[TGS2005#60]「テイルズ オブ エターニア オンライン」開発陣が目指す方向性
東京ゲームショウ2005(以下,TGS2005)には,ナムコが開発中のMMORPG「テイルズ オブ エターニア オンライン」(以下,TOEO)も出展されていた。先日「こちら」でお伝えした新要素も紹介されており,ブースの周辺は常に人だかりができていた。 やはり,コンシューマゲーム機で長い歴史と人気を誇る"テイルズ オブ"シリーズの流れを汲んでいるだけに,コンシューマ機オンリーのゲーマー達からも,大きな注目を集めていたようだ。
今回,会場ではTOEOの広報を担当する柘植 卓氏の立ち会いのもと,プロデューサーの佐藤嘉範氏とディレクターの田村俊彦氏から話を聞くことができた。 残念ながら,リリース時期などに関する質問には答えてもらえなかったが,クローズドβテストの開始が遅れた理由や,2Dグラフィックスを採用した理由など,"テイルズ オブ"シリーズのファンなら気になるポイントについて,直撃してみた。
■中途半端な形で,触れてもらいたくなかった
左:ナムコ CTクリエイターグループ
プロデューサー 佐藤嘉範氏
右:ナムコ CTクリエイターグループ
ゲームデザイナー 田村俊彦氏
|
4Gamer: こんにちは。今日はよろしくお願いいたします。 ではいきなりですが,まずは最も気になることから聞かせてください。2004年末のクローズドβテスター募集から,実際のテスト開始までに半年以上という時間がかかりましたが,その理由は何ですか?
佐藤氏: 正直なところ,単に開発が遅れたというのが大きいですね。「テイルズ オブ エターニア」という冠がありますので,中途半端な形で表に出したくなかったんです。そのため,クローズドβテストといえども,ある程度のレベルまで上げておく必要があった。それで時間がかかってしまったということですね。
4Gamer: なるほど,やはりテイルズ オブ エターニアというブランドがあるからこそ,細心の注意を払って価値を高めていかなければ,シリーズのファンが納得してくれないということですね。
佐藤氏: ええ,そういうことです。
柘植氏: プレスリリースなどでは,「品質向上を期するため」という発表をしましたが,これは本当のことなんです。開発陣がイメージしていることが,もう少しで実現するのに……という状況だったので,それを実現すべく延期したということですから。
4Gamer: なるほど,延期前の段階では,理想に現実が追いついていなかったということですね。それがようやく追いついてきたので,クローズドβテストがスタートした,と。 それでは,この半年以上,実作業としてはどのようなことをメインにやってきたのですか?
佐藤氏: 当然,それまで行っていた作業の遅れというのもありました……。それと同時に,9月16日に発表した(「こちら」)新要素の追加も並行して行っていました。また,ゲームの部分だけでなく,サーバーにかかる負荷もさまざまな角度から検証しつつ,新たなシステムを追加していたわけです。
4Gamer: ただ遅れを取り戻しただけでなく,ちゃんと先にも進んでいたんですね。 さて,ナムコとしては,MMORPGは初めての挑戦ですよね。やはり開発の遅れの背景には,予想した以上の困難があったのではないでしょうか?
佐藤氏: 何しろ何もかもが初めてだったので,事前に予想しづらい部分はありましたね……。経験のあるドワンゴさんと共同開発という形でやってきていますが,"オンライン リニアモーション バトル システム"といった新しい要素を追加するうえでは,サーバーやシステムの構築に,結構苦労してしまったのは確かです。
4Gamer: 前例のないものは,予想しづらいし,取り組んだら結構な苦労があるものですもんね。ところで今,ドワンゴの名前が出てきましたが,どういう形で共同開発をしているのですか?
