[韓国ゲーム事情#425]AOGC2005でHakkyu氏の講演が話題に
韓国最新PCゲーム事情#425
"AOGC2005 SEOUL"で,Kim,Hakkyu氏の講演が話題に(2005/10/13)
Text by Kim Dong Wook特派員
韓国ゲーム産業協会とコンテンツ経営研究所は,10月10日と11日の両日,ソウルの繊維センタービル17階で,"AOGC2005 SEOUL"(Asia Online Game Conference 2005 SEOUL:アジアオンラインゲームカンファレンス2005 ソウル)。を開催した。このカンファレンスは,2005年に東京で開催されたAOGCの,ソウル版といった位置づけ。
NHNのKim,Beom Soo代表取締役による"韓国インターネットビジネスのグローバル展開のために"や,コーエーの松原健二執行役員による"日本オンラインゲームのアジア展開",ガンホー・オンライン・エンターテイメントの森下一喜社長の"日本ゲーム市場の現実と,ガンホーのビジネス戦略"というテーマの講演が行われた。 とくに森下氏の講演には,非常に多くの韓国ゲーム業界関係者が参加していた。これは,先日のソフトバンクグループによる(事実上の)Gravity買収劇や,日本のオンラインゲーム市場に対する関心の高さの表れだろう。この講演で森下氏は,日本市場におけるガンホーのポジションについて語るとともに,今後は市場動向に対応して次世代ゲーム機市場への参入も積極的に検討すると言明。 これを聞いた韓国のとあるゲーム開発会社社長が,「これまで日本市場に対して確信を持つことができなかったが,森下氏の話を聞いて,積極的に準備をする必要を感じた」と語るなど,その場にいた韓国のゲーム業界関係者にとって,非常に意義深い内容だったようだ。 森下氏や松原氏以外にも,日本からはブロードバンド推進協議会オンラインゲーム専門部会の新清士部会長,中国からはKING SOFTのRen Jian副社長,The NineのSun Tao副社長らも講演者として登壇。韓国からはNHN以外にも,NCsoft,JC Entertainment,Neowiz,Webzenといった大手の関係者による講演が行われた。
どれも充実した内容の講演ではあったが,筆者個人が最も興味を惹かれたのは,IMC GAMESのKim,Hakkyu氏のものだった。 その内容は,"Test-driven Management for Game Developer&Operator"と題し,ゲーム開発におけるテストの大切さを強調するもの。
同氏はいつもどおりに控えめな態度で,「Hakkyu! お前も間違っているくせに,何を教えるつもりなんだ!?」と自問自答しつつ,あくまでも自分自身の開発経験をベースにした話であるということを強調し,語り始めた。 まず,「Ragnarok Online」(以下,RO。邦題 ラグナロクオンライン)開発当時に得た経験として,GMの存在の大切さを力説。プログラマーである同氏は,自分が開発したゲームをテストしない習性があるらしい。ROのオープンβ当時は,BBSで批判を繰り広げるテスター達が多かったのだが,その中から分析力があり論理的な発言をする人をGMとして採用したことがあったという。結果,テスターに対する対応は向上したものの,GMと既存の開発者達の間に不信感やトラブルが発生してしまったそうだ。 この経験を通じて同氏は,「GMというものは,開発が終わった段階で必要になるのではなく,可能な限り開発初期から一緒に業務を行わなければならないということを学んだ」そうだ。そのため,「Granado Espada」(以下,GE。邦題 グラナド・エスパダ)では,開発初期からGMを合流させ,さまざまな業務に関与させているとのことだ。
最近,ゲーム業界の急速な成長/拡大に反して,ゲームクリエイター,とくにプログラマーが不足しているという事実が叫ばれている。実際,同氏もほかの会社の社長から,プログラマー不足に起因する,開発進行の困難さを聞いたことがあるそうだ。この問題について同氏は,「StarCraft」を例に,以下のように語った。 StarCraftでは,"Drop Ship戦略"(輸送機にユニットを乗せ,敵の陣営後方に降ろして攻撃する戦略)のとき,Marine(戦闘兵ユニット)だけを8人使うよりも,Marineを6人とMedic(衛生兵)2人を組み合わせて攻撃するほうが効果的だ。これと同様に,8人のプログラマーだけで開発するより,6人のプログラマーと2人のQA(Quality Assurance)担当を組み合わせたほうが良いと,同氏は言う。前述のように,(同氏を含め)プログラマーは自分が制作したプログラムをテストしたがらない習性があるため,その部分をQA担当に補ってもらうという論理である。そうすることでQA担当は,サービス開始時にはGMとして腕を振るえるという。
こうした話を交えながら,この講演のテーマ"Test-driven Development"(テスト主導の開発)について言及。要約すると,デベロッパとクリエイター達が常に抱いている不安感(ゲームの成功,組織に対する不安,繰り返される間違いなど)は,テスト中心の組織を構築することにより,払拭されるといった内容だった。 続けて同氏は,「開発者,とくに有能なプログラマーを採用するのは,とても難しい。最近では,資本力のある大手ゲーム会社が,優秀な人材をほぼすべて採用してしまっているため,さらに困難になってしまっている。しかし,採用しやすく,そのうえプログラマーほど費用のかからないテスターを採用し,開発チームに所属させておけば,クリエイターの業務は効率化されるし,テスターを開発者として育成することもできる」と結論づけた。
講演終了後,参加者達(その多くはゲーム会社のCEOや開発チームリーダーだったようだ)がさまざまな質問を投げかけるなど,テスターを中心に据えた開発形態に,大きな関心を示していた。 ある参加者は,「今まで開発プロセスについて悩んでいたのだが,それが解決できそうだ」と,非常に満足した様子だった。
今回のKim,Hakkyu氏の講演では,同氏がRO開発時に経験した試行錯誤の過程が明かされた。どうやらこうした経験が,現在開発中のGEには生かされているようだ。
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グラナド・エスパダ |
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