MSI,GeForce Go 6600搭載モデルを始めとしたベアノートを発表
エムエスアイコンピュータージャパン マーケティング部マネージャーの石岡宣慶氏
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台湾MSIの日本法人であるエムエスアイコンピュータージャパン(以下MSI-J)は,2005年8月24日に,ベアボーンノートPC「MEGABOOK」の本格展開と新製品発表の記者説明会を都内で開催した。
4Gamer読者にとってはあまり馴染みがないと思われるので説明しておくと,ベアボーンノートPCとは,CPUとメモリ,HDDをユーザーが自分で取り付けるタイプのノートPCだ。これまでも秋葉原を中心に少量が流通していたが,MSI-Jのマーケティング部マネージャである石岡宣慶氏は,これまでのベアボーンノートPCにはサポートが欠けていて,普及する条件を満たしていなかったと指摘。「製品」(の品質),「販売促進」(の充実)だけでなく,(充実した)「サポート」を提供できる万全の準備ができた結果が,今回の発表であるとした。 ベアボーンノートPC専任の技術者をサポートセンターに常駐させるだけでなく,専用ダイヤルも設置。万が一のときの修理交換窓口はMSI-Jに一本化し,MSI-Jの国内工場で処理するため,何か不測の事態が起きたときにも「台湾に送り返すから修理の納期は未定」といったことは起こらないとのことだ。 これらはいわゆるナショナルブランドのPCなら当たり前と思うかもしれないが,そんなナショナルブランド並みのサポートが得られながらも,CPUやメモリ,HDDは好きなものを選択して利用したり,後から買い換えたりできるのがMEGABOOKの魅力,というのが,MSIの主張である。
サポートの優位性を強調するスライド(出展:MSI-J)
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■GeForce Go 6600搭載のゲーマー向けモデルなど3製品をリリース
MS-1032
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今回発表されたのは「MS-1032」「MS-1022」「MS-1016」の3モデル。いずれもFSB 533MHz版Pentium Mをサポートするが,とくに注目したいのはMS-1032だ。MS-1032はGeForce Go 6600をオンボードで搭載し,専用のグラフィックスメモリも128MB搭載する。標準でDVD書き込みに対応した光学ドライブを搭載するので,あとは好みでCPUとメモリ,HDDを別途購入するだけで,立派なゲーム用ノートPCになる。MS-1032の価格は約10万円なので,例えばPentium M 750/1.86GHz,80GB HDD,512MB×2のデュアルチャネルメモリと,OEM版のWindows XP Home Editionを購入したとすると,ざっとした計算で17万円。コストパフォーマンスは悪くないといえるだろう。 なお,残る2モデルを含む,新製品の概要は以下のとおりとなっている。
MS-1032 チップセット:Mobile Intel 915PM+ICH6-M グラフィックス:GeForce Go 6600(オンボード,グラフィックスメモリ128MB) ディスプレイ:15.4インチ,1280×800ドット光沢パネル液晶 バッテリー:8セルリチウムイオン,最大駆動時間4時間 発売時期:2005年9月上旬 予想実売価格:9万9000円前後
MS-1022 チップセット:Mobile Intel 915PM+ICH6-M グラフィックス:GeForce Go 6200 with TurboCache(オンボード,グラフィックスメモリ32MB) ディスプレイ:14.1インチ,1280×800ドット光沢パネル液晶 バッテリー:6セルリチウムイオン,最大駆動時間未定(※計測中) 発売時期:2005年10月中旬 予想実売価格:8万6000円前後
MS-1016 チップセット:Mobile Intel 915GM+ICH6-M グラフィックス:Intel Graphics Media Accelerator 900(Mobile Intel 915GM内蔵) ディスプレイ:14.1インチ,1280×800ドット光沢パネル液晶 バッテリー:8セルリチウムイオン,最大駆動時間未定(※計測中) 発売時期:2005年9月上旬 予想実売価格:7万5000円前後
3モデル共通仕様 CPUソケット:mPGA479M,Pentium M/Celeron M取り付け可能 メモリスロット:DDR SO-DIMM×2,PC2700 SO-DIMMを取り付け可能 HDDベイ:IDE接続,9.5mm厚モデルを取り付け可能 光学ドライブ:DVD±RW/R(DVD+R Double Layer対応) カードスロット:Express Card×1,PCMCIA TypeII×1 IEEE 1394:1ポート(4ピン) カードリーダー/ライター:3in1(SD,MMC,メモリースティック) mini PCIスロット:1本 キーボード:日本語配列(英語配列,中国語配列は別売り) 付属品:本体(バッテリー含む),ACアダプタ,ドライバCD-ROM,液晶クリーニングクロス,日本語マニュアル,保証書
