地域の祭りに参画する業界初の試み:ガンホー協賛の「ふれあい夏まつりさかえ2004andラグナロクオンライン花火大会」
2004/08/23 16:45
舞台となった,栄町町民Aグランドの夜景。夜に入ってからの賑わいはかなりのものだった
 先週末の2004年8月21日(土),千葉県印旛郡栄町の栄町町民Aグランドにて「ふれあい夏まつりさかえ2004andラグナロクオンライン花火大会」が開催された。この「ふれあい夏まつりさかえ」,例年は地元の企業や各種団体からなる実行委員会が手作りのステージイベントを展開し,露店や打ち上げ花火ともども,まさしく「住民の」お祭りとして行われてきた。
 今年はそこにガンホー・オンライン・エンターテイメントが協賛企業として参加し,MMORPG「ラグナロクオンライン」にちなんだステージや花火を提供する。おなじみ「ラグナロ娘」がゲームに登場するキャラクターの「ポリン」をあしらった浴衣に身を包み,ガンホー社員自ら露店を出すというこの催し,ガンホー主催のイベントを中心にレポートしよう。

 最寄り駅であるJR安食(あじき)から利根川河川敷の会場までは歩いて30分ほどだが,今年は駅との間に送迎バスが運行され,地元以外の来場者の便が図られている。鉄道で遠隔地から来るだけあって,車内で乗り合わせた人にはラグナロクオンラインのファンが多かった様子。地域の祭りとオンラインゲームという不思議な取り合わせを,移動中に早くも実感させてくれる。

 ガンホー提供イベントのトップバッターは,15時から行われた「ラグナロク天国公開録画 in さかえ」。インターネット放送局tandm.tvで第2,第4金曜日の22時から放送されている情報バラエティ「ラグナロク天国」の特別収録ステージで,内容は来場者にラグナロクオンラインとは何かをラグナロ娘の寸劇で披露したり,「ポリン音頭」をレクチャーしたりというものだった。

 続く16:00からの「カラオケ発表会」は,地元のみなさんのカラオケとともに,「RAGNAROK THE ANIMATION」(テレビ東京,毎週火曜1時半〜)で主題歌を歌う山崎麻衣美さん,台湾のラグナロクオンラインの主題歌を歌う土屋亜有子さんも出演するステージイベントとなった。

 会場では浴衣姿のラグナロ娘が,来場者にうちわとセットで5日間無料プレイチケット付きのクライアントCD-ROMを配っており,お祭りの雰囲気を最大限尊重する形でPRが行われているように見受けられた。企業協賛という言葉から想像される,いかにも商業主義的なイメージとは一線を隔していたようなので,一安心。また,ガンホー・オンライン・エンターテイメント自らが運営する露店「食い処ガンホー」は大盛況で,"あの"堀取締役を筆頭に社員が焼いた300食の焼きそばは,なんと夕方には完売している。ごちそうさまでした。

ステージではラグナロ娘達による「ポリン音頭」のレクチャーが行われ(左,中),会場では常時うちわやお面が配布されていた(右)
社員が切り盛りする「食い処ガンホー」の焼きそばは大人気。堀氏も気合でコテを振るう(下段,左)。会場には「ラグナロクショップ@栄町出張所」(中)や,記念撮影用のオブジェも用意されていた(右)


地元の人も交えつつ,ポリン音頭の輪が広がる
 さて,来賓挨拶やみこしの練り歩きといった地元恒例のプログラムを間に挟みつつ,19時20分からの「輪踊り」では前述した「ポリン音頭」が,地元の輪踊りと並んで披露された。ガンホー・オンライン・エンターテイメント社長の森下氏が浴衣姿で地元の踊りに参加すれば,やぐらを囲んだ地元の団体もポリン音頭を踊るというコラボレーションが,強く印象に残る一幕だった。

 ところで,オンラインゲームの運営会社が地域の祭りに参加するのは異例のことであり,この話がどうやって成立したのかは気になるところだ。話を持ち込んだガンホー・オンライン・エンターテイメント側と,受け入れた栄町側の方に,それぞれ話を聞いてみた。

 栄町役場産業課課長の小出善章氏によれば,「今年で12回目を迎えるふれあい夏まつりさかえそのものが,変化のきっかけを欲していた」とのこと。「地元の団体が集まって実行委員会を組織し,例年整地作業から自分達で行う住民の祭り」として少しずつ大きくなってきたが,逆にいえばステージ・露店・花火という形が整った後は,大きな変化を迎えることなくきたとのこと。「祭りのさらなる発展のために,ガンホーさんの申し出を受けてみようということになった」という話だった。

 実際に提携してみた手応えについて聞いてみると,「人出,とくに昼間の来場者が目に見えて増えた」という。「花火も重要な楽しみではあるが,露店を広く用意して昼間に始まるお祭りにしているのは,元々は子供達に楽しんでもらうため」なので,栄町にとっても非常に良い結果を生んだようだ。
 今年はやや変則的な日程だが,ふれあい夏まつりさかえは例年,夏休みの最後の週末に行われている。そこには「子供達の夏の思い出になるような催しにしたい」という願いが込められているそうだ。可愛らしいキャラクター「ポリン」をあしらったお面を配り,自前の露店で焼きそばを焼くガンホー・オンライン・エンターテイメントの奮闘は,子供達にも歓迎されたことだろう。

