■ファン待望のミスト最新作に,ついに日本語版が登場
ミストIVの中でも,かなり印象的な風景の一つ,海中から垂直にそそり立つ難破船 |
ミストIVは,2004年9月に米国で発売されており,半年という期間をおいての日本発売となるわけだが,キャラクターの会話の端々や,拾ったメモの内容などがとても重要な意味を持っていたりする作品だけに,完全に日本語化されているというのは非常に重要なポイントだ。
ミストIVは,「ミストIII:エグザイル」(ミストIII)の続編となる。ミストIIIとミストIVの間に,前述のミスト ウルが挟まっているが,これは本来オンラインゲームとして開発されていたという経緯を持つ(残念ながら頓挫してしまったが……),どちらかといえば番外編的なもの。タイトルの後に数字が付くミストIVこそが,正当な続編といって差し支えないだろう。
ミストIIIではまだ赤ん坊だったイーシャが,元気で聡明な少女へと成長した姿を見ることができるのも,本シリーズを愛するミストファンにとっては嬉しいはずだ。
プレイヤーが最初に訪れ,パズルを解くアトラスの研究室 | アトラスの娘イーシャは,とても活発で聡明な女の子に成長していた | クリスタルでできたアトラス一家の彫像。二人の子供はアクナーとシーラス |
空中に浮かぶ石を渡って向こう側へ渡るためには,パズルを解かねばならない | トマーナでアトラス一家が暮らす家。各部屋が渡り廊下で繋がっている | 風景は美しいが,まるで迷路のように,小路が縦横に走っている |
■壁紙にしたくなるほど美しいグラフィックス
この世界のクリスタルは,大気中の静電気を溜め込んで明るく輝く。実は空中に浮かんでいるため,このシーンは,雲よりも高い場所なのだ |
システムは,マップ上を360度自由に行き来できたミスト ウルとは異なり,一枚絵のグラフィックス上に俳優が演じる実写映像が合成され,行ける場所は決まっているという,ミストIIIタイプのものが採用されている。
背景は2Dのグラフィックスだが,とても細かくリアルに描きこまれているおかげで,人間の実写映像を重ねても不自然に見えることはない。しかも,ミストシリーズならではの幻想的な美しさで描かれた世界は,2Dではあるものの上下/左右360度好きなところを見回せるようになっている。それに加え,視点の中心となるマウスカーソルのあたりに,はっきりと焦点が結ばれ,その周辺は少しぼやけるという映像表現が,うまく遠近感を表現している。
プレイヤーが訪れることになるいくつかの時代は,色とりどりの植物が生い茂り熱帯雨林のジャングルを思わせる地帯,荒涼とした岩石地帯,美しい清水が流れるいくつもの小川の間に,迷路のような小路が続く場所など,特色にあふれるものだ。
行ける場所はあらかじめ限定されていて,マウスカーソルの形が変わることでプレイヤーがそれを理解できるという,オーソドックスなシステムを採用しているので,画面上を丹念にクリックしながら進んでいくことになる。ただ,例えば曲がりくねった道を歩いて分かれ道に出た場合,自分がどちらから来たのか,とっさに分からなくなってしまうといった事態が多々あった。とくに迷路のような小路を進む場所では,恥ずかしながらかなり迷ってしまった。この辺は自由に動けたミスト ウルの方が,格段に分かりやすかったところではある。
BGMもまた,この美しいグラフィックスにマッチしたもの。プレイ時に邪魔に思えるようなことは決してなく,その存在がまるで空気のようなアンビエントサウンドとなっている。空間的な広がりを持った曲が多く,聴いていると心が和んで良い。本作では,音もパズルを解くうえで重要な鍵になることがあるので,できればきちんとした外付けのスピーカーか,ヘッドフォンの使用をお勧めする。
見るからに悪人面の,アトラスの息子シーラス。アクナーと違い頭脳派の悪人だ | こちらも悪人面のアクナー。腕力至上主義っぽい感じの,肉体派悪人 | イーシャの手形。手相は分からないが,"水の子"って何だろう? |
ジャングルに棲む,有翼で肉食恐竜のような動物。魚をかじっている | あるアイテムを使うと,その場所で起きたことを後から再生できるようになる | 丸文字とかわいい挿絵が入った,いかにも女の子らしいイーシャの日記 |
■ミストお約束の難解パズルもぎっしり
あるパズルに使われる計器板。使えるようにするには,上に行ったり下に行ったりして,これとは別のパズルを解かねばならない |
筆者は,この最初のパズルで「なんだ,ミストIVのパズルは,ずいぶんと簡単になったもんだ」と思ったが,これが大きな間違いであったことは,その後いやというほど思い知らされた。
今回のパズルもまた,忍耐と根気と論理的思考が必要なのはもちろん,操作スピードが要求されるものもいくつかあり,これがとても手強かった。一定時間内に,すべての操作を正しく行わないと先に進めないというもので,気ばかり焦って失敗を繰り返してしまった。
どうしてもうまくいかないときは,まず制限時間を度外視して,正確な手順を体で覚えてから,少しずつ操作スピードを上げていくようにしよう。そうすればきっとクリアできるはずだ。"急いてはことをし損じる"昔の人はいいことをいったものだ。
また,先にも少し書いたが,音が重要な要素となるパズルも登場する。とくに,とあるジャングルで野生動物を追い払うために,少し前に聞いた音(声といったほうがよいが,これ以上はネタバレになるので……)と同じ音を出さなければならないパズルがあるので,スピーカーをオンにしておくか,ヘッドフォンを使わないとクリアできない。
これらパズルを解く手助けとなるヒント・システムが搭載されているのが,ミストIVの大きな特徴だ。しかもヒントが三段階に分かれており,プレイヤーがどの程度のヒントを求めるかによって,使い分けられるようになっている。一段階めのヒントは,漠然とほのめかすように書いてあるだけだが,二段階めではもう少し具体的になり,三段階めになると"どこに行って,何をする"ということまで分かる。
これはかなり便利で,あるとないとでは大違いだ。パズルを解くという要素は,ミストというゲームの重要な楽しみの一つとはいえ,どうしてもクリアできずに,結果としてプレイそのものを放り出してしまうという最悪なパターンを,ほとんどなくすことができるだろう。
それでも解き方が分からないときは,海外のウォークスルー(攻略)サイトをチェックしよう。"Myst 4 walkthrough"といった語句で検索すれば,かなりの数がヒットするので試してほしい。
アドベンチャーゲームファンならば,ミストIVは2005年に"プレイしなければならないゲーム"の筆頭だろう。とくに本作は,WindowsとMacintoshのハイブリッド仕様となっており,Macゲーマーには,2001年のミストIII以来,発売を待ち望んでいた大作アドベンチャーのはず。
ストーリー,グラフィックス,サウンド,パズルと,どれをとっても一級品と呼べる歴史的作品だけに,ぜひプレイしてみてもらいたい。
ゲームが始まったと思ったら,すぐにいなくなってしまうアトラス | これがヒント・システム。何をすれば良いかが分かるようになっている | 巨大な生物の骸骨。どうやらアクナーが一人で仕留めたらしい |
ジャングルに棲むサルのような動物が,気絶したプレイヤーを覗き込む | これまた複雑なパズルだが,解かないことには先に進めない | 電気が通って光りだした基板。こうなるまでが大変なのだ |