「Sound Blaster X-Fi」国内発表,詳細仕様の一部が判明
米国発表から遅れること約1か月。Creative Technologyの日本法人であるクリエイティブメディアは,PCI接続サウンドカードの新製品「Sound Blaster X-Fi」4モデルを発表した。4モデルの製品名は上位モデルから順に「Sound Blaster X-Fi Elite Pro」「Sound Blaster X-Fi Fatal1ty FPS」「Sound Blaster X-Fi Platinum」「Sound Blaster X-Fi Digital Audio」。「こちら」の記事で説明しているように,米国発表時には最下位モデルとしてアナログ入出力専用の「Sound Blaster X-Fi XtremeMusic」が用意されていたが,国内モデルではこの代わりにSound Blaster X-Fi Digital Audioが用意されている。 もっとも,これはクリエイティブメディアの"伝統"。国内では海外よりもデジタル入出力に対するニーズが高いという理由から,最下位モデルにはデジタル入出力を可能にするアダプタが付属している。その意味で,ラインナップに劇的な変更はないと見るべきだ。なお,4モデルの詳細は以下のとおり。
Sound Blaster X-Fi Elite Pro
「Sound Blaster Audigy 4 Pro」の後継となる製品で,シリーズ最上位。詳細は後述するが,大容量キャッシュメモリ「X-RAM」を搭載し,ゲームや音楽制作時のパフォーマンス向上が期待できる。カードレベルのS/N比※は116dB。大型の外付けI/Oボックスとリモコンが付属する。クリエイティブメディアの直販価格(以下直販価格)は4万2800円(税込)
Sound Blaster X-Fi Fatal1ty FPS
世界的に有名なプロゲーマーJohnathan Wendel(ジョナサン・ワンデル)氏のハンドルネーム「Fatal1ty」を冠したゲーマー向けモデルだ。とくにFPSプレイヤーがターゲットというのは,改めて説明するまでもないだろう。X-RAMを搭載し,カードレベルのS/N比は109dBとなる。5インチベイ内蔵タイプのI/Oボックスとリモコンが付属して,直販価格は2万9800円(税込)
Sound Blaster X-Fi Platinum
基本的な構成はSound Blaster X-Fi Fatal1ty FPSと同じだが,カードからX-RAMが省かれ,代わりに2MBのキャッシュメモリを搭載する。ほかの仕様は同じだ。直販価格は2万2800円(税込)
Sound Blaster X-Fi Digital Audio
Sound Blaster X-Fi Platinumから内蔵I/Oボックスとリモコンが省略され,外付けのデジタル入出力用I/Oアダプタが付属している。カード自体の仕様はSound Blaster X-Fi Platinumと同じだ。直販価格は1万5800円(税込)
この4モデル登場によって,同社の製品ラインナップには大きな変化がある。まず,これまで長らくメインストリーム向けの位置を占めてきた「Sound Blaster Audigy 2/2 ZS」シリーズと,バリュー向けの「Sound Blaster Live!」シリーズはすべて終了。同時に,下位モデルとして「Sound Blaster Audigy 4 Digigal Audio」(直販価格9980円)「Sound Blaster Audigy Value」(直販価格4980円)「Sound Blaster 5.1」(直販価格1980円)が投入される。Sound Blasterシリーズの場合,新モデルが投入されると,似たような名前の下位モデルが従来とは大きく異なる仕様で登場することが多いが,今回もそれだ。当然,スペック面では向上を見せているものの,あくまでSound Blaster Audigy 4 Digital Audioは,これまでの「Sound Blaster Audigy 2 Value Digital Audio」を置き換えるのが目的の製品で,Sound Blaster Audigy 4 Proとはまったくの別物,といった具合である。
■Sound Blaster X-Fi Elite Proのスペックを探る
さて,4Gamerでは9月下旬出荷予定の最上位モデル,Sound Blaster(以下SB)X-Fi Elite Proを入手した。そこで今回は速報として,このSB X-Fi Elite Proの実機を見ながら,SB X-Fiのスペックを改めて紹介しておきたい。
