「Hellgate:London」開発者インタビュー:ビル・ローパー/デイビッド・ブレーヴィックに聞いたHellgate:Londonの現状[後編]
ご存じ,ビル・ローパー氏(左)とデイビッド・ブレーヴィック氏(右)。質問への応えを相談したり,譲り合ったりと,実に仲のよさそうな二人であった
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以前「こちら」でお伝えしたとおり,9月15日,ナムコ横浜クリエイティブセンターで,「Hellgate:London」製品発表会が行われた。多くのRPGファン/Diabloファンから注目されるタイトルだけに,どのような新情報が発表されるのか楽しみにしていた人も多いことだろう。 残念ながら,製品発表会自体はごくさっぱりとしたもので,日本/アメリカ/ヨーロッパでのパブリッシングが正式に発表されたことや,女性テンプラーの素材が公開されたことなどが,製品発表会での主な"新情報"であった。 なんとしてもさらなる新情報を引き出しておきたい編集部としては,発表会の後,ビル・ローパー氏,デイビッド・ブレーヴィック氏にインタビューを行う時間がもらえたことに飛びついた次第。そこで得られた,同作のクラスシステムや呪文(スペル),(開発者から見た)おおまかな完成度といった情報は,「こちら」のインタビュー前編でお伝えしたとおりだ。 今回は,インタビューの後編をお届けする。「まだ不安要素がある部分は話せない」という強い信念(?)を持つビル・ローパーが相手なだけに,既報以上の具体的な新要素は引き出しづらかったが,まずはご一読を。
■「Hellgate:London」の体験版リリースのタイミングは?
4Gamer編集部(以下,4Gamer): ビルさんはかつて,「Diablo」や「Warcraft III」で,声優としても参加していましたよね。Hellgate:Londonでも声の出演をする予定ですか?
ビル・ローパー氏(以下,ビル): うーん,ぜひやりたいとは思っているんだけど,ほかの声優同様,オーディションを受けて合格しなければならないからなぁ(笑)。
4Gamer: そうなんですね。じゃあ,ぜひオーディションもがんばってください(笑)。 それと,Diabloシリーズには開発スタッフにちなんだモンスターやアイテムが登場していましたが,こちらに関しても期待していいでしょうか? ファンとしては非常に気になるのですが。
デイビッド・ブレーヴィック(以下,デイビッド): 我々は毎回そういった"お遊び"要素を用意しているので,Hellgate:Londonでも自然とそういう流れになると思います。 そういった要素は実装するのも簡単だし,開発者としても非常に楽しい作業ですからね。マスターアップが近くなると,開発者達の様子がどんどんおかしくなってくるので,悪ふざけ的なアイテムも必然的に増えてしまうんです(笑)。
4Gamer: それを聞いて,Hellgate:Londonをプレイする楽しみがまた一つ増えました。大いに期待しています。 とまぁ,和やかな雰囲気のうちに核心を聞いてしまいたいのですが,本作の発売日や,体験版のリリース時期について,そろそろ少しでも教えてもらえないでしょうか。
ビル: 2005年ではないね。
4Gamer: 体験版も?
ビル: うん,体験版も。よく「2005年末の発売じゃないんですか?」と聞かれるんだけど,開発者としては,それほどの完成度だと思ってもらえているのは非常に嬉しいことだね。でも,2005年発売はまずない。開発自体はかなり順調に進んでいるから,まぁもう少し待っていてください。
一般的な銃器だけではなく,火炎放射器や毒(?)散布器といった銃器も用意されている。今後,さらにユニークな武器が実装されていくことだろう
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■マルチプラットフォーム展開や,拡張パックに関する展望
テクノゴシック的なデザインセンスが光るHellgate:London。確かに,アーケードゲームやフィギュアの世界でも十分通用するタイトルといえるだろう
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4Gamer: ところで,先日バンダイとナムコが経営統合を発表したんですが,その件について何かコメントはありますか?
ビル: 実はニュースの詳細についてはよく分かってないんだけど,トイメーカーとゲームメーカーの組み合わせは非常にパワフルだよね。
4Gamer: Flagship Studiosとしての仕事環境の変化はなさそうですか?
