「With Your Destiny II」開発者インタビュー:3DでありながらPCのスペックを問わない軽快な動作と,PvP要素が大きな魅力
左(手前)から,JoyImpact社 開発チーム長 WYD2プロデューサーのチョン・ジンホ氏,韓国HanbitSoft International Business Team Manager,Product Management Dep.のScott Lee氏。そして,通訳を務めつつ,国内展開について説明してくれた,ハンビットユビキタスエンターテインメント 事業推進部 課長 ソ・ジョンソブ氏
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10月31日の「With Your Destiny II」(以下,WYD2)の国内サービス発表会に合わせて,JoyImpact社の開発者チョン・ジンホ氏と,韓国HanbitSoftの担当者Scott Lee氏が来日した。この機会に,日本ではまだよく知られていないWYD2の見どころを,発表会の内容を踏まえつつ,より詳しく聞いてみたい。
■攻城戦,ギルド戦を中心にPvP要素が大いに楽しめる作品
4Gamer(以下4G): 本日はよろしくお願いします。はじめに,開発会社であるJoyImpact社のチョン・ジンホ氏に「With Your Destiny II」の魅力,見どころについてお聞きしたいと思います。発表会でも説明がありましたが,なにぶん国内にはまだ詳しい情報が入ってきていませんので,ぜひ。
チョン・ジンホ氏: なんといっても,集団戦闘がこのゲームの一番のポイントになります。ギルド対ギルドの戦闘や国家戦争など,PvP戦闘がしやすく,かつ楽しめるように作られています。
4G: なるほど,モンスター相手のPvE(Player vs. Enemy)ではなく,プレイヤー同士が戦うPvP(Player vs. Player)が主体となるわけですね。最近は日本国内にもPvPをウリとしたタイトルがいくつか入ってきていますが,その中でWYD2が優れている点を教えてください。
チョン・ジンホ氏: まず,クライアントの軽さが最も優れた点で,比較的ロースペックなPCでも無理なく動作します。韓国では実際に50人 vs. 50人のPvPなども行われており,そういった場面でもロースペックなPCで支障なくプレイされています。そして,それでいながら十分に美しいグラフィックス表現が実現できている,と思っています。
4G: 50人 vs. 50人のPvPはそれなりの数だと思うのですが,この人数が仕様上の人数上限ですか? それとも,もっと多人数もサポートしていますか。
チョン・ジンホ氏: 実際にはそれ以上のサポートが可能です。韓国ではプレイヤーの意見として,50人 vs. 50人以上となると戦術要素などが無意味になってしまうという話があり,ギルド戦では50人 vs. 50人を上限に設定しました。 ただし,攻城戦(=国家戦)に関しては,参加人数に制限を設けていませんし,もっと大人数が参加しています。
4G: なるほど。それでは,ギルド戦そのものについてお聞きしたいと思います。ギルド戦で勝った側が得るメリットはどんなものでしょうか。
チョン・ジンホ氏: 韓国では毎週末にギルド戦や国家戦が行われています。WYD2では街が三つあり,それぞれの街でギルド戦が行われます。これに勝利すると街を支配でき,税収が得られたりするほか,勝利したギルドのメンバーだけが出入りできるフィールドが用意されています。 また,ギルド戦に勝利すると街にそのギルドの名前が書かれた塔が建てられます。そして,勝利を重ねることで徐々に立派な塔になっていき,ほかのプレイヤーの注目を浴びるわけです。
4G: ほかのギルドから尊敬され,プレイの目標となるような演出というわけですね。ところで税金というのは,どういった形で収めることになるのですか? 例えば,アイテムの購入時に税金が掛かって高くなるといった具合でしょうか。
チョン・ジンホ氏: NPC商店での売買やプレイヤー間での取り引きに掛かってきます。こうした税金に関しては,システム的に処理されており,支配ギルドへ自動的に入るようになっています。また,税金のパーセンテージ(税率)は,その街を支配しているギルドのギルドマスターが決めます。税金が高ければプレイヤーが離れてしまうでしょうし,安ければ多くのプレイヤーが利用してくれる街になるということです。
4G: では,もう一つの大規模PvPである国家戦(=攻城戦)について教えてください。例えば,何か国あり,その国家戦で何を奪い合い,どういったメリットが得られるか,などについてです。
チョン・ジンホ氏: 国は2か国,発表会でも出てきたアケロニアとヘカロティアです。国家戦では,国ごとに青もしくは赤のマントをまとって戦うことで,敵か味方かを見分られるようになっています。プレイヤーキャラクターがあるレベルに達した時点で,属する国を選ぶことになりますが,いずれかの国,もしくはどちらにも属さず中立という立場も選べます。 そして,毎週行われる国家戦で,そのサーバーがどちらの国の支配下にあるかが決まります。次の国家戦が行われるまでの1週間,勝った国家に対して,負けた国家は税金を収めなければならなくなります。
4G: 国家の税金となると,基本的に全プレイヤーが対象になりそうですが,何らかの設定が行えるのですか? もしくは一定の割合が決まっているのですか?
