NVIDIA,SCEIと提携し次世代ゲーム機のGPUを開発
NVIDIAとソニーコンピューターエンタテインメント(SCEI)は,SCEIのCellプロセッサを搭載したSCEIの次世代家庭用ゲーム機(いわゆるPS3)のGPUを共同開発すると発表した。 SCEIのプレイステーション/プレイステーション2(以下PS2)などはグラフィック性能に定評はあったものの,頂点演算性能の割には表現力が低く,とくにPC用ゲームと比較すると画質の点で劣ることも多かった。NVIDIAとの提携により,最高レベルのグラフィック品質を備えるようになることが期待される。
これまでのSCEIの基本路線は,頂点処理性能とPixelFill性能をひたすらに追求したものだった。リアルタイムポリゴン表示性能を出すことしか考えてないハードウェア設計で,テクスチャを貼ると性能が半分になったり,バイリニアフィルタをかけるとまた半分になったりと,単純なパイプラインをいかに速く回すかしか考えられてないのが明白なハードウェア構成だったといっていいだろう。一方,PCグラフィックでのDirectXは,複雑な処理をいかに1パスでこなせるようにするかが進化の中心であった。多段階レンダリングで複雑な表現も可能だが,当然ながらそれは速度とのトレードオフになる。単純処理を高速化して全体の速度を上げるか,複雑な処理をハードウェア化して処理速度を上げるか。CPUの場合,単純なRISCがCISCを駆逐したのだが,これは単純さゆえに高クロック処理ができたことが一因だった。残念ながら,ゲーム機のプロセッサよりPCプロセッサのほうがクロックは上である。加えて,1クロックで実現できる処理自体も遥かに複雑である。PCグラフィックの表現力が高いのも,ある意味当然な話だ。 たとえばバンプマッピングなどは,カタログ上ではPS2で可能な処理として発表されていたわけだが,実際のところはCPUなどによるソフトウェア処理でしか実現できず,結果としてまったく実用的なスペックではなかった。現状のDirect3Dアクセラレータが当たり前のようにやっているフィルタリング処理などもほとんど行われていない。ポリゴンの物量はものすごいが,PS2のグラフィック処理はおおむねDirectX3時代のものだといってもいいだろう。
リアルな映像を作るという方向性では,ポリゴン数を増やすことで,ある程度対応できたのも事実だ。しかし,DirectX陣営は少し違った方向に進んできた。プログラマブルシェーダである。VertexShaderの処理は演算器が頑張れば,ある程度実現可能かもしれない。しかし,最近はPixelShaderが次第に威力を発揮しつつある。レンダリングの質感は桁違いに向上してきた。いたずらにポリゴン数を増やすことなく,ノーマルマップの適用により,非常に精緻なモデリングも実現されてきた。リアルタイムグラフィックのレベルがまったく変わってきつつあるのだ。秘かに2年前から共同開発していたとの言明があったが,ちょうどプログラマブルシェーダの飛躍となったGeForceFXの発表時期でもあり,なるほどとうなずける。
来年あたりに発表されるであろう,Xbox2(仮)や任天堂次世代機がATIテクノロジーズの次世代チップを搭載してくることは,ほぼ確定したところであり,それはDirectX9c以上の機能を備えたものになるということを意味する。以前,UnrealEngine3についてお伝えしたことがあったが,あの時期日本でデモンストレーションしていたのはゲーム機メーカーへの売り込みのためだったという噂もある。仮に,UnrealEngine3が標準環境となった場合のゲーム画質というのは,現在の家庭用ゲーム機のレベルとはかけ離れてくる。実際,CG映画に匹敵するといっていい。 はっきりいってSCEI単独では,それに匹敵する画質を実現することは不可能だろう。次世代家庭用ゲーム機という市場で,仮想敵となるマイクロソフトと任天堂はATIチップを採用する気配であり,現実的に考えて,それに対抗できる会社は一つしかない。 そう考えれば,本気で次世代ゲーム機を開発していこうというのであれば,今回の動きは至極当然のことだ。
特許・実用新案文献特開2002-366533より
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PS3のアークテクチャは基本的にCellプロセッサ中心で,グラフィック処理もCellプロセッサの一種で行われると予想される。1チップに複数のCellが載ることもほぼ間違いないだろう。加えて,NVIDIAの最新GPUである。これらが統合されるとなると,どのような規模のチップになるのか想像もつかない。 図はCellプロセッサによるビジュアライザ(VS)とCPUの構成例であるが,VSの部分がグラフィックコアである。VS内にも,プロセッサユニット(PU)自体が1個のCPUに相当するもので,サブCPU的な演算器がAPUとして並列に配置されている。APU群はソニーお得意のベクトル演算器であり,VertexShaderなどを兼ねるのかは微妙なところ。ピクセルエンジン部分にはPixelShaderが実装されると見るのが妥当だろう。1ユニットに何基のピクセルパイプラインが実装されるかは不明だが,もともと図のようにVS自体もチップ内に複数個搭載することも想定されているアーキテクチャなので,最終的にはSLIテクノロジの超並列版などというものが採用されてもおかしくはないだろう。 これまでPSシリーズに致命的に欠けていた部分が,今回の提携で補われることになる。どのような映像で驚かせてくれるのか,再来年あたり(?)が楽しみだ。 (aueki)
→ニュースリリースは「こちら」
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