 さて,今度はガンホー・オンライン・エンターテイメント側,代表取締役社長の森下一喜氏に提案のいきさつを聞いてみよう。森下氏によれば,お祭りに参加する構想は「去年の夏から暖めていた」という。「オンラインゲームはすでにコミュニティを積み重ねたソサエティ,一つの社会になりつつある」と森下氏は見ており,作品の宣伝効果のみならず「ゲーム内でエンターテイメントを提供するということは,現実社会で楽しみを提供することと変わらない。"Inspire Movement"をキャッチフレーズにする会社として,そのことをとくに社員や周囲の人に肌で感じてほしかった」という考えを重視した結果らしい。

 「主に都内で行われるゲームやキャラクターのショウでファンの期待に応えるのも,もちろん重要なこと」と前置きしつつ,森下氏は続ける。「まったく違うターゲット,より広い層に訴えかけることを考えたとき,普通の意味でのPRでは届かない。まずは楽しんでもらうことによって,初めて伝えられるものがある。そうした社会貢献を目指したい」との弁だった。より広い懐を持つ在来の"お祭り"に着目したのは,PRとエンターテイメントのあり方を問う独自の模索だったといえそうだ。

 そこまでは分かったとして,なおも気になるのは,その舞台がなぜ栄町だったかである。森下氏の出身地が千葉県であると聞き及んでいたため,何らかのつながりがあるものと踏んでいたのだが,これは見事に外れた。氏いわく「まず,企業の協賛を快く受け入れてもらえること,次に"ふれあい"というコンセプト,そして最後に実行委員会の祭りへの熱意が感じられたこと」が,栄町との協力を決めた理由だという。
 協賛を受け入れてくれる栄町を探し当てた熱意もたいしたものだが,協賛できるとなったら電光石火で準備に入り,実際にその"前代未聞"のプロジェクトを動かす姿勢も,高く評価できる。ポリン花火もさることながら,浴衣も帯もラグナロクデザインだし,ステージなどもラグナロク用に作ってあった。単に協賛して名前を売って社員総出でがんばって,というだけでなく,相当なコストと手間がかかっていることが容易に想像できるだけに,このイベントに対するガンホーの意気込みがうかがい知れる。

 「オンラインゲームの世界は出会い,ふれあいこそが大きな楽しみであり,それを形にする機会として祭りに協力したかった」と語る森下氏に,来年も機会があればこうした催しに参加する考えがあるか聞いてみたところ,「町が喜んでくれるなら,今年の反省を生かし,もっと実行委員の方と一緒になってやってみたいと思う」と,予想以上に積極的な回答が返ってきた。次回もぜひ,決して本業が手薄にならないよう気合いを入れつつ,こういったイベントに取り組んでほしいものだ。
 いい機会なので今後のガンホー・オンライン・エンターテイメントの予定についても聞いてみた。森下氏は話したくて仕方がないと言いつつも「東京ゲームショウでガンホーとして(つまりタイトル別でなく)面白いことを考えている」と述べるに留め,さすがに中身については教えてくれなかった。今回これだけ奇抜な挙に出たこともあり,自ずと期待は高まるが,いましばらく待つことにしよう。

左から,今回インタビューに応じてくれた栄町役場産業課課長の小出善章氏と,ガンホー・オンライン・エンターテイメント代表取締役社長森下一喜氏,そして,森下氏が地元の人と一緒に踊る印象的な一コマ


夜の祭り会場を彩る花火。会場に隣接した場所から打ち上げられたため大迫力だ
 さて固い話が続いたが,祭りはいよいよクライマックスの花火大会へ。地元提供の「ふれあい夏まつり花火大会」と,それに続く「ラグナロクオンライン花火大会」という二部構成になっているのだが,河川敷にある会場のすぐ近くで打ち上げられるだけあって,音といい光といい迫力満点だ。さながら「町内のお祭り」といった感じの名称と雰囲気の"ふれあい夏祭り"だが,元々からして1500発の打ち上げ花火を誇る盛大な催しなのだ。見上げると,視野のほとんどを占める形で花火が広がっていく。

 地元企業の提供する大玉が惜しげもなく投入されると,しばし間をおいてガンホー提供の花火の連射が始まる。中盤にさしかかったころ,今回の呼び物「ポリン花火」「ポポリン花火」が次々に打ち上げられていく。ピンク色の弾子がポリンの形を,緑色の弾子が「ポポリン」の形を描くこれらの花火,頭のとんがりや目まで再現する凝ったものだ。
 見る角度と玉の向きによって,なかなかキレイに決まらないのがもどかしいが,何発かはまさしくポポリンという形を夜空に描いて消えた。

 都心の喧騒を離れて夜空を見上げるゲーム関連イベントというのは稀有であり,ガンホー・オンライン・エンターテイメントの諸氏も,いつもと違った一面を見せてくれた。広い意味でのPCゲーム活性化の一環として,こうした試みは今後も大いに歓迎したい。(Guevarista)

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会場に展示された花火の模擬弾(上段左)と,続々と打ち上げられては空いっぱいに広がる花火(上段中,右,下段左)および,ある意味今回の主役ともいえるポリン花火。いや,正確にはポポリン花火か(下段中,右)



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