ゲームデベロッパ KRGチャイナ設立式典ミニレポート&インタビュー
中国・北京に新たに設立されたデベロッパ KRGチャイナに赴き,会社設立の経緯や今後の展開などについて取材することは,今回の中国取材のテーマの一つであった。 その同社の設立式典のミニレポートと,その前後に行われたインタビューの模様をお届けしよう。
まず,新会社 KRGチャイナのバックグラウンドについて,簡単に説明しておこう。同社は,中国で2500万もの累計ID数,同時接続者数35万人を誇るMMORPGの人気作「熱血江湖 Online」(エムゲームジャパンが日本国内でクローズドβテスト中)を手がける,韓国のデベロッパ「KRG」のグループ会社だ。 そのKRGは,韓国&ワールドワイドパブリッシャのmgameが抱える開発スタジオであり,KRGチャイナは,北京を拠点とするデベロッパとして,新たに設立されたわけである。
設立式典が行われたのは,北京市内のとあるビルの8階にある,KRGチャイナのオフィスだ。設立されたばかりの会社ではあるが,50前後のデスクが並べられた,広めのオフィスを構えていた。 式典といっても仰々しいものではなく,mgame,KRG,そしてKRGチャイナの関係者が集い,互いにエールを送り合っていた。
(写真・左から)パク ヨンス氏(mgame CEO),パク ジフン氏(KRGチャイナ President & CEO),ノー チョル氏(KRG Marketing Div./Exective Director)
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■新たな開発ブランチを中国・北京に設立する狙いとは
この設立式典が始まる前の空き時間に,mgameのパク ヨンス氏(CEO),KRGのノー チョル氏(Marketing Div./Exective Director),そしてKRGチャイナのパク ジフン氏(President & CEO)に話を聞く機会を得た。 中国にデベロッパを設立する狙いや,当然計画しているであろうオリジナルタイトルなどについて,話を聞いてみた。
4Gamer: このたびは,KRGチャイナの設立,おめでとうございます。まず最初に,同社設立の理由を聞かせてください。
パク ジフン氏: 現在,中国で熱血江湖 Onlineのサービス提供が行われていますが,現地のプレイヤーのニーズに細かく対応したり,より本格的なサービスを展開したりするには,中国に開発会社を設立する必要があると判断しました。 もちろんこれは,中国の潜在的な市場規模と将来性を考慮したうえでの判断です。
ノー チョル氏: 本作は韓国で生まれ育ったゲームですが,アジア各国で高い人気を誇っています。その理由の一つは,各国に韓国からスタッフを送り込み,共同で仕事をしているからだと考えています。それぞれの国に合ったサービスの提供を目指しており,各国のプレイヤーにも親近感を抱いてもらっています。
(写真・左)パク ジフン氏
(写真・中央)ノー チョル氏
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4Gamer: 単にゲームのライセンシングを行うだけでなく,各国のパブリッシャに対して,韓国側からスタッフを派遣しているわけですね。
パク ジフン氏: そうです。各国のプレイヤーにマッチしたゲームを提供することは,私達の大きな目標であり,そのためには,各国のパブリッシャと共に,現地で仕事をすることが大切だと思っています。 日本では,エムゲームジャパンが本作のサービス提供を予定していますので,すでにスタッフを日本に派遣し,一緒に準備を進めているところです。 中国や日本だけではなく,タイや台湾でも同じ方法で仕事をしています。
4Gamer: ゆくゆくは,オリジナルタイトルの開発を目指しているのではないかと推測しているのですが,それは,韓国や日本などを含む,海外市場をターゲットとしたゲームになるのでしょうか。
パク ジフン氏: そうですね,中国で開発するということもありますし,最初はある程度中国のプレイヤーを意識したものになると思います。でもいずれは,世界各地の人々に遊んでもらえるゲームを作りたいと思います。 新作の詳細については,まだ秘密ですが……(笑)。
一同: (笑)
パク ジフン氏: 内容の詳細は話せませんが,2年後には出したいと思っています。“素晴らしい”ゲームよりも“楽しい”ゲームを作ることが,ゲーム開発に対する私の理念です。世界中のプレイヤーに楽しんでもらいたいと思いで,開発に取り組んでいます。
同行してもらったエムゲームジャパンのチェ ジョンジュン社長によると,KRGは,およそ2年後のPCを想定し,次世代ゲームエンジンの開発を進めているという。はっきりとした答えを得られたわけではないが,パク ジフン氏のいう“新作”は,あるいはそのエンジンをベースとするタイトルなのかもしれない。
チェ ジョンジュン氏(エムゲームジャパン社長)
※中央と右の画像は「熱血江湖 Online」のスクリーンショットです
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4Gamer: 中国人のスタッフに対して,どのような適性を求めますか?
