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[E3 2006#011]E3 2006最大の話題作? ウィル・ライトの「Spore」
2006/05/11 19:51
Will Wright氏
 E3 2006初日。Electronic Artsのブースでは,天才の名をほしいままにするWill Wright(ウィル・ライト)氏の新作「Spore」について,同氏直々のデモセッションが行われた。
 セッションには,販売元であるElectronic ArtsのBing Gordon(ビン・ゴードン)取締役副社長や,Valve SoftwareのGabe Newell(ゲイブ・ニューウェル)氏,Junction Point Studiosを旗揚げしたばかりのWarren Spector(ウォーレン・スペクター)氏といったそうそうたるメンバーが参加。2007年発売の目玉タイトルとして,業界内で非常に高い期待を集めていることがうかがえよう。

 今回明らかになったのは,GDC 2006で姿を見せたクリーチャー制作ツールの詳細と,実際のゲームの一部。順を追って見ていくことにしたい。

■クリーチャーを単細胞生物から
作り上げていく過程が明らかに


 まずは,Sporeのおさらいから。GDC 2005の記事で説明したように,Sporeはゲームが六つのフェーズに分かれており,プレイヤーは主人公となるクリーチャーを,単細胞生物から順に進化させていくようになっている。そして,Sporeではこのクリーチャーを,プレイヤー自らが制作するようになっているのだ。
 今回のデモを見る限り,主人公クリーチャーの制作は,楕円形の胴体から始まるようだ。この状態で背骨の方向を決定し,マウス操作で胴体や背骨を伸ばしたり膨らませたりしながら,尾までの形を整える。

 単細胞生物“時代”は,あまり複雑な形状を取れないが,何らかのポイントが加算されることによって,頭部や目,腕,手,足,アンテナ(!?)といったパーツがアンロックされていく。最終的には,一つのパーツ当たり,何十種類にも及ぶバリエーションから好きなものを選択できるようになり,それらを好きな場所に取り付け,さらにその形や大きさをマウスで変更していくことで,思いのままのクリーチャーに仕上げていくのである。

 クリーチャーのモデリングはすべてプロシージャル生成される(=適宜計算によって求められる)ようになっている。つまり,パーツの機能や置かれる場所,クリーチャーの身体能力などによって,クリーチャーの動きは自動的に作られるわけだ。アニメーションを制作ツール内で確認できるプレビュー機能がついていたことは付記しておきたい。

 会場でWright氏は下半身が前に突き出たような奇妙な2足歩行型のクリーチャーを作り上げていたが,口が腹部に取り付けられていたにも関わらず,その動き方や鳴き声の上げ方などに不自然さはない。口の形状は,肉食型か草食型,もしくは雑食型を決定するようになっているようだ。クリーチャーのパラメータには,ほかにも攻撃力(Power),速度(Speed),迷彩効果(Stealth),知覚(Sense),社交性(Social)などがあるので,これらもパーツの能力や外観と相互に影響し合うと思われる。
 表皮一つ採ってみても,は虫類のような滑らかなものから体毛,鱗といったさまざまなテクスチャが用意されており,さらに色や模様も選択できる。「普通なら,プロのモデラーやアニメーターでも1週間はかけないとここまで作り込めない」とWright氏は何度か口にしていたが,この自由度の高いクリーチャーメイキングが,Sporeの魅力の一つなのは間違いない。
 ちなみに,このクリーチャーの情報量はなんとわずか3KBとのこと。プレイヤーによってさまざまなクリーチャーが生み出され,オンラインで交換されていくことになりそうだ。



■同種クリーチャーの集団行動を培うTribalフェーズ

 Wright氏は続けて,「Tribal」と呼ばれる3番めのフェーズについて,動作デモを行った。
 単細胞の微生物に過ぎない「Tidepool」,両生類/魚類風に進化した「Evolution」という,二つのフェーズの先にあるTribalフェーズで,主人公クリーチャーは陸上歩行能力を獲得している。

 Tribalフェーズでは,主人公クリーチャーとは別種のさまざまな生物がうろついており,植物もずいぶんと奇妙な形をしている。Wright氏によれば,これら動植物はゲームが自動生成するほか,ダウンロードして利用することもできるという。

 デモで利用されたWright氏のクリーチャーは,真っ赤なボディに青のラインという派手な外観であるためか,迷彩効果が低く,ほかの生物はかなり遠くでもこちらを認識できる。結果として,威嚇されたり,攻撃を仕掛けられたりするのだ。
 戦闘が始まれば,血しぶきが飛ぶなど激しい戦いになるようだが,Wright氏はクリーチャーが死なないように,ほかの生物を見つけると後退りしては遭遇を避けるという手段を採っていた。