チョン・ジンホ氏: 国家に税金をコントロールするシステムはありません。街を支配しているギルドが設定した,街ごとの税収から一定割合を徴収します。それが,国家戦(=攻城戦)の勝利ギルドの手に収まるわけです。
4G: 攻城戦の大まかな展開について,教えてください。
チョン・ジンホ氏: 二つの国家が一つの城を奪い合うことになりますが,城そのものは三重構造になっています。「外周」から「内部」へ攻め込んでいくと,「国家を象徴する場所」というものがあり,その場所を一定時間内に攻め落とせるか,守り切れるかで勝敗が決まります。 攻城戦には複数のギルドが参加できるので,同じ国に属するほかのギルドとの連携も必要になってきます。そこで自然にプレイヤーコミュニティも生まれてくるわけです。
4G: 攻城戦はもちろん場所が決まっていますが,ギルド戦が行われる場所は決まっているのでしょうか? また,通常のフィールドでのPK(Player Kill)の可否についても教えてください。
チョン・ジンホ氏: ギルド戦は専用の特別なエリアで行われます。通常のフィールドうち,初心者エリアはPKができなくなっています。そのほかの場所ならPKは可能ですが,普通はペナルティが設定されています。ただし,ペナルティがつかないデュエルが可能なエリアもありますし,ギルド戦などではもちろんペナルティは設定されていません。
4G: PKに限らない,ゲーム内でのデスペナルティはどんな感じになりますか。
チョン・ジンホ氏: 経験値のダウン,ですね。所持金やほかのステータスには影響しません。
■ノートPCのグラフィックスコアでも動く軽快さ
4G: それでは,このゲームのウリの一つである,動作に必要なハードウェアスペックに関してお聞きします。発表会では攻城戦のムービーが流れていましたが,あれについては実際のプレイと同じ環境だという説明がありました。まずはそのときのPCのスペックを,続いて現実的な最低動作スペックを教えてください。
チョン・ジンホ氏: あのムービーを撮ったときの環境は,CPUがPentium4/2GHz,512MBのメインメモリ,そしてグラフィックスカードはGeForce 4 Ti 4200です。また,実際に開発に使っている環境は,CPUがPentium III/800MHz,グラフィックスカードがGeForce3ですね。開発環境がこの程度なので,プレイにはそれよりもずっと低い環境で大丈夫です。 例えばノートPCでも,3D描画さえサポートしていれば,チップセットの統合グラフィックスコアで動作します。初期の段階では,OSにWindows 98,CPUがPentium III/600MHz,128MBのメインメモリ,グラフィックスカードがRIVA TNTでも動作していましたが,最近ではもう少しスペックが上がっているので,先ほどのようなスペックが最低環境ということになります。
4G: 本当にかなり動作が軽いわけですね。最近のPCを使っている人ならまず問題ないでしょうし,少々前の世代のPCやノートPCでも大丈夫そうです。サーバー側についてもお聞きしますが,安定性の高さには定評があるそうですね。一つのサーバーで何人くらいのプレイヤーをサポートしていますか。
チョン・ジンホ氏: 一つのサーバーが10のチャンネルを持っていて,それぞれ1000人ずつ,合計1万人にサービスを提供できます。チャンネルとは,いわばパラレルワールドのようなもので,それぞれのチャンネルに同じ世界が広がっており,それぞれで国家戦やギルド戦が行われます。 サーバーではキャラクターデータが共有管理されているので,あるチャンネルでプレイしている人と別のチャンネルでプレイしている人が,ふだんゲーム内で会うことはないのですが,例えば別のチャンネルに友人がいて合流したい場合などに,プレイヤーはそのチャンネルへ簡単に移動できます。
4G: 1チャンネルあたり1000人というプレイヤーの中で,国家戦(攻城戦)に参加するプレイヤーはどのくらいの数になりますか?
