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[AOGC#4]インターネットカフェのオンラインゲーム展開について
2005/03/01 17:18
タイトー店舗開発事業本部ES店舗開発部部長の鈴木雅一氏
 AOGC(アジア オンライン ゲーム カンファレンス)一日めの最後のセッション「インターネットカフェにおけるオンラインゲームサービスの展望」では,タイトーの店舗開発事業本部ES店舗開発部部長の鈴木雅一氏が,インターネット&ゲームカフェ「Necca」を題材に,インターネットカフェの現状と今後について講演を行った。

 Neccaといえば,イー・サムスンジャパンが出資するインターピアの名前が大きく出ることが多いが,タイトーはこの事業に資本参加という形で携わっている。例えばNecca秋葉原店は,タイトーとインターピアがフランチャイズ契約を結んだ,タイトー運営の店舗第1号店である。来店した人ならご存知の通り,Necca秋葉原が店舗を構えているビルに,タイトー直営のゲームセンターがあるのはそのためだ。

 本セッションの公演者は,前述のようにタイトーの鈴木氏。氏はゲームコンテンツの開発も行っている同社の中でも,"お店を作る"のを主な業務とする店舗開発部に所属している人物である。仕事柄明かせない数値的データを数多く頭に入れている人なのは間違いないが,この日は"社外秘"というデータを持ち出して,ネットカフェ運営の現状を赤裸々に披露してくれた。アカデミックに分析や研究の内容が語られるセッションとはいい意味で違った,"現場の人"らしい発表内容であった。

■Neccaの事業について
 タイトーは,PC-BANGの韓国での普及を横目で見つつ「この業態は日本でも通用するのだろうか」と,2003年1月,渋谷にNecca1号店をオープンした(ちなみにNeccaとは,「ネットカルチャーコミュニケーションエリア」の頭文字をとった造語)。Neccaはマンガなどを置かない非マンガ喫茶であり,PCにインストールできるコンテンツだけを重視するというコンセプトが,同フランチャイズの大きな特徴である。
 また店舗の利用料金はPCのログイン時からログアウト時までと,通常のマンガ喫茶とは異なる料金モデルを採用しているのも話題となった。

 Neccaの試みは,端的にいうと「ネットワークに関わるもの」を"店舗"というオフラインの空間でどうビジネスに結び付けられるか,ということだ。実際にNeccaでは,メインコンテンツとなるネットワークゲームのほか,チャット,国際電話無料サービス,宣伝広告プロモーション,各種イベント,またソフトの販売など,非常に多岐にわたるビジネスを展開している。一時期は,ラオックス アソビットシティがオンラインゲームイベントの開催場所として頻繁に利用されていたが,同店舗の移転に伴いイベント開催フロアが姿を消したあと,再びイベント開催場としての地位を取り戻しつつある。現在は,年間50回ほどのイベントが行われているという。
 また,クレジットカードやWebMoneyの普及によって急速にオンライン決済が一般化している昨今だが,Neccaでは"現金取り引きができる"という点が逆にメリットとして働くという結果を生んでいる。もちろん運営側の計算の内だとは思うが,カードを持っていない層を積極的に取り込む施策として,一つのお手本を示した形となった。




■ネットカフェの運営はMMORPGに大きく依存している
 さて,このあたりまでは割と説明的な講演が続いていたが,鈴木氏がデータを引き合いに出し始めてから,急に内容が現場寄りになり,いい意味で"泥臭く"なっていく。

 氏が「これは社外秘ですので」と出してきた資料は,なんとNeccaにおける「主要ゲームタイトル・コンテンツの稼働時間構成比」である。
 これは早い話が,Neccaで実際に利用されているゲームやアプリケーションの実稼働時間の割合であり,どのゲームに人気が集まっているのかがひと目で分かるという代物。競合他社の目を気にしなければならない公の講演会で,こういったデータが公開されるのは極めて異例である。逆に言えば,この手の生データをある程度公開する,つまり少しだけ"血を流して"くれないと,有意義なセッションにはなりえないとも感じる。"見習ってほしい"などとは言わないが,この姿勢が今回のAOGCのようなカンファレンスに大きな意味を持たせることになるだろう。