ビル: うん。組織的な変化はもちろんあるだろうけど,具体的な影響は今のところないよ。それよりもさ,うまくいけばHellgate:Londonのおもちゃを発売してくれるかもしれないから,そこが楽しみだよね!(笑)
4Gamer: これもバンダイナムコと関連のある話になりそうですが,PC以外のプラットフォームでのHellgate:London発売に関して,何か具体的な話は出ていますか?
ナムコCT販売戦略室長・兵藤岳史氏(以下,兵藤氏): それはこちらが話したほうがいいですね。
4Gamer: ええ,ぜひ聞かせてください。
兵藤氏: 具体的な話はまだ出ていないんですが,まぁバンダイとナムコが一緒になるということで,アーケードゲームとか,モバイルとか,バンダイさんがいるのでトイとか。そういった展開の可能性は十分あるので,今まさに話し始めているところですよ。
4Gamer: なんと! 日本で普通にHellgate:Londonのフィギュアが買えるようになったら,ファンも喜びますね。コンシューマ機での展開についてはどうでしょう?
兵藤氏: ええ,十分考えられることですね。
4Gamer: Macintoshでプレイできるようになるかも,という話を聞いたことがあるんですが,実際のところはどうなりそうでしょうか?
ビル: Macintosh版については,Appleとも話を進めているよ。Mac対応ゲームは(Blizzard Entertainmentで)過去にもリリースしているし,Macユーザーにも熱心なファンが大勢いることを知っているから,ぜひ対応させたいと考えているよ。
デイビッド: "対応"に関しては前向きに考え,準備もしています。"移植"に関しては,まだ検討段階といったところですね。
4Gamer: 分かりました。さて,これまたずいぶんと先走った質問のようで恐縮なのですが,拡張パックに関する構想はすでにありますか? 例えばHellgate:New Yorkとか,Hellgate:HongKongとか。東京にも,新宿や秋葉原といったクールな街がありますし。イメージもそう外してないと思うんですよね。
ビル: Hellgate:Akihabaraはいいねぇ(笑)。まぁ,拡張パックのアイデアは,よく考えているよ。Hellgate:Londonというタイトルも,いろんな可能性を残しているしね。 確かに,東京には魅力的な街が多いね。それこそ秋葉原と六本木では,雰囲気も文化も人種も違うし。西洋と日本のデーモン像の違いも興味深い。非常に面白いと思うよ。
4Gamer: では,もしかしたら……?
ビル: うん。可能性は大いにあるね。Hellgate:Londonが商品として成功して,ファンがそういうものを望んでくれれば,僕らはその期待に応える努力をするよ。
4Gamer: ぜひ期待していますね。では,これも拡張パックに関連した話題といえるかもしれないのですが,MODに関してはどうお考えですか?
デイビッド: 今回のコードの基礎はまったく新しいものですが,MODは作りやすいと思います。Flagship Studiosからオフィシャルな開発ツールを提供することはしませんが,ファンのみんなが優れたツールを作ってくれるでしょうしね。
■マルチプレイ/コミュニティ周辺や,細かな仕様について
インタビューに対し,終始にこやかに対応してくれたビル氏。世界中にファンがいるのも納得の人柄であった
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4Gamer: Hellgate:Londonでは,マルチプレイとコミュニティに注力した作品作りをされているそうですが,仕様は固まってきていますか?
ビル: Hellgate:Londonのマルチプレイモードは,「Battle.net」でのプレイに近い感覚で楽しめるようになるよ。でも,チャットルームに集まり,仲間を探して冒険に出るわけではない。本作では,自分のキャラクターを操作し,アンダーグラウンド(セーフゾーン)の街で準備したり,冒険に出発したりできるんだ。そうだな……「Guild Wars」の進行にちょっと近いかな?
4Gamer: セーフゾーンに複数のプレイヤーが集まって,冒険の準備ができるわけですね。アイテムのトレードに関しては,個人間トレードだけではなく,個人店舗を開くこともできますか?
ビル: プレイヤー同士の売買は可能にしたいと思っているんだけど,仕様はまだ決まっていないんだ。話に出てきているのは,オークションハウス,個人店舗,個人間トレードといったアイデアだよ。
4Gamer: あぁ……オークションハウスは,もしかしたらゲームの雰囲気にも合ってるかもしれませんね。サイバーでダークな感じのキャラクターが,集まって競り合ってる,みたいな。
ビル: 実際にハウスを作るかどうか分からないけどね(笑)。
4Gamer: ところで,現在アジアではMMORPGが流行していますが,MMORPGブームをはじめとする現在のPCゲーム業界の流れについて,どうお考えですか? また,Hellgate:Londonは,その流れの中でどういうポジションも占めようと思ってますか?