 このフェーズで重要なのは,食料の確保だ。Wright氏は逃げてばかりいたが,実際には食料を安定してクリーチャーに与えていくことで「DNAポイント」が加算されていく。そしてある程度溜まると,「メーティングコール」による求愛行動ができるようになるのである。デモでは,同種の生物を見つけてメーティングコールすると,周囲にいたすべての仲間が呼応した。

 一匹のメスにハートマークが現れたら繁殖活動開始。メスに被さって腰を振る仕草をするだけの他愛もないものだが,Wright氏は「プロシージャル・セックス」とジョークを飛ばしていた。要するに,これも自動生成された動き,というわけである。
 ほどなくして出てきた卵を外敵から守りつつ,数十秒ほど経つと子供が4匹誕生。この子供達を引率し,集団で狩りを行ったりすると,今度は“種としてのインテリジェンス”といったような行動パターンを身に付けていくこともできるようだ。そうやって,集団生活としての成功や失敗を繰り返しながら,社交性を開花させ,火と武器の発見によって始まる第4フェーズ「City」へとつながっていくのである。




■宇宙探査や異星人との交流を楽しむGalacticフェーズ

 さらに,SporeのデモはCityフェーズの後に来る「Civilization」フェーズの終盤へと移る。
 ここでは城壁で囲まれた都市が形成されているが,技術の進歩によって宇宙船を建造できる時期に差し掛かっている。宇宙船ができると,クリーチャー達は花火を打ち上げて大喜びし,文明を進歩を祝っていた。

 宇宙船には「アブダクション・レイ」(誘拐光線)という物騒な名前の装置が搭載されており,仲間の種族を宇宙船に取り込んでほかの地域や惑星に移動し,そこで解き放って入植地を作ったり,食料となる穏やかな下等生物を運搬したりするのにも利用できる。宇宙船に引き上げている途中で光線を止めれば,クリーチャーは地面に落ちて死んでしまうから,使いようによっては兵器になるかもしれない。

 一度宇宙へ飛び出すと,視点は太陽系から銀河系へと退く。説明によると,銀河には太陽のような恒星が50万個あって,それぞれに平均4個の惑星があるとのことだ。しかも,星は地表がマグマで覆われているものや,ガスでできたようなもの,居住可能な月をもっているものもあるという。
 マグマだらけで住めない星も,科学技術でテラフォームして植民地化したりできるうえ,現在生物が住めない星にも「先史文明の遺物」が眠っていて,入手することでオーバーテクノロジーを利用できるようになったりするようだ。
 星はマウスオーバーで,大気の状態などの情報を引き出せるようになっているので,プレイヤーはそれをヒントに,どの星系を探索し,どの惑星を植民地化するかを決めていくというわけである。
 もちろん,クリーチャーや建物,樹木と同じように,惑星を作るためのエディタも用意されているとのこと。プレイヤーが作り上げた星を,アップロードしてほかのプレイヤーとトレードすることもできる。



 これらの惑星には,異星人が生存していることがしばしばある。デモでは探査に出かけた星に緑色の生物がおり,当初は花火を見せることで神として崇められそうになったのだが,誘拐光線の不手際で(デモのため故意に?)殺戮を繰り返してしまい,誘導ミサイルで攻撃を受ける結果となっていた。異星人は,その性格や文明の進歩度合いによって奴隷化するだけでなく,安全保障のパートナーや通商相手にすることもできるそうだ。

 プレイヤーを飽きさせないための,ランダムのミッションも発生するようだ。デモでは,プレイヤーの遠征中に,プレイヤー種族の指導者らしきクリーチャーから「母星が攻撃されている」というメッセージを受信したりしていた。

 さて,デモの最後では,制作あるいは遭遇したクリーチャーを,能力値データ付きで標本化できることが明らかになった。これもオンラインで交換できるようになっており,トレーディングカードゲームのような遊び方も可能なのだそうだ。
 Electronic Artsの関係者によると,「来年のE3でもSporeをまた見せることになるかもしれない」そうで,まだ完成までには時間がかかりそう。気長に続報を待ちたいところである。(奥谷海人)

クリーチャーや建物,乗り物の例

Spore
■開発元:Maxis
■発売元:Electronic Arts
■発売日:2007/Q3
■価格:N/A
→公式サイトは「こちら」

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http://www.4gamer.net/news/history/2006.05/20060511195155detail.html