[GC 2005#番外編1]Game Conventionとドイツのゲーム事情
「日本におけるドイツ年」として日独の友好関係が強化され,早々に来年ドイツで行われるFIFAワールドカップ2006への日本代表進出が決定した今年(2005年)。両国の関係は歴史的にも古いが,ことゲームとなると我々日本人にはドイツという国の事情がつかめない。"「セトラーズ」に代表されるようなチマチマしたゲームを作る国"―― だいたいそんなイメージしかないだろう。 ナチス関連の徹底した情報統制で知られるドイツだが,これまでに紹介しただけでも,Brothers in Arms:Earned in Blood」や「Rush for Berlin」と,戦時中のドイツ軍でプレイできるソフトが展示されているのは不思議に思える。また,会場内のあちこちに,細かく分かれたレーティング用のステッカーが貼られており,流血量などの問題で規制されるソフトも多いと聞くが,ホテル近くの雑貨店に足を運ぶとGrand Theft Auto 3」や「Mafia」などの暴力ゲームが山積みで売られている。きわどい格好のダンサーやモデルが各ブースの特設ステージで悩ましく踊っているのを,おばあちゃんに引率された小学生でもマジマジと見ることができるのだ。
Game Conventionを主催するのは,会場となるコンベンションセンターを管理/運営するLeipzig Messe社で,聞くところによると市が大株主となった半民営企業であるらしい。 Game Conventionはアメリカや日本のように業界団体が主導するのではなく,Leipzig Messeが企画から始めて運営しており,すでに今後10年にわたって開催の日付も固定されているほどだ。 そのため,ライプチヒでは町を挙げてイベントを盛り上げている様子で,空港から駅,町のところどころでイベントの広告が見られる。Leipzig Messeの社長,Josef Rehman(ジョセフ・ハーマン)氏によると,今年の入場者は昨年よりも多い11万人程度を見込んでいるというが,ライプチヒの人口は48万人程度だから,Game Conventionは市民の4分の1が参加する,人気のお祭りといえそうだ。
Bruce Shelly氏
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ゲーム開発ではそれなりに歴史のあるドイツだが,ハーマン氏は「ドイツは(コンピュータゲームの開発に関しては)まだまだ発展途上にあり,アメリカや日本,イギリスから学ぶことは多い」とイベントのオープニングを飾ったプレスカンファレンスで語っていた。 実際,世界的な影響力を持つ大きな販売会社は存在せず,次世代機用のソフトへの対応は遅れているなど,1700万人といわれる国内ゲーム市場に比較して,業界は成熟しているとは言えないようだ。Game Conventionを強力にバックアップすることで,市場と開発現場の両方にプラスになるように望まれているようである。 国民所得も高く,MMORPGではイギリスやフランスでも太刀打ちできないほどのハブになっており,会場でも「Final Fantasy XI」や「Ragnarok Online」のブースが意外に思えるほど盛況だ。NGLと呼ばれるゲームの国内大会や,SamsungのWorld Cyber Games予選大会が並立して行われているが,取り巻きのファンやゲーマーの多さには驚くばかり。 PCゲームの市場占有率は,コンシューマ機用ソフトを凌ぐ52%というのが羨ましい限りで,会場内では「ヨーロッパで成功するにはドイツから」とばかりに,今回のGame ConventionでもNintendo DSやPSPが大々的にマーケティングされている。 「Age of Empires」のBruce Shelly(ブルース・シェリー)氏やPeter Molyneux(ピーター・モリニュー)氏の公演に多くのファンが押しかけ,さらに今年は中裕司氏や小島秀夫氏のサイン会も行われた。街で最も見かける看板はElectronic Arts関連のソフトで,T-MobileやNokiaなどのモバイル関連企業が大挙して宣伝活動しているような状況だ。
ドイツ市場の大きさと,ドイツ産のゲームの地味さのアンバランスは,現時点では我々の目には不思議に感じられる。しかし,いつの日にか,Tシャツやポスター集めに奮闘するドイツっ子の中から,名作ソフトを開発するような人材が生まれてくるのだろうか。 Game Conventionも,思惑どおり年々大きくなっていくに違いない。(奥谷海人)
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