従来のサウンドカード用DSPと比べ,圧倒的なパワーを持つX-Fi Audio Processor。だが,かつてnForce2がサポートしていた,Dolby Digital 5.1などのリアルタイムエンコードには対応していない
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核となるのはDSP(Digital Signal Processor)「X-Fi Audio Processor」。トランジスタ数はNorthwoodコアのPentium 4/2.40GHzに匹敵する5110万を誇り,1万340というMIPS値だけならPentium 4 560/3.60GHzに相当,演算能力で「Sound Blaster Audigy」の24倍というスペックを持つモンスターチップだ。もちろん,専用のDSPであるX-Fi Audio Processorと汎用プロセッサであるPentium 4と比べることには何の意味もないのだが,インパクトは大きい。MIPS値が何か分からなくても,とりあえず「凄い」とは思わせてしまうという意味で,このスペックはマーケティング的にアリだ。
今回入手した製品ではMicron製チップをX-RAMとして搭載していた
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X-Fi Audio Processorの脇に寄り添うように配置されているのがX-RAMである。X-RAMは512Mbit品のPC133 SDRAMチップ1枚で64MBという容量を実現しており,X-Fi Processorのキャッシュとして利用される。ゲームにおいては,BGMや効果音,ボイスチャットなどのデータをこのメモリに展開することで,PCIバスの負荷を減らし,ひいてはゲームのフレームレートや体感速度向上を実現するのが目的だ。
左:X-RAMの隣(写真では右側)には,Xilinx製のFPGA(プログラム可能な汎用チップ)が置かれている。上で紹介した製品写真を見ると,SB Fatal1ty FPSにはないので,このチップが何をするためにあるのか現時点では不明 右:同じく,カード上にはプラスチックでできた謎の黒い箱がある。この正体はLED。動作中,SB Elite Proでは青く,SB Fatal1ty FPSでは赤く光る(下位2モデルは非搭載)
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4個並んだ小型のチップは,PC上で扱われるデジタルデータをアナログのサウンドデータに変換するD/A(Digital to Analog)コンバータ。一般的なサウンドカードでは,7.1ch(や5.1ch)対応のD/Aコンバータ1個でまかなうのに対し,SB X-Fi Elite Proでは最新世代の中高級オーディオ機器でもよく採用されているCirrus Logicの2ch用D/Aコンバータ「CS4398」を2chごとに1個使うという贅沢な構成である。 CS4398を4連装というのは「SB Audigy 4 Pro」と同じなので目新しさはないものの,SB Audigy 4 Proではその下位モデル「SB Audigy 2 ZS」に対して,アナログ出力音質で大きな品質向上を見せていただけに,SB X-Fi Elite Proにも期待が持てるのは確かだ。ちなみに,ボイスチャット時のマイク入力品質を左右するA/D(Analog to Digital)コンバータは,チップレベルのS/N比で123dBとこれまた優秀な,旭化成マイクロシステム製の「AK5394」を採用している。
SB X-Fi Elite Proの入出力端子。右端の大型端子は「AD-Link」だ。従来,AD-Linkはアナログとデジタルで接続端子が異なり,接続が面倒だったが,SB X-Fiで改善されている
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ただ,出力端子は相変わらずだ。カード上にはミニピンが4端子用意されているが,このうち出力に利用されるのは3端子のみ。SB Audigy 2以降,もちろんSB X-Fi Elite Proでも,スペック上はアナログ7.1ch出力が可能なのだが,1端子ごとにステレオで出力しようとすると,明らかに端子が一つ足りないという問題は,SB X-Fiでも修正されていない。専用ケーブルを同梱するCreative Technology製7.1chスピーカーシステム以外ではアナログ5.1ch出力までの対応となる製品を"7.1ch出力対応"と呼んでいいのかについては,今回も何か引っかかるところが残ったままである。