パク ジフン氏: 中国国内でデベロッパを運営するうえで,中国文化の中で育った人材を採用することは不可欠だと思います。この国には才能のある人がたくさんいますが,これまでの経験上,ゲームクリエイターとしての適性を備えた人材は,まだあまり多くないと思います。 私としては,才能を持った中国の人達をスタッフとして招き入れ,しかるべき教育を行うことにより,中国のゲーム業界にも貢献したいのです。 また,そのような取り組みを通じ,中国出身のゲームクリエイターのレベルを底上げすることで,将来的には開発コストなどの面でメリットが出てくると考えています。
4Gamer: ある程度の規模を持つ会社を設立するとなると,まとまった額の投資も必要だと思いますが,当然,将来的に得られるであろうメリットの大きさを考慮しての決断だったのでしょうね。
パク ジフン氏: もちろん,いろいろな側面から考慮した結果です。中国での会社設立はチャレンジであり,私達にいろいろなチャンスをもたらしてくれると思います。
4Gamer: 今後の成果が楽しみです。さて,KRGチャイナの設立とはやや方向が異なりますが,本日は韓国の有力なパブリッシャと知られるmgameのパク社長に同席してもらっていることですし,ぜひ同社について話を聞かせてください。 日本のゲーマーにとって,mgameはまだあまり馴染みのある会社ではないと思われますので,会社の成り立ちなどについて教えてください。
パク ヨンス氏
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パク ヨンス氏: MMORPGのビジネスに将来性を感じ,ソン スンチョルと共に,mgameの前身であるゲームポータルサイト「ウィズゲート」を6年前に立ち上げました。ソンは開発で,私は営業という小さな会社でした。
4Gamer: 6年前ということですと,ゲームポータルサイトとしては古参に入りますね。
パク ヨンス氏: ええ。その後,ライバル企業がカジュアルゲームにフォーカスしたサイトを展開していったのに対し,弊社は一貫して,RPGに主眼を置いたサイト作りを進めてきました。 RPGはどうしても,開発コストや時間を要するジャンルですから,最初は大変でした。一般的なサラリーマンの10分の1ほどの給料で頑張っていましたから(笑)。今こうして,パブリッシャとして世界各国にゲームを提供できるようになったのも,その頃の苦労があったからこそだと思います。
4Gamer: 大手パブリッシャとして知られるmgameにも,そのような時代があったのですね。
■「今後も,いろいろなジャンルのタイトルを,あらゆる層のプレイヤーに向けて提供する」……韓国mgame
さて,mgame,KRG,KRGチャイナとのインタビューを行ったあと,せっかくの機会でもあるので,韓国mgameでInternational Business Dept. Directorを務めるチェ スンフン氏から,韓国mgameの最新動向について話を聞いた。
まずmgameの作品が展開されている国についてだが,韓国本国と,エムゲームジャパンが担当する日本市場を除いて,中国,台湾,タイ,シンガポール,マレーシア,ベトナム,アメリカ,イギリス,フランス,ドイツ,イタリアと多数に上る。ただし,これらに必ずしも支社があるわけではなく,例えば,中国における「Knight Online」のサービスは,大手ポータルサイト「捜狐.com」が担っている。
これから出てくる作品については,今年の冬休みシーズンから来年初頭に向け,3本の作品が予定されているという。そのうち1本は本格武侠もの,1本は可愛らしいキャラクターが特徴の作品,そして最後の1本は,女性ターゲットを強く意識したMMORPG「Lunentia」(ルネンシア)の後継版になるとのこと。これらの作品を日本でサービス展開する予定であるかどうかについて聞いてみたところ「そのつもりです」という回答だった。