ビル: 本作はMMORPGと比較されがちだけど,開発チームとしては,コミュニティ機能やプレイヤー間の売買など,MMORPGのいいところをまず取り込んだ。そして,人が多すぎて敵が足らなくなるとか,プレイヤー同士のもめごととか,そういったMMORPGのよくないところを削っていっているんだ。 ゲームプレイも,Hellgate:Londonはペースが速く,さまざまなランダマイズシステムが搭載されているから,何度プレイしても飽きがこない。追加コンテンツも用意する予定だから,その点にも期待してほしいね。
4Gamer: お? 追加コンテンツというのは,先ほど話に出た拡張パックとは別のものですか?
ビル: 拡張パックのように大規模なコンテンツも考えているし,それよりも小規模な追加要素も考えている。Hellgate:Londonは,開発側から見ればアイテムの効果やエフェクトが簡単に変更できるようになっているから,スムースにコンテンツを追加できるんだよ。 ビジネスモデルは,まだ確定していないけどね。アイテムをリアルマネーで買うなどの問題もあるし,ビジネスモデルに関しては,今後も慎重に討議を重ねていくつもりだ。
4Gamer: 確かに本作は,さまざまなビジネスモデルが考えられそうなタイトルだし,その点に関してはじっくりと考えていったほうが良さそうですね。 さて,時間も残り少なくなってきましたが,あと二つだけ質問させてください。以前4Gamerでインタビュー(「こちら」)したときに,ビルさんはナムコとの出会いを,「ご機嫌取りにデートするような相手じゃなく,長く一緒に暮らしてがんばっていける伴侶との出会いのような。ナムコの正面玄関を出たときに,そんな感覚に襲われました」と表現していました。 今日(9月15日)発表会があったわけですが,このあとナムコの正面玄関から出るときには,どのような感覚に襲われそうでしょうか?
ビル: なんだか照れるな(笑)。5月のE3 2005のときは,いろんな締め切りやイベントがあったので,ちょっと慌ただしいハネムーンのような感じだったよ。 もちろん夫婦生活は,今でもうまくいっている。夫婦喧嘩もなく,良好な関係が続いてるよ。
兵藤氏: そのとおりですね(笑)。
4Gamer: いやいや,素敵な関係が続いているようで,こちらも安心しました。ちょっと難産のような気もしますが,ぜひ元気な"作品"を産んでください。世界中のファンが待っていますので。 それでは最後に,4Gamer読者に向けてコメントをお願いします。
ビル: 日本のデベロッパは新鮮なゲームを作るし,ユーザーのゲームを見る目も確かだと思う。そういう日本人に好まれるゲームをまた作れるかどうか,自分でも実に楽しみだよ。 こうして来日して,取材を受けられるのも光栄に思っている。ナムコという頼もしいパートナーと力を合わせてHellgate:Londonを成功させるので,期待していてほしい。
デイビッド: 僕も日本人ゲーマーを非常に尊敬しています。ゲーム作りで日本人に評価されるかどうか,一人のクリエイターとして,今でも非常にドキドキしています。 Diabloシリーズなど,日本でもブレイクするような作品を作れたことは,僕自身誇りに思っています。Hellgate:Londonも,きっと皆さんに喜ばれるタイトルに仕上げられると思うので,大いに期待していてください。
4Gamer: 分かりました。本日はお忙しい中,ありがとうございました。
以上で,9月15日に行ったインタビューは終了である。情報公開のタイミング関しては,実にシビアな考えをもつビル・ローパー氏が相手ということで,現段階ではこの程度の情報を引き出すので,精一杯だった。おそらくはゲームそれ自体の質問を投げかけたところで,今までの彼の作品の作り方からして,たいていの仕様は変わってしまうだろう。それを聞くよりは,と思った次第だ。 しかし,今回日本で製品発表会を行ったことで,今後の情報公開に関するタイムラグはかなり解消されるだろう。日本のナムコとのキチンとした連携が確認できたし,定期的に新情報が送られてくるようになると思われる。 もちろん4Gamerでは,引き続きHellgate:Londonに関する情報を追っていくつもりだ。次の情報を,お楽しみに。(大路政志)
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