せよう。DS2はただ戦闘が楽しめるだけでなく,多くのメインクエストとサイドクエストが織りなすストーリーにも力を入れているんだ。戦闘とストーリーがセットになって,初めて充実したゲーム体験になるからね。DS2だとさまざまな分岐があるから,一度クリアしたあとでも,何度も遊べるはずだよ。

4Gamer:
 DS1は,ストーリーやマップの分岐はまったくなくて完全な一本道でしたよね。DS2では一本道ではないのですか?

クリス・テイラー氏:
 もちろんメインのストーリーはメッセージ性を持っていて,会話の選択肢などで大きく変わってしまうことはない。ただ,マップには横道やサイドクエストをたくさん用意してあるから,DS1とはまた違った感じだろうね。横道に入って,さらにその横道に入って,さらにその横道に……なんて場所もあるし,そんな場所でとてつもなく強いモンスターと出会って,ゲームの後半に強いパーティメンバーを引き連れて戻ってくるなんてこともあるだろう。

4Gamer:
 戻ってこれるんですか? いやDS1でも戻ることは可能は可能でしたけど,ほとんど……いや,まったく意味がなかったもので,ちょっと違和感が。

クリス・テイラー氏:
 戻れる……というか,しばしば戻ることになるね。そのためのテレポータを出せるくらいだ。ほら(と言って,テレポータを出してテレポート)。

4Gamer:
 戻るって,どこに?

クリス・テイラー氏:
 DS2のストーリーは全部で三つのActに分かれているんだけど,それぞれのアクトのセントラルタウンに戻れる。そのセントラルタウンに戻ったときのテレポータに再び入れば,先ほどテレポータを出した場所に戻れるんだ。ちなみにセントラルタウンというのは文字通り各アクト中心部で,HUBになっている。そのアクトのすべてのマップは,ここにつながってるわけ。

4Gamer:
 HUB,懐かしいですね。少し話が前後してしまいますが,サイドクエストというのは,いくつくらいあるんでしょう?

クリス・テイラー氏:
 まぁ数え方にもよるけど,30〜40はあるね。またサイドクエストとは別に,メインクエストも30〜40ある。まだこのあたりは詰め切っていないので,あくまでも予定だけどね。ちなみに一つのクエストは,一つのアクションで終わるというわけではない。あちらこちらを回って,例えば10のアクションを行って初めて一つのクエストが終わるなんてこともある。



■さらに進化したマルチプレイについて
4Gamer:
 なるほど,確かに遊びごたえありそうですね。まだ見ぬサイドクエストを探して,クリア後にも楽しめるというのも頷けます。しかしDS1でも,シングルプレイクリア後にはマルチプレイという遊び方がありましたよね。何せシングルプレイのキャラクターを,そのままマルチプレイに持ち込めましたから。

クリス・テイラー氏:
 うん,今ちょうどその話をしようと思ってた。実はDS2では,シングルプレイのパーティを,そのままマルチプレイに持っていけるんだ。

4Gamer:
 それって前と同じでは? ……いや違う……パーティを?

クリス・テイラー氏:
 そう。DS1だと,誰か一人だけだっただろう? DS2では,パーティを引き連れてマルチプレイできるんだ。

4Gamer:
 それは面白いですね。しかしそれでは,キャラクターだらけになってしまいそうな。

クリス・テイラー氏:
 大丈夫。ちなみにDS2ではシングルプレイも含めて,パーティは最大6人になっている。

4Gamer:
 そういえばDS1から二人分減っていますね。どういう理由からですか?

クリス・テイラー氏:
 これは純粋に,DS1からのフィードバックだよ。パーティメンバーをもう少し減らして,その分一人一人の存在価値を増してほしいといった要望があったからね。

4Gamer:
 なるほど。そういえばDS1のときも,確か開発段階で減らした結果8人になったという経緯がありましたね。確かにアクションRPGというジャンルでは,キャラクターが多すぎるのは問題かもしれません。ところでこの6人というのは,ペットも含めてですか?

クリス・テイラー氏:
 そうだね。ヒーロー一人と,5人のペットというパーティもできるよ。で,話をマルチプレイに戻すと,一応1セッションには12キャラクターまでという制限を設けている。だから二人でマルチプレイする場合は,6人のフルパーティを組める。3人で遊ぶなら4人のパーティを,4人で遊ぶなら3人のパーティを,6人で……もういいって?

4Gamer:
 それって,合計で12人になればいいんですか? 例えば4人のパーティと,二人のパーティと……みたいな。

クリス・テイラー氏:
 いや,基本的には全員同じパーティ人数になる。対戦するとき不公平だろう? あとプレイヤーの最大数は8人。一人1キャラクターで12人が遊べるわけじゃないので,注意してほしい。ちなみにGAMESPYで遊ぶ場合は,このマルチプレイのデータをセーブ可能だ。

4Gamer:
 GAMESPY上にですよね?

クリス・テイラー氏:
 そう,GAMESPY上にね。ご想像どおりチート対策でこうなった。このセーブのことを,Vaultingと呼んでいる。それ以外にはフレンドリストを登録できるようになったとか,マルチプレイもかなり進化してるよ。



■テイラー氏は,かなりのMMORPG好き?
4Gamer:
 ほかに何か,今はまだあまり話題になっていない,DS2ならではの特徴ってないですか?

クリス・テイラー氏:
 "デバフ"って言葉分かる?

