ビル・ローパーをはじめとする「Diablo」を開発したコアメンバー達の最新作「Hellgate:London」 ついに画像公開&ストーリーなどが明らかに
ゲームという趣味に対し,やや行き過ぎた情熱を傾けたことがある人なら,"人生を狂わされかねないゲーム"との出会いというものを,一度や二度は経験しているかもしれない。かくいう筆者も,これまでの人生で何度かは,そんな麻薬のようなゲームと出会い,決して少なくない時間や,多少の(?)信頼などを失ってしまったものだ。 "人生を狂わされかねないゲーム"とは,メーカーやジャンル,プラットフォームを問わず,自分にとって"寝食を忘れて熱中してしまう"ゲームであると筆者は考えている。筆者にとっては,"Wizardryシリーズ"であり,"ポケモンシリーズ"であり,"鉄拳シリーズ"であり,"Diabloシリーズ"であったりするわけで,いずれも大好きなゲーム達であるものの,それらのために失ったものも少なからずあるため,それらゲームにまつわる思い出を振り返ってみても,純粋に楽しい思い出ばかりが浮かんでくるわけではないところが厄介だ。 しかし一つだけ言えることは,それらのゲームは筆者にとって"批評対象"にはならないくらいに魅力的だったということ。ゲーム内容やシステムに関してさまざまな不満を抱きつつも,結局やめられず,それこそ寝る間も惜しんでプレイしてしまう。本当に,愛すべきありがた迷惑なゲーム達であった。 幸か不幸か,ここ最近はそんな麻薬のようなゲームに出会うこともなく,それなりに面白いゲームを楽しみつつ,仕事もそれなりに頑張っているつもりである。若かりし頃のように,"締め切りを過ぎている状況で100ページもの執筆分が残っているにも関わらず,DiabloIIの新しいMODを導入してとりあえずNORMALモードをクリアしてしまう"ようなことは,今後一切ないと言い切れる。 断言できるのだが……,一つ,不安がある。Blizzard Entertainment社で,Diabloをはじめとする多くのヒット作を手がけたビル・ローパー氏が,一緒にBlizzard社を飛び出した仲間達と設立した新会社,Flagship Studios。そこで開発されている新作アクションRPG「Hellgate:London」が,実に,激しく面白そうなのである。
Hellgate:Londonに関する情報は,4Gamerでも当然何度か取り上げているが(「こちら」),ゲームの詳細に関しては,公式情報がほとんど得られていなかったというのが正直なところ。 しかし,この度ついにオフィシャルなリリースと,アートワーク,スクリーンショットが入手できた。前振りが長くなってしまったが,さっそくHellgate:Londonに関する最新情報をお伝えしよう。
■Hellgate:Londonの世界観
ハイテクとオカルトが融合したかのようなデザインは,本作の世界観に実にマッチする
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2032年,世界は"Invasion"と呼ばれるロンドンで発生した正体不明の大災害によって崩壊し,廃墟と化した。 Invasionの名が示すとおり,ロンドンには異形の者どもが跋扈するようになった。彼らには,攻撃すべき本部も,暗殺すべき司令官も存在しない。強力であるはずの最新鋭の兵器類も,彼らにはまったく効果がなく,異形の侵略者達との戦いは,数週間で終結してしまった。強大だった国家は滅び,Burnと呼ばれる"人類から悪魔の世界への変化"が始まったのである。 しかし,人類は死滅することはなかった。生き残った人類は,悪魔に対抗するための兵器を鍛造する術を学び,科学の力を手に入れるときに一度は失った"魔力"を復活させた。そして人類は,悪魔と戦い,打ち勝つ力を手にしたのであった。
