アルティメット学園「乱」プロデューサー PB Kim氏インタビュー
プロデューサー兼デザイナーという肩書きどおり,コンセプト,デザイン,ムービーの作成までを自分一人でやってしまう,MIN COMMUNICATIONS社のPB Kim(ピービー・キム)氏。日本の漫画やアニメが好きで,"日本の漫画を読むために日本語を覚えた"という人である。インタビューも,筆者の日本語を聞いて韓国語で返すというちょっと変わったスタイルで行われた
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「ショットオンライン」や「フリフ オンライン」といったオンラインゲームを運営中のエキサイトが,2005年夏に新たにサービスを開始する学園MMORPG「アルティメット学園『乱』 〜異世界の記憶を探れ!〜」(原題 Ran Online。以下,「乱」)。つい先日「こちら」でお伝えしたとおり,本作は,現代の学校が舞台という,MMORPGとしては比較的マレな世界観を採用している。ただ今のところ日本では情報が少なく,ゲームのプレイフィールはもちろん,アイテム課金での運営ということで,カジュアル度なども想像づらいタイトルである。
というわけで,この6月13日,本作のマーケティングのために来日していた「乱」のプロデューサーPB Kim(ピービー・キム)氏に,インタビューを実施。その開発コンセプトからゲーム性,一体どういった層がどう遊ぶゲームなのかという部分までを聞き込んでみた。
本作は,7月にクローズドβテストを実施予定,アイテム課金による正式サービスも8月予定と,6月14日現在からそう遠くない未来に遊べるタイトルなので,ムービーなどの素材が出るまで,このインタビュー記事を読んで妄想を膨らませておいてほしい。 (Text by Gueed / Photo by 市原達也)
登場するキャラクターは独特。グロテスクなモンスターなどもいて,ホラーの雰囲気もある。敵はすべて"元々は人間だった"とのことで,倒すと魂が解放されて成仏するという
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■「親しみのある世界観と,遊びやすさの両立」がキモ
右がPB Kim氏。左は今回Kim氏に同行して来日していたMIN COMMUNICATIONSの開発者JoonGwon Kim氏
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4Gamer.net: 初めまして。いつ日本にいらっしゃったんですか?
PB Kim氏: どもう初めまして。実は20分前にここ(エキサイト)に着いたところなんです。
4Gamer.net: う……それはそれはタイトなスケジュールで時間をもらってしまったわけですね。日本に来るのは今回で何回めですか?
PB Kim氏: 2回めですね。
4Gamer.net: 聞くところによると,Kimさんは日本のアニメや漫画が大好きだとか。やはり「乱」を開発するうえで影響を受けた作品もあるんでしょうか?
PB Kim氏: 意識的に日本のものをモチーフにしたということはありませんが,我々の世代(編注:32歳だそうです)は,日本のアニメや漫画といったメディアに,いたって自然に触れてきています。とくにアニメに。なので自分の気づかないところで,影響は出ているでしょうね。
「乱」のイメージイラスト。右下のマークが学校のシンボルとなる
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4Gamer.net: そういえば,このイラストも日本人から見てそれほど違和感がありません。これも自分で描かれたとか。
PB Kim氏: そうです。
4Gamer.net: 肩書きもプロデューサー兼デザイナーですよね。デザインなんかはほかの人に任せてもいいような気もしますが,なんでも自分でやってしまうんですか?
PB Kim氏: 私が描くのは,コンセプトアートなどの原案部分です。ほかの人に任せられないというか,このゲームを最初に企画したとき,"現代風で学校が舞台"という特殊な設定をデザイナーに伝えるのが困難だったんですよ。なのでデザイン部分は"やむを得ず私が"と言えますね(笑)
4Gamer.net: 確かに学園モノは,MMORPGに限って言えば一般的な設定ではないですね。なぜこの世界観にしようと考えたんですか?
PB Kim: 韓国の市場では,MMORPGといえば西洋風ファンタジーが一般的です。しかし私個人の意見では,その世界観にみんなが親しみをもっているとはどうしても思えないんです。で,ほかの何か珍しい世界観にしようと考えたとき,比較的現実に近い現代で学校というのを思いついたわけです。
4Gamer.net: なるほど。ちなみに現代が舞台……といえば,サクセスの「N-Age」を連想しますね。しかしN-Ageは,日本では6月30日でサービスが終了することが決まっています。少なくとも成功したとは言えませんよね。そこで,N-Ageになくて「乱」にある要素というのを教えてください。
PB Kim氏: N-Ageと「乱」の違いを一言でいうと,ずばりコミュニティの作りやすさですね。世界観そのもを現実に近づけたうえ,さらに学校という空間を用意することで,集団を形成しやすいシチュエーションを作り出したんですよ。
4Gamer.net: 「現実に近づけた」というのは,ゲームのどの部分を指していますか?
