[韓国ゲーム事情#569]FPSの大ヒットにより音声チャットが普及
Kimの韓国最新PCゲーム事情#569
オンラインFPSのヒットで,音声チャットサービスが急成長(2006/7/10)
Text by Kim Dong Wook特派員
以前にもお伝えしたことはあるが,2005年からの韓国オンラインゲーム市場において,最も成長しているジャンルは,FPSである。これまで,韓国のオンラインゲーマーというと,MMORPGを非常に好んでいるという認識が一般的だった。だが現在では,毎時間20万人以上もの人が,FPSの世界で銃撃戦を行っているのである。
そしてオンラインFPSの盛り上がりは,同時に音声チャットの発展も促しているようだ。
現在,韓国で一番人気を集めている音声チャットは,Hulivが開発した「Team Voice」。累積会員数は60万人で,同時接続者数は3万人以上と,急速に普及している。 Team Voiceは,Hulivが3年にわたって開発し,特許出願中の多人数通話システム,およびその制御方法を利用したサービス。P2P方式で「Silence Detection Tech」(結果的にトラフィックを軽減する技術)を用い,通信帯域幅は1.0Kbyte/sec程度で,同時に20人のユーザーが,双方向通話を利用できる。なお,間もなく技術的なアップデートにより,同時通話は100人までカバーできるようになる見通しだ。
最近ではFPSだけでなく,「リネージュII」「World of Warcraft」といったMMORPGの攻城戦や,レイドのときの効果的な戦術指示のためにも,Team Voiceが利用されている。 また,「Audition」(邦題 Ryzme)のようなオンラインダンスゲームでは,女性プレイヤー同士が相手のダンスの感想を語り合うといった使われ方もされているようだ(もちろん,雑談もかなりあるだろうが)。 このほかにも,チーム戦がゲームシステムに取り入れられたカジュアルゲームでも,高い頻度で利用されている。
オンラインFPS「Sudden Attack」には,音声チャット機能が実装されているが,「緊迫した戦闘の最中に,音声チャットのためにYキーやCtrlキーを押さなければならないのは不便だ。だから,こうした操作を必要としないTeam Voiceを使っている」というのが,多くのプレイヤーの本音のようだ。 1〜2秒という短い時間の中で,銃弾を撃ち込まれる可能性があるFPSでは,キーボードチャットなどをしていたら,クラン戦などでは圧倒的に不利になってしまう。そこで,FPSのクランの多くでは,効率的な戦闘を行うために,音声チャットを勧めている。結果,Team Voiceのようなサービスが人気を集めるのは,必然といえるだろう。また,これと同時にヘッドセットの販売台数も急激に増えている。
ヘッドセットメーカーのPlantronicsは,最近,韓国市場における自社製品の売り上げが急激に増加していることを検証したところ,Team Voiceのプレイヤー達がかなりの数を購入しているという結論に至ったようだ。そして,Hulivの音声チャット技術を高く評価し,戦略的な提携を結んだ(Plantronicsのゲーマー向けヘッドセット「.Audio 90」のレビューは「こちら」)。
HulivのJang Mok Hwan取締役は,「オンラインゲームにおいて,最も重要な要素はコミュニティです。これまでのコミュニティは,テキストベースのチャットを基盤としていましたが,これからは音声チャットへ移行することになるでしょう。また,音声チャットシステムを強化したオンラインゲームも,やがて登場するはずです」と,今後の見通しを語る。 Jang氏は,オンラインゲーム市場が成長している日本でも,日本企業との提携などを行いながら,Team Voiceのサービスを2006年内に行いたいようだ。
なお,音声チャット技術自体は,オンラインゲームのみならず,語学学習やインターネットカラオケなど,さまざまな分野で活用される見込みだ。
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