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岩田・小島両氏に聞く「エミル・クロニクル・オンライン」<後編>
2005/06/24 18:27
コンテンツ開発部マネージャーの岩田容賢氏
 「エミル・クロニクル・オンライン」(以下,ECO)の世界観や種族,基本システムなどについてお伝えしたインタビュー前編(記事は「こちら」)に続き,次はECOのメインフィーチャーである「マリオネットシステム」ほか,未実装のシステムについて聞いてみた。
 既報のとおりマリオネットは,プレイヤーキャラクターが乗り移って特別な能力を発揮できる人形のようなアイテム。またプレイヤーがログオフ中は,簡単な命令を与えておくことができ,面倒な単純作業などを代行させることができる。

 ……と,現時点で分かっているのは実はこれだけ。実際に乗り移ったときにどういったメリットがあるのか,また下せる命令の種類や制限事項などは謎のままだ。ここでは,岩田・小島両氏の説明を通じて,プレイヤーがログオン中/ログオフ後の,それぞれのマリオネットの動作についてを明らかにしたい。
(Guevarista&Gueed / Photo by kiki)

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■マリオネットシステムについて 「ログイン中の機能」

4月のプレスカンファレンスで配布された資料。"乗り移れる"という,漠然とした基本コンセプトのみが記載してある
4Gamer.net:
 まずはマリオネットシステムの,"プレイヤーがログイン中の動作"について聞かせてください。プレイヤーがマリオネットに乗り移ると,どんなメリットがあるんですか?

岩田氏:
 マリオネットに乗り移っている状態での一番の特徴は,キャラクターに属性(光/闇/火/水/風/土)が付加されて,攻撃力や耐性が変わったり,マリオネット特有のスキルが使えたりする点です。

4Gamer.net:
 なるほど。その場合,元のキャラクターのパラメータはどう引き継がれますか?

岩田氏:
 実はその点は,悩んでいるところなんですよね。乗り移り後のパラメータは,マリオネットごとの固定値にするか,または元のパラメータの乗算にするのか。現在は,気に入ったマリオネットを長く使えるようにという意味も込めて,後者が有力です。つまり,元のキャラクターの能力になんらかの計算式を適用して算出する形です。

4Gamer.net:
 スキルも同様に引き継げますか?

岩田氏:
 引き継ぐ可能性もありますが,先ほど言ったように,マリオネットにはそれぞれ特有のスキルがあります。なので,それ以外は排除すると思います。

4Gamer.net:
 そこはまだ仕様が固まっていないということですね。
 そういえば,乗り移ることでキャラクターの属性が変化するということは,マリオネットって基本的には戦闘用なんですか?

岩田氏:
 うーん,戦闘用とは言い切れません。装備することによって属性以外のパラメータも強化できるマリオネットを用意するかもしれませんし。生産用の素材収集に向いたものと戦闘に向いたものといった具合に,用途別に用意する可能性はあります。
 ただ,今のままでもPvPでキャラクターの強さを隠したりするのには使えるかもしれませんね。「クマに変身してたらキャラの強さ分からないでしょ」みたいな(笑)

4Gamer.net:
 確かに(笑)。……ん? 今モニターを見ていて気づいたんですが,マリオネットに乗り移れる時間というのは,どうやら"一定時間"のようですね。おもむろにキャラクターが元に戻りました。インターバルなどは個々のマリオネットに固有値などがあるんですか? それともマリオネットは連続で使える?


岩田氏:
 現状は一定時間が経過すれば乗り移り状態は解除されます。この時間は,マリオネット固有のパラメータを使うのか,乗り移っている状態で何かを消費していくのかといった部分を検討中です。
 私個人としては,属性要素を使って時間を制御できれば面白いんですけどね。例えば火の属性のマリオネットで氷のマップへ行くと持続時間が短いとか。将来的には,そこまで実装できるのがベストだと思います。

4Gamer.net:
 かなり面白そうですけど,その分相当複雑なシステムになりそうですね。
 そうそう,大事なことを聞いていませんでした。そもそもマリオネットはどうやって手に入れるんですか?

岩田氏:
 そうですね,実はいろいろなパターンがあって,人形に命を吹き込んで動かすタイプや,材料を集めたあと誰かに依頼して作ってもらうタイプなどがあります。とりあえずは,入手クエストなどで渡せるようにしたいなと考えています。

4Gamer.net:
 アイテムではあっても,やはり少し特別であると。普通に店で売っていたりしないんですか? あと自分で作ることはできませんか? マリオネット職人みたいな感じで。

岩田氏:
 プレイヤーが販売する場合を除けば,マリオネットは基本的には買えません。マリオネット職人さんですか,うーん,まぁ将来的にはあるかもしれませんね。

4Gamer.net:
 作れないんですね……。ちなみに画面を見る限り,マリオネットは通常のアイテムとして扱われているようですが,何体でも持てるんですか?