PB Kim氏: 具体的には,人間型から大きく外れないデザインでモンスターを用意したりといった部分です。N-Ageよりもさらに親しみやすい世界観だと思いますよ。
4Gamer.net: そのあたりは早く画面を見るなどしてチェックしてみないと分かりませんが……。ちなみにkimさんは,以前にも「WildRally」などのオンラインゲームを制作されていますね。そこで得られた技術や教訓は生かされているんでしょうか?
PB Kim氏: はい,WildRally,さらにその前にも1本オンラインゲームの企画があったんですが,いずれも韓国では受け入れられませんでした。そこで感じたのは,やはり一般に親しみやすいゲームではないといけないということ。「乱」はそこに重点を置いて開発しています。
■「乱」とは一体どんなゲームなのか? どう"プレイヤーにやさしい"のか?
4Gamer.net: 実は私も,現在このゲームについて分かっているのは,当サイトに掲載したニュース(記事は「こちら」)レベルなんです。なのでザッと,本作の世界観とプレイヤーがどのように遊ぶゲームなのかを教えていただけませんか?
PB Kim氏: はい。ご存知のとおり,本作の主な舞台は学校です。学校は「聖門」「鳳凰」「玄厳」「虎令」四つですが,プレイヤーが入れるのは前者三つ。「虎令」は廃校になったという設定です。
4Gamer.net: これ,四神(古代中国で,東西南北の各方位を守護するとされていた動物型の神)ですよね。
PB Kim氏: そうです。で,要するに一つの方位(虎令)が崩れたことで,世界がバランスを失ってしまうわけです。そして残り三つの学園の生徒が,その謎を解くために立ち上がるというストーリーラインです。
4Gamer.net: プレイヤーは,キャラクター作成時に学校を選ぶんですか?
PB Kim氏: そうです。どの勢力に属するかを決めます。お気づきのように,学校が三つに分かれているのは"対決"の構図を作るためでもあるんですよ。
4Gamer.net: そうでしょうね。そういえば学校の紹介で,"工学系でやや不良の多い「鳳凰」"といった具合に,学校ごとに個性づけがされていました。あれには何か意味が?
PB Kim氏: ゲームシステム的には,学校間の違いはほとんどありません。システムで差異を作ってしまうと,プレイヤーの比率によってバランスが崩れる場合がありますからね。基本は,設定と服装が違うだけと考えてください。
4Gamer.net: 主にデザインで選べばいいわけか……。ふむふむ。ゲームはどのように進める感じですかね?
PB Kim氏: 基本的にはクエストベースで,プレイヤーが次々と依頼をこなして成長していくような仕様です。 ただ韓国の状況を見ていると,とにかくゲームにログインしてモンスターハンティング,といったプレイスタイルが多いですね。そしてしばらくプレイして世界観を理解していくにつれて,「あ,クエストやらなきゃ」って気づく人が多いみたいです(笑)。レベル30になって,やっとイチからクエストに挑戦するという人もいましたね。
4Gamer.net: クリア必須のクエストはあるんですか?
PB Kim氏: そうですね。例えば「××というモンスターを10体倒さないと(学校の)正門から外に出られない」といったクエストが要所にあります。もちろんほかのクエストも,報酬が得られますし,やらなきゃ損ですよ。
4Gamer.net: アクションに終始してもそれはそれでいけない,と。クエストといえば,「乱」のスクリーンショットを見ると,まるでMMORPGの黎明期によく見られたように,一つのフィールドにたくさんの人がひしめいているシーンがあります。だいたい何人ぐらいの人が1フィールドで同時にプレイできるんですか?
PB Kim氏: フィールドによって大小ありますが,多い場所で200人から300人といったところです。
4Gamer.net: では,その大人数で強敵に挑むレイドのようなものはりますか?
PB Kim氏: クエストではありませんが,イベントでは大規模戦闘ができます。もちろんモンスターの種類も,今後どんどん増やしていく予定です。
4Gamer.net: うーん,まだプレイフィールの想像がつかないのですが,本作にはどれぐらいアクション要素があるんですかね?