チョン・ジンホ氏: 平均的な参加人数としては,チャンネルごとに150人程度です。もちろん,チャンネルごとに差はありますが。
4G: 少し質問が戻るのですが,国家を選択する際に,どちらかもしくは中立を選んだ場合,永続的にその国家に属するということになるのですか?
チョン・ジンホ氏: 国家は変えられます。方法としては,ゲーム内のNPCに,そのNPCが要求するだけのゲーム内通貨とアイテム「サファイア」を渡すことで,いつでも変えられるようになっています。 WYD2は最初の職業で355レベルまで,転職後にまた355レベルまでありますが,所属国を選ぶのはレベル220の段階で,それ以降自由に所属替えが可能です。
■アイテム課金だが,無料だと不可能なことはいっさいなし
4G: 韓国での運営面についてお聞きします。基本料金無料で,有料アイテムによるアイテム課金ということですが,具体的にどういったアイテムが有料で販売されているのですか。
Scott Lee氏: まずはポーション類,これは非常に低価格で,プレイヤーの負担にならない程度の価格設定となっています。重要なのが特定のダンジョンへの入場権ですね。無料で行けるダンジョンより経験値収入が多く,アイテムのドロップ率も高く設定されています。早く成長したければ,こういったダンジョンへ行くことも考えられます。
4G: 武器や防具,またWYD2の特徴でもあるマウント(乗り物になる動物)に関しては,有料のものがありますか。
Scott Lee氏: 武器や防具はありません。マウントでは1種類だけ有料のものがあります。先ほど話題に出たダンジョンですが,無料のダンジョンが三つ,有料のダンジョンが三つあります。ダンジョンの内部は,地下1階,地下2階などと,適正レベルの異なるエリアに分かれているので,広い層のプレイヤーに楽しんでもらえます。
4G: 武器や防具に有料アイテムがないというのは,プレイヤー間の格差に直接つながらないようにしているわけですね。確認させていただきたいんですが,無料ダンジョンのみのプレイでも,レベルを同じだけ上げることは可能なんですよね? それと,全プレイヤーのうち,有料アイテムを購入する人の割合はどのくらいですか。
チョン・ジンホ氏: ええ,もちろん可能です。無料だからここまでしか成長しないとか,課金をしないからここまでしか行けないといった制限は設けていません。ただ成長速度が異なるだけです。ですから,課金をするかしないかはプレイヤーの判断次第です。課金率は,アクティブプレイヤーの20〜30%といったところですね。
4G: ドロップアイテムに関しては,有料ダンジョンと無料ダンジョンでは何か差がありますか?
Scott Lee氏: 無料ダンジョンだからこのアイテムがドロップしないということはありません。ただし,アイテムのドロップ率には差がつけられていて,有料ダンジョンのほうが高くなっています。言い換えれば,無料ダンジョンでも同じアイテムはいつか必ず手に入れられるのです。 また,有料ダンジョンで手に入れたアイテムも,プレイヤー間で(ゲーム内通貨で)売買されますから,有料ダンジョンに入らないプレイヤーが手にすることもできるわけです。
■まずは「クラブはんびっと」提供作品を充実させたい
4G: では,そろそろ国内サービスについてお聞きしたいと思います。まずは狙っていくターゲットについて。このところ基本無料のMMORPGも増えてきています。そういったタイトルを視野に入れたとき,WYD2はどういったプレイヤー層をターゲットにしていますか?
