[CJ 2005]Huxley開発者が語るゲームエンジンを使った開発
姜基宗氏。半年ほど日本にいたとかで,流暢な日本語で挨拶されてちょっとびっくり
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China Joyでは,展示以外にカンファレンスも開催されていた。カンファレンスは展示に先駆けて行われていたようで,展示会にあわせて渡中した我々は前半のカンファレンスは見逃してしまった。 それはともかく,カンファレンスは総論,モバイル関係,テクニカル系,青少年系(?)といった感じで,1日ごとにテーマを決めて開催されていたが,ここではテクニカル系のカンファレンスでの,Webzenの発表を取り上げてみよう。 Webzen Huxley開発チームの姜基宗氏は,ゲームエンジンを使った開発について語った。 WebzenではSerious Samのゲームエンジンを使ったゲームNitro Family(邦題:ニトロファミリー)などを開発してきた実績を持っている。今回話題の中心となるHuxleyはUnreal Engine 3で作成されたものである。 ゲームエンジンとは,各種ツールとライブラリから構成されており,会場ではSerious SamエンジンとUnreal Engine 3の各種ツールなどが紹介された。こういったゲームエンジンを使うことで,ゲーム制作のコストを下げることができ,プログラマはゲーム部分に集中できるので品質向上も期待できるだろう。
HuxleyはMMOFPSという位置付けだが,MMOとMOの違いについてまず語られた。いわく,MOは戦闘空間であり,MMOは生活空間である。Huxleyでは同時戦闘に限っていえば最大256人対戦のMO形式となっている。FPSは1ステージずつレベルという単位の閉鎖空間を舞台にするのが普通だ。複数のレベルをシームレスにつないで移動できること(Persistence World),これがHuxleyでは実現されている。これが生活空間としてのMMO的な部分を支えているのだ。 Unreal Engine 3はすでに何度も紹介されているように,ゲームエンジンとしては非常に高性能かつ使いやすくできあがっている。とはいうものの,MMOゲームには実は向いていない。Unreal Engine 3では,扱えるキャラクター数は64人が最大である。そこで,Webzen独自のエンジンを作成し,Unreal Engine 3と併用している。ゲーム本体の開発は二つのエンジンをうまく組み合わせて使っていくことに尽きるようだ。 Webzenの作ったエンジンは,Unreal Engine 3のパケットモジュールなどを置き換えるものだ,このあたりは,多くのMMOゲームを取り扱ってきたWebZenのほうがノウハウの蓄積が多い。これで,最大8000人まで対応できることとなった。 また,ゲームの舞台は基本的にレベル単位で管理されているのだが,レベル間はデータロード待ちなしでシームレスに移動できる。プレイヤー数に応じてインスタンスが随時作られているようで,人数に応じて自動的に負荷分散も行うようになっている。これもWebzen側のエンジンが担当している部分だ。
高品質表示かつ豊富なツール群で先行するUnreal Engine 3と,それをMMOクラスのゲームでも使えるようにするWebzenのエンジンの組み合わせは,非常に大きな可能性を秘めているといえるだろう。Unreal Engine 3はPCゲームのみならず,Xbox 360やPlaystation3(以下,PS3)にも対応しているのだから。 同社は,PS3とPCに対応したオンラインゲームの開発をSOEと共同で行うということを,China Joy期間中に日本で発表したようだ。 また,9月にはXbox 360用のタイトルを発表するという。Huxleyか別のゲームかは明らかにしてくれなかったが,すでにHuxleyはPCとゲームコンソールに対応することが発表されているので,Xbox 360かPS3への移植はほぼ確実と見ていいだろう。 従来,PCとゲームコンソールはハードウェアの違い(PC側は年々進化するのにコンソールは性能がFIXされていたり)などにより,オンラインゲームで同一タイトルを出す場合に,アップデートの制限が出てきてしまう。実際,ファイナルファンタジーXIなどはかなり苦労しているようだ。 今回のHuxleyなどがそれらと違うのは,両者ともに共通のゲームエンジンを持っているということだ。ハードウェアの部分をエンジンが隠蔽してくれるので,エンジンのアップデートで共通に基本性能を上げていくことが可能になる。もちろんマルチプラットフォーム展開するなら,エンジンでサポートされていない範囲のことは基本的にあまりすべきではない。 ゲームエンジンには,各機種専用のものとマルチプラッチフォームのものがあるが,PS3用のライブラリなどを整備していく側のSOEは,自社タイトルではUnreal Engine 3を使っていくことをすでに発表している。今後のPCと次世代コンソールは,いずれもShader Model 3.0に対応しており,共通の基盤を構築できる程度には似通ったものとなるだろう。高級言語で開発すればCPUの違いは問題にならない。マルチプラットフォームでは,ゲームエンジンを使った開発は今後の主流になりそうな感じだ。 韓国ではゲームエンジンを導入している会社も多いようだが,中国では,「純国産」という単語が目立ったように,基礎開発から自社で行っているところも多いようで,どの程度ゲームエンジンが使われているかはよく分からない。中国ゲームを見ていて思うのは,技術自体がないわけではないが,ゲームのノウハウがまだ足りていないということだ。ゲームエンジンなどは,ノウハウの塊そのものなので,今後,高性能なゲームエンジン(中国向けにはハイスペックを要求するUnreal Engine 3は時期尚早かもしれないが)が多く利用されるようになれば,中国ゲームのクオリティアップと生産性アップの相乗効果が期待できるかもしれない。 (aueki)
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