岩田氏:
 普通にインベントリに入っていますよ。マリオネットはアイテムなので,重量など,通常の所持アイテムの制限内であれば,いくつでも持てます。

4Gamer.net:
 しかしとくに制限がないとすると,ものすごく強い,または効率のいいマリオネットを,レベルの低いキャラクターが使えてしまうのでは? それで問題は起きませんか?

岩田氏:
 基本的にマリオネットは,使用することが直接キャラクターの成長に結びつかないので,レベルの低いプレイヤーが持っていても問題ないはずですよ。

4Gamer.net:
 しかし,マリオネットに乗り移っているときはパラメータが変化するんですよね。手に入れたマリオネットによって,多少の有利不利はあると思うのですが。

岩田氏:
 うーん,マリオネットの能力値が固定だと,その有利不利が顕著に出てしまうかもしれませんが,乗算でパラメータを算出する形なら問題ないと思いますよ。こちらとしては皆さんに使ってもらいたいという意図があるので,少なくともマリオネットに新しい機能を追加するまでは,とくに制限を設けないと思います。

4Gamer.net:
 まぁそこはマリオネットがどれぐらいの能力をもっているのかで変わってくるとは思いますが。
 さて,ちょっと変わったところで,マリオネット以外にペットはいないんですか?

小島氏:
 ペットは存在しませんが,イラストに出ているアレ(「こちら」)はなんなの? とよく聞かれますね。

4Gamer.net:
 ずっと気になっていました。キャラクターの肩に乗っているし,それに人としては小さすぎますよね……。

小島氏:
 突っ込まれるのを待ち続けてます(笑)

岩田氏:
 あれ,どうしましょうか(笑)

4Gamer.net:
 ……。

左の"クマ"はともかく,右のブリキ風のキャラクターもおそらくはマリオネット。プレイヤーのログイン中は,主に戦闘を目的とした使い方になるのだろうか?


■マリオネットシステムについて 「ログアウト後の機能」

4Gamer.net:
 そもそもマリオネットシステムの着想は,どこからきたのですか?

岩田氏:
 これはヘッドロックさんが考えていたことで,我々も話を聞いて面白いなと思って採用したんですよ。マリオネットの最も大きな利点は,プレイヤーがログアウトしていても,ほかのプレイヤーと"つながっていられる"ということ。その次に,マリオネットに仕事を代行させて,頻繁にログインできる人とそうでない人のレベル格差を吸収できるということです。あと,ログオフ中もゲーム内で動きがあるとすれば,プレイヤーさんは何回もログインして確かめてくれるんじゃないかと。

4Gamer.net:
 では,そのログオフ中の動作について聞いていきます。短刀直入に,ログオフ中にマリオネットができることと,通常プレイヤーができることの"違い"を教えてください。

岩田氏:
 基本的にマリオネットは"人形"なので,あまり頭が良くありません。受けられる命令は簡単なものですし,失敗したりもします。またマリオネットは人形なので,耐久度があり,いつかは壊れてしまいます。それが,行動によって失ってしまうものなのか,時間によって消費するものなのかは未定ですが。
 プレイヤーは,代行作業が成功するかどうか分からない状態で,マリオネットを放っておくことになります。作業を代行させたからといって,必ずしも利益が出るわけではないということです。"木を切って,生産用の木のチップを集めておけ"と命令しておいたけど,途中でクマが出てきて壊されちゃいました,みたいな状態も発生するでしょう。

4Gamer.net:
 ということは,用途の限定されたギミックなんですか?

岩田氏:
 限定されていますね。例えば「素材を集めておきなさい」などのシンプルな命令しか与えられません。

4Gamer.net:
 なるほど。では,比較的弱い相手との戦闘などは考慮されていますか?

岩田氏:
 実は,マリオネットの対モンスター戦闘は,システム的には実装可能です。先ほどのクマの例じゃありませんが,自己防衛のための戦闘などは,必要になるかもしれません。
 ただマリオネットには"成長"という概念がないので,自己防衛のために戦闘しても,壊れることはあっても,強化されることはありません。もちろんその戦闘で得た経験値がプレイヤーに入るということもありません。そもそもマリオネットは,アイテムとして存在しているものを使っているだけなので。

4Gamer.net:
 ふむふむ。では,マリオネットごとにできる仕事が違う,といった要素はありますか?

