ニュース
[GDC06番外編]次世代キャラクターアニメーション技術の進展
2006/03/27 20:47
Ubisoft Entertainmentの開発チームによる講演の様子
 「Prince of Persia: The Two Thrones」「Half-Life 2」の成功を受けて,GDC06では「キャラクターテクノロジー」に関する講演や発表が多い。Ubisoft Entertainment(以下Ubi)の開発チームが行っていたのもその一つだが,それほど注目されていたわけではなく,筆者も時間が空いたときに,講演の途中からふらっと,記事化するつもりもなく,立ち寄ったに過ぎなかった。
 だが,この講演,結果からするとかなりの“当たり”。カメラを構えて最初から聞いていたわけではないため,今回は番外編として,この講演内容のポイントをかいつまんで紹介したいと思う。

 さて,GDC06の数週間前に,Ubiの2006〜2007年度リリーススケジュールがインターネット上へ流出したというニュースは,海外ゲームに詳しい人なら見聞きしているかもしれない。そのリストでは,「The Assassin」というゲームが,PCのほか,プレイステーション3とPSP(プレイステーション・ポータブル),Xbox 360,Revolution(開発コードネーム)で発売予定となっているのだが,GDC06でUbiの開発チームが行っていた講演は,このゲームに関するものだった。
 題目は「Defining The Assassin: Designing Next-Gen Gameplay in Theory in Practice」。日本語では「The Assassinの定義:次世代ゲームプレイをデザインする理論と方法」といったところだろうか。

 講演でスピーカーを務めたのは,The AssassinのプロデューサーであるJade Raymond(ジェイド・レイモンド)氏と,クリエイティブディレクターのPatrice Desilets(パトリース・デズレッツ)氏の2名。Raymond氏は,「EverQuest II」のプログラマーを経て,「The Sims Online」などにも関わり,さらにそのキュートな顔立ちから,あるゲーム専用オンラインTVの司会としても活躍するという多芸な女性だ。Desilets氏はUbiのベテラン開発者の一人で,「Prince of Persia: Sands of Time」のキャラクターアニメーションで功績のあった人物でもある。

■「オーガニックな」キャラクターアクションを目指すUbi
 Raymond氏は講演の中で,「これは3Dアクションゲームに限ってのことだけど」と前置きしつつ,次世代ゲームにおける新しい手法として「Organic Design」(オーガニックデザイン)というコンセプトを提示した。

 現在のゲームにおいては,特定の場所でしかジャンプできなかったり,壁をよじ登るにしても,特定の場所で,しかも決められた方向にしか移動できなかったりする。これに対して,Organic Designでは,キャラクターとゲーム世界が文字どおり有機的に結びついた,より自由なキャラクターアクションの実現を目指すという。

 これはDesilets氏らの開発チームがPrince of Persiaシリーズで培ったノウハウを,もう一歩進めたものとのことで,The Assassinのイメージビデオとして,「マトリックス」「インディ・ジョーンズ」といった映画作品や,日本のアニメ作品「シティーハンター」などをつなぎ合わせた(著作権的にはちょっとアレな)ものが流された。要するに,彼らはこういったアクションを,より自由に,自然に行えるようにしようとしているわけである。

 このムービーに続けて行われたデモは,ジャンプやクライミング(よじ登り),レベルデザイン,剣技,そしてフィジカルコンタクトといったものだった。
 例えばフィジカルコンタクト(=体と体の衝突)だと,「Grand Theft Auto: San Andreas」の場合,プレイヤーキャラクターが道路を歩いていてNPCにぶつかったとき,“カクカク”と不自然な避け方をする。そうでなくても,プレイヤーキャラクターがNPCにぶつかったとき,突拍子もなくNPCが後ずさりしたり,転んだりするのが,現行ゲームエンジンにおける衝突判定の精いっぱいだ。
 この点,The Assassinでは,プレイヤーキャラクターが歩いている人(NPC)とぶつかりそうになったとき,一方の肩を前に傾けてすり抜けるような動作をしたり,腕で押しのけるといった動作をしたりする。前出のイメージビデオでは,Electronic Artsの「Madden NFL 06」のクリップが使用されていたが,まさに,ボールを持ったアメフト選手が,相手のタックルをかわして走っているときのようなイメージである。

Prince of Persia: The Two Thronesより。現在のエンジンでも,王子はけっこういろいろなところに登ったりしていた。The Assassinでは,さらに自由度が増すというわけだから,これは期待できそうだ
 Ubiは講演の最後に,Prince of Persia: The Two Thronesのゲームエンジンに,The Assassinのアニメーション技術を加えたデモを行った。プレイヤーキャラクターは同タイトルに登場する魚売りのキャラクターモデルそのままで,街もアラビア風の建物そのまま。しかし,プレイヤーキャラクターは屋根から屋根に飛び移ったり,壁をよじ登ったりしながら,ターゲットとなるキャラクターに接近し,最後は一般人のふりをして近づき,いきなり斬りつけて逃走するという内容になっていた。

 さすがに,このデモだけでThe Assassinがどういうゲームになるとは断定できないが,UbiがOrganic Designと呼ぶ「進化系キャラクターアニメーション」については,記憶に留めておくといいかもしれない。
 なお,The Assassinの続報は,早ければ5月のElectronic Entertainment Expo(E3)で明らかにされそうだ。(奥谷海人)


【この記事へのリンクはこちら】

http://www.4gamer.net/news/history/2006.03/20060327204738detail.html