ソ・ジョンソブ氏: 基本プレイ無料でありながら3Dグラフィックス,なおかつ必要スペックが低いという取り合わせがWYD2のアピールポイントです。本当に多くの人に,手軽に楽しんでもらえる作品だと思っています。
4G: 発表会ではハンビットユビキタスエンターテインメント(以下,HUE)のコンテンツとユーザーアカウントを一括管理する「クラブはんびっと」の設立が説明されましたが,例えば「グラナド・エスパダ」とWYD2では,かなり動作スペック帯が異なるので,互いに呼び水になりにくいのではと思うのですが,そこはどう考えていますか。
ソ・ジョンソブ氏: HUEとしてはWYD2のプレイヤーをそのままグラナド・エスパダや「NeoSteam」といったタイトルに導くことを考えているわけではないのです。今後さらに追加されていくサービスなども含め,クラブはんびっとは,HUEのタイトルをプレイしてくれる人を統合するサービスとして考えています。 HUEをブランドとして広く知ってもらうためもあって,まずWYD2を提供していきます。もちろん,タイトルごとにターゲットは異なるかもしれませんが,まずはクラブはんびっとの中身を,いろいろ取り揃えることが先だと考えています。
4G: ブランドとして,ですか。高田明美さんなどのアーティストを起用した狙いは,そのあたりにあるのですか?
ソ・ジョンソブ氏: 日本のマーケットに合ったイメージのイラストが描ける人ということで,日本で知名度のあるデザイナーさんにお願いしたいということになり,社内で話し合った結果,高田明美さんになりました。
4G: ギャンブル性の高さから,韓国でも実装の形が議論された"カジノシステム"について,国内での実装予定は決まっていますか?
ソ・ジョンソブ氏: まだ決まっていません。今後のサービス状況,βテスト時の反応によって,どういったシステムを採用するかを決めて行きたいと思っています。
4G: それでは最後になりますが,WYD2をプレイしてくれる日本のゲーマーに向けて,メッセージをいただけたらと思います。
チョン・ジンホ氏: 私がゲームの開発者になろうと思ったのは日本のゲーム(編注:後で聞いたところによれば「イース」シリーズらしい)をプレイたことがきっかけでした。その日本で,自分が関わったゲームをサービスできるようになったことを嬉しく思っています。サービスを通して皆さんに会えることを楽しみにしています。よろしくお願いします。
Scott Lee氏: 韓国ですでに3年以上サービスしてきたタイトルですから,コンテンツとしては十分なボリュームで,遊べる内容の充実度には自信があります。韓国では毎月アップデートが行われていますので,開発サイドと協力して,それを日本にも提供していきたいと思います。
ソ・ジョンソブ氏: 何が日本のプレイヤーに喜んでもらえるか,サービス会社としてできることを常に考えて,どんどん提供していきたいと思っています。ぜひプレイしてみてください。
4G:本日はありがとうございました。
キャラクターレベルを上げていき,最終的にはマップの支配を賭けたギルド戦や攻城戦が到達目標になるという意味で,WYD2は韓国MMORPGを代表するプレイスタイルの作品といえる。3D描画でありながら軽快な動作,そしてプレイ環境をあまり問われない点は明確なメリットであり,キャラクターの成長も,例えば序盤は1日に40レベルくらい上がるなど,かなりテンポのよいものらしい。 HUEが,韓国ですでに長いサービス実績を持ち,グラナド・エスパダとかなり立ち位置の異なる作品を持ってきたのは,まずは自社の統一サービスたる「クラブはんびっと」の名を知らしめ,提供レパートリーを広げる長期的視野に基づいているという。 また,ゲームの作り自体からはやや離れるが,イメージイラストに高田明美氏を起用するといった"見せ方" "イメージ補完"の工夫が,どういった注目を集めるかも興味深いところだ。 ともあれ,クローズドβテスター募集も11月11日と,間近に迫った「With Your Destiny II」。より詳しいゲーム内容も含め,引き続き情報をお届けしていきたい。(Text by 岡村淳司,Photo by kiki)
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(C)2000-2006 JoyImpact Co.,Ltd / Published By Hanbit Ubiquitous Entertainment Inc. |
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