……以上が,Hellgate:Londonの背景設定である。Diabloシリーズでお馴染みのファンタジーではなく,SF寄りの世界観にオカルト色が加味された設定が用意されているようだ。ゲームの舞台は2032年のロンドンとなっており,実在する建物や地域(Invasionによってめちゃくちゃにされているだろうが)も登場するらしい。 世界観に関するそれ以上の情報は今のところ確認していないが,リリースの中に,"開発スタッフのインスピレーションとなった作品リスト"というものが存在し,それを眺めていると,本では「Freemason」「Nikola Tesla」「Abdul Alhazred」,映画では「Alien」「From Beyond」「A Clockwork Orange」,音楽では「Rob Zombie」「Marilyn Manson」,ゲームでは「Doom」「Diablo」「Half-Life 2」などなど,実に興味深いキーワードが列記されていた。 各キーワードを解説することはここでは避けさせてもらうが(いくらスペースがあっても足りない),分かりやすいキーワードに置き換えるならば,秘密結社,魔術,アンデッドモンスター,エイリアン,CTHULHU神話,狂気と幻覚,超発明,インダストリアル・ノイズなどなど……。きわめて退廃的なイメージのつきまとう世界観といえるが,この手の設定を好む人には,堪えられないものがある。 もっとも,世界観の善し悪しなどは個人的な好みによるところが大きいので,賛否両論あるだろう。ただ,DiabloやWarcraftのファンタジー,StarCraftのSFといった,かつての大ヒット作の世界観を安易に流用せず,ひと味違った世界観を新作に導入しようという試みは,ゲーマーとしても実に喜ばしいことではないだろうか。
悪魔が跋扈し,科学と魔術が両立する近未来のロンドン。そんな退廃的かつ刺激的な世界観は,秀逸なアートワークによって確実に具現化しつつあるようだ
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■世界観とジャンルは変われど,本質的な面白さは健在?
「ペインキラー」風のオカルトFPSにも見えるが,ゲームの本質的な魅力はDiablo的とも言える本作。FPSとRPGの本格的な融合からは,どのような魅力が生まれるのだろうか?
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スクリーンショットを目にして気づいた人もいるだろうが,Hellgate:Londonは,一人称視点で展開されるアクションRPGである。そう言われると,「Project:Snowblind」のような,キャラクター育成要素の盛り込まれたFPSを思い浮かべる人も多いはず。 しかし本作では,クエストや戦闘を通じて経験値を稼ぎ,スキルを習得し,ランダムジェネレートされる各種装備を入手したりしつつ,キャラクターを成長させていける。 武器は主に銃器タイプのようだが,設定画を見ると巨大な両刃剣や日本刀のような刀剣類も用意されている。また,CHAOS BLADEという武器は,剣でありながら燃料タンクが装着できるようだ。ほかの設定画を見てみると,"relic slot"というスロットがついている武器も存在し,Relic(遺骨)を装着することで武器に新たな力を付与することも可能なようだ。 キャラ育成要素の盛り込まれたFPS,と呼ぶにはあまりにもRPG的な,Hellgate:London。一人称視点での銃撃戦がゲーム内容の大部分を占める従来のFPSとは,明らかにジャンルが違うようである。ランダムに生成されるアイテム,武具のカスタマイズ,クエストや戦闘を通じての経験値稼ぎ,スキルシステムなど,字面だけで判断するなら,それは明らかにDiabloシリーズと同様の魅力を持つゲームだ。 FPSの爽快感と,Diabloシリーズのキャラクター育成システムが融合したとき,そのゲームにはどのような魅力が宿るのだろうか? その答えは,実際にHellgate:Londonをプレイしないことには導き出せないだろうが,かつてDiabloシリーズに熱中したことのあるゲーマーにとっては,非常に気になる作品なのは確かだろう。 ちなみに,本作では一人称視点と三人称視点を選択できる,という情報もある(今回届いたリリースにその記述はなかったが)。筆者は3D酔いしやすいので,同じく3D酔いしやすいほかのDiabloファンとともに,三人称視点モードの搭載を願いたいところだ。
武器や防具は,Relicなどのアイテムをはめ込むことにより,パワーアップさせることが可能らしい。また,燃料タンクの装着が可能と思われる剣(右)があったり,燃料タンク系のアイテムが複数種類用意されているなど,武具のカスタマイズはかなり奥が深そうである
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■マイペースのソロプレイも,多人数でのマルチプレイも楽しめそう
同じ種類の敵でも,グラフィックスのパターンは複数用意されているということだろうか?