先ごろお伝えした,エムゲームジャパンのポータルサイトに予告が掲載されている,「鬼魂」の展開予定について聞いてみると,すでに台湾および香港のパブリッシャとの間で契約が結ばれ,中国本土(中華人民共和国)においても契約手続きが進行中で,タイとベトナムでもサービス提供予定,シンガポール,マレーシア,ヨーロッパ圏については英語によるサービスとなるためもあって,mgame USがカバーする形で戦略を立てているという。 同じく鬼魂について,日本市場を意識したときのセールスポイントを聞いてみたところ「メイプルストーリー」などと同じく操作の簡単な2Dスクロールゲームであり,熱血江湖 Onlineよりも下の年齢層,小学生も含めた若年層を狙っていくとのことだった。
「鬼魂」のイメージ画像とスクリーンショット(韓国語版の画面を写したものです)
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韓国の現在のトレンドであるカジュアルゲームは,日本市場から見た場合,ファミリーコンピュータなどかつてのコンシューマゲームで展開された作品のテイストに近い。その点をどう意識しているか聞いてみると,それゆえに日本では受け入れられやすいのではないかという,至極前向きな見解を示してくれた。ちなみに鬼魂は,ゲームパッドでの操作にも対応予定。現地での要望に基づき,台湾サービスバージョンで対応作業が進められており,当然ながら日本でもそれに準拠したものをサービスするという。
日本市場における熱血江湖 Onlineの目標プレイヤー数について聞くと,年末時点で同時接続2万人が,当面の目標とのことだった。
最後に日本のゲーマーに,mgameに対してどういったことを期待してほしいか聞いてみると「mgameはさまざまなジャンルのゲームを開発してきた会社です。ゲームのジャンルがさまざまなら,その楽しみ方もさまざまです。ゲーム内容のみならず,運営面についてもプレイヤーに徹底して合わせていくのがmgameのやり方ですので,その点に期待してください」とのことだった。
■KRGチャイナ設立は,今後の展開の布石か?
最後に,あらためてKRGチャイナのパク ジフン氏に話を聞く機会をもらい,今後KRGチャイナが果たす役割について聞いてみた。 もちろん,中国市場特有の要望を素早く汲み取ってサービスに反映されることが,同社の基本的なミッションとのことだが,今後予定されている熱血江湖モチーフのミニゲーム,釣り,サッカー,タイピング,ボンバーマンタイプのゲームに関して,そのいくつかの開発をKRGチャイナが担当する予定であるという。 そして,これらのゲームのデータは熱血江湖 Onlineのデータと完全にリンクされ,どのミニゲームをプレイしていても,キャラクターは成長していくのだという。
ここまでのレポートで,触れてこなかった大きな疑問がある。それは,なぜmgameがパブリッシング業務を兼ねたmgame中国支社を設立するのでなく,デベロッパであるKRGが現地開発オフィスを開設することになったのか,という問題だ。これを読み解くにはおそらく,現在の中国市場の特質を勘案する必要があるだろう。
海外のサービス会社がダイレクトに中国市場に出て行くことは,現在ほぼ不可能と目されている。可能なのが,中国側企業優位の資本比率で設立されたJV(ジョイントベンチャー)方式のみであることは,中国ゲーム市場を知る人々の間で,ほぼ一致した見解だ。 mgameが中国での自社サービス展開を,希望していないはずはない。それでも出て行かないのは,現地パブリッシング業務に関して慎重な判断を下したというのが,まずは穏当な見方だろう。
KRGチャイナの設立が,最終的に中国におけるパブリッシング業務展開を見越した布石となるのか,言葉どおり中国プレイヤー向けアレンジの拠点に留まるのか。今後の動向が注目される。(山 / Guevarista)
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伝承の絆 〜熱血江湖オンライン〜 |
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