レトロゲーム業界再編か? EGGがボーステックからガイアックスに
■「プロジェクトEGG」と「ストーンエイジ」を丸ごと継承
NTTコミュニケーションズとともに「なつゲー」を運営するガイアックスは,Necca秋葉原店で2005年4月2日(土)に急きょ発表会を開き,ボーステックから,レトロゲーム販売サイト「プロジェクトEGG」の事業譲渡を受け,サービスを引き継いだことを明らかにした。また,同様にボーステックが運営していたMMORPG「ストーンエイジ」に関しても,新たに国内独占販売権をライセンサーのデジパークから受ける旨アナウンスした。
発表会ではまず,ガイアックス代表取締役社長 上田祐司氏が登壇して,「M2〜神甲演義〜」や「なつゲー」など,近年における同社のオンラインゲームとコミュニティに関する取り組みを説明するとともに,今回の発表が「2005年の第1弾の発表」に当たることを強調して挨拶を締めくくった。
続いて,同じくガイアックスのコミュニティ事業部 部長 佐別当隆志氏より,今回の事業譲渡についての詳しい説明がなされた。氏によればガイアックスが従来展開してきたゲーム&コミュニティのビジネスと,プロジェクトEGGの事業内容とは「企画・運営・メンテナンスともに近い内容」であるが,ガイアックス側はもともとゲームメーカーではないため「ゲーム業界との人脈やノウハウは乏しい」。それゆえ,人脈やノウハウの面での蓄積と,28社250本にのぼるゲームタイトルと,1万人以上の有料会員数を持つプロジェクトEGGの事業に,大きなメリットを見出したということらしい。 なお,プロジェクトEGGは「Soft-City.com」の一コンテンツという建て付けになっており,会員登録はSoft-City.comで行う。今回の事業譲渡はこのSoft-City.comごと行われるため,会員登録情報などはそのまま受け継がれることになり,とくに再登録などの手続きは生じない。これは,BIGLOBEや@niftyへの提供コンテンツに関しても同様である。 同様にMMORPG「ストーンエイジ」も,韓国,アジア各国で幅広くサービス提供されていた実績を高く評価し,ボーステックが行っていた運営をそのまま引き継ぐ形になるとのこと。
プロジェクトEGGはもともと,ボーステックと,ボーステックからスピンアウトしたD4エンタープライズの共同事業だったわけだが,今後はガイアックスとD4エンタープライズとのパートナーシップで運営されていく。発表会では続いてD4エンタープライズ 代表取締役社長の鈴木直人氏が,プロジェクトEGGの事業内容および,今後の展開について説明した。 氏は,プロジェクトEGGを次のように語る。「もともとボーステックの一部門として生まれ,ボーステックの八巻社長,MSXコミュニティの西和彦氏らの後援を受けて大きくなり,28社31ブランドのゲームを提供するまでになりました。その中には多くのファンを持つ作品も含まれていますが,もともと各人にとって思い入れのある作品,心の1本とも言える作品を復刻していくのがこの事業の目的。今後はユーザーのリクエストに応じた復刻に力を入れていきたいと思います」 今回の事業譲渡に関しては,「ガイアックスとの強いパートナーシップを築き上げ,若い世代にもプロジェクトEGGのゲームを楽しんでもらえるようにしていきたい。また,可能であればNTTコミュニケーションズとも一緒にできればよいと思っています」と,同じくガイアックスが参画する「なつゲー」に対する,一種のラブコールでコメントを締めくくった。 ところで,D4エンタープライズが展開するレトロゲームビジネスには,今回の事業譲渡対象となったプロジェクトEGG(Soft-City.com)のほかに,「アミューズメントセンター」の「PLUS」がある。鈴木氏はこれについても触れ,「もともとPLUSは"プロジェクトEGG PLUS"として,単価が1000円を超えるなど,プロジェクトEGGで扱えないタイトルを開拓するために作られた。ここで扱われるタイトルも,最終的にEGGにアーカイブしていこうというのが,もともとの構想」と語った。また「PLUSの1コーナーとして,18禁タイトルの復刻コーナー"びーなす"も,早ければ今月中にもオープンする」という話も飛び出した。
最後に佐別当氏が再度登壇し,オンラインゲーム市場に対するガイアックスの認識と,今後の事業展開について語った。氏によれば「オンラインゲーム市場はまだまだニッチで,いまのユーザーを取り合う必要はない」という。そこで,アバターサービス,メッセンジャー,ブログ(blog)といった新しい手法の展開,ガイアックス・コリアの開設,台湾インターサーブ社との協力などを進めてきたガイアックスは,今後「(オンラインゲームの)運用面でのサポート」を展開していくという。 それは「サービスの継続や拡張,サポートは,今のオンラインゲームメーカーにとって正直厳しいもの」であるためだという。「コストと採算が合わず,なかなか儲かる仕組みを作れない弱い立場にある」メーカーに対し,コミュニティサービスなどと組み合わせることで,サポートビジネスを展開していくということだ。 メーカーの立ち位置をめぐる分析はまことに当を得たものであり,今回の発表を含めた具体的な取り組みの形は,興味をそそられるところだ。
■実は1月31日にアナウンス済みの事業譲渡
ちなみに今回の発表に際して,ボーステックからの出席はなかった。ボーステックとD4エンタープライズの資本関係はすでに解消しているし,実のところこの営業譲渡,2005年1月31日には公式サイトの「こちら」でアナウンス済みだったりする。つまり今回の"発表"は,プロジェクトEGGが今後,ボーステックでなくガイアックスとのパートナーシップで,従来どおり無事運営されていくことを明確に示すためのデモンストレーションであった,ということだろう。 D4エンタープライズの鈴木氏に確認したところ,「(ボーステックの)八巻社長にはお世話になってきましたし,今回の件もとくにもめたとか,そういったことは一切ありません」との回答。また,ガイアックスの上田氏に聞いたところでは「ある金額で事業譲渡が行われた,ということです。その金額は現時点で公表されていませんし,今後とくに発表する予定もないです」とのことだった。
さて,会場で聞けた話の中で,我々ゲーマーに直接関係ありそうな事柄をいくつか。ガイアックスは今回の発表を「2005年の第1弾の発表」と強調したわけだが,「遅くとも6月」(佐別当氏)には,新たな事業の発表ができるはずという。詳しい内容は聞けなかったが「ヘビーな作品には当面あまり関心はない」(同氏)という口ぶりからすると,Webサービスでなく何らかの具体的タイトルで,ライトゲーマー指向のもの,という推測はできそうだ。続報を楽しみに待ちたい。 また,D4エンタープライズの鈴木氏の話では,「今後プロジェクトEGGは毎週火曜日,PLUSは第二,第四金曜日に新タイトルを追加していく予定」であるという。具体的にいつからスタートするかは聞けなかったものの,ファンは今後,定期的にチェックする必要がありそうだ。
「なつゲー」に続いて,「プロジェクトEGG」にも参画したガイアックス。同社が構想するゲームサービスとコミュニティサービスのカップリングで,レトロゲームビジネスがより活性化することになるのか,今後の舵取りに期待したい。(Guevarista)
「プロジェクトEGG」 →公式サイトは「こちら」 →紹介ページは「こちら」
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