4Gamer:
 もちろん。MMORPGで弱体化呪文を指す言葉として使われるアレですよね。

クリス・テイラー氏:
 そう,それそれ。プレイヤーキャラクター側がモンスターの能力値を弱めるというのは珍しくないだろうけど,DS2だと,敵もプレイヤー側をデバフしてくる,つまり能力値などを下げてくるんだ。だから弱そうな敵でも,油断しちゃいけない。あと,やはりMMORPG用語で"アグロ"っていうんだけど,モンスターの一群のうちの一体を攻撃すると,その一群全部が襲ってくるなんてこともあるよ。

4Gamer:
 MMORPG,よく遊ぶんですか?

クリス・テイラー氏:
 うちのスタッフは,みんなMMORPG大好きだよ。夜中の3時4時まで遊んでいることも珍しくないようだね。

4Gamer:
 テイラーさん自身はどうですか? どのMMORPGが好きですか?

クリス・テイラー氏:
 僕はね,仕事柄っていうのもあって大抵のMMORPGをプレイしたよ。どんなゲームでも,必ず学ぶべきところがあるんだ。ま,MMOは全部好きと言ってもいいかもしれないね。ほかに好きなのは,「Delta Force:Black Hawk Down」「ピクミン2」「クラッシュ・バンディクー 3」とかかな。このあたりからは,いろいろと影響を受けている。ピクミンから,RTS的手法を学んだりね(笑)。
 とにかく,僕はどんなゲームでもプレイするし,クレバーだと思うものはなんでも吸収する。

4Gamer:
 結構日本のゲームもプレイされるんですね。日本はお好きですか?

クリス・テイラー氏:
 DS1もヒットしたしね!(笑) 実は正直言うと,日本でこれほどまでヒットするとは思っていなかったんだ。日本のPCゲーム市場の規模から考えると,もっとずっと少ないと踏んでいたんだよ。ところが,すごく売れて嬉しいね。

4Gamer:
 日本でヒットした理由を,テイラーさんはどう分析していますか?

クリス・テイラー氏:
 攻略本が良かったんだよ。うん,きっとそうだ。リップサービス,リップサービス。

4Gamer:
 それ分析にもなってないんですけど(笑)。ええと,質問を変えますね。DS1の開発当初は,アクションRPGが全盛でしたよね。しかし今は,右を見ても左を見ても,MMORPGばかり。テイラーさん自身もスタッフ達もMMORPGが好きなのに,なぜあえてMMOではないRPGを選んだんですか?

クリス・テイラー氏:
 我々は,こういったタイプのゲームを求めるプレイヤーが大勢いることを信じているからだ。時間をあまり取れない人が,時間があるときにだけ遊んでも楽しめるタイプのゲームがね。
 DS1は,世界で数百万本売れた。しかしMMORPGだと,ヒットしてもせいぜい数十万。まだまだMMOではないRPGのファンはいるはずだ。もちろんオーバーラップもするだろうが,本作はまた受け入れられると思うよ。

■Siege Editorは? チキンレベルは? そして,発売時期は?

4Gamer:
 なるほど,よく分かりました。……ええと,もう時間があまりないようですね。ではここからは,一問一答形式でお願いします。まず,本作でもSiege Editorは出るのか。出るとしたらいつかを教えてください。

クリス・テイラー氏:
 発売と同時を目指してはいるが,約束はできない。ま,"あまり時間が経たないうち"とはいえるだろう。

4Gamer:
 「Total Annihilation」のときのような,Webを使ったサービスは行われますか? マップの追加などですね。

クリス・テイラー氏:
 予定はしているけど,まだハッキリとは言える段階ではないね。

4Gamer:
 チキンレベル(編注:DS1にあった隠しエリア。凶悪なまでに強いニワトリがいる。しかもその名はクリス・テイラー氏!)はありますか?

クリス・テイラー氏:
 秘密! ぜひプレイヤー達に探してほしいね。ってあります,って言ってるようなものだけど。

4Gamer:
 では最後の質問です。本当はいつ発売されるんですか?(笑)

クリス・テイラー氏:
 うーん,実は開発自体はもう終盤なのは確かだけど,発売はまだ見えていないというのが正直なところだ。とりあえず今は,2005年春としておいてほしい。

4Gamer:
 しかし,春といっても幅広いですよね?

クリス・テイラー氏:
 そうだね。まぁでも,現段階ではそれ以上細かくは言えないんだ。

4Gamer:
 じゃあ,少なくとも夏になるころには,遊べているわけですね。

クリス・テイラー氏:
 もちろん。じゃないと僕,殺されちゃうよ。

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 来春には遊べるものになりそうだが,やはり気になるのは日本語版の発売。何せ,未だに正式にアナウンスされていないのだ。これはテイラー氏に聞いても仕方がないので,日本のマイクロソフトの広報にあたってみたのだが,やはり「未定」という返事。1作めはかなりのヒットを飛ばしたし,わざわざインタビューまでセッティングしてくれる作品で日本語版が登場しなかったことはないから,おとなしく発表を待つとしよう。

 さてテイラー氏は,インタビューの間中,実に明るく気さくに話してくれた。しかも予定時間をはるかにオーバーして質問を続けていたというのに,ようやく帰ろうとしていた我々を引き留めて,「さっきTotal Annihilationの名前を出してくれたよね。実は続編を今開発中なんだよ」という思わぬ発言まで。これまた非常に気になる話なので,また別に時間を取って聞かせてもらうことにしよう。(Iwahama)

→「Microsoft Dungeon Siege II」の記事一覧は,「こちら」
→東京ゲームショウ記事一覧は「こちら」

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