PB Kim氏: アクション要素……。戦闘はまぁ忙しいですね。スキルを次々と切り替えて戦闘するタイプですから。少なくとも,タバコを吸いながらは無理でしょう(笑)。 既存のタイトルで似ているものを考えてみたんですが,ちょっと思いつかないですね。本作は,キャラクターのレベルを上げることを楽しむゲームじゃないんですよ。なのでレベルアップはとても早い。一般的なMMORPGのような苦痛(?)は少ないはずです。
4Gamer.net: しかし,だからといってゲームが面白くなるわけじゃありませんよね。 MMORPGにはそのつらさすらも多少ゲーム性に組み込まれているわけですし。
PB Kim氏: もちろん中盤以降,……あ,本作はレベルが200まであるので,中盤とはレベル100以降だと考えてください。その中盤よりあとは,MMORPGらしいつらさと共に,モチベーションを維持するシステムが用意されていますよ。例えば学校間で場所を奪い合う,攻城戦のようなシステムとか。あとこれはまだ詳しく話せないのですが,学校間で,勢力争いのようにたくさんの地域を奪い合うシステムも入れる予定です。
4Gamer.net: そうなると,気になるのは,レベル100までのゲーム性ですね。そこが本作のウリになるんでしょうし。
PB Kim氏: それがまさにクエストボックスです。
4Gamer.net: ああ,以前少しだけ聞いたことがあります。入手すると一時的に獲得経験値やステータスが増加したりするアイテムですね。これ,実にアクションゲームライクな発想ですよね。
PB Kim氏: そうです。これが主に序盤のモチベーションを維持する仕組みです。要するに,こういったシステムで短い時間に集中できることで,時間の流れを忘れられ,さらにゲームのスピード感も上がる。何度も何度もちょっとした目標が設定されるわけですから,単調なモンスターハンティングにもリズムが生まれるわけです。それと,レベルが上がることでグレードアップするスキルや武器/防具があれば,最初からかなり楽しめると思いますよ。
4Gamer.net: そこはアーケードライクな仕様だし,どちらかというとカジュアルなゲームなのかなぁ。ちなみにどういった層をターゲットにしていますか?
PB Kim氏: 開発当初は20代から30代の男性のプレイヤーを想定していましたが,韓国でいざフタを開けてみると,30〜40代という層に落ち着きました。どうやらシンプルなゲーム進行と,学校という空間への"懐かしさ"が彼らを惹きつけたようです。宿題ができなくて掃除をさせられたり,テストをしたりといった学校らしいクエストもたくさん用意していたからでしょうか。成績表などもありますよ(笑)
4Gamer.net: なんか変な感じですね(笑)。日本で受け入れられるのか,興味深いところです。じゃあ戦闘はどんな感じですか? スキルには一体どういったものがあります?
PB Kim氏: 範囲攻撃があったり,キャラクターがフッと空を飛んでアクションしたりと,派手なものも多いですよ。1対1でPvPをやったりしていると,格闘ゲーム,例えば「鉄拳」の1シーンみたいな感じになったりもしますね。
4Gamer.net: なるほど。
PB Kim氏: またスキルは何種類もありますが,複数のスキルを順番どおりに発動することで,コンボのように連続的に使用できるものもありますよ。スキルは四つのクラス(詳細は「こちら」)で30種類ずつ,計120種類が用意されています。もちろんまだまだ増やす予定ですが。
今回新しくもらったスクリーンショット。上段二枚はスキルの使用シーン,下段は,左が購買部で右が保健室と,学校内部を撮影したものだ
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■アイテムモールでは,ゲーム内で入手不可のものを販売。コスチュームは日本独自に展開する
4Gamer.net: すでに発表されていますが,本作はアイテム課金ですよね。
PB Kim氏: 「乱」は,元々アイテム課金を想定してデザインしました。"親しみやすい"というキーワードには,もちろん基本料金が無料という要素も含まれています。「スカッとゴルフ パンヤ」「RED STONE」などは日本で成功しているようですし,期待できるのではないかと。
エキサイト一森氏: 私からも付け加えさせていただきますと,これまで当社は月額課金にこだわっていた部分もあったんですが,「フリフ オンライン」がアイテム課金に移行するというキッカケもあって,今,アイテム課金という手法を試してみたいところなんですよね。そんな当社にとって,本作はまさに打ってつけだったんです。 また本作は韓国,台湾,香港ですでにサービスされていて,プログラムも安定しています。サービス中とくに大きな問題が出ていないというのも,本作を選んだ大きなポイントでした。
4Gamer.net: なるほど。"キチンとフィックスしたプログラムをローカライズする"という流れは,日本で外国産ゲームのビジネスをうまく軌道に乗せるための定石ですもんね。 ちなみに,そのショップでは一体どういったアイテムが販売されるんですか?
PB Kim氏: 移動バスのチケットや,インベントリの拡張といったプレイアビリティを高めるアイテムを中心に販売します。あとはやはりコスチュームでしょうか。
4Gamer.net: コスチュームは日本独自の仕様に?
PB Kim氏: そうです。現在日本で流行のデザイン,ファンの気になるデザインをうまく取り入れようと思っています。渋谷で普通に人が着ていそうな服とかね(笑)。 あと映画「Kill Bill」で主人公が着ていたブルース・リーの黄色い服(?)なんかも用意していますよ。今のところ,コスチュームは26種類です。
4Gamer.net: 現在韓国ではどういった状況ですか?
PB Kim氏: アチラではちょうど一周年を迎えるあたりです。会員数は累計で30万人。台湾や香港でも反響があったので,日本でも最新のクライアントを用意して挑みます。
4Gamer.net: 分かりました。サクサク遊べるカジュアル系のMMORPGとして期待しています。本日はありがとうございました。
--6月13日 エキサイト会議室にて--
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