佐藤氏: ドワンゴさんには,クライアント/サーバープログラムの制作やゲーム仕様作成をお願いしています。もちろん話し合いながらですけどね。内容について,例えば世界観とかゲーム性とかは,当然ナムコが監修しています。また,グラフィックスやサウンドもナムコの担当です。
4Gamer: "テイルズ オブ"シリーズを一番よく理解しているのは,ナムコである。ということですね。 さて,数ある"テイルズ オブ"シリーズの中で,どうして"エターニア"を選んでオンライン化したのでしょうか? 公式発表では確か,エターニアがシリーズの中でもとくに人気が高いから,と説明されていましたが。
佐藤氏: そうですね。エターニアは2000年にリリースしたのが最初ですが,根強い人気に支えられています。 それと,MMORPGとして今後長い期間運営していくことを検討すると,"テイルズ オブ"シリーズの中でもエターニアが,世界観的にも適していたからというのもあります。
■より多くの人に遊んでもらうため,2Dグラフィックスを採用
4Gamer: ただ人気に応えるだけでなく,運営のしやすさというか,MMORPGとしての世界を構築しやすい……という判断ですね。 そんなTOEOですが,2Dのグラフィックスを採用しているため,3DグラフィックスのMMORPGと見比べると,よく言えばコンシューマテイスト,悪く言えば,少し古く見えてしまう部分があると思います。もちろん,2Dグラフィックスの採用は何かしらの狙いがあってのことだと思うのですが,そのあたりはいかがですか?
佐藤氏: シリーズのファンになじみやすさを感じてもらいたかったという点や,アニメとの親和性を考慮した結果,2Dを採用しました。 実は,我々も当初,最先端の3Dグラフィックスを採用するべきかどうかで悩んだりもしたんですよ。ただ,国内だけでなく,アジアでの展開も考えているんですよ。そうすると,必要動作環境をなるべく低く設定したほうが,より多くの人に遊んでもらえるのではないかと判断し,現在の形に落ち着いたわけです(編注:ちなみに同作の必要動作環境は,Windows 98SE/Me/2000/XP,Celeron/500MHz以上,メモリ 128MB以上,HDD空き容量 1.8GB以上,グラフィックスメモリ16MB以上,DirectX 9.0b以降)。 ご指摘のように,このご時世で2Dグラフィックスを選ぶのは,冒険なのかもしれませんけどね。
4Gamer: なるほどシリーズのファンを大事にしている上に,低スペックのPCを使っている人のことも配慮しているんですね。でも必要動作環境は,当初発表されたものから,クローズドβテストで若干上がりましたよね。具体的には,グラフィックスメモリの容量が8MB以上から16MB以上に変更されたわけですが,これはやはり,開発が進むにつれて,当初の想定よりも負荷の高いものになってしまったということですか?
佐藤氏: ええ,色々と大変で……。このあたりはこれから,可能な限り解決していきたいと思っています。正式サービスで,さらに必要動作環境が上がったりしないよう,がんばっていきます。
4Gamer: 正式サービスでいきなりPentium 4必須! なんてことにならないよう,祈っています(笑)。
田村氏: MMORPGに興味を持っていても,スペックが足かせになって遊べないという人も多いと思うんですよ。そんな人にも,ぜひTOEOを遊んでもらいたいな,と。 対応OSはWindows 98SE以降ですから,相当前に買ったPCを使い続けている人にも,十分遊んでもらえるんじゃないかと。
4Gamer: では,実際のところ,どれくらいの環境を持っている人なら,快適に遊べるんでしょうか?
田村氏: 数字上のスペックを出しても,グラフィックスチップがオンボードなのか,あるいは別途グラフィックスカードがあるのか,というところで大きく違いがあります。これに加えて通信環境などの条件も組み合わせていくと,何万通りにもなってしまうんですよね。だからこの質問への回答は,一概には言えない,となってしまいます。このあたりについては,現在行っているクローズドβテストで情報収集中です。
4Gamer: クローズドβテストでのスペックに関する情報収集の中で,意外なものなどはありましたか?
田村氏: 割と新しいPCで,動かないことがあったようです。新しいものなら動くだろうと思っていたんですがね……。ここらへんは,日々,勉強ですよ。
4Gamer: TOEOのプレイヤーって,メーカー製PCのユーザーが多くなりそうな気がするので,やはり万全を期したいところですよね。
田村氏: まさにそのとおりですね。量販店でよく売れているメーカー製PCって,グラフィックスがオンボードのものが多いじゃないですか。そういうPCのほうが普及していると思うんですよね。 3Dグラフィックスを多用した最近のタイトルだと,こういうPCでは満足に動かない場合が多いはずです。グラフィックスカードを買い足したりしない限りは。 でもTOEOは,余分な出費をせずに遊べると思うので,潜在的なパイは大きいと思っています。
4Gamer: ただ,一般家庭でPCというと,最近はノートPCを指すことが多いように思います。ノートPCでの動作は考慮してますか?