岩田氏:
 先ほども言いましたが,マリオネットの違いは"属性"です。そのため,例えば同じ土属性の素材(木のチップなど)を集めるにしても,その効率は変わってきます。土属性のマリオネットは木を集めるのが上手だったりとかするわけです。

4Gamer.net:
 できることは同じだけど,能力が違う……と。なるほど。
 ちなみに,ログオフ時の誰かのマリオネットは,ほかの人から見えるんですか?

岩田氏:
 今のところは見えます。

4Gamer.net:
 なるほど。いや,こんな質問をするのは,今回開発元がヘッドロックですよね? 同じく同社が開発中のMMORPG「ベルアイル」には,ログアウト中にキャラクターを鍛錬できる「アウト・オブ・ゲーム」というシステムがありました。あれはサーバー側の演算だけで,鍛錬中のキャラクターは不可視だったので,マリオネットも同じシステムなのかなぁと想像していたんですよ。

岩田氏:
 ヘッドロックさんのお話では,ログアウト時に何かさせたいという大きなコンセプトが会社全体にあったようですが,ECOとベルアイルは開発チームが異なっていて,別個に出てきたアイデアということです。私が思うには,それぞれの開発チームのコンセプトが異なっているんだと思います。キャラクターを鍛錬するという目的なのか,ログアウトしても人とつながっていられるというのが目的なのか,といったところでしょう。ベルアイルはおそらく前者で,キャラクターがひたすら鍛錬を繰り返しているのを見せても誰も面白くないという判断から,消しているんじゃないでしょうか。
 一方こちらは,マリオネットがせっせと素材を集めていたり,ときにはモンスターに襲われていたりと,見ていて飽きないと思うんですよね。

4Gamer.net:
 しかし,プレイヤーが操作しているものと自動で動くものの見分けはつくんですか?

岩田氏:
 そういった問題が初期に発生するかもしれません。一応解決プランはあるんですけどね。例えば自動行動中は,ほかのキャラクターにその旨を伝えるアイコンがつくとか。方法は,やはりプレイヤーの反応を見て決めていこうかと。

4Gamer.net:
 先ほど"クマに襲われるかもしれない"とのことでしたが,"PK禁止"というルールは,マリオネットにも当然適用されるんですよね?

岩田氏:
 確かにそうですが,ひょっとしたら変えるかもしれません。あまりにもログアウトしている人が多かった場合,マリオネットにいたずらできたりしたら面白いと思いませんか?(笑)。逆に,アイテムをプレゼントしたり,メッセージを残したりできるのもいいですね。自分がログアウトしている間に,友達からメッセージが書き留めてあったら,嬉しいでしょう?

4Gamer.net:
 メッセージ機能はぜひ欲しいですね。SNS(ソーシャルネットワーキングサイト)のような形で友達が広がりそうですし。
 あと,マリオネットに個人商店の機能はないんですか? オフライン中に物を売るという行為をどうやって実装しているのかと。

岩田氏:
 検討中です。実際,マリオネットにいろいろやらせたいと考えています。可能性としてはあります,という答えでいかがでしょう。

4Gamer.net:
 こうやってマリオネットシステムの説明を聞いていて思うのですが,マリオネットにキャラクターの成長を助ける機能がないのなら,本作が謳っている"キャラクターのレベル格差の吸収"にはなっていないと思うのですが。

岩田氏:
 確かにマリオネットは,直接キャラクターの成長に結びつく命令を実行しません。でも,素材集めなどをさせておくことで,その結果として金銭を得るなど,間接的にゲームの進行は助けると思うんですよね。

4Gamer.net:
 では"レベル格差を埋める"というのはちょっと言い過ぎですよね。"緩和"ぐらいですか。

岩田氏:
 そうです。それよりも,やはりプレイヤーとつながっていられるという部分に意義を見つけてほしいですね。


4月発表会当時の画面をひっぱり出してみると,チラホラとマリオネット(と思われるキャラクター)が混ざっているのが分かる。それぞれのパラメータや特有スキルなど,興味は尽きない


■追加されるシステムと,今後のプロモーションについて

マーケティング部第2企画グループマネージャーの小島幸博氏
4Gamer.net:
 そういえば,冒頭で「マリオネット以外のシステム」の話もチラッとされていましたが,気になるので教えてくれませんか。

岩田氏:
 とても重要なシステムですが,まだ話せないんですよ。

4Gamer.net:
 そのシステムは,マリオネットとはまったく違う,ゲームの奥を深めるようなシステムなんでしょうか? 間口を広げるためのギミックなのか,それとも,もっとプレイを進めていってプレイヤーに目的を提示したりするものなんですか? 攻城戦みたいな。

小島氏:
 前者でしょうね。間口を広めるためのギミックです。「あ,そういうやりかたもあったのね」みたいな印象を受けると思いますよ。プレイヤーがゲームの初期で体験できるものと考えてください。

4Gamer.net:
 まったく想像がつかないんですが,例えば携帯電話との連動……とか?