アナログスピーカーセッティングを行うのは今回もTHXセットアップコンソール。ここでは7.1chの選択を行えるが,その実用性については本文で述べたとおりだ。相変わらず半角カナだらけで,読みにくい点は改善されていない
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左:外付けI/Oボックスの背面I/Oインタフェース。MIDI入出力,デジタル入出力と,ひととおり揃っている 右:外付けI/Oボックスの前面。ボリュームやEAXなどの調整用つまみのほか,ヘッドフォン出力やマイク/ライン入力用のフォン端子を用意する
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■EAX ADVANCED HD 5.0と24-bit Crystalizerがソフト面の革新点
付属ソフトの設定などは,付属のリモコンから可能。リモコンは高級感があるとまではいえないものの,安っぽい感じはせず,しっかりとした作りだ
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4モデルに共通するソフトウェア面の大きな革新点は,ついにバージョン5.0となった「EAX ADVANCED HD 5.0」と,新たに搭載した「24-bit Crystalizer」だ。
従来製品がサポートしていたEAX ADVANCED HD 4.0は,同時発音数64音だったのに対し,EAX ADVANCED HD 5.0では128音になった。 ゲーム側の対応待ちとなる新機能では,MacroFXに注目したい。EAX ADVANCED HD 4.0以前のサラウンドエフェクトでは,プレイヤーの近くを通過するような物体のサウンド処理に少なからず問題があった。だが,MacroFXによって,この問題はクリアになったとのこと。さらに,MacroFXだけでなく,バーチャルサラウンド周りにも強化が行われており,ヘッドフォン利用時におけるバーチャルサラウンド機能は相当強化されているという。 細かい部分では,今後登場すると思われるEAX ADVANCED HD 5.0対応ゲームだと,リバーブやエコーに頼り切らない,よりユニークな環境エフェクトを提供できるようになるそうである。
「24-bit Crystalizer」は一言でいうと,音を歪ませない(≒劣化させない)まま,MP3などの圧縮された音楽ファイルの再生において,音にメリハリを付けて鮮やかにする機能だ。実は,プロの音楽制作用としては定番といえる機能によく似ているが,果たして同じようなことをやっているのか,現時点では分からない。いずれにせよ,音楽のリスニングはもちろん,ゲームをプレイするうえでも効果があるとのことである。
最後に,そのほかのスペックについて簡単にまとめておこう。当然のことながら,EAX&EAX ADVANCED HDは全バージョンをサポート。入出力APIとして,DirectSoundやWDM,MME,ASIO 2.0といったところにも対応している。 一点気になったのはOpenAL(Open Audio Library)に関する部分だ。OpenALは3Dポジショニングサウンドのクロスプラットフォーム規格であり,LinuxやMac OS Xでもサポートされるなど,標準化に向けて進んでいる。Creative Technology製サウンドカードも以前からサポートしているから,SB X-Fiが対応していても別に珍しくはないのだが,これまで同社はほとんどこのOpenALについて言及していなかった。それが,今回プレスに配られた初期資料では,それが嘘のように,OpenALに対して積極的な記述が目立つのだ。これが何を意味しているのかは目下調査中だが,3Dサウンドの世界で何かが動こうとしている可能性はある。
駆け足で紹介してきたが,まだSB X-Fiについてはナゾが多い。クリエイティブメディアのニュースリリースからも全容はまだ見えていない,というのが正直なところだ。今後もSB X-Fiについてはゲーマーの視点から追いかけていくので,続報に期待してほしい。(Jo_Kubota,佐々山薫郁)
※Signal to Noise ratioの略で,信号に含まれるノイズの量を対数で示したもの。値が大きいほど,音に含まれるノイズの量は少なくなる。音楽CDは90〜100dB前後,PC(=マザーボード)に付属のオンボードサウンド機能が60〜80dB前後といったところだ。ちなみにSound Blaster Audigy 2の初期モデルは96dB,Sound Blaster Audigy 2 ZSの初期モデルは108dBだった
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