田村氏: もちろんノートPCに関しても,今回のクローズドβテストでは,情報収集や研究をしっかりやっていますよ。スペックが満たされていれば,動くと思います。
佐藤氏: デスクトップにしろノートPCにしろ,グラフィックス周りが,多くの人にとって一番分かりづらい部分だと思うんですよ。なので,クローズドβテストで情報を集めつつ,きちんと対策も行っていきます。
4Gamer: とくにメーカー製PCを使っている人の多くは,グラフィックスチップに何が採用されているかなんて,よく分かっていないことが多いですよね。
田村氏: でもTOEOでは,そのような人もターゲットにしているんですよ。
4Gamer: それでは,そういった人が自分のPCでTOEOが動作するかどうかをチェックできる,ベンチマークソフトなどを用意するする予定はありますか? 世界観にしろスペックにしろ,間口の広いタイトルだと思うので,目安になるものがあると,プレイヤー(候補)も安心できるんじゃないかと思うのですが。
佐藤氏: そのあたりは,現在検討しています。
4Gamer: 動く動かないというのはプレイヤーにとって大事な指標なので,ぜひ用意してください。 ……ところで正式サービスの開始時期はいつ頃になるのでしょうか。
佐藤氏: えー,未定です。
4Gamer: そこをなんとか,少しでも教えていただけると……。2005年内? それとも,2006年以降?
佐藤氏: ええと,……なんとも言いにくいですね(笑)。まあ,近々,ある程度の動きはお見せできるかもしれません。
4Gamer: うーん,なかなかガードが堅いですね。それでは,課金方式なども未定?
柘植氏: そのあたりもごくごく近い将来,いくつかまとめて,お知らせできるかと。
■"分かりやすさ"が最大のキーワード
4Gamer: なんだかどうにも回答してもらえなそうなので,質問を変えます。 ズバリ,TOEOのターゲット層は?
佐藤氏:: 当然"テイルズ オブ"シリーズのファンがメインターゲットですから,年齢的には若干低めかもしれません。ただもちろんそれだけではなく,幅広いユーザー層に受け入れてもらいたいと思っています。 そのためにも,チュートリアルを充実させているんですよ。
4Gamer: "ねこにん"が登場するチュートリアルは,可愛らしいだけでなく,よくできていますよね。
田村氏: ありがとうございます。TOEOを開発するにあたって,最も気を遣っているのが,"分かりやすさ"なんです。残念ながら,クローズドβテストの段階では出し切れていない部分もありますが,これが一番のキーワードなのは確かですよ。
4Gamer: なるほど,確かにあのチュートリアルは分かりやすいと思いました。
田村氏: "テイルズ オブ"シリーズのファンと,現在MMORPGをバリバリやっている人って,あまり重なっていないと考えているんです。だからこそ,TOEOで初めてMMORPGに挑戦しようという人にも,簡単に理解してもらえるように工夫しています。 とっかかりの部分での入りやすさというのは,今後とも常に意識していきます。
柘植氏: "初めてのMMORPG"というより,"テイルズ オブ"シリーズのファンにとっての,"マイファーストオンラインゲーム"になるといいですね。
4Gamer: "マイファーストPCゲーム"になる可能性もありそうですよね。 それでは最後に,読者に向けて一言ずつお願いします。
佐藤氏:: TGS2005に合わせて,正式サービスに実装される"ボイス"を発表しました。今後も,このような形でテイルズらしさをどんどん出していきます。楽しいMMORPGにしていきますので,ぜひ期待していてください
田村氏: 現在,クローズドβテストに参加してくれている人達のご意見は,きっちり読んでいます。すべてを採用することは難しいですが,いろいろなご意見をいただきながら,ゲームを良くしていく方法を考えていきたいと思っています。今後とも,ご意見やご要望を,ぜひお寄せください。
4Gamer: ありがとうございました。
今回のインタビューでは,"分かりやすさ"を重視した開発姿勢や,クローズドβテストの開始を延期するに至った理由などから,"テイルズ オブ"シリーズの名を背負うことへの責任感が,ひしひしと伝わってきた。 残念ながら正式サービスの開始時期や課金方式,プレイ料金などについての回答は得られなかったが,そのときの様子から察するに,おそらく近々何かしらの動きがありそうだ。 今は動向を見守りつつ,できるだけ早期の正式サービス開始を期待したい。(TeT)
|
|
テイルズ オブ エターニア オンライン |
|
|
|
■価格:30日間および月額プレイ料金:1500円(税込) |
|
|
|
(C)いのまたむつみ (C)2000-2005 NBGI Powered by DWANGO |
|
|