MS-1022(左)とMS-1016(右)
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■Intelが「Common Building Block Program」の詳細を発表
インテル ゼネラル・セールス・グループ チャネル事業本部 本部長代理 兼 チャネル マーケティング部 マネージャーの中村泰士氏
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なお,発表会ではIntelの日本法人であるインテルのゼネラル・セールス・グループ チャネル事業本部 本部長代理 兼 チャネル マーケティング部 マネージャー,中村泰士氏が,同社の進める「ノートPCを構成するメカニカル仕様の共通化」プログラム「Common Building Block Program」(コモン・ビルディング・ブロック,以下CBB)の詳細を発表した。 CBBでは,これまで独自仕様のものが多かった,HDDや光学ドライブ,液晶ディスプレイなどの仕様を共通化しようとするものだ。中村氏は,現在ノートPCの構成部品は25〜40%程度しか汎用化されていないが,今後はCBBによって50〜70%近くが汎用パーツ化していき,ノートPCの自作がぐっと簡単になるとした。 補足しておくと,現在,ノート用光学ドライブの規格はかっちりと決まっていないため,A社のノートPC用に作られた薄型ドライブがB社のノートPCには取り付けられない,などということが結構ある。デスクトップなら,ドライブサイズも接続インタフェースも規格化されているから,基本的にはただ買い換えれば動作するにも関わらず,だ。 CBBは,こういった問題を解決するものである。CBBが一般化すれば,ノートPCの自作はデスクトップPC並みか,(実際にはノートPCを完全にゼロから組み立てることはまずないから)それ以上に簡単になる。また,接続インタフェースが共通化されれば,液晶ディスプレイを好きに選ぶ,なんてこともできるようになるだろう。高解像度が欲しい,とにかく応答速度が欲しいといった場合に,デスクトップ用液晶ディスプレイを選ぶのと同じように,ノート用液晶ディスプレイを選択して自分で取り付けられるようになる可能性があるのだ。まあ,思い切り平たくいうと,Dellなどが行っているBTOを,購入時だけでなく,後からでも自分でできるようになるというわけである。
左:BTOノート&ベアボーンノート市場の成長度合いを示したスライド。2004年第3四半期には数百台規模だった自作ベアボーンPC市場は,2005年第2四半期に数千台規模にまで拡大したという
右:CBBの定義について言及したスライド
(出展:インテル)
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CBB参加ベンダーのリスト。業界大手の名が並んでいる(出展:インテル)
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そんな中村氏に発表会終了後,話を聞くことができたので,ここにまとめておこう。右のスライドは,発表会で示された,CBBに賛同している主要なノートPC構成部品メーカーのリストだが,IntelはCBBに関する市場リサーチと提案,そしてメーカー各社の橋渡しを行っているとのこと。早ければ2005年末,遅くとも2006年からは,CBB"準拠"の構成部品からできたノートPCやベアボーンノートPCが登場するようだ。「CBBを採用するかどうかはあくまでノートPCメーカーの判断」(同氏)だそうなので,差別化戦略をとり続けるナショナルブランドのPCで,例えば「VAIO NOTEにQosmioの液晶を取り付ける」といったことができるようになるかといえば正直厳しいと思うが,なかなかナショナルブランドが力を入れてくれない,ゲーマー向けノートPCを,予算や希望に合わせて簡単かつかなり自由に作れるようになれば,ゲーマーにとっては福音だろう。
ちなみに,このCBBにNVIDIAの提唱するノート用グラフィックスカードスロット規格「MXM」などがどう絡んでくるかはまだ何も決まっていないとのこと。とはいえ,CBBとMXMは相当親和性が高いように思う。CBBが一般化するころには,ノートPCでもグラフィックスカードを買い換えたりできるようになりそうな気配だ。
現在ではまるでピンと来ない人も多いと思うベアボーンノートPCだが,本気で製品展開を図るとしたMSIと,CBB次第では,自作PCの新たな潮流を生む可能性がある。今後に注目していきたい。(佐々山薫郁)
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