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[AOGC#2]韓国オンラインゲームにおけるRMTの実態調査分析
2005/03/01 10:30
 オンラインゲームの研究会関連ではもはやお馴染みとなったソウル中央大学経営戦略学科助教授 魏晶玄(ウィ・ジョヒン)氏の講演は,「韓国オンラインゲームにおけるRMTの実態調査分析」というお題。氏のこれまでの講演と同じく,韓国国内のゲーマーを対象にしたアンケートによる調査結果の分析などを披露した。
 ウィ氏といえば,これまでも数度にわたってオンラインゲーマーの特性についてや,MMORPGにおけるリアルマネートレード(以下,RMT)の問題について論じてきた研究者だ。いつも楽しそうにオンラインゲームについて語っているのが非常に印象的な人物である。

 そんなウィ氏の今回の講演だが,氏はまず満員になった会場を見渡して「私が講演を始めた頃に比べて,かなり多くの人がオンラインゲーム/RMTに興味を持つようになった。嬉しい」とコメント。その後にいつのも熱弁をふるい始めた。
 最初に話題としたのは,「韓国のオンラインゲームの市場規模はこれくらいだから,日本ではこのくらいだから……など,売り上げ高や市場規模だけで,日本のオンラインゲーム市場が進んでいるかどうかを論じるのは,本質的ではないと思う」と,AOGC2005の最初の講演となったスクウェア・エニックス和田社長の発言を少々意識したものであった。続いて氏は「日本のゲームメーカーは,ゲームをあくまでも"ゲーム"としてしか見ない傾向がある」とし,RMTにしろ何にしろ,そうではなくもっと「ゲームの外にも広がっていく可能性がある」点を考えていくべきだと指摘した。
 ウィ氏はその説明として,韓国では検索エンジンとオンラインゲームの融合の可能性も見えてきたという事例(リネージュ限定の検索サービスなどがあるという)を紹介。オンラインゲームは,そのサービスの可能性がゲーム内のみに留まらないことを強調した。
 またウィ氏はここで,オンラインゲームの教育に対する貢献性に関しても触れ,韓国では,子供が幼稚園レベルからPCを使うことを説明。そしてそれは,日本のPC教育のように「ワードやエクセルの使い方」などから入るのではなく,遊び……つまりはゲームから入っていくことが多い点を指摘した。同氏は,こういったPCに対する習熟度は産業全体に影響を及ぼす可能性すらあるという。これは,ウィ氏が毎回の講演で口を酸っぱくして語っている部分であるが,筆者もここは正論だと思う。



 さて,ひとしきりマクロな視点での見解を語った後で,ウィ氏はRMTの話題に入った。そこでまず氏が指摘したのは,企業側の規約などで「アイテムなどは会社の所有物」だと定義してある現実にも関わらず,多くのユーザーがゲーム内アイテムを「所有物」だと認識しているという点。オンラインゲーム上のアイテムを「会社の物」と認識しているのは10%以下であり,それは韓国,中国,北米,日本など属性が違う地域においても同様の状況であるという。
 ウィ氏は,経済学的な観点から見ると,企業とユーザー間のパワーバランスが崩れると約款などは変化していくことを例に挙げ,今はまだ企業が規約を押しつけていられるが,今後は難しくなっていくだろうと説明。また過去の歴史において,「電気」が財物として認められていない時期が存在したが,バーチャルアイテムもそれと似たような状況ではないか,という見解を示した。またその例を見る限り,バーチャルアイテムも今後法律上で財物として認可されていくのではないか,とも付け加えた。
 また今回の講演の中では,「RMTを行うユーザー層は果たして特殊な層であるのか?」という部分についての分析も披露された。結論としては,RMTをやろうがやるまいが属性にほとんど違いはない,というものなのだが,ウィ氏によれば,こういった基本的な調査すらまともに行わずに,何か問題があると一方的に「ゲームが悪い」となる風潮は未だ根強いのだという。

 最後にウィ氏は,韓国のオンラインゲームユーザーの変化についても触れ,現在韓国において「World of Warcraft」が大ヒットしていることを報告。これまで人気だった「リネージュ」などと比べ,World of Warcraftはあまりレベル上げを重視しない"過程を楽しむ"ゲームであるとし,韓国のゲーマーの好みも日本や北米のそれに近い傾向が出てきたのではないか,と締めくくった。
 韓国のオンラインゲームというと,ひたすらレベル上げをしていく作品が人気という偏見(?)もあるかもしれないが,韓国のゲーマーの好みも,ここへきていろいろと多様化しているようだ。今後出てくる韓国産の作品は,要注目かもしれない。
(TAITAI / Photo by kiki)



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http://www.4gamer.net/news/history/2005.03/20050301103000detail.html