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Hellgate:Londonは,MMORPGではない。マルチプレイには対応しているが,その規模は,一つのワールドに30人前後の人数になりそうだ。あのビル・ローバー氏率いるFlagship Studioであっても,第一弾からMMORPGを制作/維持するのはさまざまな意味で難しいし,かなりアクション性の高いゲームであることは以前から知られていたので,本作に注目していた人ならある程度の予想はついていたことだろう。そもそもMMOならいい,などという乱暴な論を展開するつもりもないし。 とはいえ本作は,"マルチプレイとコミュニティを重視"したデザインだとFlagship Studiosは説明している。プレイするたびにマップがランダムジェネレートされるため,従来のMMORPGに付きまとうマンネリ感や狩り場争い,獲物の横取りといった問題が起きづらい。また少人数のグループでも十分狩りが楽しめるゲームバランスなので,"PTメンバーが揃うまで2時間待ち"といった状況も発生しにくいようだ。もちろん,マイペースにソロを楽しんだり,大勢での強力プレイでボスモンスターと戦うことも可能だろう。 PvPに関しては,対戦専用のマップが用意される(あるいは専用エリアが存在する?)ようで,リリースには"リスクも大きいが報酬も良い"と書かれていることから,勝者には賞金や賞品が発生するシステムが用意されるのかもしれない。 マルチプレイの仕様に関する詳細は明記されていなかったものの,Flagship Studiosには,Blizzardで"Battle.net"の構築・運用に関わったデイビッド・ブレヴィック氏やエリック・シェイファー氏もメンバーとして加わっているため,その点に関しては心配不要だろう。LAN環境での小規模マルチプレイから,Battle.netのようなロビーを介しての多人数マルチプレイまで,当然のように楽しめるものだと考えてよさそうだ。
光線を射出するもの,弾丸を発射するもの,炸裂するものなど,銃器タイプの武器にもさまざまな効果のものが用意されている。科学と魔術が生み出す武器だから,ユニークな武器も多そうで,実に楽しみだ
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さて,今回は公式リリースから得られた情報とスクリーンショットをもとに,Hellgate:Londonの姿を予想してみたわけだが,まだ実際にプレイできる環境は存在しないし,ゲームの概要程度の公式情報しか公開されていない。正直,どんなゲームに仕上がるのかはおぼろげにしか想像できないが,それでも,筆者の不安感はどんどん大きくなっている。Hellgate:Londonが,久しぶりに出会う"人生を狂わされかねないゲーム"のような気がしてならないのだ。
ともあれ,ようやく具体的な情報が出始めてきたばかりのHellgate:London。日本ではFlagship Studio社と提携しているナムコ(関連記事は「こちら」)からリリースされる予定だ。ナムコは,日本のPC市場という意味ではまだまだこれからの会社だが,説明するまでもなくコンシューマ市場では大手だけに,どのようなサポート体制が敷かれるのか,気になるところである。 なお発売時期についてはまだ何もアナウンスされていないが,以前当サイトで行ったビル・ローパー氏へのインタビュー(「こちら」)で,
「開発が遅れるということについては,(中略)早過ぎる情報公開などにも注意しなければなりませんね」 「ファンに公開するのは,ゲームの完成像が確実に見えたときであるべきですから」 「もっと煮詰めて完成度が高い状態でお見せしたほうが,我々にとってもファンにとっても良いんじゃないかと思っています」
といったコメントがあったことを考えると,それほど遠い話ではないかもしれない。少なくとも最も困難な作業の一つ,エンジンの作成(同インタビューでビル・ローパー氏は,独自にエンジンを開発していると語っていた)は,9割方終わっているのではないだろうか。おそらく今年のE3で,より詳しい情報が出てくることだろう。 もちろん4Gamerでは,海外情報を積極的に追いかけ,お伝えしていくつもりだ。ビル・ローバー作品のファンだけではなく,FPSファンにとっても注目に値する作品なので,続報をお楽しみに。(大路政志)
「Hellgate:London」 →公式サイトは「こちら」 →スクリーンショット&設定画像集は「こちら」 →紹介ページは「こちら」
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