 閑話休題。ここで出された表のデータから読み取れるのは,Necca利用者の約60%が"ゲームを目的として来店している"こと,そしてプレイしているゲームのほとんどが,「リネージュ」や「ラグナロクオンライン」といったMMORPGだということである。
 鈴木氏の話によると,Necca秋葉原などは開店当初,一日の売り上げが3万円にも満たない時期があったらしい。氏曰く「バーチャファイター1台のインカムに負けてたんですよ」というほどの売り上げである。
 しかし,「リネージュ」などのMMORPGが登場した途端に,売り上げは倍増。その後「ラグナロクオンライン」が,またその後には「リネージュII」が導入され,そのいずれもが店舗の売り上げを大きく引き上げたとのことで,「リネージュ」などは現在でもある程度のシェアを占めているそうだ。
 そして現在もMMORPGのシェアは大きく,ピーク時よりはさすがに下降しているが,ネットカフェの現状は完全にMMORPGに頼っている状態であるという。これは公開されたデータを見ても明らかで,MMORPGタイトルがピーク時で月間31万分遊ばれているのに対して,FPSやRTSといったジャンルは1万分程度に停滞している。業界関係者ならずともMMORPGの人気は肌で感じられると思うが,ビジネスとして常にデータを蓄積しているネットカフェ運営側では,数年前から数値として認識していたわけだ。


■それでもMMORPGだけではダメ。
シビアなタイトル選びと,裾野を広げるタイトル選び

 アーケードやネットカフェ運営において,経営側は常にシビアな判断を迫られている。鈴木氏の話では,新型のゲーム筐体でも,人気がなければ早くて2週間程度で入れ替えが行われるという。
 しかしそれでも鈴木氏は,「FPSやRTSも必要。これはゲームプレイヤーの裾野を広げるため」と語る。
 一見矛盾しているように聞こえる言葉だが,氏はNecca秋葉原店で行われていたWCG(World Cyber Games)の予選大会やFPSのクラン戦,また,今も筆者の隣でシコシコと原稿を書いているhalenなどのRTSプレイヤーを間近(まぢか)で見ていた経験から,コミュニティがキチンと形成されることで,FPSやRTSといったジャンルにも未来はあると確信しているとのこと。「我々は儲からないことはしない。ビジネスなんだから」としながらも,オフライン空間でしか味わえない臨場感やライブ感は,誰にでも訴求でき,結果的にはゲームプレイヤーの裾野を広げることにつながると語った。

■タイトーの今後の展開
 Neccaを中心に話をしてきたが,タイトーはこのほかにも,PCを使ったゲームスペースとして駅ビル内や,大手スーパーのアーケードゲーム場近くに場所を確保する「NeccaStation」という新しい形態の店舗を作っている。
 そのなかの一つ,長崎駅の駅ビル,アミュプラザ長崎内にある店舗では,初めてPCを触る人も頻繁に利用するなど,Necca秋葉原店や新宿店では珍しい光景が見られるらしい。また,店舗内のコンテンツ利用料をすべてカード方式の従量制にすることで,人件費の削減も実現しているという。
 ちなみに,こういった店舗では「ラグナロクオンライン」の1DAYチケット(※全国のラグナロクオンライン公認ネットカフェで購入できる,ROのアトラクションチケット)の売り上げが相当な割合を占めているとのこと。長崎のNeccaStationでは売り上げの約半分を,秋葉原店でも売り上げの約3分の1を占めているというからスゴイ。

 Neccaは,オープンからこの5年の間,コツコツとデータを蓄えてきた。どの地域でどの業態が,またどのタイトルが望まれているのか……。60店のNeccaシステム加盟店が,日本でも有数のマーケティングデータの蓄積拠点として機能しているのが,同社の大きな強みだ。業界的に見ても,ハンゲームやFlashのWebゲームのように,現在は"短時間,低価格で楽しめるゲーム"の需要が高まっているのは明らかであり,MMORPGを軸にしながらもインターネットカフェはまだまだ進化の余地が残っているといえる。
 鈴木氏が今後の施策として考えているのは,「一般家庭のPC環境との差別化」である。例えば,ネットカフェに行けば個人が購入できないような高価なグラフィックスソフトウェアなどが利用できる,というアイデアもあるそうだ。

「アーケードゲームは,坪当たり平均して10万円ぐらいのコストがかかっている。これに対して,インターネットカフェならコストを半分以下に抑えられる。またクレーンゲームを10台買い取るだけで1千万円かかるところが,PCなら1台20万円程度。さらにPCは,専用のアーケード筐体よりも自由にソフトを入れ替えられる。このアドバンテージで,これからもリーズナブルなサービスを提供できるだろう」

というのが,鈴木氏の見解だ。坪当たりのコストが低いのは立地の問題(考えてみれば,ネットカフェがビルの1階にあるのを見たことがない)が大きいわけだが,将来的に,大通りに面したビルの1階にネットカフェが登場したときが,勝利のときであると鈴木氏は締めくくった。
(Gueed / Photo by kiki)


→AOGCの公式サイトは「こちら」
→タイトーの公式サイトは「こちら」
→インターピアの公式サイトは「こちら」
→Neccaの公式サイトは「こちら」



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http://www.4gamer.net/news/history/2005.03/20050301171805detail.html