小島氏:
 うーん,携帯ですか(笑)。まぁそれは将来的に。

4Gamer.net:
 教えてもらえないのはともかく,少なくともβテスト時点ではそのシステムは入っていないわけですね?

小島氏:
 オープンβテスト時には実装したいです。このシステムが本作のキモなので。

4Gamer.net:
 ええ!? そうなんですか? キモ? じゃあ今日はキモについては聞けないわけですか……。じゃあせめて,アナウンスの時期だけでも教えてくださいよ。ぜひぜひ。

小島氏:
 そうですねぇ,7月の終わりぐらいでしょうか。現段階だと,こうやってデモプレイができないですし,いずれまたご案内したいなぁと。おそらく「やられた!」と思うはずですよ。

4Gamer.net:
 ……そうですか,分かりました。今回は諦めます……。
 さて,最後にプロモーションに関してなのですが,今回はブロッコリーと提携していることですし,ゲームと連動したカードゲームなどのオフラインコンテンツ展開は行われますか?

小島氏:
 カードゲームに関しては,実はある企みが進行しています。といっても"私の中で"ですが(笑)。まぁ両社でやるだけのことはあると思わせますよ。
 基本的なプロモーションとしては,イベント会場やゲーマーズさんの店舗で,レジ袋がすべてECO袋になったり,携帯電話で登録キャンペーンに応募したものを見せるとグッズがもらえるような施策を用意しています。
 今回羽々キロさんを発掘したブロッコリーさんは,でじこやギャラクシーエンジェルを世に送り出したことでも分かるとおり,"今年はこれがイケる"という目利きがすごくいいんですよね。なので,ECOでもかなり面白いことができると思います。

4Gamer.net:
 メディアミックス展開もありますか? あと,パッケージが販売されるかどうかも気になりますね。

小島氏:
 100%かどうかは分かりませんが,コミック化やアニメ化などは計画にあります。でも,できるだけ明るい印象で,"コアになり過ぎないように"プレイヤーにECOのことを伝えたいと思っています。もちろん,パッケージ販売もあるでしょう。

4Gamer.net:
 2005年の夏以降,東京キャラクターショーやコミケ,ゲームショウなどと立て続けにECOの露出機会がありますが,どのようにプロモーションされるんですか?

小島氏:
 キャラショーとコミケに関しては,割とコアなファンがターゲットです。どちらもゲームというよりはキャラクターで押そうと思っています。
 一方ゲームショウでは,その頃にはプログラムの完成度も高まっていることでしょうし,ECOのゲームとしての側面をお伝えしたいですね。といっても,せっかくECOという名前をもっているので,何かテーマを持ってお見せしたいと考えています。

4Gamer.net:
 4月の発表会のときに,"コンシューマゲーマーを狙っていく"と話していましたが,そもそも本作に,それを謳うだけの機能やシステムがあるんでしょうか?

小島氏:
 コンシューマゲーマーがターゲットというのは,機能よりもプロモーション部分で言えることですね。あと運営。運営と開発が近いだけに,毎週いろいろなイベントをやりたいと考えています。私が個人的にやりたいと思っているのは,事前に複数の企画を用意して,プレイヤーに選択してもらうタイプのイベントですね。選んでもらって実装する,みたいな。

4Gamer.net:
 プレイヤーが選ぶイベントですか。運営側もそちらのほうが都合が良さそうですね。
 では最後の質問です。どういった人にECOを遊んでほしいと思いますか?

小島氏:
 「ラグナロクオンライン」を卒業した人,またプレイステーション2を持っているけど,オンラインゲームは面倒臭い,でもインターネットはやっているといった人達ですかね。このグラフィックスを見たときに「やってもいいかな」と思える人ならなおいいです。いわゆる王道のRPGに,オンラインの要素がある,そういう風に考えてもらえれば嬉しいですね。

4Gamer.net:
 では,マリオネット以外の重要なシステムについてはまたいずれうかがうことにします。
 本日は,ありがとうございました。

(6月15日 ガンホー・オンライン・エンターテインメント会議室にて)

→岩田・小島両氏に聞くECO<前編>は,「こちら」


エミル・クロニクル・オンライン
■開発元:ヘッドロック
■発売元:ガンホー・オンライン・エンターテイメント
■発売日:2005/12/09
■価格:1500円(税込)/30日間
→公式サイトは「こちら」

【この記事へのリンクはこちら】

http://www.4gamer.net/news/history/2005.06/20050624182741detail.html