[AOGC 2006]オンラインゲームファンドは作れるのか? 投資対象として見るオンランゲーム
オンラインゲームにまつわるさまざまな議題が話し合われるAOGC 2006だが,コンテンツ制作にあたっての資金調達についての講演を,ジャパン・デジタル・コンテンツ信託の浜尾知樹氏が行った。映画などほかのコンテンツにおいての資金調達の例を紹介しながら,投資する側から見たオンラインゲームについて意見を語った。
浜尾氏は,まず自社のビジネスを紹介する過程で,映画などほかのコンテンツ産業での資金調達スキームについて解説。ジャパン・デジタル・コンテンツ信託の設立時からのコンテンツビジネスの課題として,資金調達環境が整っていないことや契約形態が曖昧であることを挙げ,それらの解決を目指して同社が活動していると説明。制作側が独自に資金を調達するのが困難である理由としては,金融機関の担保主義(土地などの資産がないとお金を貸せない方針が強い)や,コンテンツという商材に関する評価基準が無いことなどといった背景を解説しつつ,「日本の人材面や技術力が高い水準であるにもかかわらず,資金の流入についてのアプローチが不十分。今後さらにコンテンツ産業を発展させていくには,資金調達スキームの確立が必要」と結んだ。 ジャパン・デジタル・コンテンツ信託が行っている事業スキームの詳しい紹介はここでは割愛するが,要は,コンテンツ制作会社が著作権を信託して,それを担保代わりにして資金を調達するという仕組み(正確には,著作権を信託して受益権を受け取り,それを信託ファンドに回す)である。従来のコンテンツ制作においては,「制作委員会方式」という,関連各社が資金を出し合ってプロジェクトを進める方式が主流であったが(今も主流),比較的リスクが高く,元本割れが発生してしまうケースも少なくないなど,投資家側からすれば慎重さが求められる形態であったという。 その点に関して浜尾氏は,「弊社がこれから展開していこうという知的財産信託は,リスクとリターンのバランスが良い方式だ」と説明しつつ,今後コンテンツからの配当権利である「信託受益権」の証券化など,商品(この場合は,投資商品という意味)をより流動性の高い形にしていくことで,コンテンツ制作における資金調達環境の整備が進んでいくだろうと,今後の展望を語った。
一連の資金調達スキームを説明した後,浜尾氏はオンラインゲームへと話題を移した。氏は,オンラインゲームについて,
・将来性の高いビジネス形態であること ・パッケージゲームと違って,長期的な利益(配当)を期待できること ・E-コマースやコミュニティビジネスなど,付加価値ビジネスの可能性が あること
などを魅力的と話ながらも,初期に大きな設備投資が必要になる点や,サーバーなどの維持/管理といった固定費によって,サービスイン後も投資資金を回収できないリスクなどを指摘。ただ中古市場や海賊版に対しての不安要素が,パッケージゲームと比べて低い点なども合わせて指摘し,オンラインゲームは「投資の対象として十分に検討に値する商材だ」とし,講演を締めくくった。 講演後の質疑応答では,投資したタイトルが人気作となり続編が出た場合の配当はどうなるのか?(最初に投資するほうがリスクが高い)といった話や,現実的に「売れそうな作品」には大手企業が単独で全額投資してしまい,ファンドなどに回ってくるタイトルは無名のものがほとんどだが,いわゆる目利きについてはどうしているのか? など,なかなかに実践的な質問がされていたのが印象的。ちなみに「目利き」については,独自の予測分析ソフトを開発するなど,業界人ならではの目利き/勘といった部分を,より数値に落とし込む取り組みも行っているという話であった。
ともあれ,昨今注目を集めるオンラインゲーム産業も,今後大きく発展していくためにはそれなりの「元手」は必要。プレイヤーとしては,ゲームメーカー側の資金調達が簡便になることで,さまざまなタイトルの開発が行われることを期待するばかりだ。(TAITAI)
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